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盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

盾の勇者の成り上がり

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番外編 盾の勇者のバレンタイン【14】

 さて、本日はフィーロのバレンタインイベントがある。
 ちなみに元康は前日、フィーロのイベント会場前で待機しているのを目撃した。
 というか毎回目撃している。

 今回はフィーロのチョコに握手券とか限定商品のポイント券とかつけられている。
 元康がどれだけ買ってくるか楽しみではある……のか?
 一応その分、俺の懐が暖かくなるわけだしな。
 尚、握手させられるフィーロが毎回渋い顔をしているのは記憶に新しい。

 フィーロ親衛隊ナンバー001番で、親衛隊の会長。
 フィーロに不埒な真似をしようものなら制裁するという厳しい組織らしい。
 ま、元康はフィーロに手を出す事は無いんだよなー……そんな訳でフィーロのストーカーとかは元康等の親衛隊が処分しているとかをメルティから聞いた。
 なんだかんだでフィーロってグラスの世界の管轄までアイドル活動をしに行っているから、かなり広範囲で親衛隊は着いて行ってるんだろう。

 俺も昔はオタクだったから知らない訳じゃない。
 アイドルオタクじゃないけどさ。

「尚文様!」
「ん?」

 アトラがフォウルと一緒にやってきて声を掛けてきた。

「なんだ?」
「私からチョコレートのプレゼントですわ!」

 と、アトラが言うと同時だったか。
 チーンという音がして俺の盾からハート型のチョコレートが飛びだした。
 トースターみたいな感じの勢いだったと思う。

 盾に干渉してチョコレートを作ったな?
 受け取った俺は変な物が入っていないかチョコを確認する。

 ハートチョコレート 品質、最高品質

 盾が作ったのに品質が最高品質……。
 器用な真似をするな。

「アトラさん。ずるいですよ。ナオフミ様の盾で作りましたね」
「利用できる物は何でも使い、最も良い物を渡す。これが一番ですわ」

 ラフタリアとアトラが睨み合いを始めた。
 俺は……ハート形のチョコレートを縦に割ってフォウルに半分渡す。

「ナ、ナオフミ様?」

 その様子をラフタリアは絶句する形で声を出す。
 フォウルはチョコと俺を交互に見ていた。

「どうした? 念願のアトラが作ったチョコだぞ」
「あ、ああ……」

 フォウルも似たような顔をしている。
 確かに酷いとは思うだろう。何せハートの形を割っている訳だしな。

「毒見ですね、わかります。さあお兄様、ナオフミ様に私の無実を証明するために食べるんです」

 だが、アトラの精神は鋼の様に堅い。
 この程度じゃビクともしないのはわかってた。
 フォウルは黙々と俺が渡したアトラの作った……盾で作ったチョコを食べた。

「何もないか?」
「い、いちおう……」
「よく味わうんだ。髪とか、変な不純物はないか?」
「な、ない」

 若干フォウルの顔が赤い。
 が、特に異常は無い様だ。

「チョコは体質的に苦手なのか?」
「いや……」
「そうか、じゃあもらおう」

 残り半分を口にする。
 うん、中々に美味い。
 本当に盾で作ったのか怪しいラインだが、実際に盾から出てきた。
 というか材料はどこから……勇者総出でチョコを大量生産した時の奴か?

「どうですか?」
「ああ、美味い。これなら店で出せるレベルだ」
「それはよかったですわ。ですが残念ながら一個限りなのです」
「なんでだ?」
「尚文様の為にだけ作った物ですし、材料を三倍以上も消耗するのです」

 味は良いが割には合わない感じか。
 きっと生産時間も長いんだろう。
 まあ、アトラらしいと言えばらしいのか。

 それにしてもアトラはわかっているのか、わかっていないのか怪しいラインだが、男心をくすぐるな。
 ちょっとドキっときた。

「フォウル兄ちゃん! 俺も俺も!」

 キールがチョコクレープをフォウルに渡す。
 そっちは露骨に嫌そうというか、返答に困った感じで眉を寄せている。

「さ、さんきゅ」
「へへー、それ美味いんだぜ! 兄ちゃんも食べてくれよ」
「あーはいはい」

 キールは元気だな。
 というかお前は会場で控えていろよ。
 フィーロとメルティみたいに!

「キール、お前はイベントに出るんだから早めに行け」
「はーい」

 キールは鎌のポータルスキルで飛んで行った。

「ナーオーフーミちゃーん」

 う……聞きたくない声が。
 振り返ると俺への溢れる愛をアトラ並みに醸し出す女こと、シャチ女サディナが手を振ってノシノシと近づいてくる。
 最近じゃサルベージとかで出会わない日が多かったというのに……さすがにバレンタインじゃ会いに来るか。

「ど、どうしたんだ?」
「今日はバレンタインじゃない。お姉さんもナオフミちゃんにチョコをプレゼントしようと思ってるのよ」
「悪いがいらない」

 チョコ作りにも碌に参加しなかったじゃないか。
 どう考えても結果は見えている。

「変な物入ってそうだし」

 手作りチョコのおかしな物を入れそうな筆頭だろ、お前は。

「あらーじゃあナオフミちゃんの目の前でお姉さん特製チョコを作るから見てて」
「そんな時間は無いんだが……」
「時間は取らせないから大丈夫、材料はコレね」

 と、俺に材料を書いたメモを見せる。
 チョコとミルク……そしてルコルの実……。
 俺に用意させて目の前で作るのか。
 確かにそれなら変な物は入らなそうだ。

「……わかったよ」

 どうせ余ったチョコが厨房にあるんだ。
 言われるままチョコレートとミルクを用意した。
 ルコルの実は倉庫にあったのを取ってこさせた。

「じゃあすぐに作るわねー」

 と言ってサディナは金属製の鍋を持ってチョコとミルクを投入、微弱な雷の魔法を込める。
 しばらくすると雷の熱でチョコレートが溶け始める。
 それを捏ねてから厨房にあった竹串を取ってルコルの実を突きさした。
 これって……。

「後はこうしてー……はい」

 ルコルの実を溶けてとろーっとしたチョコレートに潜らせて俺の口元に差しだす。
 チョコレートフォンデュ?
 確かに、これならおかしな物を入れる余裕は無い。
 俺にしか食えないが普通にチョコレートのプレゼントだ。

「ほらー、チョコが固まっちゃうわよー」
「わかったよ」

 渡されたチョココーティングのルコルの実を頬張る。
 するとすぐにサディナは次のルコルの実をチョコに潜らせて俺に食わせ始める。

「はぁ……」

 一個食う毎にサディナはウットリとしたような目で深い溜め息をしながら微笑んでいる。
 なんだって言うんだ一体。
 やがて一房分のルコルの実を俺に食わせると鍋をトンと置く。

「じゃ、お姉さんのバレンタインは終わったから仕事に行くわねー」
「ああ、今日は打ち上げがあるらしいからゼルトブルに夜行くといいぞ」
「そう。それじゃあ後で行くわね。ところでお姉さん、ホワイトデーのお返しはナオフミちゃんの下から滲み出るホワイトチョコが欲しいわー」
「ふざけるな」

 何が下から滲み出るホワイトチョコだ!
 お約束のボケをしやがって!
 だが……意外だ。
 もっとしつこくセクハラ発言しながら自分にチョコでも掛けて。

『バレンタインチョコレートはわ・た・し!』

 とか言って襲い掛かってくると思っていた。
 実際、サディナならやりそうだろ?

 その後、サディナは特にアクティブな行動に出る事は無く、スキップしながら立ち去った。
 なんだったんだ?

「サディナ姉さん……凄く乙女の瞳をして吐息を漏らしてましたよ」
「お酒に強い尚文様の事をあんなにも愛しておられるのですね。私も負けてはいられませんわ!」
「はいはい」

 まあ、あのサディナが暴走しないだけでも十分良い事だ。
 そんなにルコルの実で酔わない俺の事が気に入っているのかねー……奴の基準はよくわからないな。


「さて、俺達もイベント会場に行くか」

 準備を終えた俺たちはフィーロとキールがチョコを販売する会場へとポータルで飛んだ。
 会場はゼルトブルのコロシアムだ。
 イベント会場にも通じるのが良い所だよな。

「凄く人がいますね」
「そうだな」

 メルロマルクやゼルトブルが広告を出していたからな……近くにはフィロリアルレースの会場もあるらしい。
 会場を見ると長蛇の列が出来ている。
 フィーロのファンは……大きなお友達が多いな。
 やっぱりアイドルは何処の世界でも同じか。

「開場10分前です」

 という声にファン達は興奮している。
 ……やはり先頭は元康だ。
 一体何時間前から並んでいるんだろうか。

 ちなみに普段と姿も違う。
 頭に鉢巻きを付け、フィーロの絵が描かれた変なハッピを着て、更に槍に大量のチョコレート交換券を入れた風呂敷袋を吊るして待っている。
 なんか見ていて哀れになる光景だ。
 アイドルオタクを毛嫌いしている連中はこんな気分なんだろうか。

 元康の姿を眺めている三匹フィロリアルは悶々とした表情を浮かべながら、乱入の打ち合わせをしているようだった。
 お前等は元康にチョコを渡したのか?
 多分、渡したんだろうな……本人はフィーロのチョコ(製造工程は見ているはず)が欲しがっているんだろうけどさ。

 その後ろ……というか変なハッピを着ている奴が多い。
 元康が着ているハッピと同じ物だ。

「さあ! フィーロたん親衛隊の諸君、戦いの幕開けですぞ! フィーロたんに不埒な事を仕出かそうとする愚かな者には血の制裁を!」
「「「血の制裁を!」」」
「全ては遍くフィーロたんの為に!」
「「「フィーロたんの為に!」」」
「言葉がわからない者にも分け隔てなくフィーロたんへの愛を振りまくのです!」
「「「全ては親善の為に!」」」

 ……俺は無言でラフタリアの方を見る。
 フィーロのファンって凄いな。
 ラフタリアは見ないようにしようと目線を逸らした。

 そういや……ラフタリアって元康に関しては妙に余所余所しいんだよなぁ。
 錬や樹よりも遥かに距離感がある。
 まあ、誰もあの変態に関わりたいとは思わないだろうけどさ。
 三色フィロリアルとフィロリアル関係以外は。

 こう……元康が「義姉さん!」とか呼んだら凄く嫌そうにする。
 元康をこの世界に連れてくる時に何かあったのだろうか? あの頃からなんだよな。
 ラフタリア達が来たのが遅れていたし、その原因が奴なのは想像に難しくない。
 詳しくは聞いてないけど、どうせ碌な事をしなかったのだろう。

「えっと、そろそろ行きませんか?」
「……そうだな」

 こうして俺達は移動を開始した。
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