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盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

盾の勇者の成り上がり

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一対の力

「これは……」
「むごい」

 神を信じて……裏切られ、消滅した転生者達を眺めて、錬と樹が呟いた。
 激しく同意だな。
 俺も錬も樹も元康も――ヴィッチに騙されて酷い経験をした事があるから尚の事よくわかる。
 コイツが、絶対に許してはいけない相手だと。

「よくここまでやってこれたわね。素直に称賛してあげるわ」

 クソ女神がふわりと浮かんで言い放つ。
 辺りはクソ女神を残して敵が誰もいなくなった。
 あまりにも無残な……悲しみと憎しみだけが渦巻く場所だ。
 そんな場所に一人だけ、さも楽しげに笑うクソ女神。

「だけどもう遊びはお終い。実はね、最初から何があってもこのゲームは私の勝ちって決まっているのよ」

 クソ女神は手に剣を出現させて左手を前に右手を上にして刀身を俺達に向ける。

「さあ、聖武器の所持者達、国の勝利を確信した所で圧倒的な力の前に屈すると良いわ!」

 クソ女神が持つ剣が光り輝く。

「インフィニティ・カタストロフィー!」

 世界中の聖武器、眷属器の所持者全員に向けて必殺の概念攻撃か。
 同時に世界の魔力を吸い上げる力を展開させている。
 俺は奴が攻撃を放つ瞬間よりも短い時間……ゼロ秒に限りなく近い時の中で魔法を紡ぐ。

『精霊よ。世界よ。世界の代行者が命じ、力を請う。永遠、絶対、無限、その不確かな力による絶望の未来を阻み、身勝手な力の正体を顕現し、この世界を守る楔を撃ちこめ!』
「インフィニティ・ゼロ!」

 世界中の聖武器……ここにいる俺、元康、錬、樹の武器が光り輝き、辺りを取り囲む。
 世界を守る力――意思、想い、心。
 それ等が具現化し、全てを壊そうとする概念を変換する。

「こ、これは……」
「なんでしょう、槍が輝いていますぞ」
「凄い力を感じます」
「何――!」

 バキンと音が鳴り響き、クソ女神が発動させようとした即死の概念攻撃及び、世界崩壊の力は抑えつけられた。

「まさか……」

 クソ女神の顔に焦りの色が浮かぶ。

「さっきから見せているのに気付かなかったのか? いや、気づいていたけど舐め切っていたという所か?」
「おそらく、私達の力を精霊が代行してくれている程度だと思っていたのでしょうね」

 ラフタリアが槌を振り回し、クソ女神に向けて構える。

「まさか……貴方達は!?」
「ああ、俺とラフタリアはお前と同じ土俵にいる。同時にお前とは異なる……お前等を殺す為の力に特化した存在になったんだよ」

 俺とラフタリアの力の源はクソ女神と同じく世界の魔力や生命力。
 ただし、力の補充方法が全く異なる。

 あくまで俺達は世界の意志から力をもらわねば補充する事が出来ない。
 クソ女神のように世界から力を根こそぎ奪って、喰らうなんて事は不可能なように自分達を作り変えたのだ。
 そして……同時に、世界を奪わせない為の力がある。

 今……この世界はクソ女神の力で奪わせない楔が計五本撃ちこまれている。

 四本はここにいる四聖勇者、そして最後の一本は何処にいるか知らない。
 グラスの世界の四聖勇者の最後の一人だ。

 その一人も、俺達の知らない所で戦っている。
 なにもそれは勇者だけじゃない。
 世界中の人々が世界を守る為に、一丸となって戦っているんだ。

 その代表が聖武器を持つ勇者だ。
 この五本の楔が存在する限り、クソ女神は世界を滅ぼす事は出来ず、この世界に縫いつけられた存在と化す。
 もはやこの世界は巨大で強固な結界が何重にも張られた状態だ。
 この世界で生きる人々にとっては外敵から守ってくれる防壁となり、クソ女神にとっては逃げる事の叶わない牢獄となった。

「神になったばかりの分際で私に勝てると思うな!」

 クソ女神は更に力を行使している。
 だが、お前が当てにしている力は使わせない。
 もはや下準備も、手順も、儀式も完了した。
 後は互いの全てが消滅するまで殺し合うだけだ。

「さあ、数学の時間だ。俺達の前で無限、永遠、不死なんて不確かな子供の論理が通じると思うなよ!」

 今、この世界には神の力を否定する空間が構築された。
 俺達を含め、クソ女神は今、神という力を封じられ、この世界の理に縛られている。
 つまり……LvとかHPとか魔力が奴の視界に浮かび、その数字がゼロになった時、奴は死ぬという事だ。
 もちろん、膨大な数字が刻まれているだろうが、永遠でも、無限でも、不死でも無い。

「ふざけるなぁ!」

 クソ女神が鬼の形相で魔法を詠唱しだした。
 異世界の理の魔法だな。
 体の中にある吸収した魔力を練り合わせて俺達に向かって放つ。

「ディフェンスリンク! 流星壁!」

 俺の防御スキルがその魔法を全て阻む。

「×0の槌!」

 ラフタリアがクソ女神に向けて光り輝く、大きな槌を振り下ろす。

「ぐふ!」

 ガツンとぶん殴られてクソ女神のこめかみに血が流れ落ちる。

「おのれおのれおのれ! 良くも高貴な私に傷を付けたな!」

 怒りにクソ女神は剣を片手にラフタリアに向けて切りつける。
 腐っても色々な世界で魂を分けていた神と呼ばれる存在、剣術の腕もそれなりにあるんだろう。

「私の剣は無限倍速を無限にする究極の最強剣技! お前に見切れるはずは無い!」

 無限に無限を倍にしてどうするんだ?
 無限という単語は数字じゃないぞ。
 まあ、それだけ早い事を表現したいんだろうが……。

 クソ女神の剣がラフタリアを捉える。

 うん。
 早い、確かに早い……だが――。

「無限倍速? 無限は限りが無い事ですよ? こういう時に使う単位はこうです。限りなくゼロに近い……いいえ、速さなど必要無い――ゼロ秒攻撃と……」

 ラフタリアの動きがぶれて、クソ女神の後方を通り過ぎた。
 直後、一発の殴りつける、大きな音が響き渡る。

「なっ!? 無限を超越し、自身の速さで時間すら超えた究極至高存在のこの私が――」
「過去に戻っていますよ? 時間跳躍の事ですか? なら、そちらも攻撃します!」

 ゼロ秒攻撃。
 近い物と言うとフィーロのハイクイックだったか。
 あれに近いと答えるのが一番わかりやすいだろう。
 ハイクイックは一時的に自身のスピードを極限まで上げる魔法だ。

 しかし、ラフタリアのゼロ秒攻撃は速さを必要としない。
 ゼロ秒……時の流れを無視した攻撃だ。
 どれだけ早くなろうと早いだけの存在では追いつけない。

 この一発に聞こえる音も、何十発、何百発、何千発もゼロ秒の間に撃ち続けた音だ。
 そんな攻撃を受けて、クソ女神が悶絶する。

「うぐ、ぐう……ああああううあ!」
「貴女には数限りない恨みが、それこそ星の数ほどあります。貴女さえいなければ私は何も知らず、平和に……私の周りにいる人々の全てが、理不尽な悲しみに涙する事はありませんでした!」

 ラフタリアはクソ女神への攻撃の手を緩めない。
 むしろ俺が緩めさせない。

「貴女は自分がどれだけの事をしていると思っているのですか? 世界を意のままに操り、苦しめ、生きようと足掻く者をあざ笑って、災害を起こして……その果てにこれですか! 絶対に、絶対に許される問題ではありません!」

 まったくだな。
 コイツがいなければこの世界……いや、八つの異世界は戦いこそあれど、ここまで大きく過酷な戦いは無かっただろう。
 あったとしても、それは自分達の世界の問題でしかなかったはずなんだ。
 にも関わらず、執拗に世界の融合は起こり、無くてもよかった戦いがあった。

 俺とラフタリアはそんな事をしてきたコイツを否定する為に、今ここにいる。
 例え、永久に近しい程の虚無を味わう事になろうとも、コイツだけは許せないんだ。

 その為の力……。
 俺は言うまでも無く守る事しか出来ない盾の代行者として、自身を構築させた。
 もちろん、敵を殲滅する力の全てを守る事に割り振っている。
 盾が無かった時に使えた戦い方なんて今の俺では使う事は出来ない。
 ステータスの割り振りで言うのなら攻撃を全て捨てて防御にのみ特化させた。

 その反対にラフタリアは、俺が守る事を前提にして、防御という概念を完全に捨て去った。

 この辺りはやり方にも寄るんだろうけれど、神を僭称する侵略者は無限や永遠等の力が及ばない領域でも自身のステータスを万能に割り振る。
 そりゃあ、攻撃できなかったり、一発食らったら死ぬ様な能力にする訳もない。

 だけど……だからこそ、俺とラフタリアは支え合う。
 信頼し合う為にその要素を捨てて、その分を残りに割り振ったのだ。

 盾の俺と――剣のラフタリア。
 どちらか一つでは成立しない。
 されど、二人揃えば何者も……全ての理不尽を滅ぼす力となる。

 ……懐かしいな。
 矛盾だったか。
 元康とそんな話をした事があった。

 どんな盾も貫き通す矛と、どんな矛も防ぐ盾。
 この二つが喧嘩する意味なんて……無いんだ。
 盾は全てを守り、矛は全てを貫く。
 それでいいんだ。

 だから――今の俺とラフタリア……一対の盾と剣が、こんな相手に負けるはずがない。
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