挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

外伝 槍の勇者のやり直し

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

434/854

大きなフィロリアル様

「侵入を斡旋した亜人がいる?」

 翌日、シルトヴェルトの者達が告げました。
 使者が申し訳なさそうに説明いたしましたぞ。
 どうやら三勇教以外にも俺達には敵がいる模様。
 その話を聞いてエクレアが不思議そうな顔で口を開きました。

「警備は厳重にさせているのではなかったのか?」
「というか亜人という事は味方のはずだよね? なんでそんな事を?」
「それが……どうやらシルドフリーデンと繋がりのある者達が盾の勇者様をシルトヴェルトに迎え入れて欲しくない、との画策があるご様子で」
「ふむ、確かに盾の勇者は亜人の中では貴重な存在。居るだけで争いの引き金になりかねないのは承知していたが……」
「まるで世界中が俺の命を狙っているみたいだね」

 お義父さんがポツリと項垂れて呟きましたぞ。
 言われて見ればその様にも見えますな。
 メルロマルクでは敵国の神として、シルトヴェルトとシルドフリーデンでは亜人同士の内部闘争。
 あまり良い状況とは言えませんな。

「安心してくださいお義父さん。例え世界を敵にしても、この元康がお義父さんの敵全てを滅ぼして見せますぞ」
「え? あ、うん。だけど全てを滅ぼすのはやりすぎかな……」
「イワタニ殿、難しい外交問題なのだ。そう気を落とさずに居てくれ」
「ナオフミは絶対サクラが守るよ?」
「ありがとう、エクレールさん、サクラちゃん」

 サクラちゃんがお義父さんを慰めましたぞ。
 なんと心優しい事でしょう。
 この元康、感動して涙があふれてきますぞ。

「これからは三勇教の刺客の数は減るけど、今度はシルドフリーデンから刺客が来ると見ていいの?」
「シルドフリーデンは表向きは亜人と人間の平等と自由を宣言する国のはずなのだがな……」

 エクレアがボリボリと頭を掻きながら呆れておりますぞ。
 シルドフリーデン。
 確か最初の世界で我等がお義父さんの戦いに参加しなかった国でしたな。
 ……ここ等辺は記憶が曖昧で味方だったのか敵だったのか思い出せませんぞ。
 そもそも俺はフィロリアル様の事ばかり考えていて、それ等の事を全てお義父さんに任せておりましたからな。
 俺の出来る事はお義父さんに命令された通り動く事だけですぞ。

「何処の世界でも似たような外交問題ってのはあるんだね」
「未来のお義父さんなら意地でも相手の困る事をしますぞ。シルトヴェルトへ行きましょうぞ」
「キタムラ殿、もう少し言い方があると思うのだが……」
「まあ……このまま黙って殺されてあげるつもりはないし、攻めてくるなら相手をするしかないよね」

 と、納得した様にお義父さんは答えました。
 ですが……。

「俺、実は召喚されなかった方が良かったのかな?」
「災厄の波が到来している最中に宗教上の理由だけでイワタニ殿を抹殺しようとするこの世界の者達が悪いのだ。この世界の代表として私が謝罪する」

 エクレアがお義父さんに頭を下げましたぞ。
 ほほう。中々に殊勝な心掛けですな。
 勇者とは言っても人間。
 世界を救う為の機械ではなく、血の通った存在なのです。

 そしてお義父さんも勇者である前に人なのですぞ。
 更に言えば俺は愛の狩人。
 お義父さんの御心のままに生きますぞ。

 何より機械の様に冷酷な者が世界を救えるはずもありません。
 優しく誠実で約束を守る、心のある者こそが必要なのです。
 この元康、まだその域に到達出来ていませんが、頑張ってお義父さんとフィーロたん、フィロリアル様達の為に戦いますぞ。

「エクレールさん……うん、そうだよね。滅びの波から世界を救うために戦うのが勇者の役目なんだよね」
「ああ、イワタニ殿とキタムラ殿はその為にこの世界に呼ばれたのだ。そこに宗教を絡めたのが悪い……今はイワタニ殿を安全にシルトヴェルトへ送り届けるのを優先しようじゃないか」
「うん。じゃあ出発だね」

 ユキちゃん達に馬車を引かせ、俺達の旅を再開したのですぞ。


 そこからの旅は順調という言葉が一番しっくり来るでしょうな
 お義父さんの防御力が向上したお陰で刺客への対処も余裕になったのですぞ。
 刺客が来ても容易く蹴散らせますな。

 時折、街道などで大規模の儀式魔法等が来ましたが、俺がリベレイション・アブソーブ等で無効化、全て返り討ち、犯人達は即座に捕縛して近くの町へ更迭して出発をしましたぞ。
 やがて、さすがの刺客も勇者の強さを自覚して出て来なくなりましたぞ。
 無謀な突撃はもうありませんな。

「クエ」

 野生のフィロリアル様達を目撃しましたぞ。
 俺は馬車から身を乗り出して野生のフィロリアル様達を見つめます。
 野生のフィロリアル様……飼いフィロリアル様には無い自由奔放さと野生的な魅力を備えております。
 何より野生のフィロリアル様達は群れを大事にする傾向があります。
 その団結力は一言では言い表せられない、心に響く素晴らしさを備えておりますぞ。

「元康様! あんな者達じゃなく私達を見てください」
「はっはっは! フィロリアル様は等しく大切にするのですぞ」
「元康くんはホント好きだねー……少しはユキちゃん達を特別扱いしてあげたら?」
「フィロリアル様は等しく特別なのですぞ」
「ダメだ。キタムラ殿に言葉が伝わっておらん」

 何かおかしな事を言ったですかな?
 皆目見当もつきませんな。

「んー……? ナオフミはあの子達の事はどう思うの?」
「どうって……野生にもフィロリアルは居るんだねってくらいしかないよ?」
「そっかー」

 サクラちゃんとお義父さんは仲良しですな。

「「「グア!?」」」

 おや? あのフィロリアル達の反応に覚えがありますな。
 ダッダッダと走って逃げてしまいましたぞ。
 気のせいですかな?

「あー……行っちゃったね」
「野生のフィロリアルはこんな物だぞ? そりゃあ色々な種族がいるが、凶暴性はそこまで無い」
「そうなんだ? そういえばユキちゃん達みたいな姿になるには勇者が育てないとダメって話だったよね」
「そうですぞ」
「確かにあまりにも姿が異なるし、人の姿になるから驚きの連続だが勇者が育てるからとなると頷けるな」
「過去の勇者はフィロリアルを育てたりしなかったの? 資料に出てきそうだけど」
「それこそ勇者の数の逸話があるからなぁ……魔物を強く育てるという勇者だと七星の鞭の勇者が有名だな」

 む……? 何かイヤな事を思い出しそうな気がしますぞ。
 鞭というだけで不快な気分なのですぞ。
 ……何か悲しい事があった気がするのですが思い出せません。
 ですが警戒しておくに越した事はありませんな。

「じゃあ勇者が育てると特別な育ち方をする魔物も多いかもね」
「フィロリアルだけでこんなに騒がしくなるのだ。私は御免こうむる」
「あはは、エクレールさんはユキちゃん達に礼節を教えるので大変そうだものね」
「何を他人事の様な事を……イワタニ殿は食事に追われているではないか」
「ははは……そうだねー」

 なんとものどかな雰囲気ですな。
 シルトヴェルトの使者達の会話に混ざって楽しげですな。


 翌日の夜の事でしたぞ。
 みんなでキャンプをしていると辺りに蛍火が舞い始めましたぞ。
 そして遠くからグアグアとフィロリアル様達の声が聞こえてきました。

「な、なんだ?」
「何が起こっているんだ?」
「こちらへみんなで向かいますと申している様です」

 ユキちゃんがそう答えましたぞ。

「何!? まさかフィロリアルにも刺客がいるとでもいうのか?」
「違いますぞ」

 エクレアとお義父さんが、辺りの変化に警戒を強めましたぞ。
 その時、俺は何が起こったのか、思い出しましたぞ。
 フィーロたん以外で唯一、俺が目を奪われたフィロリアル様がもう少しでやってくる事を。
 フィロリアル様達が俺達の周りに集まり、グアグアと鳴いております。

「キタムラ殿は知っているのか? 何が起こるのだ?」
「大きなフィロリアル様が来るのです」
「はい? もっと解り易く噛み砕いて説明してくれ」
「フィーロたんの次に魅力的なフィロリアル様が来るのです」
「ダメだ……イワタニ殿、キタムラ殿と会話が成立しないぞ」
「うん、サクラちゃん。この周りにいるフィロリアル達は何を言っているの?」
「えっとねー……みんなで行くよって言ってたよ?」
「で、大きなフィロリアルがやってくる? 伝説で語られるフィロリアルの女王の話か?」

 エクレアが辺りをキョロキョロと見渡しておりましたぞ。

「俺達、襲われて食われたりしないよね」
「フィロリアルは雑食だからな。その可能性を否定できないのが苦しい所だ」

 やがてフィロリアル様達が俺達を完全に囲って、暗闇からこちらを見つめておりました。
 蛍火で照らされた姿から様々な品種のフィロリアル様達がいるのがわかります。
 ああ……何度も思いますが、フィロリアル様達の楽園ですな。
 やがて一匹のフィロリアル様が現れ、俺は――……。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ