挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

盾の勇者の成り上がり

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

393/846

番外編 盾の勇者のバレンタイン【8】

 チョコレートモンスター……。
 凄いネーミングセンスだ。
 これが噂の期間限定の魔物という奴だろうか。

「急いで剣の勇者様を呼べー!」
「おおー!」

 ……錬はここで頑張ってんのか。

「ラフタリア、後……お前」
「はい」
「クエ」

 ラフタリアとヒヨちゃん(ちゃんまで名前だけど、呼びたくない)にチョコレートモンスターを指差す。
 即座に意図を察したラフタリアとヒヨちゃんがチョコレートモンスターを蹴散らす。
 あんまり強く無かったな。
 ラフタリアとヒヨちゃんが出現したチョコレートモンスターを一撃で仕留めた。

「あ、盾の勇者だ」
「イワタニ殿か、こんな所で会うなんて珍しいな」
「尚文じゃないか」

 魔物を倒すと同時に錬がやってきた。
 背後には女騎士と谷子もいるじゃないか。
 距離感があると思ったが、案外一緒にいるのな。

 ちなみにガエリオンはいない。
 アイツ何やってんだ?
 確か村にはいた気がする。
 出かける前に見かけたから覚えている。

「珍しいな。お前等が錬と一緒にいるなんて」
「え?」
「え?」

 え?
 コイツ等……結構な頻度で行動を共にしてやがる……。
 何がウザイだの、恋愛に興味が無い、だ。
 なんだかんだで一緒にいるんじゃねーか。
 このツンデレ共。

「いや、なんでもない」

 しかし、それを聞き出すのは面倒臭い。
 それ以前に、コイツ等の恋愛とか興味が無い。
 やるなら勝手にやってろって感じだ。

「……この辺りで戦ってるのか?」
「いや、この地域だけじゃなく広い範囲で活動してるぞ?」
「ふーん、その割にはすぐに来たな」
「バレンタインイベントで出現した魔物のボスがこの辺りに逃げ込んだんだ。探してるそいつを倒せばある程度は沈静化するらしいんだけど……」

 面倒な事をしてるんだな。
 ボスとかいるのかよ。縄張り的な感じなのだろうか?
 魔物ってドラゴンが王者なんだからガエリオン辺りを呼べば解決しそうだが……。

 いや、この匂いだ。鼻でも嗅ぎつけるか怪しい。
 しかもチョコレートが動きまわっているようなもんだから生物系の魔物じゃないだろう。
 バルーンみたいな無生物系の魔物と見ていい。
 となると難しいか。

「で、さっきのがボスか?」
「いや、違う」
「そうなのか。まあ結構あっさり倒せたしな」
「ああ、他にも何種類かいるんだけど、ボスは逃げ足が速くて……」

 剣の勇者である錬から逃げ切れるとか……結構凄いんじゃないのか?
 うん、錬は錬で大変そうだ。
 こういう退治系の治安維持は俺にはできないから、手伝えないけどさ。

「剣の勇者様の知り合い……で、常時ムスッとした表情……まさか盾の勇者様!?」

 どういう認識だコラァ!
 錬を睨んだら首を横に振られた。どうやら出所は錬ではないらしい。
 つーか、悪口じゃなくて俺の特徴かよ!?
 チョコ農家の連中が俺達の正体を知った途端、平服して頭を下げた。

「ありがとうございます! 貴方達の活躍のお陰で私共も商売を継続出来ております」
「やめてくれ、俺達は治安維持のためにここにいるんだ。みんなは仕事に戻ってくれ。な? 尚文」
「……そうだな」

 盾の勇者の権力を使えば捨て値でチョコレートを買い取れそうとか思ってしまった。
 錬の方が正しい反応だよなー……。自重しないとまた呪われた盾に浸食される。
 説明を忘れていたが、過去に俺が呪われた盾に浸食されたのは大きな理由がある。

 隠しステータス的な物にカルマと言うのがある。
 これは勇者が悪行をしているか、善行をしてるかを審査する物だ。
 一定ラインの強さと特定の武器があるようになると見える要素なんだけどな。
 これが、一定ラインを突き抜けると呪いの盾が出現するっぽい。

 もちろん、審査するのは武器……だけじゃなく自身の心なんだけど、善行と悪行の増減の幅はかなり複雑だ。
 寄付とかをすれば善行になる訳じゃないし、悪事をすれば悪行になる訳じゃない。
 人々に尊敬されるような事をして結果を出せば善行……にもなるし、悪行にもなる、が正解。

 俺が過去に呪われた盾に浸食されたのは守銭奴的に金稼ぎしたのとバイオプラントで、何でも解決させようとしていた所為だ。
 バイオプラントを改造する時の植物改造ってかなりカルマに影響が出やすい。
 もちろん、生活の役に立つ物の製造をしていたから、大きく増えた訳じゃない。

 だけど、今までの悪行とか村の連中の扱い方とかが積って呪われてしまった……と言う事だ。
 その為、俺はカルマをある程度意識しながら行動してる。
 悪事をしても結果的に人々のためになるのなら善行してるのと同じ数字が手に入る。
 悪徳商人を裏で捌くとかだとプラスにもマイナスにもならないようにな。
 義賊と裏でつながってもそこまでカルマの増減はないし。

 現在、俺のカルマは善行の方に大幅に傾いてはいる。世界を救ったと言う偉業のお陰だな。
 話は戻って、世界を救った勇者なんだからタダ同然で売れとか脅迫すると、間違いなくカルマがマイナスになるだろ。
 しかも金額が金額だ。相当、マイナスになるかもしれない。
 そんなリスクを背負う程じゃない。

「じゃ、俺は用事があるから行く、錬も頑張れよ」
「ああ、その話で尚文に相談したいんだ」
「なんだ?」
「ウィンディアがチョコレートモンスターの調査をしたいって言ってるんだ……尚文の好きな金の話になるかもしれない」
「別に金が好きな訳じゃないんだが……」

 もはや習慣になってしまったのと、復興資金を調達するためだと言っても善意的な解釈で聞いちゃくれなさそうだ。
 元々はお前等、他の勇者やヴィッチ、クズ共が原因で金に困ったからなんだよ。
 それが癖になって金稼ぎが趣味なだけだ。

 それにしても期間限定魔物の分析か。
 上手く行けば確かに面白い事が出来そうだよな。
 谷子も魔物が好きなだけに、中々の着眼点だ。

「あのババアは村に勤務になったでしょ? だから私が調べなきゃいけないし……なんでこの時期だけチョコレートが動いているのかもあるから」
「ふむ……」

 谷子の探求心はもっともだな。
 魔物だからと片付けるにしてもヘドロのようなチョコレートが動きまわっているというのは謎が尽きない。
 しかも期間限定で出現するとか……どんな構造なんだろうか?
 クリスマス限定の魔物もいたらしいし、他にも種類がいるんだろうか。

 上手く飼いならすとか出来たら定期的にチョコレートの採取とか出来そうではある。
 うちの魔物舎にもそういう生産系の魔物もある程度買い揃え始めてるし、確かに上手く行けば金の話にもなる。
 それこそ、過去の勇者達が作った人造の魔物……と言えば全て解決してしまいそうで怖いがな。
 雰囲気だとミュータントとかそんなカテゴリーかもしれない。

 ありそうなのはチョコレートの木の怒りが形として現れたとか……汚染された大地から生じたとかな?
 というか、このチョコレートモンスターの死骸は食えるのだろうか?
 食いたくはないが、実は市場に出ているチョコレートにコレが混じっているとかだったら、精神的にきつい。

「あの魔物のテイミング……飼いならすとかは出来てないのか?」
「ゲームの時はあったけど……違うだろ?」

 まあ、ゲームとかのテイミングって大半はアイテムを使って捕縛だけど、この世界じゃ卵とかその辺りの発見をしなきゃいけないっぽいもんな。
 それこそ、ガエリオンとかの威圧で強制的に従えられないのか?

「話は通じないのか?」
「うん。バルーンとかエッググみたいに僅かだけど意思があるのとは違って……何か猛ってて聞いてくれない」
「イベント期間限定で現れて、しかも興奮してて話を聞かないのか……」
「うん」

 難しい問題だな。
 なんて考え込んでいると女騎士が一歩前に出る。

「イワタニ殿はどんな用事でここに?」
「ここに来る理由くらいわかるだろ? チョコの買い付けだよ」
「そうか、てっきり裏の会合かと思っていた」
「なんでこんなチョコ臭い田舎で会合なんてしなくちゃいけなんだよ!」

 女騎士は最近俺の悪事に関して並々ならぬ関心を示している。
 止めるためじゃない、学ぶためだ。

 堕ちたもんだな、女騎士!
 と、馬鹿にするのは簡単だが、悪事を学ぼうとするコイツの熱意は果てしない。
 義賊ギルドの会合にだって参加したいと言っていたし撒くのが大変だった。
 エロゲで女騎士といえば悪堕ちとか結構ありがちだが、コイツの場合、なんか違う。

「剣の勇者……早く行こ?」
「ああ、早くボスを倒さないと被害が増えるからな」
「生け捕りに出来ないの?」
「ウィンディアの頼みだからね。努力はするよ」
「そうだな。生け捕りにして研究を行えば、イワタニ殿の様に新たな商売を始められるかもしれないからな」

 凄いナチュラルに会話を繰り広げる錬と谷子と女騎士。
 コイツ等、普通に仲良いだろ。
 素直になれない幼馴染かっつーの。

「ではイワタニ殿、私は諦めないからな。その手腕を盗んでやる!」

 などとほざく女騎士を連れて、錬達はなんだかんだで仕事に戻って行った。
 女騎士、お前は何をしようとしてるんだよ。
 悪人から悪事を学んで領地経営ってか?
 それよりもまず善悪の判断を学べっての!

 と、錬と別れて俺はチョコ農家の方へ進んで行ったのだった。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ