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盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

盾の勇者の成り上がり

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ディフェンスリンク

「メルティ女王陛下! 早くお逃げください!」
「私は女王なのです! 前線から引くことなど」

 戦線は後方で指示を出すメルティの所まで押し上げられてしまっていた。
 樹を含め、他の勇者達、フィーロでさえも押し寄せる敵軍と転生者に苦戦している。
 その状況下でメルティも前に出て魔法による援護射撃をしていた。

「グハァ!」

 メルティを守る兵士の一人が切られた。
 戦況は劣勢。
 普通に考えれば負けが確定している段階まで攻め込まれている。
 そして、転生者達の攻撃は指揮をするメルティにまで迫ってきていた。

「あ――」

 転生者の武器がメルティを捉え、そんな光景に小さな声を漏らす。
 しかし、さすがの転生者もメルティ位の幼い女の子を殺す事に躊躇ったのか、口を開く。

「コイツが敵の大将? まだ子供じゃないか」
「捕まえてハーレムに入れてやるよ」
「メルちゃん!」
「メルティ女王!」

 そんなわけのわからない事を言う転生者に向かって、フィーロがメルティを救うために突撃する。
 眷属器である爪が淡い光を放っている。
 そう、今のフィーロはあんなだが、爪の勇者であり、メルティの一番の友達だ。
 ちょっとやちょっとの敵なら負けるはずがない。

「邪魔をするなよ、鳥!」
「どいて! メルちゃん!」

 だが、転生者がフィーロの接近を拒む。
 爪の勇者として強くなったフィーロであるが、相手も眷属器の所持者であり、女神から異能力を授かっている。

「すぱいらるくろーてん!」

 女神が降臨してから転生者は強力な支援魔法が掛っている。
 その所為で、勇者よりも強い状況になってしまっていた。
 でなければフィーロ達がこんな簡単に追い込まれたりはしない。

「おっと」

 フィーロの放った強力な攻撃は、転生者に弾かれてしまった。

「あぶねえな、この鳥は」
「く……どけぇ!」

 女騎士が無双活性を限界まで発動させて切り掛る。
 だが、それも異常なほどの支援効果の掛っている転生者と渡り合うには厳しい物だった。

「どうやら相当重要な奴らしいぜ、コイツ」
「そういや、コイツを捕まえるだけで良いとか行っていたな」
「美少女だからな、俺の魅力でメロメロにしてやるぜ」
「だ、誰がアンタ達なんかに!」
「そう言ってられるのも今のうちだぜ、すぐに俺の魅力に気づく」
「メルティ! 娘に触れるな!」

 クズが転生者に向かって吠える。
 スキルを放つにはメルティが障害となってしまっていた。

「父上!」
「愚かな王らしいなぁ……作戦は俺の方が遥かに優秀じゃないか」
「何を言っているのよ! ただの物量作戦じゃない! 何かあるとすぐに一番強いあの女に頼って!」

 メルティの返答に不愉快になったのか転生者は睨みつける。
 同時にメルティは魔法を唱えた。

「ドライファ・アクアスラッシュ!」

 水の刃が転生者に命中する。
 頬を僅かに、切っただけに留まった。

「俺に歯向かうのか? もういい、コイツは俺に惚れなさそうだ。死ね! 世界平和の為に!」

 転生者の鎌がメルティに向かって振り下ろされる――。
 メルティは目を強くつぶった。
 そこに――。

「こういうタイミングを狙って現れるのは、俺自身もどうかと思うんだけどな」

 絶妙なタイミングで現れた俺がヒーローっぽくメルティを庇う。
 鎌を片手に受け止めて、メルティをマントで隠しつつ言った。
 さながら、あの日……三勇教の騎士に殺されそうになっていたメルティを守った時と同じ構図になった。

「タイミングを狙っていたんじゃないのか?」

 錬が状況を察すると同時に転生者とその仲間に剣を向けて言った。
 まあ、そう見えてもおかしくない状況だけど。

「いや、本当に危機一髪だったのは確かなんだ」
「な、ナオフミ!?」
「おお」

 感動の再会だな。
 マンガやゲームなんかだと泣いて喜んで抱きついてくれたりなんか……。

『力の根源足る私が命ずる――』
「なんで俺と理解するなり魔法を放とうとしてんだ!」
「とうとうナオフミまで蘇生させて私達を苦しめるつもりね! あの女神!」

 あー……うん、きっと色々とあったんだろうなぁ。
 四聖武器書には載せきれない程の出来事が。
 でも、俺の顔を見るなり魔法を放つってどうなんだよ。

「メルちゃん! ごしゅじんさまのにせもの! メルちゃんを放せ」

 フィーロまで俺の事を睨んでいる。
 しかもスキルを撃ってきたぞ。

「さーくるくろーてん!」

 俺は手を前にかざしてフィーロの蹴りを受け止めた。
 なんで俺がメルティとフィーロを同時に相手しなければならない。
 女騎士も俺を睨んでいやがる。
 若干上がっていたテンションが落ちた気がする。
 まあ、新たな力を手にして調子に乗っていた気もするし、いいのか?

「まあ、信じられないのはわかるが、精霊が四聖勇者は元の世界に逃がしてくれてな。こうして舞い戻ったんだ」
「ウソ! 私の知るナオフミはフィーロちゃんの蹴りを受け止められないもん!」
「そこまで弱くないわ!」

 さすがにフィーロクラスの攻撃くらい、前の俺だって受け止められるわ。
 受け止められるよな?

「さてと……とりあえず思いのほかアッサリ乗り込む事が出来た訳だけど」

 メルティの魔法は無視して俺達は転生者を睨む。
 ここは……まだ奴にこっちの手札を見せる必要は無いか。
 見た感じだとクズはリベレイションを習得したみたいだな。
 フィーロに掛る援護効果で大体わかる。

 樹は……前線で戦っているようだ。
 フォウルは、近いな。
 なんか苦戦しているようだ。

「ふむ」

 俺は盾に干渉して、使えそうなスキルを探す。
 もはや世界の理が許す限り、盾のスキルと言うスキルは全て解放されている!
 と……言えないのが恐ろしい所だな。どんだけ深いんだよ。
 まあ、浅い範囲の普通の勇者辺りが覚えられるスキルなら大抵網羅できるほどの力が俺にはある。

「ディフェンスリンクEX!」

 俺が盾に向かってスキル名を唱える。
 このスキルは初めて唱えるな。
 盾から直接教わるスキルなんて初めてだけど、使いこなせないはずは無い。
 このディフェンスリンクというスキルは、言葉通りの意味だ。

 効果は――俺が味方と認識する周辺の人物が受ける攻撃を、俺が受けた物に変換し、全て肩代わりする。

 EXは……勇者の限界値だ。
 他にもいくつかあるが、女神に気づかれないようにするにはこの程度で良いだろう。
 カッと結界の様な膜が広範囲に展開され、俺が仲間と認識した者達を守るスキルは作動した。

 中途半端な防御力だったら自殺スキルだ。
 もちろん、今の俺なら余裕で耐え切れる。

 皆を守る。それが俺の役目だ。
 もう二度と俺より後ろにいる仲間に攻撃は通らない。

 範囲は20メートル程度。これよりも出力を上げると女神に気づかれそうだ。
 遠慮する必要はないが何が起こるか分からないし、加減をしている。

 今はまだ、本気を見せる訳にはいかない。
 俺を倒せないと理解するなり逃げられたらたまったもんじゃないからな。
 本気を出すのはラフタリア達が来てからだ。

「錬」
「なんだ?」
「避けずに相手を切りつけろ」
「な――死ねというのか!?」
「絶対に大丈夫な力を使った。やれ!」

 俺の全身をチュインチュインと音が鳴り響く。
 そりゃあ前線にいる連中のダメージを一挙にひきつけている訳だから、当たり前か。

「あ、ああ」

 周りの兵士が切られているのに痛みが無くて唖然としている。
 その様子に気づいた錬が恐る恐る防御を捨てて捨て身で転生者に剣を振るった。

「避けない? 馬鹿じゃねえの!」
「喰らえ! バリアブルメサイア!」
「何!?」

 転生者は錬を一刀両断したつもりだったのだろう。
 ニヤリと笑っていたが、全くダメージを受けずにいる錬を見て表情を変えた。
 そして錬の剣が煌々と輝き、巨大な剣となって敵に降り注いだ。

 おお、なんか派手なスキルだな。
 前の錬のスキルには無かったぞ。あんなの。

 そういや錬は一度別の異世界に行ったとか言っていた。
 おそらくは、その時に剣が習得したスキルと言う所かな?
 異世界にしか無い物品とか持ってないかな?
 いや、もう俺は必要ないけど、こっちの連中には必要だろうし。

「うう……生きた心地がしなかったぞ、尚文」
「だが、大丈夫だったろ?」

 よく刃を肌の間、数ミリをギリギリで避ければ、何よりも早く無駄が無いと言うが、それは俺には適応しない。
敵から受ける『ダメージが0ならば』、敵の攻撃など 無視して攻撃すれば避ける動作すら必要がなくなる
 つまり事実上何よりも早い攻撃だ。
 まあ、あまり褒められた戦法でもないが。

「だとしても、あんまりやりたくない手段だ。それが当たり前になった時が一番怖い」
「敵を前に、余裕を見せると死ぬぜ!」

 カッコつけた転生者が錬に後ろから襲い掛かる。

「余裕? 信頼と言ってほしいな」
「グワアァッ!」

 剣を後ろ手に回して錬は転生者の不意打ちを軽く往なして切りつける。

「おお……成長してるな」

 動きにキレがある。
 それどころか、単純な技量にも差がある。
 達人と素人が戦ったみたいな、絶対的な実力差、みたいな。
 強くなったと自称するのは偽りじゃなかったようだ。

「ところで……あのなメルティ、フィーロ。いい加減信じて欲しいんだけど」

 先ほどからメルティとフィーロが俺に向かって魔法とスキルをぶっ放し続けている。
 なんか敵に操られて苦しいよね。今、楽にしてあげるわ。
 ごしゅじんさま、フィーロはごしゅじんさまの死を乗り越えて頑張るから眠ってとか別れの言葉を言いまくってる。
 凄く良い場面で登場したというのに、まさかのゾンビ扱い。

「死んでねえっつってんだろうが!」
「正体を現したわ!」
「あーん、ごしゅじんさまがー」
「いい加減にしろお前等!」
「……常日頃の信頼と、あの女神の汚さが起こした悲劇だな」

 半ば呆れ顔で錬が呟く。
 やめてくれよ。体の痛みは無いけど心が痛い。
 そして錬は女騎士に気が付いたのか、手を振って名前を呼んだ。

「エクレール!」
「誰だ、お前は!」

 あ、錬が物凄く傷ついた顔をしている。
 二年越しに出会えた好きな相手に、誰だとか言われたらそうなるか。

「俺だよ! 錬だ、信じてくれ!」
「私の知るレンは幼さのある少年だ。お前の様な奴ではない! 騙すならばもっと似せるを努力をしろ!」

 あー……もう、力を使って錬の外見を幼くしてやろうか?
 だが、そんな事を目の前でやったら間違いなく俺は敵認定されそうだ。

「クズ! いい加減察しろ!」
「ぬ!?」

 俺が先ほどから無抵抗に棒立ちでいるのを見ていたクズは、やっと察したらしい。

「メルティ、そのイワタニ殿はどうやら敵ではない様子じゃ。信じて良いと思うぞ」
「父上……でも……」
「気持ちはわかるが、ここまでしてくれている。今は頼るほかあるまい」

 やっと話ができる状態になった。

「さて、クズ。俺は召喚されるまで、状況をある程度は教えられていた。女王と戦うのは確かに嫌かもしれない。だが、それを、お前の妻は喜ぶのか?」
「ぬ……」

 俺の言葉にクズは苦い表情を浮かべる。
 辛い事をいったが、悪い結果にはさせない。
 必ずメルティもフィーロも……皆、全て救ってみせる。

「まだ答えを出す必要は無い。だけどこの戦争でメルロマルクにどれだけの被害が出る? それを女王が喜ぶのか?」
「……イワタニ殿の言葉はもっともじゃ。皆の者! イワタニ殿に続け! メルティはワシの指示に従って指揮を取るのじゃ」
「は、はい父上! ……まだナオフミの事、信じた訳じゃないんだからね」

 などとツンデレみたいな言葉を放つメルティ。
 フィーロと同じく、俺が死んだ事を悲しんでいたらしいから、今の俺が半信半疑なんだろう。

「わかっている」

 まったく、戻ってきたらゾンビ扱いだ。
 あの女神もやってくれるじゃないか。
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