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盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

外伝 槍の勇者のやり直し

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フィロリアル生産者

 国境を突破してから二日。
 刺客の出現頻度がガクンと下がりましたぞ。
 やはりメルロマルク国外での活動は難しかったようですな。
 お義父さんの命を狙う輩も他国では簡単に行動できないのでしょう。
 なんせお義父さんは盾の勇者ですからな。
 馬車の窓からお義父さんが俺達に尋ねてきます。

「シルトヴェルトまで馬車でどれくらい掛るの?」
「普通に馬だと三週間は掛る」
「かなり遠いねー……」
「フィロリアル様なら二週間で行けるそうですぞ」
「フィロリアルと馬の速度にそこまで差があったか? それなら飛竜の方が早いのではないか?」

 エクレアがとんでも無い事を言い放ってますぞ。
 ドラゴンはフィロリアル様の天敵、つまり俺の天敵。
 そんな天敵に乗ることなど我慢できませんぞ。
 虫唾が走ります。
 そんな事をする位なら地べたを這う方がマシですな。

 そういえば長らくフィロリアル様を見ていません。
 いえ、通り過ぎるフィロリアル様は見かけるのですが、触れたり嗅いだりしていないのです。
 ああ……フィロリアル様の香りを嗅ぎたくて嗅ぎたくてしょうがないですぞ。
 ポケットから地面に落ちていたフィロリアル様の抜け羽を取り出して自分の鼻元に近づけます。
 フィロリアル様の残り香が……。

「フィロリアル様が恋しいですぞ」
「も……元康くんは本当にフィロリアルが、す、好きなんだね」

 なんて話をしながら街道を進んでいると牧場が見えてきましたぞ。
 あ! フィロリアル様を扱っている牧場の様です!
 俺は柵に身を乗り出して凝視しますぞ。

「グアグア!」

 遠くでフィロリアル様達が呑気にくつろいでおります。

「はぁ……」
「……キタムラ殿はそんなにもフィロリアルが好きなのだな」
「何処かでフィロリアル様が販売されていないですかな?」

 いい加減、我慢も限界に近付いておりますぞ。
 フィロリアル様!
 フィロリアル様のかほりを嗅ぎたくて体がウズウズしております。

「ふむ、そんなに欲するのなら金銭に多少の余裕はあるのだ。購入するのも良いのではないか?」
「本当ですかな!?」
「あ、ああ……」

 エクレアが良い事を言ってくれましたぞ。
 シルトヴェルトの使者も何やら困ったような表情を浮かべながら頷いております。

「それも良いのだけど、こう……ずっと馬車の旅だから少し疲れたよ。なんだかんだでずっと馬車の中で休んでるだけだから」
「ここまでくれば追手もそこまで警戒する必要も無いかもしれません。補給や盾の勇者様の休息も兼ねて近くの町で休まれるのはどうでしょう?」
「刺客が来る危険性などは、大丈夫なのですかな?」

 俺の質問にシルトヴェルトの使者は頷きましたぞ。
 警戒を疎かにするのは危険ですが、身体を壊しては元も子もありません。
 それにお義父さんはまだ1Lvです。
 健康面や能力的にも一度上げておいた方が良いかもしれません。

「我が国の協力者が支店を持っている所があります。そこならまず安全かと……」
「わかりましたぞ。では、この元康、フィロリアル牧場でフィロリアル様の卵を譲って貰えるように交渉してきますぞ」
「既に育ったのでも良いんじゃないの?」
「卵から育てるのが良いのですぞ」
「そうなの? まあ、少しなら時間が作れるから元康くんなら育てられるのかな?」
「もちろんですぞ! 立派なフィロリアル様にしてみせます。では買ってきますぞ」

 お義父さん達に待って貰い、俺は牧場の管理小屋に一人で近づいて行くのですぞ。
 コンコンと牧場の管理小屋の扉を叩きますぞ。
 ……。
 返事がありませんな。留守なのですかな?

「キタムラ殿ー」

 エクレアの声に俺は振りかえりますぞ。
 するとエクレアはフィロリアル牧場の舎の方を指差しましたぞ。
 小屋は留守なのですから、そちらを伺うのは道理ですな。

「グアグア」

 声に引き寄せられるように俺はフィロリアル舎を覗きこみますぞ。
 するとそこにはガタイの良い農夫のような男性がフィロリアル様に藁を与えている所でしたぞ。
 ここの牧場主でしょうな。

「誰だ?」
「客ですぞ」
「尋ねられて客と答えるって……まあいい。で? その客が何の用だ?」
「フィロリアル様が孵化する卵を譲って欲しいですぞ」
「お前……ここが何の牧場か知ってて言っているのか?」

 何やら農夫が尋ねてきますぞ。
 うーむ……まったく心当たりがありませんな。

「知りませんな。私はただ、フィロリアル様が欲しいだけですぞ」

 もう辛抱たまらないのですぞ。
 俺はお義父さんから譲ってもらった肉を片手にフィロリアル様に近づきます。

「やめろ、体重を管理してんだ。余計な餌を与えるな」
「むう……」

 ではどうやってフィロリアル様のお近づきになればよろしいと言うのか。
 フィロリアル様は好奇心に満ちた瞳を俺に向けて下さります。
 ここから親しくなるには色々と手段がありますが、第一印象が大事なのです。

「とにかく、フィロリアル様の卵が欲しいのですぞ」
「だから言ってんだろうが、ここのフィロリアルを分けてやる事は出来ねえって、どうしても欲しいなら他の所で産まれた卵を売ってやる」
「拘りは無いのですぞ。売ってくれるなら早く売ってほしいですぞ?」
「なんでそこまでしてフィロリアルが欲しいんだ?」

 なんで?
 特に理由などありません。
 フィロリアル様が存在しているから、私は育てるのですぞ。
 そこに脳神経が関わる隙間などありません。
 あえて言うなら、それが世界のルールなのですぞ。

「掛け替えの無い大切な存在だからですぞ。あなたは息をする事に理由を求めますかな?」
「訳のわからん事を……そこまで欲する癖にこだわりが無いのか?」
「フィロリアル様は等しく愛する存在ですぞ。そう……我が子のように、早い子も遅い子も、強い子も弱い子も、賢い子もおバカな子も等しく……」

 農夫がピッチフォークを肩に宛てて、呆れておりますぞ?
 なにか呆れる要素がありましたかな?

「何がおかしいのですぞ?」
「……本当にフィロリアルが好きなのか?」
「当たり前ですぞ」
「じゃあこのフィロリアルの品種――」
「フィリテルト種ですな? いや、フィロブレッド種との混血ですな。それよりも前となるとフィサウザン種……おそらく父系にはフィダーメオの血が混じっていると思いますぞ」

 この舎にいるフィロリアル様達はどれも早く走る事を視野に入れた……ゼルトブルのフィロリアルレースで良く見る種が集まっている様ですぞ。
 この牧場はどうやらサラブレッドを繁殖させる牧場なのでしょう。
 先程の体重管理なども、それが理由でしょう。

「早くはありますが、脚に不安を抱えている様ですな。体重管理よりもまずは栄養面をしっかりさせて怪我をさせないようにさせるべきだと思いますな」

 購入する場合、金銭的には高めですな。

「せ、正解だ。一目で血統まで当てるとは中々やるじゃねえか……」
「愛の前では当然ですぞ」

 フィロリアル様の瞳から感じる農夫への信頼を見て俺も納得しますぞ。
 徐にフィロリアル様が喜ぶポイントである喉に手を当てます。

「グアア……」
「ほう……お前、初対面だが悪い奴じゃないみたいだな」

 農夫がニヤリと笑みを向けました。
 フィロリアル様へ熱意のある方に悪人はおりませぬ。
 俺も同様に微笑みを浮かべました。

 ああ、フィロリアル様……。
 ちなみにフィロリアル様は先天的な血統と後天的な成長で姿が大きく変わる種でもあるのですぞ。
 クーやマリン、みどりの血統はそれぞれ戦闘に適した種がベースではありますが、成長した事によって得意な事が違ったのは後天的な事に関係するのですぞ。

 クーやマリンはその種独自の攻撃方法……炎を吐く事や魔法が得意と言う特徴を持っておりましたが、本来は毒と腐敗が得意なみどりは環境によって近接が得意となっていたのですぞ。
 それに合わせてフィロリアルキング形態だと身長も高くなりましたぞ。
 本人は嫌がっておりましたが、種の平均よりも大きいのですぞ。

 フィーロたんは平均的なフィロアリア種とお義父さんがおっしゃっていました。
 ですが、普通のフィロアリア種ではありえない要素があります。
 それが遺伝に寄る物なのか、環境に寄る物なのかは俺でもわかりかねます。
 育て方一つで、様々な可能性を兼ね備える。
 それがフィロリアル様の面白い特徴なのですぞ。

「安くても、高くても、私は等しくフィロリアル様を大事にする……ただ、それだけなのですぞ」
「なんだかわからねえが、お前の熱意はわかった。名前も知らねえが特別に良い奴を一つ譲ってやるよ」
「一つだけでは無く、安くても良いから他に卵を売っている所を教えてほしいですぞ」
「何匹育てる気だ!」
「私が抱え切れる全てのフィロリアル様を育てたいのですぞ!」

 農夫が何やら頭を抱えております。

「なんだか知らねえが、安くても良いんだな?」
「人が決めた価値で私は評価致しませんぞ」
「言動はよくわからねえが、お前の熱意はわかった。面白い奴だな。金はどれだけある」

 俺は所持金を農夫に見せます。
 今回はクズ共からもらっていないのでそんなにお金はありません。
 ですが途中何度も倒したメルロマルクの兵士や刺客から巻き上げた金があります。
 これで何個か卵を買えるはずですな。

「これで買えるフィロリアル様の卵を見繕って欲しいのですぞ」
「そうだな……」

 農夫は金袋を確認し、何度か頷きます。

「特別に良いのを一つ、他はおまけして二つ譲ってやる。それで良いか?」
「了解しましたぞ!」

 こうして農夫に案内されてフィロリアル様の卵が保管されている近隣のフィロリアルの卵を集めた倉庫に案内されましたぞ。
 で、農夫はとっておきとばかりの一個を奥から、おまけの二個を手前の方から持って来ましたぞ。

「孵化器と込みで売ってやる。大事にしろよ。他の安物は魔物商に流す予定のモノだ。近隣の卵の販売も俺は請け負っているから、最初に俺の所に来たのが幸運だったな」
「感謝するのですぞ!」
「暇があったら見せに来い」
「了解ですぞ! 伝説のフィロリアル様に育ったこの子達を見せに来ますぞ!」

 こうして俺は農夫からフィロリアル様の卵を三個購入したのですぞ。
 よし、ここは気に入りました。
 ポータルを記憶しておきましょう。

 尚、後で知るのですが、この牧場の農夫はこの辺りのフィロリアル牧場の大地主だったそうですぞ。
 色々な所にフィロリアルを出荷する、まさしくフィロリアル生産者の鏡ですな!
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