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盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

外伝 槍の勇者のやり直し

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老害

 牢獄を出た俺達は城の庭の奥から庭に出ましたぞ。

「ここまで来ればわかりますぞ!」
「曲者だ!」

 そこで城の兵士達が騒ぎ始めました。

「お前は! エクレール! 槍の偽者と共に国を裏切ったな!」

 手加減するのも面倒ですな。
 城を破壊しないようにスキルを放つとしましょう。

「流星槍!」
「グア――」

 俺の流星槍を受け、駆けつけた兵士は消し炭と化しました。
 お義父さんの敵は俺の敵。
 敵に容赦はしませんぞ!

「な……」

 エクレアが絶句してこちらを見つめています。

「どうしたのですかな? 振りかかる火の粉は払わねば守る者も守れませんぞ?」
「……わかった。だが、出来る限り殺さないでやってほしい」
「しょうがありませんな。ブリューナク!」

 手加減したブリューナクで駆けつけた兵士を俺は薙ぎ払います。

「ささ、早くお義父さんの元へ駆けつけねばなりませんよ!」

 俺は駆け足で城内に入ります。
 お義父さんは、何処ですかな!
 その足で俺はお義父さんが宿泊しているはずの部屋へと向かいました。
 道中、何度も兵士共と遭遇しては倒して行きます。

「元康! やめろ!」
「元康さん! 何を暴れているのですか!?」
「ああ、錬くんに樹くんじゃないですか。お義父さんは何処ですかな?」

 騒ぎを聞きつけて錬と樹がやって来ましたぞ。
 親しげに話しかけましたが、まるで狂人でも見る様な顔でこちらを見ています。
 そして俺に切りかかってくる兵士を槍で軽く薙ぎ払って倒すと錬と樹はごくりと息を飲みました。

「強い……一体何Lvなんだ?」
「どうやってそんな強さを……Lv1のはずですよね?」
「未来からやってきたと言ったではありませんか。私のLvは上がったままです」
「なんだって!? そ、それじゃあ……」
「あれが剣の勇者殿と弓の勇者殿か? それで盾の勇者殿は何処だ?」

 エクレアが対峙する俺と錬達を見ながら尋ねます。
 確かにお義父さんがおりません。
 一体どこへ行かれたのでしょうか。

「元康、なんで暴れているんだ?」
「罠に掛けて私とお義父さんを離ればなれにさせたから、その報復ですぞ」
「罠!?」
「はい。罠によって地下に落とされましたが抜け出してきたのですぞ」
「地下……本当に……?」

 などと話をしていると、そこへクズがやって来ましたぞ。

「何を騒いでおる!」
「王様!」
「元康さんが罠に掛けられたと言っているのですが、本当なのですか?」
「事と次第によっては殺しますぞ? クズ」
「クズ!?」

 錬が俺の言葉に絶句してますぞ。

「お前、強いからって調子に乗りすぎじゃないか?」
「知りませぬな。それよりも早く答えないと私の堪忍袋の緒も限界に近付いてますぞ?」

 バチバチと高出力でブリューナクを放つ準備を整えます。
 元々は七星勇者といえど、この強化された元康の攻撃を受ければ唯では済まないでしょう。
 前回も今回もやらかしてくれたので、風穴の一つ位開けても良いでしょうな。

「ど、どうやら槍の勇者殿は誤解しているようじゃ」

 クズが慌てたように呟いた。

「誤解? そんな言い訳が通るとでも思っているのですかな?」
「さ、先程急遽、シルトヴェルトの使者がやってきて盾の勇者殿を受け取りに来た。そして城の兵士に変装した一部の亜人がどうやら政治的な理由で槍の勇者殿を我が城の罠を使って消すつもりだった様だ」

 そこに一人の亜人の兵士が連れてこられた。
 いや……既に死んでいますな。

「この者が槍の勇者殿を嵌め、剣、弓の勇者殿を殺そうとしたようじゃ……捕まえようとしたら自害しおった」
「そんな……」
「尚文さんの見送りに元康さんを探したらいなくなっていたから探していたんですよ」

 ……余りにも怪しい出来事ですが、辻褄はあっている様に感じなくもありませんな。
 それでも怪しい事は限りないですが。
 何より俺が信じているのはフィーロたんとお義父さんだ。
 お義父さんをハメようとしている者の言葉など到底信じる事などできません。

「それを信じろと言うのですかな?」

 ブリューナクの出力を最高にまで上げて放つ準備を致します。
 情報を整理すると、お義父さんは既に馬車でシルトヴェルトへ向けて出発したという事になります。
 そしてすれ違いに俺はシルトヴェルトから来た使者が変装した兵士に罠に掛けられて殺されかけた。
 おかしな所から出てきた俺に兵士共は慌てふためいて襲い掛かってきたと……。

「王よ、さすがに説得力が無いかと思います!」

 エクレアが一歩踏み出して宣言します。

「む!? 囚人であるセーアエットの娘が何故ここにいる! 脱走したのか!?」
「キタムラ殿が、真偽を確かめたいと頼んだ私の願いを聞き届けてくれたのです! 王よ、今からでも遅くは無い。盾の勇者殿を罠に掛けるのをやめてほしい。このような蛮行、けして女王が許さない!」
「つ、妻の考えはワシの考えじゃ! 今すぐ牢に戻るのだ重罪人よ! ワシと話をするだけでも温情だというのにその態度はなんだ!」

 エクレアはガックリと肩を落としたかと思うと力強くクズを睨みつける。
 そんなクズ、捨て置けば良い物を。
 端から信じるに足らない老害なのですからな。

「王の考えは理解した。私は今から槍の勇者であるキタムラ殿と同行して盾の勇者殿を追い掛ける」
「待て! ワシに逆らうと言うのか!」
「罰を受けるのは……女王の口から聞くまで保留させていただく。それまでの間、私は私の信念に従って動くまで!」

 キンと音を立ててエクレアは剣に魔力を込めているようですぞ。

「では話はこれまでですな。この世から消える最後の台詞をどうぞ、ですぞ」
「な、なんじゃと!? 槍の勇者がワシを殺すというのか!」

 ブリューナクをクズに向ける。
 話を聞くとは言ったが殺さないとは言っていない。
 お義父さんから学んだ会話術ですぞ。

「キタムラ殿、どうかそれは保留にして頂きたい。キタムラ殿は盾の勇者殿の味方と認識されている。あの王を倒したとして、今この状況では盾の勇者殿の立場も危うくさせてしまう」
「ここで消したとしても変わりますまい。悪の芽は小さな内に刈り取るべきですぞ」

 所詮は老害。
 ここで消しても大局に問題はありますまい。

 俺の殺気を理解して錬と樹が守るように立ちはだかりますぞ。
 これでは間違って二人を殺してしまうかもしれません。
 それではループしてしまいますぞ。

 面倒になってきましたな。
 やりやすいように最初からやり直すべきでしょうかね?
 次の周回があるとしたら、今回の反省を踏まえて波風が起こらないようにある程度は我慢すべきかもしれませんな。

「錬くん、樹くん。よく覚えておくのですぞ。この国を信じても痛い目を見るだけ。特に赤豚には気を付けるのですぞ」

 とはいえ、俺は最後までお義父さんを救うのを諦めませんぞ。
 まだミスはリカバリー出来るはず。
 一刻も早くお義父さんを追い掛けねばなりません。
 俺はブリューナクの発動を見送り、槍を降ろします。

「では行きますぞ、エクレア!」
「違う! 私はエクレールだ!」
「待て!」
「追うな! 今追ったらここにいる者全てが殺される!」

 クズが追い掛けようとした兵士や錬達を呼びとめましたぞ。
 こうして俺は、お義父さんを追い掛けて城を出るのでした。


 夜の城下町は賑わいを見せています。
 お義父さんは何処へ向かったでしょうか……厄介極まりますな。
 城下町の裏道か、それともそれを抜けた平原か……何処までお義父さんを乗せた馬車が向かったのかわかりません。

 俺の想像ですが間違いなく自称シルトヴェルトの使者はメルロマルクの兵士でしょう。
 何も知らないお義父さんを騙して何処かへ連れ去った。
 城門は閉まるはずですが例外で開かれた可能性を捨てきれません。

「キタムラ殿! 有力な情報を掴んだぞ!」
「なんですかな?」
「少し前に門が開かれて馬車が出たらしい」
「なるほど、その馬車にお義父さんが乗っている可能性は高いですな」

 俺は急いで門の方へ走り出します。
 何の馬車であるかはわかりかねますが、人の足で追いつくのは至難のワザ……どうするべきですかな。

「先程から何故、キタムラ殿は盾の勇者殿をお義父さんと呼ぶのだ?」
「お義父さんはフィーロたんのお義父さんだからですぞ」
「それはキタムラ殿の想い人なのか?」
「そうですぞ。フィーロたんは舞い降りた天使! 私の心を癒す至上の存在なのですぞ」
「う、うむ……盾の勇者殿は相当のご高齢なのか」
「20歳ですぞ」
「キタムラ殿の想い人は一体何者なんだ!」

 エクレアが騒がしいですな。
 しかし……城下町を抜けたとなると……。

「ポータルスピア!」

 俺はポータルスキルを使って何処へ飛べるか確認しますぞ。
 どうやら巻き戻る前にセーブした場所を記録している様子。これは収穫ですぞ。
 城下町近くの村を指定する……前にエクレアに声を掛けました。

「エクレア、パーティーを」
「だから私はエクレアではなくエクレールだ!」
「そんな事はどうでもいいのですぞ」
「どうでもよくは……いや、わかった。パーティーだな」

 エクレアが編成を了承するのを確認してから俺はポータルで近くの村に飛びました。

「な!? キタムラ殿と出会ってから驚きの連続だ」
「それよりも夜間に移動する馬車を探さねばなりませぬぞ!」

 俺達は近くの村で馬車が来ていないか確認しました。
 しかし、現在立ち寄った所ではそのような情報は無い様子……。

「何処へ連れ去られたのだ!」

 エクレアが苛立ちを壁にぶつける。

「門の方へ向かいますぞ」
「何かあるのか?」
「目新しい馬車の後を追いかけるのですぞ」
「そうか!」

 城門へと続く道を確認しましたぞ。
 方向が……シルトヴェルトである北東とは逆の南西に車輪の跡が続いております。
 そして馬の蹄のあと……土の具合からして数十分以内に付けられたものでしょうか?
 城下町を通る時のタイムロスを換算して……。

「く……乗り物を用意してくればよかった!」
「エクレア、私が先行するので後から追い掛けてくるのですぞ」
「!? わかった。任せたぞキタムラ殿!」

 俺は街道を全速力で走り始めました。
 フィロリアル様達と鍛えたこの足! そしてLvとステータスによる速度で追いつけるか……。
 一か八かですぞぉおおお!
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