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盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

盾の勇者の成り上がり

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番外編 盾の勇者のホワイトデー【2】

「サディナか、今日はなんの用だ?」
「あら、忘れたの? 今日は白い日よ」

 今日はホワイトデー。
 バレンタインの時と同じなら大歓迎なんだが、コイツは行動が読めない。
 みんながいる所で突然のしかかって来そうで怖い。

「ナオフミちゃん、お姉さんのは夜まで待てばいいのね?」

 と、奴は俺の下半身を凝視している。
 何処まで徹底してんだ。
 これは何か餌をやらないとガチで襲ってくる気がする。
 最近の奴は押してダメなら引いてみろ、引いてダメなら強行突破というような匂いを醸し出している。
 こちらもその戦略を対策して、行動しなければならない。

「お前のはこれだ」

 こんな事もあろうかと記憶を頼りにウイスキーボンボンを作っておいた。
 ウィスキーは無いので、別の酒で代用している。
 使った酒はかなりきつい……らしいのを使っている。
 クリスマスの時にサディナに飲ませた奴をもう少し改良した物だ。

「あら? これはなーに?」
「俺の世界にある酒を使ったお菓子だよ」
「あらーじゃあお姉さんにだけのプレゼントなのね」
「お前以外が服用したら一発で酔ってダウンする事になると思うぞ?」

 一応、俺の次に酒に強いと言われているのがサディナだ。
 俺の場合は体質的に酔わないだけなので、強いかというと別じゃないかと思うんだけどな。
 ポイっとサディナはウィスキーボンボンを一つ口に入れて頬張る。

「あらー……けっこーきついお酒ねー。お姉さん癖になりそう」
「朝から酒ってのもどうかと思うがな……」

 出した俺も俺だが、問題ないだろ。
 仕事はある程度やっていただろうし、休日扱いで休ませるのも良い。
 そのまま翌朝まで寝ているなら万々歳だ。

「ま、今回はこれで我慢してあげるわーでも次こそお姉さんはナオフミちゃんと淫らな関係を望むわよ」
「はいはい」

 最近はサディナのセクハラ攻撃もある程度対処できるようになってきた。
 ……時々、ホント時々、本気で攻めてくる時があるけどさ。
 くっ……腐のバレンタインの所為で新たなトラウマが……。

「ナオフミ様……落ち着いてください」
「ハッ!」
「またあの日のことを思い出しているのでしょう? 気にせずいきましょうよ」
「……そうだな」

 下ネタを出来る限り回避しなきゃならん。
 事前に対処できるならまだ良い。
 突発的なセクハラ発言はあの日を思い出して震えそうになる。
 誰かに服を強引に脱がされたらパニックになるだろうな……。

 俺は正常だ!
 俺の腹から子供なんて出てこない!
 …………はぁ。

「お前等全部食うなよ。帰って来たフィーロとか、フィロリアル共にもやるんだからな」
「「「はーい」」」

 現在、フィロリアルの一部がゼルトブルでレースに出る事になっている。
 そこに特別枠として俺と元康が手塩にかけて育てた新たなフィロリアルを出すとか……そんな催しが行われる事になってしまっていた。

 企画を出したのはゼルトブルの商人ギルド。
 騒ぎを起こした所為で俺は首を横に振れず、面倒な仕事をする羽目になった。
 ちょうど村で預けられたフィロリアルと村のフィロリアルとの間に卵が出来たとかで、元康が孵化させる所だったそうだ。

 俺のは……とあるフィロリアルが提出してもらったその中でも変種だな。
 両方ともフィーロが監修して配下扱い。
 どっちが有能なのかを競うらしい。

「……くしゅん!」

 食堂の外で俺が育てたフィロリアルが大人しく待っている。
 くしゃみをしているアレだ。
 色は茶色のフィロリアル。
 このフィロリアルにはいろんな秘密があるんだけど……な。

 元康の方はスラッとした体型で、足が大きめのフィロリアルだった。
 両者ともラトと谷子のチェックを受けて、健康上は問題が無いと報告を受けた。
 俺も元康も、受け持ったフィロリアルには微妙な心境があるんだけど……そこを気にしちゃ始まらない。

 この二匹……正確には元康が育てたフィロリアルが俺の育てたフィロリアルをライバル視している。
 逆に俺の育てた奴はヌボーっとしてて、いつも眠そうにしている。
 で、飯を食うのが大好きだ。

 餌を盛り付けた皿をバグバグと音を立てて食う。
 しかも皿がピカピカになるまで舐め回す。
 フィーロより食いしん坊かもしれない。
 俺が育てるとフィーロと同じく食いしん坊になるのは……何故なんだろうな?

「クえー……」

 あ、寝てる。
 それを元康が育てたフィロリアルがあざ笑っている。
 昔の元康に似ていて少しイラっとする。
 なんとも……。

「クエ!」

 バシッとヒヨちゃんが寝てるフィロリアルを突いて起こす。

「クエ! クエクエ!」

 だが、そんな様子はどこ吹く風、ヒヨちゃんの叱りを完全に無視して船を漕ぎ始める。

「今日は走れそうか?」
「クエ……」

 俺が近づいて声を掛けるとヒヨちゃんは申し訳なさそうに鳴いて、変種を揺する。
 すると眠気眼で変種は声を出した。

「クえー……」

 情けない声だ。
 フィロリアルの中でも特筆して締まりの無い顔をしている。
 一応かなり調整はしたが、コイツで本当に大丈夫なんだろうか。

「おーい」
「く……クえ!」

 俺の声に変種が目をぱっちり開けて元気よく挨拶する。
 そうそう、この変種のフィロリアル、普段眠そうにしてるから確認し辛いが、目が凄く綺麗なんだよな。
 ガッツポーズをとってやる気を見せている。

 ちなみに起きなかったら、今朝作ったホワイトチョコを鼻先に吊るせば起きると思う。
 どんなに深く眠っていても一発で起きる。
 それ位食うのが好きだ。

 そういう意味ではフィーロとはかなり違うな。
 フィーロは眠いと食わない。
 良くも悪くも子供って感じだ。

「がんばれ」
「クえー!」

 ちなみにこの二匹、足の速さは俺の村のフィロリアル内じゃトップクラスだ。
 元康の方はゼルトブルでも有名な品種を取り入れている種らしい。
 それをうちのと混ぜてフィロリアルクイーン化している訳だから、早くもなるか。
 ま、フィーロにはさすがに敵わないけどさ。
 だが、実際のレースでどうなるか楽しみな感じに出来あがった。

「ほら、ボロが出ないように走るんだぞ?」
「クえー」

 この変種のフィロリアル。
 お菓子が好物で、俺が用意したお菓子を食べてスタッと立ち上がる。
 うん、やはりフィーロよりも食いしん坊……村一番だな。
 物凄いごく潰しだからある程度注意して行かないといけない。

「お、おはよう。エクレール!」
「ん? ああ、良い朝だなレン」

 声の方向に振りかえると錬が女騎士に向かってもじもじと何かしている光景を目撃した。
 どう考えてもホワイトデーを意識している。
 きっとプレゼントを準備しているんだろう。

 しかし女騎士はそのままこっちへ歩いてくる。
 朝食を取りに来たんだな。

「おはよう。イワタニ殿」
「朝だな。そっちの調子はどうだ?」
「前にも言っただろう? 奴隷狩りの根絶は難しい。奴等は何処からともなくやってくる」
「そうだな……」

 女騎士も奴隷狩りの主犯が何処の国なのかは知っている。
 過去の栄光は今は地に落ち、自分達が支払わねばならない罰金を新天地を侵略することで賄おうとする愚か者達だ。
 もちろん、一般の農民に罪は無い。

 それでも罰は罰である。
 戦争でメルロマルクやメルロマルクと同盟を結んでいたシルトヴェルトが負けた場合、こちらが罰金を支払う事になっていただろう。
 戦争とはそういうものだ。

 だが、自分達の罰を他人に押し付けてよい物では無い。
 世界の闇でも制御しようとしている所ではあるが、勇者達もそれはいけない事だと先頭に立って守らねばならないのだ。

「え、エクレール!」
「どうした? レン?」

 俺と女騎士の話を遮って錬がもじもじと声を掛けた。
 おお、さっそくバレンタインの返しを渡すのか。

「この前のバレンタインのチョコ……とても美味かった。これ、その返しだから」

 と、錬が何やら大きな袋を女騎士に手渡す。
 うまかったと言っても俺が作ったチョコだけどな。

 そういう意味だと、女騎士としては複雑な心境だろう。
 なんせ、自分ではない奴が作ったチョコのお返しをもらう訳だし。
 そうか、こういう弊害があったのか。
 女騎士は俺を一度睨んだ後、袋の中を確認する。

「バレンタインの返しか……しかし随分と大きいな」

 女騎士は錬が寄越した袋を広げて中を確認する。
 そこには大量のキャンディが入っていて、更にその下には高そうなドレスと……髪飾り?
 随分とプレゼントが入っているな。

 まあ、錬は女騎士が好きだし、気合が入り過ぎたって所か?
 典型的な男の空回りだな。
 こういう奴が悪女とかに引っかかるんだろうな。
 よかったな錬、女騎士はそういうタイプではないからな。

「……これはウィンディアと分けろと思って良いのか?」
「いや、エクレールの分だ」
「一人分? 随分多いな」

 近くで見ていた俺が呟く、すると錬は首を傾げた。
 何で不思議そうな顔しているんだよ。
 普通に多いだろ。
 俺は女じゃないから本当の所はわからないが、相手だって困るんじゃないか。

「何言っているんだ? お返しは重要だろ?」
「お返しって縁起担ぎか?」

 ホワイトデーで送る菓子は確か……マシュマロは嫌い、クッキーは友達、キャンディは好き、だったか。
 他にも色々とあるが定番の話だとこの辺りだよな。
 場所によって違いがあったり、別の意味が追加されたり、全部普通にお返しと該当する事もある。
 俺の所だと服をプレゼントすると付き合って欲しい、とか聞いた。
 ローカルルール的な所があって曖昧なんだよな、この辺り。

 まあ、服はローカルの方だと思う。
 そもそも女からバレンタインチョコを受け取った段階で付き合っている様な気もするしな。
 というか、相手の服のサイズを知っているとか、どうなんだ?
 これ……俺の記憶違いかもしれないな。

「……レン、正直に言って良いか?」

 お、プレゼントをもらった女騎士が困った表情をしながら錬に尋ねている。
 うん、ここは正直に言うべきだろうな。

「ああ、なんでも言ってくれ」
「じゃあ言うが、多すぎないか?」

 だよな。俺もそう思う。
 しかし、錬は何食わぬ顔でこう言った。

「え? 普通バレンタインのお返しって十倍だろ?」
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