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盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

盾の勇者の成り上がり

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三号狙い

 城下町に戻った俺達はその足で城へと入った。

「あらーナオフミちゃんじゃないの」

 サディナが俺を抱きしめる。
 俺の実験でとてつもなく強くなっているサディナは勇者に匹敵する戦力として最前線で戦っていたそうだ。
 所々深い傷跡がある。それだけ戦いが厳しいのが一目でわかった。

 こう……サディナにはこういう傷跡があると貫禄が宿るな。
 歴戦の戦士みたいだ。
 なんだかんだでコイツは気にしないのだろうけれど、やはり無理をさせてしまっているのだろう。
 今ならわかる。コイツは転生者ではなく、あくまでこの世界の住人だと。

「兄ちゃんが来たって本当だったんだな!」

 キールも若干興奮気味で言い放つ。
 ただ、近寄ってこない。

「……ラフタリアちゃんは?」
「さっき説明したんだが」
「ナオフミ……!」

 グラスが俺の顔を見て驚きの声を上げた瞬間、武器を取り出して距離を取った。
 ああ、サディナとペアを組んでいたのか。

「待て待て、女神に操られた訳でも、蘇生させられた訳でもない!」
「どうでしょうね。疑わしきは罰せよ、という言葉もあります」

 凄い警戒心だ。
 なんでどこに行っても警戒されてるんだよ。

 再度俺は事情を説明した。
 結果的に女神と同等の力を編み出したとな。
 それとなく結界の魔法というかそういうのを展開させて女神には気づかれないように教えている。

「でだ。サディナ」
「なーに?」
「警戒するのはわかるけど、信じてくれ」

 あくまで友好的に、それでありながらも疑っている。
 それがサディナのスタンスだからな。

 ああ、女神がクソ面倒な事を仕出かした所為で仲間に信じてもらえないと言うのは非常に腹が立つ。
 ここであの女神に向かって直接喧嘩を売りに行っても良いんだろうけれど、機を逃す危険性があるからな。
 確実に奴を仕留めるには、いくつか手順を踏むべきなんだ。
 精霊から授かった世界の力だって無限ではないんだから。

「あらー? お姉さんは信じているわよ。ナオフミちゃんは本物よ」
「とか言いながら内面はどうなんだよ? 俺がわからないと思ったのか?」
「ナオフミちゃんの方が疑っているじゃないの?」
「ふむ……じゃあサディナ、ちょっと誰も居ない部屋に行こうか」
「あら? お姉さんで発散するつもり?」
「ああ、はいはい。それで良いからこっちにこい」
「尚文様、私も混ぜて欲しいですわ」

 何故かアトラがこっちにやってくる。
 本当にそういう事をするわけじゃないから。

「フォウルでも誘惑して遊んでろ!」
「嫌ですわ」
「アトラ! 兄ちゃんアレから色々と頑張ったんだぞ!」
「そうだぜ! フォウル兄ちゃん凄かったんだ! アトラちゃんはわからねえの!?」
「知っていますわ。ただ、お兄様の威厳が私を溺愛する度に下がるだけですわ」
「そうなのかー……じゃあフォウル兄ちゃん! 一緒にカッコつけてアトラちゃんに認めてもらおうぜ!」

 キールが無邪気にフォウルの腕に自分の腕をからませる。
 前々から仲が良かったが、以前より良くなってないか?

「そういう仲だったのですか。お兄様、私は心からお祝いいたしますわ」
「フォウル兄ちゃん、何か良い事あったのか?」
「ち、ちがっ! 俺は、俺は――」

 あ、ちょっとフォウルが嬉しそうだ。
 あんな誤解を受けて笑みを浮かべるとは、変態だな。
 ……まあ、死んだ人に会えるのは嬉しいからな。
 それが生前に近ければ近い程、な。

「錬、アトラ、説明を頼めるか?」
「任せろ。皆を説得してみせる」
「任されました」

 俺はアトラと錬に事情を説明してもらい、俺はサディナと別室に行く。
 二人っきりになった瞬間、サディナは警戒を強めた。

「……で? ナオフミちゃん。さっきの話は本当なのかしら?」
「嘘を言ってどうする? とは思うが、お前等も相当あのクソ女神に騙されてきたみたいだな」
「ええ、内部にいる者達に裏切り者……違うわね。殺されて操られた者がいたのが原因なのよ。村の子にも何人かそんな感じで利用されている子が出てきているわ」
「厄介だな」

 死者蘇生か……一目見ればどの程度の蘇生なのかわかるが、正直に言えばやり方が良くわからない。
 魂があれば出来るかもしれないが、ぶっつけ本番はどうかと。
 ただ、蘇生させると言うのは、魂にはあまり良くないのがわかる。
 汚れが宿ると言うか……。

 この辺りは世界の法則によるみたいだ。
 クソ女神の蘇生方法はあまり長く生きていられないようだ。
 そりゃあ飽きたら滅ぼす世界だからな。
 転生に関しては、まだマシと言える程度だけど。
 しかも洗脳というか操っているのだから性質が悪いな。

「……私も何人か、村の子をこの手に掛けてしまったわ」
「そうか……」

 気丈に振舞っているがサディナだって辛いんだ。

「はぁ……サディナ、ちょっとこっち来い」
「あら? お姉さんが慰められちゃうのかしら?」
「してほしいならやってやる。そうじゃなくて、お前の傷を見ていると俺が苦しいから治すんだよ」

 俺はサディナの跡が残る傷に向けて回復魔法を施した。
 普通の回復魔法では治しきれないまでの深い傷だけど、今の俺なら出来なくはない。

「前に言っただろ、サディナは自然体の方が良い。その流線型はそれはそれで味があるし、変な傷跡があるとイヤなんだよ」
「あらー、お姉さんのお肌がそんなに魅力的なの?」
「ああ、そうだ。それでいいからジッとしてろ」

 ……よくよく見ると尻尾が義足、というか義尾だ。
 コイツの泳ぐ姿は人間の俺からすると綺麗と感じた。
 だから、その部分は譲れないな。
 俺が傷跡に高度な回復魔法……この場合は再生魔法を施し、治療する。

 みるみる傷跡が塞がり、元通りのサディナに戻った。
 こういう事ができるようになっただけでも、あの長い道のりを踏破した甲斐がある。

 あらかた跡が無くなった所で、俺は魔法を使うのをやめた。

「これでお姉さんは土壇場でナオフミちゃんの操り人形になっちゃうのかしら?」
「あのな……」
「ま、お姉さんはわからない訳じゃなかったけどね」
「そうなのか?」
「蘇生した子は魔力の流れと言うか、私の感覚なんだけど何か混ざっている感じがするのよ。今じゃある程度は見極められるわ」

 サディナは再生した尾を撫でて、ピンと伸ばしてから続ける。

「私が気になるのはナオフミちゃんの魔力とかその辺りね」
「どう変化している?」
「素直に言うならナオフミちゃんとはわからないくらい何か力が混ざってる。だけど、魔法を唱えた所で感じたわ、敵の神に何かされたのとは違うって。近いけど、もっと善意的な力を感じるわ。大地のような何かをね」
「変な感性が身についているな」
「そこはナオフミちゃんが私で色々と試したお陰かしらね。これも人に説明するのは難しいもの。ただ、見分けが付けられるだけだし」
「ふむ……」

 少なからず当たっているのがサディナの凄い所か。
 実際俺だけでなく、この世界の力その物や滅ぼされてしまった精霊達の力を借りているから、ほとんど正解だ。

「ナオフミちゃんの言う事はおそらく正しいのでしょうね。でも敵の神が私の目利きを上回っているかもしれないと言う疑惑は消せないのよ」
「悪魔の証明だな」

 操られていない証拠を提示しろなんて証明できないだろ?
 目利きが出来ると言われても、その目利きを騙す贋作が出てきたら、その限りでは無い。

「限りなく白に近いグレーと私がみんなに説明しておくわ」
「そこは白と言ってくれよ」
「そうだったわね。お姉さん恥ずかしい」

 てへっとおどけるサディナの頬を俺は軽く撫でる。

「ラフタリア達が来たら、さっさとこの戦いを終わせる。それまで、辛いだろうが力を貸してくれ」
「大丈夫よ……もうナオフミちゃんがみんなを守ってくれるんでしょ?」
「ああ。俺はそれしかできないからな。これだけの強さを持っていても、相手に傷一つ付けられないんだぞ?」

 試しに思いっきりサディナの腹に拳を叩きこんでみる。

「あらー……くすぐったくも無いわ。ナオフミちゃん相変わらずね」
「加減なんてしてないんだからな」

 自分で決めた事だけど、やはり傷一つ付けられないのはやりすぎたか?
 以前はバルーンを攻撃すれば最低でもダメージが1は入っていた。
 だが、今の俺は攻撃に何一つ割り振っていないのでその1すら0になっている。
 少々やりすぎな気もするが、ダメージ1とか、いてもいなくても変わらないだろ。

「じゃあお姉さんがナオフミちゃんをこのまま押し倒したらいいのかしら?」
「どうしてそうなるんだ!」
「反抗する事の出来ないナオフミちゃんを蹂躙する。それもまた楽しい事よ」
「俺は楽しくねえよ! 後、攻撃できないからと言って、抵抗できないわけじゃないからな」
「ナオフミちゃんの初めてはラフタリアちゃんでしょ? 次はアトラちゃんかしら? その次はー……フィーロちゃんには勝てそうね、私」
「何がだ!」

 ホントコイツは変わらないな。
 そんなわけでサディナの説明もあって、俺達は大丈夫だと証明された。


 俺と話した後の事だけど、メルティがサディナを見て、信じてくれた理由を教えてくれた。

「サディナさん。なんか無理している所があったけど、ナオフミが帰ってきたらなんか気が楽そうにしてた。だから、私も信じる事にするわ」

 サディナの謎のカリスマは、何処でも発揮されるんだな。
 まさかメルティまで信用する程の人物だったとは。
 俺以外が相手だと態度が違うとか、二面性でもあるんだろうか。

「信用してくれたのはありがたいな。帰って来て早々こんな目に遭うとは思わなかった」
「それは素直に謝るわよ。だけどこっちの事情も察してほしいわ」

 サディナからも聞いているが、メルティからも改めて聞いた。
 俺と同じように仲間がピンチの時に颯爽と現れて、数日の戦いの後に裏切った奴がいたらしいのだ。
 その代表が変幻無双流のババアと偽者のアトラだった。

 当初こそ、死んだと思っていたババアが現れてみんなを助けるカギとなるはず……だったらしいのだが、転生者に有利になった瞬間、クズとフィーロに向かって攻撃してきたのだと言う。
 事前に怪しんでいたサディナが未然に防いだので事なきを得たが、その時にサディナは深手を負ってしまったそうだ。
 その時の傷で尻尾が吹き飛んで、義尾にしたらしい。

 アトラも同時期にフォウルの前に現れたらしい。
 話によると盾の精霊が俺が死ぬと同時に、俺の遺言に従って生き返してくれた、とか言ったとか。
 ありそうな話だよなぁ。
 それで出てきたアトラを仲間としてしばらく共にしていて、裏切られた訳か。

「本当にごしゅじんさまなんだねー」

 フィーロがやっと信頼したのか、俺に抱きついてごしごしと頭を擦りつけてくる。
 アホ毛がぐりぐり押してきて痒い。

「ラフー!」

 ラフちゃんも負けじと俺にじゃれてくる。
 これだよ、これ。
 皆の危機に登場したら、普通こうなるよなぁ……。
 なんて釈然としない感想を抱きながら、俺はこの世界に帰還した事を実感した。
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