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盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

外伝 槍の勇者のやり直し

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服作り

「まあこれだけ急成長をするのなら頷ける。一瞬で燃え尽きる命なのか……」
「三日でこれだもんね……そうなんだ……」

 お義父さんとエクレアがユキ達を眺めながら悲しい表情を浮かべております。

「違いますぞ!」

 お義父さんが何やら誤解しているご様子。
 死ぬとは物騒な誤解ですな。
 エクレアも失礼な納得をするとは!
 この元康、説明が不十分でしたぞ。

「天使とは文字通りフィロリアル様が天使になるのです。その為に機材を確保するのですぞ」
「ああ、そうなんだ。ビックリしたよ。機材?」
「魔力を服にする機材ですぞ」
「ああ、聞いたことがあるな。シルトヴェルトやシルドフリーデンで変身能力を所持した亜人用に存在する物だろ?」

 エクレアが理解しているご様子。

「この辺りの町で売っていたら良いのだが……」
「それを近隣の町で探すのですぞ」

 最初の世界では魔物商に相談したら機材に関して説明して下さり、発注して下さったのです。
 ですがこのループではそれも叶わないでしょうな。
 なので近隣の町へ行ってそのような機材があるか見繕う必要があります。

「私共がその品々の確保に協力いたしましょうか?」
「出来るのですかな?」

 よく考えてみればシルトヴェルトは亜人の国でしたな。
 という事は変身能力を持った亜人の数も多いでしょう。
 独自のコネクションも豊富でしょうからあり得なくはないですな。
 もしかしたらメルロマルクよりも遥かに高度で素晴らしい、フィロリアル様の魅力を極限まで引き立たせる衣類を作ってもらえるかもしれません。
 心が躍りますな。

「ついでに、本国と連絡を取ってみます」
「うむ……いい加減、追手をどうにかしなければならないが、倒しても倒しても出現する。シルトヴェルト軍がイワタニ殿を保護すれば危険も減るだろう」

 エクレアの言葉は尤もですな。

「その心配も、今日を乗り越えられればある程度解決すると思っておりますぞ。何せお義父さんのLvを上げられれば安易にお義父さんを傷つける事が出来なくなるのですから」
「う、うん。頑張るよ」
「ユキちゃん。サクラちゃん。二人ともお義父さんをお守りするのですぞ」
「「グア!」」

 元気に翼を上げてユキちゃんとサクラちゃんは答えますぞ。
 かわいらしさと頼もしさを合わせ持つ、素晴らしいお姿です。

「では始めますぞ!」

 俺の掛け声にユキちゃんとサクラちゃんは元気よく鳴いて走り出しました。

「わ! 早い早い!」
「落ちる落ちる! もう少しスピードを――」
「ブヒ――」

 お義父さん達を乗せて走り去るその姿、なんとも神々しい限りですな。
 俺はシルトヴェルトの使者と共に仮設の馬車に乗り込みましたぞ。

「では手近な町へ出発ですぞー」
「グアアアアア!」

 手綱を握り締めるとコウが元気よく走り出しました。
 ダッダッダと風を切るこの感覚、何物にも代えがたい快感ですなぁ。


 シルトヴェルトの使者と共に手近な町へ行きましたぞ。
 もうこの国の首都が近づいているご様子。
 地図上ではメルロマルクとシルトヴェルトの間にある小国なようですな。
 残念ながら龍刻の砂時計は無いとの話ですぞ。

「槍の勇者様はこの国に関してご存知ですか?」
「知りませんな」

 というのも俺はメルロマルクとフォーブレイ、他ゼルトブル位しか知りません。
 途中何箇所か移動中に寄った事はありますが、残念ながらこの辺りは行った事はないのです。
 ゲームだった頃を思い出せば何かの足しになるかもしれませんが、お義父さんとの話でゲーム知識の信憑性も怪しい為、自分の目で確かめるのが最善でしょう。

「そうですか……この国は歴史も浅く、小さな国故に国力はありません。亜人と人間とでよく争いがある立地故……戦争時は我が国や宿敵メルロマルクとで支配権の奪い合いが起こる国なのです」

 なるほど、あんまり裕福ではなさそうですな。
 そういえば、食料問題とかはどうなっているのでしょうか?
 見た感じ寂れた印象を受けます。

「名産とかはあるのですかな?」

 食べ物ならユキちゃん達にお土産を持っていく事を考えますぞ。

「余り聞いた試しは無いですね。交易で発展した国故に……他国の品を買うのに適した国です」
「ふむ……」

 アレですな。
 メルロマルクの住人がシルトヴェルトでしか採れない品々をこの国を介して購入するとかですかな?
 となると完全にゼルトブルの下位互換ですな。
 ゲームだった頃の記憶を紐解くと……この辺りに町なんて有ったでしょうか?

 思い出しましたぞ。
 確か、地方のローカル……というか中継地点の町でしたな。
 イベントが無い訳ではないのですがインスタントダンジョンが目玉程度でしたぞ。
 しかし、この世界はゲームでは無いのですからダンジョンに行く必要などないですな。
 珍しいアイテムや装備品目当てに潜るのも手ですが……現状お義父さん達の装備品は問題ないと思いますぞ。

「ここで魔力を服にする機材はあるのですかな?」
「一応我が国の支店で尋ねてみる予定です」
「わかりましたぞ」

 そうして俺は使者と共に支店へと向かいました。
 幸いにして機材の方は見つかりました。

「後は糸を生地にしてもらうのですが、これは業者に頼む必要がありますね」
「そうですな。この街で出来ますかな?」
「はい。お金さえ払えば素早く生地にしてくださる店があるそうです」

 これさえあれば、全て片付きますぞ。

「ではソーイングセットを調達するのですぞ。出来あがった生地は私が服に仕立て上げますぞ」
「……槍の勇者様が服を作るのですか?」
「何かおかしい事を言いましたかな?」

 フィロリアル様達の服を誰が縫ったのか、この使者は知らない様ですな。
 この元康、服作りは得意ですぞ。
 過去にファッション雑誌を見て鍛えたこの眼力と手芸能力、この部分だけはお義父さんに負けないと自負がありますぞ。

 何を隠そう、フィロリアル様達の服はこの元康が手縫いしたのですからな。
 後、フィーロたんの等身大人形とかもこの元康が作ったのですぞ。
 我ながら素晴らしい出来に毎日添い寝をする程の完成度でした。

「い、いえ……」

 とにかく、これでフィロリアル様の服を調達する準備は整いましたぞ。
 破れても良い様に大きめのマントを購入しておきますかな。

「グ……クエ!」

 コウがフィロリアルキング形態に完全に変化したようですな。
 なんとも可愛らしい姿をしておられます。
 シルトヴェルトの使者がコウを見て首を傾げていますな。

「これは……伝承に存在する……フィロリアルの王……神鳥のような?」
「そうですぞ!」
「わ!」

 使者が驚いて後ろ向きに転びました。
 何をそんなに驚いているのですかな?

「フィロリアル様は、神鳥なのですぞ!」
「あ、はい。そうですね」
「クエエエ……」

 コウの喉元を撫でつつ、これからの事を考えますぞ。
 必要な物は既に調達しました。
 後はお義父さん達の帰還を待つだけなのですが、他にする事は無いですかな?
 等と話しているとシルトヴェルトの使者が支店からの情報で眉を寄せています。

「どうしたのですかな?」
「いえ……メルロマルクの方で不穏な動きを見せ始めているとの話でして」
「既に何度も刺客が来ていると思うのですぞ」
「表向きは無関係を装っていたのですが……どうも国境を、盾の勇者様が破壊して行ったと言うのを名目に遺憾の意をシルトヴェルトに送ったそうなのです」

 なんと、己が敵意ある攻撃をした癖に返り討ちに合うと、因縁を付けてくるとは。
 何処までも下劣な様ですな。
 お義父さん達が止めなければこの元康がポータルで突撃してクズ共を殺している所ですぞ。

「我が国の首脳陣は波に備えた世界会議に出て、メルロマルクの雌狐と、事実確認をしている状況……」
「メルロマルクを攻め滅ぼしますかな?」
「あの雌狐と英知の賢王を出し抜くのは相当難しいと思われます。安易な侵攻は同盟は元より、世界中を敵に回しかねないのです」

 クズの権威がまだあるようですな。
 確か、過去に知略でシルトヴェルトを翻弄した……というのを赤豚が自慢していたような覚えがありますな。
 お義父さんに無理やり土下座させられてクズの名を授かったと聞いておりますぞ。
 是非その場に立ち会いたかったですな。

「はははは、何も心配する必要はないと思いますぞ。この元康がお義父さんの敵を全て屠って見せましょう」
「槍の勇者様の強さは私共が見ているので否定は致しません。ですが我が国の首脳部は見ていないので、一歩踏み出せる状況では無いのです。いまひとつ辛抱お願い致します」

 何やら面倒な手続きが必要なようですな。

「それに……波が起こって国が大変なのも事実……伝承通り、我等は波に盾の勇者様と共に挑まねばならないのです」
「そうですな。戦争よりも重要な問題ですな」
「全ては盾の勇者様を送り届ける事を優先致しましょう。国の首脳陣がその先を判断いたします」

 使者は拳を握りしめて答えましたぞ。

「私には戦争を決定する権利などありませんので……メルロマルクの雌狐の表面上の政策は元より、セーアエットが残した恩威があります。シルトヴェルトは寛大に、盾の勇者様を迎え入れるのみ」

 と、使者は何やら祈りをささげておりますな。
 お義父さんの事を考えているのでしょう。
 ならばこの者は信頼に値するでしょうな。
 奴隷でありますし、ウソは言っていないようなので。

「後はどうしますかな?」
「こちらの用事も終わりました。ですが……」

 チラッと使者は建物の影に視線を向けますぞ。
 その先に、人影が隠れたような気がしましたな。

「追いかけて処分しますかな?」
「メルロマルクの刺客と確定した事では無いので、泳がせましょう。こちらも協力者が少しずつ集まっている状態です」
「わかりましたぞ。では別れた場所に戻りましょうぞ」

 こうして、俺はお義父さんが帰還するのを待つ事になったのですぞ。
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