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盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

盾の勇者の成り上がり

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封印された理由

 大量の除草剤を欲していると聞き、急いでその村へ向かった俺達だが……。
 フィーロの足が早い事もあり数日で該当の地域に近付いていた。

「ごしゅじんさまー」
「どうした?」
「えっとねー植物が凄いのー」
「はぁ?」

 ラフタリアと一緒に馬車の外を見る。
 すると道を埋め尽くさんと蔓のような植物が蠢いていた。

「な、なんだぁ!?」

 進行は遅いが少しずつ、確実に植物の支配領域は増えて行っている。

「村は……」

 辺りを確認すると難民キャンプみたいに人が寄り集まっている所を発見した。

「フィーロ、あそこへ行け」
「うん」

 俺達はキャンプをしている所に辿り着き、行商を始める。

「さて、どれくらいで除草剤を売るか」

 きっとあの侵食する蔓を駆除する為に欲しているんだろう。
 なるほど、あれならアクセサリー商が大金になると断言したのも頷ける。
 はてさて、どれ位の金額になるか。

「もしかしたら、専門の買取業者がいるかもしれませんよ」
「そうだな」

 馬車から降りて、事情を尋ねる。
 ちなみに盾はブックシールドに変えている。そして腕の裏側に回して本を持っている行商人の振りをしている。
 目立つ盾が無ければ盾の勇者だと気付かれないからだ。

「除草剤を高く買い取ってくれると聞いてやってきた者だが」

 キャンプの中で偉そうな装飾をしている人に尋ねる。

「おお……行商の方ですか。助かります」

 待っていたとばかりに答えられる。

「しかし、一体どうしたんだこれは?」

 俺は植物が侵食する大地の方を見ながら呟く。

「その……私達の村は飢饉だったのです」

 ああ、そういえばそんな噂があったな。
 でもあれば元康が解決したんじゃなかったのか?

「ですが槍の勇者様の来訪によって古に封印された奇跡の種を入手し、飢饉は解消されたのですが……」
「まさかその奇跡の種が?」

 俺は侵食する蔓の方を見る。よく見ると様々な果物や野菜が蔓から生えていた。
 このキャンプの連中も食料には困っていないようで、炊き出しとかは行われていない。根っこからは芋が取れるようで、農民が侵食する蔓の方へ行って、土を掘っている。
 つまり、植物から食べ物は得られるが繁殖のし過ぎで自分達の住処を追われたという事か……。

 馬鹿じゃないのか?

 よくよく考えてみれば封印されているにはそれ相応の理由があるよな。問題が無ければ残っているはずだし。
 元康の奴、何を思ってこんな真似をしたんだ。

「しかも外周はまだ問題が無いのですが、村の方へ行きますと植物が魔物化しておりまして」

 変異性の植物って奴か。

 馬鹿じゃないのか?

 なんで俺がこの短時間にこんな気分にならなくてはいけない。
 本当、あいつは俺を不快にする天才だな。

「だから除草剤が欲しいと?」
「はい」

 農民とかなら植物の駆除方法とかを熟知していそうなものだが……。

「最初は豊かでみんな喜んでいたんです。ですけど、畑から家にまで生えてきて……がんばって村中で刈り取っていたのですが、それも追いつかなくなり……」
「ちなみに……何時からだ?」
「勇者様が去った後、2週間は問題なかったのです。ですが半月ほど前から……」
「へぇ。国には申告したのか?」
「はい。ですがお忙しい勇者様が来るのにもうしばらく掛かる様で、除草剤でこれ以上の侵食を抑えている状況です」

 はぁ……思わず溜息が出る。

「火で焼き払えば良いのではないですか?」
「考えうる全てを試したのですが……」
「ああ、既にやったわけね」

 おそらく、冒険者にも駆除を頼んでいたのだろう。
 周りを見ると村人ではない、武器などを持った連中も見かける。

「うわぁああああああああああああ!」

 村のある方向から叫び声が聞こえてくる。

「なんだ!?」
「冒険者がLv上げに行くと止めたのにも関わらず入って行きましたので、その声かと」

 半ば諦めたかのように村人は答える。

「チッ! フィーロ!」
「はーい!」

 俺は村の方を指差すと、植物から実った食べ物を頬張っていたフィーロが走り出す。
 植物地帯を高速で駆け抜けて、フィーロは三人のボロボロの冒険者を担いで持ってくる。

「村のほうはどうだった?」
「えっとね。植物の魔物がぐねぐねと動いてたよ。毒とか酸とか吐いてくる面白いのもいたの。弱いのにあんな所へ行くなんてバカだねー」
「最後の一言は余計だ」
「はーい!」

 フィーロが流暢に喋るので村人は驚いている。

「あ、アナタは最近噂になっている神鳥の馬車に乗る聖人様ですか?」

 今更になって村人は俺に手を合わせて尋ねる。

「まあ……聖人かどうかは知らんが、馬車と鳥の持ち主だな」
「お願いします! どうか、私達をお救いください! ここには植物に侵食された者もいるのです!」
「寄生能力まで持っているのかよ……」



 俺は治療薬と除草剤を片手に案内されたテントに入る。
 するとそこには体の半分が植物になっている人が数名、横になっていた。

「治るかわからないからな。後、俺は慈善家じゃないから治療費は寄越せよ」
「はい……」

 人々がそれぞれ、槍の勇者が来なければこんなことには……と、小さく嘆く声が聞こえ、若干気分が良い。
 とりあえず、一番近くに居た息苦しそうに寝ている子供に近づき、治療薬を飲ませる。
 淡い光が宿り、子供の呼吸が大人しくなる。そして除草剤を患部に撒いた。
 子供はしばらく苦しんだが、植物が枯れて、ハラハラと落ち、見た感じ全快した。

「おお……」
「さすが聖人様だ」

 感嘆の声が漏れる。
 続けて、他の患者にも同様に薬を飲ませて撒く。
 全員の治療が終わった所で、何故かキャンプ中の雰囲気が明るくなっている。
 まあ、多少なりとも改善の兆しがあれば明るくもなるか。

「ありがとうございます! ありがとうございます!」

 人々が俺に礼を述べる。

「まずは治療費だ」

 俺は相場より若干高めの金銭を要求する。
 ここはアレだ。既に国に救助要求しているのなら他の勇者と出遭う危険性が高まる。
 そうなれば俺の正体が判明してコイツ等の態度が悪くなる可能性が高い。
 村の連中は笑顔で俺に金を渡す。

「さて、じゃあ後は除草剤を売るから買ってくれ、そしたら、もうここには用が無い」
「あの……聖人様、どうかこの村を救って頂けないでしょうか?」
「ああ!? 国の勇者に頼むんだろ?」
「その……」

 う……なんか村人の奴、全員が集まって俺に祈るように懇願してきやがる。
 俺は何でも出来るような人間じゃない。ましてや義理も無い。

「断る」
「お願いします。お金ならどうにか工面するので」
「……先払いだぞ、後……何があっても後から不満は聞かないからな。他に槍の勇者が解いた封印の概要とかを知ってる範囲で答えろ」

 俺の返答に村人の連中は自らの懐から寄付を募り、財産を集める。その間に俺は情報を最大限集めた。
 話によると近くの遺跡に封印されていた植物の種子で、堅牢な守護者が守っていたらしい。
 そんな守護者が守っていた種なら何か問題があったのではないかとか疑わなかったのか?
 とてつもなくツッコミたい衝動に駆られたがどうにか我慢した。
 で、槍の勇者……元康からの話はそれ以外無かったそうだ。
 村人の調査によると、大昔にこの辺りを根城にしていた錬金術師が作った傑作の一つだったのだけど、封印された物だと言う。
 記述では一時期、この近隣が植物によって支配されていたとか……。

「そんな伝承があるのなら封印を解くなよ! 誰も気付かなかったのか?」

 皆一斉に視線を逸らした。
 勇者が持ってきたから安全な物とでも思っていたのだろう。

 これ以外の情報は見つかっていないらしい。
 で、しばらく話していると寄付金が集まった。
 ……結構な金額だ。
 先払いなら、俺の正体を知っても逃げ切れるな。

「分かった。じゃあやってみるとするか」

 そして盾を戦闘用であるキメラヴァイパーシールドに変化させる。

「た、盾の勇者!?」

 村人の奴等の声を無視して蔓の中を進む。俺の後をラフタリアとフィーロが付き従う。
 受け取った金のたっぷり入った袋を腰に下げて、植物が侵食する大地に歩いて行く。

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