挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

外伝 槍の勇者のやり直し

433/835

実戦経験

「イワタニ殿まで巻き込んで……呆れて物も言えん。キタムラ殿はそんなにも女性の裸体を見たいのか?」
「ユキちゃんやサクラちゃんの姿をみたいだけですぞ。豚など見ても反吐が出るだけですな。ペッ!」
「……」

 エクレアが半眼で俺を見つめております。
 よくよく見るとエクレアはタオルで体を隠しておりますな。
 ユキちゃんもそんな感じの様ですぞ。
 他の温泉には二名亜人豚がおりましたが、同様ですな。
 サクラちゃんは……温泉の端でフィロリアルクイーン形態でうつらうつらとしております。

「あれだけ堂々と覗きをすると宣言するのだ。元々入浴客など居なかったが事前に準備させてもらった」
「どうですか元康様。これで私の魅力は上がりましたか?」
「もっと色っぽく湯船に浸かるのですぞ」
「ダメ出し? 元康くんは本当凄いね……」

 立派なレディになるには魅力を磨く事も時には必要ですな。
 フィーロたんは最初から魅力満点ですがな。
 あの天然っぷりが一番の魅力なのです。ですが、みんながみんなフィーロたんの様にならなければならないと思う程、この元康、落ちぶれておりませんぞ。
 みんな、俺は大好きで愛情を注いでいるのですぞ!
 そう……フィロリアル様は等しく、俺の娘であり息子ですぞ。

 その後、エクレアが諦めたように俺の覗きの妨害をするのをやめて湯船に入ったので、俺も男湯の方に視線を戻して浸かりましたぞ。

「ふう……元康くんに巻き込まれて散々だよ」
「お義父さんはウブですな」
「ウブで良いよ! 確かに女湯を覗くのは夢だけど、もっと静かに覗く物でしょ!」
「イワタニ殿?」

 エクレアが何やら詰問するような声を出していますな。
 聞かれた事にうろたえているのか、お義父さんは新たな言葉を投げ掛けました。

「覗かないって! ただ、俺の世界の常識というか通過儀礼的な話をしてるだけ」
「……そうだな。イワタニ殿からキタムラ殿に注意してくれ、ばれない限りなら……まあ、大事にはならないのだ。私はいい加減キタムラ殿相手に色々と注意するのに疲れた」

 何やらエクレアが溜息を吐きながら湯船に沈んで行く音が聞こえますな。

「だから元康くん、覗きはするモノじゃないんだって、湯上りの時に火照った姿を見て目を癒せば、合法的に興奮できるんだからさ」
「焦らしプレイですな」
「え? う~ん……なんか違くない?」
「ですがそれでは裸体を拝めませんぞ」
「だから、そういうのはこう……彼氏彼女の関係とか、夫婦とか、特別な関係になってからで十分なんだよ」
「既に特別な関係ですぞ」
「はい?」
「フィロリアル様とその信仰者……これ以上の関係は無いのですぞ」
「……」

 お義父さんが諦めたように肩を落としましたぞ?

「ごめん。エクレールさん。俺じゃ元康くんを説得できそうにない」
「いや、イワタニ殿は既に十分な話をしてくれた。ゆっくり休んでくれ。私も疲れた体を癒そう」

 何やら、温泉に入ることで絆が増したような気がしますな。
 さすがは覗き! 覗く事で絆が増すのですぞ。

「えっと、話は戻るんだけど、幾らスキルを覚えても魔法は確か習得できないんだよね?」
「そうですな。単純に一つの魔法を覚えるだけなら、魔法屋で高価な水晶玉を購入すれば習得は出来ますな」
「でもそれだと、魔法を深く理解できないんだっけ?」
「間違いないですぞ。確かに、水晶玉での習得では魔法の威力や消費する魔力は元より、操作性など色々な所で劣りますぞ」

 俺も最初は楽して水晶玉で魔法を習得したのですぞ。
 ですが、最終的にお義父さんに魔法書から魔法を学ぶ方法を教わって、色々な利便性に気付かされたのです。
 世の中楽ばかりをすれば巡り巡って自分に返ってくる典型ですな。

「だけど、魔法を覚えるにはこの世界の文字を覚えて、魔法書を読み解かないといけない……」

 俺は黙って頷きましたぞ。
 難しい事ですが、やってできない事ではありません。
 実際、お義父さんや俺、そして勇者全員が覚えましたからな。

「Lvやスキル、武器の強化がここまでとんとん拍子に上がっているのに比べて、色々と面倒な手順が必要になるんだね」
「そこはしょうがありませんぞ」
「魔法を覚えるって凄くロマンがあるけど、一朝一夕じゃあ覚えられないかー……」
「少しずつ覚えて行けばいいのですぞ。未来のお義父さんは、思いのほか早く習得したようですし」
「どれくらい?」
「二つ目の波を乗り越えた頃には既に使えた様ですぞ」
「となると二か月半くらいか……先は長そうだね」

 などと呟きながらお義父さんが湯船に手を浸けて水鉄砲をし始めましたぞ。
 中々上手いですな。
 かなり高い所まで水が飛んでおります。

「わー! イワタニ! それどうやるの?」
「こうするんだよ。手で、お湯の逃げ道を小さく作って……口に含んで出すみたいに小さな穴を手で形作るんだ。後はお湯を手の平の方で圧縮して出すと……」
「手でー……」

 コウは不器用に水を出そうとして失敗しましたぞ。

「むずかしいー」
「すぐに出来るようになるよ。って魔法もこんな感じなのかな」
「文字が読めるようになって魔力の感覚さえ掴めれば出来るようになりますぞ」

 ええっと……確かリベレイションは龍脈法という、ドラゴンから加護が必要な系譜の魔法を習得しなくてはいけなかったのでしたな。
 この元康、お義父さんの命令でなければ覚えたくは無かった魔法系統ですな。
 ですが、嫌々でも覚えたお陰で色々と助かっているのも事実ですぞ。

「大分シルトヴェルトに近づいて来ているみたいだし、身の安全を確保出来たらゆっくりとLvを上げて魔法の勉強をして波に挑もうね」
「うん。コウ、がんばるー」
「はいですぞ」

 と、言う所で何かがこちらに高速で飛んできましたな。
 お義父さんを守ろうと飛び出そうと思ったのですが僅かに遅れました。
 バシャッと俺の動きに応じて湯船が大きく波打ちました。
 一緒に居て、静かに同伴していたシルトヴェルトの使者が湯船で転んでしまいました。

「お義父さん大丈夫ですかな?」
「ん?」

 ほぼ弾く事が出来たのですが、一つ、お義父さんに当たってしまいました。
 お義父さんがぶつかって跳ね返った何かを見ております。
 形状からして、棘……ですかな? 吹き矢にも見えますぞ。
 スタッと垣根を飛び越えて、怪しげな連中が現れました。

「毒で麻痺して動けまい! 盾の悪魔! 覚悟!」

 お義父さんがザバッと立ち上がって盾を前に出します。
 俺は無謀に突撃してきた愚か者を槍で突きます。
 コウはキング形態に変身して思い切り蹴りました。

「また出てきた?」

 どうやら先程の攻撃はこいつ等の攻撃みたいですな。
 ですが、お義父さんの反応からしてもしや……。

「お義父さん、強くなった実力を奴等に見せつけてやるのですぞ」
「え? もう大丈夫なのかな?」
「何を今更」
「隙ありー!」

 俺が黙って立っているのを好機と受け取った刺客がお義父さんに剣で切り掛ります。
 咄嗟にお義父さんが盾をかざしますが、経験の有無でしょうか……お義父さんの反応が僅かに遅れ、刺客が体を逸らして胴を切り裂こうとしました。
 ジュインと火花がお義父さんの体から散ります。

「えっと……」
「盾の悪魔! これでトドメだ!」

 刺客の振りかざした剣に向けてお義父さんが手をかざし、指の間に入れました。
 すると剣が肉を切り裂く前に指に挟まれ、ピタリと止まったのですぞ。

「な、何! くそ! 抜けない!」
「なんか意識したらすごく遅く見えて、声も遅く聞こえたよ。これが強化による差なの?」
「そうですぞ!」

 どうやら刺客はお義父さんに傷一つ負わせる事が出来なくなったご様子。
 何を隠そう、お義父さんは俺の知る武器の強化方法の全てをお試しになっているのです。
 生半可な刺客では傷一つ付ける事も既に不可能になっている様ですぞ。
 HAHAHA! 今までのお義父さんと一緒にされては困りますな。

「ば、化け物め!」
「お義父さんによる防御の試しは終わりましたぞ。その愚かさとお義父さん達の慈悲に感謝するのですぞ」

 俺は刺客の襟を槍にひっかけてブンブンと振り回して空高く投げ飛ばしてやりましたぞ。

「グワァアアアアアアアアアアアアア!」
「これに懲りたら愚かな事はしない事ですな! ハハハハハ!」
「こんな敵が出てくるなら……早めに出発した方が良さそうだね。エクレールさん! そっちは大丈夫?」

 などと話をしていると垣根をユキちゃんと共に剣を持ったエクレアが乗り越えてきましたぞ。

「物音が聞こえたが、何かあったのか?」
「うん。どうやらもう刺客がやって来ちゃったみたいで……」
「度々申し訳ありません。もう少しすれば我が国の護衛が三勇教徒共を駆逐出来ると思うのですが……」
「ふむ……まあ、シルトヴェルトの方も早急に対応はしてくれている。目を光らせている者が居ても、超えられてしまうのかもしれん」
「ですがおかしいですね。槍の勇者様の一件で、警備は厳重に……この宿も亜人の者達に警備を厚くして頂いているはずだったのですが」

 シルトヴェルトの使者が首を傾げています。
 ふむ、どうやら複雑な陰謀が隠されているご様子。
 安全な場所へと辿り着くまで、俺達に安息の地はないのかもしれませんな。

「とりあえず投げ飛ばしてやりましたぞ。風呂の外で転がっているので、縛り上げて白状させるのが良いと思いますぞ」
「そうか、何もなくて良かった」
「なんかLvが上がったのと強化が身を結んだのを実感できたよ」
「それは良い。刺客が倒す事が出来ないと諦めてくれるのなら、安心して旅を続けられるのでな」

 こうして俺達は温泉から出たのです。
 ちなみに翌日になってから判明したのですが、温泉に敵が来る事が出来たのは……敵が三勇教だけでは無かったからですぞ。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ