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盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

盾の勇者の成り上がり

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番外編 盾の勇者のバレンタイン【終】

「で? ガエリオン。お前は何の用だ?」
「キュア!」

 背負っていた箱を持って俺に差し出す。
 この流れだと、やはりチョコレートなんだろうな。

「ああ、お前もチョコのプレゼント?」
「キュア!」
「親ガエリオンは? 最近静かだな」
『別に黙っていた訳じゃない。コヤツの自由にさせていただけだ』

 へー……てっきり意識融合とかが進んで消えたかと思っていた。
 今思った事、本人に言ったら怒りそうだな。

「キュアキュア!」

 ガエリオンは箱を開けて、中に入っていたチョコを俺に差し出す。
 妙な光沢を放っているようなー……。
 念の為確認する。

 伝説のチョコレート 品質 国宝級

 うわ! 目利き画面が思いっきり光を放って眩しすぎる。
 なんだよ伝説のチョコレートって!
 品質も最高品質じゃなくて国宝級とか出てんぞ! 上があったのかよ。

「わー……凄くいいにおーい」

 言われてチョコレートの匂いを嗅ぐ。
 なんだ? 物凄く良い匂いだ。
 チョコレートの匂いのはずなのに、もっと別の高貴な香りに感じる。
 自然と食欲中枢が刺激され、空腹感を訴えかけるかのようだ。

「こんなチョコレート何処から手に入れたのー? フィーロも真似したい」
「キュアアアウウウウウ!」

 涎を垂らして近寄って来るフィーロにガエリオンは渡さないとばかりに威嚇してる。

「キュア! キュアキュア!」
「へー……伝説のチョコレートの話を聞いて、世界各地で材料を集めて作ったんだ? 最後にはチョコレートの魔物から聞いたの?」
「そうなのか?」

 そういやガエリオンはここ最近、ずっとチョコレート作りをしてたような気がする。
 温度調節が得意だからって厨房でみんなのチョコ作りを手伝っていた。
 で、いないと思ったらいつの間にか帰って来てて、チョコ作りを熱心にしてた気がする。
 全てはこのチョコレートを作るために練習と勉強をしてたとかか?
 一体何がガエリオンの琴線に触れてこんな熱意ある代物を作ったんだよ。

「で? そんなすさまじいチョコをどうしたんだ?」
「キュア! キュア!」
「ごしゅじんさまに食べて欲しいんだって」
「ああ、ガエリオン也のバレンタインって奴か」

 真心を無下にする程俺は不粋じゃない。
 ガエリオンが渡すチョコレートを一口食べる。

 お? これは凄い。

 口の中でとろけるような甘みが広がり、その中で僅かなビターな味わい。それでありながらもしつこくなく、アッサリと引いたかと思うと、苦味が強まり、微かにハーブの香りが口の中に広がって味をリセットさせる。
 にも関わらずチョコレート独自の味わいが何層も波のように俺の舌に、野生のドラゴンが群れで襲い掛かってきたかのような絶望的な王者の気品……幻を見せる。
 そんな絶望的な状況の中でチョコレートが颯爽とドラゴン達を倒して俺を救い、馬に乗せて逃がしてくれる。
 そう……これはチョコの勇者様!

 ってなんだこの妄想は! しかも若干ウザい。
 キラッて妄想の中でポーズを取るなチョコレート!
 とにかく、物凄いチョコレートだった。

「かなり美味いぞ」
「キュア! キュア!」

 俺がチョコを食ってガエリオンは大喜びで跳ねている。
 俺の為にこんなすごいチョコレートを作っているのか、その献身的な態度は素直に評価するぞ。
 やがてくるくると回って喜びを表現したかと思うとガエリオンはキュアキュアと鳴く。

『む……やめ、やめんか! それ以上言おうとするでない!』

 親ガエリオンの干渉を受け、子ガエリオンが苦しそうにする。
 が、子ガエリオンは俺に向かってキュアキュアと鳴く。

「えっとねー……」

 フィーロも聞いてムッとしてる。
 なんだ? すげー気になる。

「何を言ったんだ?」
「フィーロ言いたくない」

 そこでフィーロのアホ毛が浮かび上がって、フィーロの口が喋り始める。
 そう、ガエリオンの言葉を代弁するみたいに。
 フィーロが手で妨害しようとしているが、不意打ちだったのか、抵抗しきれていない。

『ぬ!? フィロリアルの女王め! この言葉を翻訳させて追い出させるつもりだな!』

 何か人外の攻防が始まってる気がする。
 きっとフィーロが言いたくない言葉をフィトリアが言わせようとしているんだろう。

『汝も喋るな! それ以上は――ぐぬ!?』
「キュアキュアキュア!」
「ガエリオンはーごしゅじんさまの事が生涯の伴侶にしたいくらい大好きーだから村の魔物なんて眼中にないのー」
「へー……そういえばガエリオンにはそう言った話聞かないもんな……生涯の伴侶?」

 翻訳ミスか?
 ガエリオンってドラゴンの一番の王様、竜帝だろ?
 だからか魔物紋は既に効果は無くなっている。

 で、ドラゴンはどんな生物でも繁殖が出来るという節操の無い生き物だとか。
 なのにガエリオンって村の魔物連中と何かしたと言う話を谷子もラトも話さないし……て、もしかしてラトが魔物の言葉で俺に同意したと思っていたが、この事を言っていたのか?

 あの時の雰囲気的にはきっと、俺にチョコを渡したいとかそう言ったのかもしれない。
 それは友チョコとかそういう意味ではなかったとしても、あの会話は成立する。
 実際、谷子は疑問系だった。

「キュア! キュアアアキュア!」
「ガエリオンの夢はごしゅじんさまと幸せな家庭を築くことなのー子供は何人も欲しいー」

 これ……本当の事を言っているのか?
 俺がフィーロを指差すと子ガエリオンは何度も親ガエリオンの拘束を抵抗しながら頷く。
 フィーロの翻訳は嘘を言っていないらしい。

「子供って……お前はオスだろ。そして俺も男だ。そもそも俺を何だと思ってんだ」
「キュア! キュアキュア!」
『ぬ!? やめよ! その先を喋るな!』

 精一杯抵抗するガエリオンだったが、子ガエリオンが鳴く。
 それを――フィーロが翻訳してしまった。

「大丈夫ー竜帝は、相手がオスでも孕ませられるよーだから告白を聞き届けてー」
「…………………………………………なんだと?」

 今、コイツなんて言った?
 オスでも孕ませられる?

「他にメスとどんだけ関係を持っても良いよー。だけどごしゅじんさまはガエリオンの子供を産んで欲しいー」

 そしてキラッと決めポーズを取ったガエリオンは更にキュアと鳴いた。

「ごしゅじんさまの作った焼き肉をずっと食べていたいんだ」

 これはドラゴンなりの常套句的な告白なのだろうか?
 ほら、君が作った味噌汁~的な。
 と、言った所でフィーロの拘束は解けた。

「むー! なにすんのフィトリア!」

 駄々をこねるかのようにフィーロはアホ毛を睨んでた。
 アホ毛の方は……してやったりみたいな感じだぞ。
 えっと、ドラゴンはどんな生き物でも繁殖できる、しかも竜帝ともなると相手がオス……男でもその限りじゃないと。

「そうかそうか」

 俺は笑顔になってガエリオンに近づく。

「キュアア……」
『まったく……愚かな……』

 真心が通じたのかとガエリオンは瞳を輝かせた。
 だが、俺はガエリオンの襟首を掴んで、家の外へと放り出す。

「出てけ! 二度と近寄るんじゃない!」

 クリスマスプレゼントで俺に抱擁を頼んだのはこんな裏があったのかよ!
 なんで男なのに孕まされなきゃならんのだ!
 フォウルといい、ガエリオンといい、俺に殺されたいのか。

「キュアアアア……キュアアア……」

 ガリガリとガエリオンが扉をひっかく。
 谷子に後で教育するように厳しく言っておかないとな。
 お前のドラゴンは俺を孕ませようとしているぞ。

 ふざけやがって。
 その為にこんな伝説のチョコまで準備しやがって。
 何なんだよこれは! まったく!

「キュア……」

 やがて諦めたのかガエリオンは去って行ったようだ。

「フィーロの勝ちー」
「勝ってねえよ」

 この中じゃ女と言う意味で一番まともだが、俺に襲いかかろうとしたのは変わらないからな。
 勝者なんていねえよ!

「じゃあフィーロ、そろそろメルちゃんの所へ帰るね」
「ああ、行って来い。まったく……厄日だな。今日は」

 サディナが大人しかったのが唯一の救いか。
 奴は未来でも見通せるのか?
 俺の中でラフタリアとラフちゃん以外で一番ポイントを稼ぐ動きをしたぞ!
 今日の評価はこんな感じだった。
 フィーロが家を出てポータルで移動して行った。

「はぁ……」

 今日はいつも以上に疲れた。
 主にフォウルとガエリオンの所為で。
 早めに寝るか。

「キュアアアアアアアアアアアアアーーーーーッ!」

 うるせぇな……。
 失恋の遠吠えしてんじゃねぇよ。
 と、俺は寝る準備をして、ベッドに横になった。
 しばらくして……異変が起き始めた。

 ポタ……ポタ……。

「ん……」

 何か頬に当たる。
 そうか、お前等何かしてるんだな?
 いい加減にしろよ。俺に何か恨みでもあるのか!
 女子がいない時に、寝てる所を襲いかかろうとしてんのか!
 と、目を開ける。

「な――」

 思わず絶句する。
 部屋の天井に、茶色い何かが引っ付いて俺に滴を垂らしている。
 なんだ!? と思って、頬に着いたモノを確認する。

 ……チョコレートだった。

 ボコボコと天井に引っ付いていたチョコレートが蠢く。
 そしてベッと何かを吐きだした。
 それは、ガエリオンが持っていたチョコの箱だったと思う。
 って、ガエリオンが持って帰ったはずだよな?

 そういえば……チョコレートモンスターのボスが村にいて、谷子とラトに預けていたが魔物紋で拘束はしてなかった。
 つまり話は通じたが、まだ野生!
 助けてもらった恩を忘れたのか?
 と思って睨むと魔物名が出た。

 伝説のスーパーチョコレートモンスターⅣ

 ……パワーアップしてる!? Ⅳってなんだ!?
 で……なんかガエリオンの尻尾っぽいのがチラッと見える。
 取り込まれた!? チョコレートモンスターってこんな技能持ってるのか!?

 そういえばさっきガエリオンの凄い遠吠えが聞こえたが断末魔だったのか?
 やばい、すさまじい悪寒がする。
 念の為に深く確認する。こうすることである程度、Lvを見ることが出来る。

 ……測定不能。

 なんでだ!?
 まさか……ガエリオンのチョコレートの所為で急速なLvアップと成長をした!?
 盾が警報を鳴らしてる気がする。

「流星盾EX!」

 他の勇者共じゃ使えない領域であるEXで俺は防御壁を生成!
 チョコレートモンスターは流星盾EXの上に乗る。
 ジュッと音を立てて流星盾が溶け始めている!?

 やばい! シャレにならない強さを持っているみたいだぞ!
 やはり殺しておけばよかったか!?
 急いで逃げろと本能が囁く。

「くっ……!」

 流星盾が壊れるのと同時に飛びのいて逃げ出した。

「あ、兄貴! やっと振り向いて――」
「な、尚文様! 私の心配を――」

 家を出ると同時にフォウルとアトラが争っていたが無視して通り抜ける。

「逃げろ!」
「逃げろって……」
「何から――うわ!」
「な、尚文様――」

 家の扉を突き破って伝説のスーパーチョコレートモンスターⅣがドバッと飛び出てフォウルとアトラを飲み込んでいく。
 その途端、更にパワーアップしたように俊敏になって俺を追い掛け始めた。
 やばい……これって……雪だるま式? 逃げれば逃げるほどやばそう。
 だが……先ほどのガエリオン問答とか思いだすと……捕まったら孕まされそう!

 その後、俺はポータルスキルで逃げ、大立ち回りの末、この事件は解決へと行くのだが、思い出したくないから忘れよう。
 具体的には男性陣の活躍だな。
 後、俺に好意を抱いていない女連中、要するに女騎士や谷子、リーシア辺りだ。

 馬糞チョコ万歳。
 コイツに感謝する日が来るとは思わなかった。

 チョコレートモンスターの目的は俺への愛を届ける事だった。
 その為、俺に対して好意を持っている奴を取りこんでパワーアップ出来たらしい。
 意味がわからない。

 原因であるチョコレートモンスターのボスだが、バラバラにしたのに翌朝には復活していて、普通に村にいた。
 直後もう一度バラバラにして、今度は魔法で消し飛ばしたが、翌朝にはもう一度復活していた。
 三日位繰り返したが消滅できなかったので、谷子とラトの協力の下、強制的に魔物紋で縛り付けた。
 バレンタインのアレはさすがに暴走だったらしく、反省というか無抵抗だったけど。

 尚、フォウルはチョコから解放された後、冷静になった。
 よくよく考えると何かおかしいな、と気付いたそうで、後日謝罪に来た。
 混乱していたとはいえ、本人も自分がした事を反省しているらしく、今まで以上に真面目に働いている。

 ガエリオンは……そのままだった。
 ただ、スッキリしてたので殺してやろうかと殺意が芽生えた。
 これから近寄らない様に気を付けよう。

 ……最悪のバレンタインだったな。
 後にこの事件は腐のバレンタインと呼ばれた。
一部シーンは長くなり過ぎるのでカットしました。
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