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盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

盾の勇者の成り上がり

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全てを守る力

 そうして暗い道を歩き続けた。
 幸い、道を進む事自体は可能だった。
 途中……何度も休みを入れながらも、ずっと、歩き続ける。
 やがて様々な世界が俺の前を通り過ぎる。

 正直、迷子になってしまったかのような錯覚を覚えた。
 気が付くと砂漠だったり、密林だったり……世界の狭間と言うのは本当だったんだな。
 ただ、魔物や動物を始め、人間には出会わなかった。

 生命の息吹が無い場所……と言うのだろう。
 途中、何度も挫け掛けた。
 だけど、空に浮かぶ目的の世界に向かう為に俺は……歩き続けた。

 あの世界にはラフタリアがいる、みんながいる。
 守ろうと決めたんだ。
 例え、志し半ばで朽ち果てようとも、俺は――。

 四聖武器書が手元にはあった。
 本を開いて常時確認を取る。
 物語は進んでいない。
 いや、既に意味が無いのかもしれないと何度も思ったけれど、諦めないと決めた。

 歩き続けて随分と時が過ぎた。
 一日か一週間か一ヶ月か、はたまたそれ以上か。
 時間という感覚が凄く鈍い。
 この狭間の世界では空腹と言うのをあまり感じない。
 砂漠を歩いた時はさすがに死ぬかと思う程の飢えと渇きを経験した。
 けれど、俺は乗り越えて見せた。

 随分と長い事歩いた気がする。だけどまだ辿り着けない。
 体感では世界一週を歩いた気がするのは大げさなのだろうか?
 常時暗いから良くわからない。
 ただ、眠気も無く、疲れだけが蓄積して行く。
 あのアークって奴がクソ女神と似た存在だというのを忘れていた。
 人間である俺が奴等の時間認識とは大幅に違ったんだ。

 空を見上げると、行くべき世界とは別の世界が、くっ付く瞬間が見えた。
 あれは……世界融合だったのだろうか?
 まるでシャボン玉のようだと思う。
 髪が伸び放題だ。時間がどれだけ経っているのだろう?

 だけど進むのをやめない。やめるつもりは無い。
 迷宮の様な世界に迷い込んだ時はうんざりした。
 行きたい方向に行けないのだ。

 やってられない。
 時々、流れ星が空で光る世界にぶつかるのが見えた。
 あれは何なのだろう。

 もうどれだけ歩いたのかわからなくなってきた。
 永遠と変わらない景色、空を見上げるのもウンザリする。
 この時には俺はもう、行くべき道と覚悟だけで進んでいた。

 やがて頭がおかしくなってきた頃。
 幻聴が聞こえ始めた。

 振り返ればすぐに元の世界に帰る事が出来る。
 何もかも忘れて、全てが夢であったと諦めようと唆す声が聞こえた。

 だが、俺は……進むのをやめるつもりは無い。
 だって、逃げるなんて出来なかったんだ。

 俺を信じてくれた人がいる。
 俺を頼ってくれる人がいる。
 俺の為に、力になりたいと願う人がいる。

 その人達に俺は何が出来る?
 その身を張って、守ることしかできない。
 あんな理不尽に俺は屈するつもりは全くないんだ。

 やがて、歩きながら考える。
 如何にあのクソ女神と戦った時に、効率的に戦えるかをイメージし始める。
 最初は検討が付かなかったけれど、アークの話が本当ならば、無い事も無い。

 0のシリーズでダメージが入るんだ。
 同様に0の盾で耐えられる。
 まあ、突破されたがな。

 世界の理?
 なら別の世界の理に頼る。

 歩きながら何度も模索する。
 どうすれば世界の理をその身に宿せる?
 魔法の原理を思い出すんだ。

 魔力は自身から作り出す。
 その力を具現化させているに過ぎないのなら、この魔力をもっと潤滑させ、少しでも助けになるよう……一歩でも先へ、メディアを倒す力へと磨きをかけたい。

 俺の本質は回復と援護、盾が邪魔しているけれど、そこは変わらない。
 ならば、その本質を練り続けろ。
 自身の中にある魔力を極限まで練り上げて、奴に対抗できる魔法を作りだして見せるんだ。

 そんな考えをずっと……自分の認識がおかしくなるまで繰り返した所で、龍脈法に関して思い出す。
 リベレイションは混合だった。
 龍脈法は外にある力を具現化させるんだ。
 これって……考え方によっては、世界から……力を借りるようなモノだ。
 これを奪う力に変え、自分の魔力として酷使すると、メディアのルールなんじゃないかと思い始める。

 だから俺は、借りる事に重きを置く。
 幸い、ここでは力が借りれるようだった。
 立ち寄る世界で龍脈法を練り始めた。
 やがて……自らの魔力を外へ放出し、龍脈法をその身に循環させる方法を編み出した。
 世界から力を借りて、戦う手段の模索だ。
 空っぽになった自分の魔力を満たすため、辺りから力を借りる。
 これを考えて行く内に世界と自己を混ぜ合わせる感覚を覚えた。
 まだ、出来る事がある。その……真理を読み取るんだ。

 歩きながら良く考えるもんだ。
 体感時間って不思議だな。
 もう、何年も歩いているような……気がするのに、一夜の様だ。
 そう思いながら……俺は次の世界を通り過ぎた時、俺から何かが零れるのを感じた。
 次の瞬間、言葉を失った。


「な――」

 そこは……俺の知る、復興させた村だった。
 だが、誰もいない。完全に廃墟のようだ。

「おい! 誰かいないのか!?」

 帰ってきた。そう思いながら俺は村の建物を調べる。
 何処にも人っ子一人いない。
 まさか……既に世界は滅んでしまったのか!?

 心の中を黒い感覚が支配してく。
 それでも否定したいと言う想いが、心のそこで俺の理性を呼びとめる。
 きっと、戦争で住居を変えたんだろう。
 うん、そうだ。そうに違いない。

 そして俺は、自分の家だった所に入った。
 やはり……俺の記憶寸分違わない俺の家だ。
 ……どうなってしまったんだ?
 俺は戻って来たんじゃないのか?

 家から出て空を見上げる。
 空にはまだ、世界が広がっている。
 まだ、狭間の世界のようだ。

 ……諦めない。
 例え、何があろうとも……俺は諦めないと決めた。
 ラフタリアに再会するんだ。
 そしてみんなに。

 因果律だったか。
 最悪、盾に力を授けてでも、その因果律を弄って無茶を可能にしてやる。
 考えてみれば女神の理屈は因果律という物を使った攻撃とも取れる。
 なら盾が行った俺の世界の改変もある意味、女神と同等の攻撃でもあるだろう。
 盾は女神のように強引に使えない。もしくは力が足りないのだ。

 俺は歩き続ける。
 するとまた別の世界が現れた。
 それは何処までも一本道の階段だった。
 さっき俺がいた場所は幻覚だったのだろう。
 ならば何処までもこの階段を上って見せる。

 その間にも俺は、少しでも自分を磨こうと考えを巡らせた。
 やがて……外の魔力と内の魔力の区別がつかなくなってきた。

「よくここまでこれたね」

 階段の先には、アークが待っていたかのように座っていた。

「もう少しで辿り着けるよ。普通の人ならここまで来れないけどね」
「さっき、俺の知る村があった」
「そう……そこは君が、君の力で作りだした思い出の場所だと思うよ。君があの場所に戻りたいと願ったのが形になったんじゃないかな? だって、君の行くべき世界にはまだ辿り着いて無い」
「連れてけよ」
「さすがにここまで来たらやってあげる必要は無いよ。もう目の前だ」
「むう……」

 ……あれは俺が魔法で作ってしまったモノだったのか。
 なんとなく、何かが掴めてきた気がする。

「じゃあ、先に行っているからね」

 ぴょんと身軽にアークは、俺が進む先を進んで行ってしまった。
 追いかけたのに追いつけない。
 どんな理屈なんだ、この場所は。

 次に辿り着いたのは、フィトリアの遺跡だった。
 一度来た道だ。知らない場所じゃない。
 無視して通り過ぎようとしたが、迷いの森を抜けられなかった。
 だから渋々遺跡の中を進んだ。
 やがて……あの小瓶があった石室に辿り着いた。

「ゴールだね。ここまで来れるとは、君達の覚悟は確かな物だ」
「良いから先に進めさせろ」
「まあまあ」

 石室の中にはあの小瓶がある。

「君はこの小瓶を持っていた子から話を聞いた事は無いのかな?」
「えっと……通訳込みだったが言っていたな」

『その時の勇者曰く、一口は永久の苦しみ、二口は永劫の孤独、三口飲んだら……恐ろしい末路があるそうです』

 だったか。

「ボクの話を聞いて、聞き覚えが無い?」
「あるな」

 永久とか永劫とか、凄く嫌な響きだ。

「一口飲んだら不老の苦しみ、二口飲んだら不死になって大切な者が死ぬのを永劫に見届けなければならない」
「三口には恐ろしい末路だったか?」
「これはね。エリクサー、アムリタ、仙桃、金丹、トキジクノカク、どれも不死の薬だね。それだよ」
「なんでそんなモノを? アイツはなんで一口だけで抑えているんだ?」
「約束だからだと思うよ。じゃなきゃ自身が世界を脅かす存在になるから」
「そうか」

 頭の軽い鳥だけど、約束は守るとかそういう奴だったのか。
 考えてみれば不老不死に近い竜帝と釣りあう程の存在でなければいけないのだろう。

「ドラゴンは役割が違うからね。ボクも大目に見ているんだ」
「あっそ」
「ついでに言えば、あの世界にある薬は何倍にも薄めているよ。効力も低いし、ルールがあるのさ」
「ルールね」
「君は不老不死の存在を見て、どう思った?」
「反則だろ」
「うん。あの世界ではルール違反だよね? できるとしたら、勇者に殺されるのさ」

 なるほど……。

「これはその原液、薄めた方だと三口飲んだら世界に勇者を強制召喚されて、いずれ殺される。だけど、これは飲んだらどうなると思う?」
「原液……だろ? しかもここは……あの世界じゃないんだろ?」
「そうだよ。どうなると思う?」
「そもそもなんで殺す必要が……って」

 不老不死の奴が起こす事件か。

「信頼出来る子にのみ任せているから大丈夫だけどね。問題あるようなら回収に行くつもりだったし」

 フィトリアはコイツと知り合いなんだろう。
 二口で不老不死なんだろ?
 じゃあ、その先は……。

「うん。終わりなき戦いの為の力を授かる。言いかえれば神になるよ。楽にね」
「……」
「でも……君達にはもう不要かもね。ここまで来れてしまった」

 と、アークは小瓶を閉まった。

「君達? 不要?」
「ああ、ごめんね。注意するべきだったかな? やっぱり気づいてなかったんだ。君達、次元がずれてたから両方とも認識がずれていたんだね」

 注意されて、俺は新たに体得した力を使う。
 するとあっちも同様に、認識を広げたように、俺は一緒にいたと言う相手と並行する世界のチャンネルを合わせた。

「ナオフミ様!」
「ラフタリア!」

 そこには、そう、ラフタリアがいたのだ。
 力から逆探知して理解する。
 ラフタリアも、アークに話をして、この道を歩いて来ていた。
 考えが同じというのは嬉しい気持ちにしてくれる。

「君達はあの道を歩き続けて、自身を変質させていったんだよ。気づいている? 君達、途方も無い時を過ごしているんだよ」
「げ!? それって行くべき世界がどうなっているか――」
「ああ、大丈夫。その為におまじないをしたし、時間の流れが物凄く早い世界を歩かせたからね。意志が強ければ超えられると思ったよ」
「おまじない?」

 握手して集中しただけだろ。

「まあ、ボクが使える魔法みたいなものだと思ってくれればいい」
「はぁ……それで、変質とはどういう事ですか?」
「君達、自分の力を練り続けていたでしょ? それが人の限界を超えたんだよ。じゃなきゃあの場所からは抜け出せない」
「はぁ?」

 確かに、魔法の工夫を歩き続けて考えていたが、それが人の限界?
 馬鹿も休み休み言え!

「正確には、最初の一歩を踏み出した所かな。どうする? もっと進む?」
「冗談も大概にしろ」
「冗談じゃないんだけどなー……ただ、まだ君達じゃ勝てないと思うよ。後少し、認識を広げて、自分の方向性を定めないと力が具現化出来ない」
「方向性……」

 なんとなく言っている事が理解できた。
 俺は自分の戦闘スタイルは何かと考える。
 俺がしてきた事は常に守ることだけだ。
 確かに時には自ら敵を屠る時もあったが、それは余りにも少ない。

 本質、方向性……まるでクラスアップ先を決めるような感覚だ。
 盾の勇者だった俺はクラスアップをした事がないが、間違っていない。
 視界にもそれに近い何かがあるような気がする。

「君達はどんな可能性を広げるんだい」

 アークは手を合わせて答える。

「そう言えば君達が行く世界にはクラスアップと言うのがあったんだっけ? それが、今、君達の前にあると思ってくれれば良い」

 ……何だろう。
 さっき、再会した時から、このアークと言う奴の気配が感じ取れるようになっている気がする。
 殺意と言うか、何か背筋がひやりとする何かがあるのだ。
 本人にその気は無いのが感じ取れると言おうか何故かわかる。
 って、それは良いんだ。
 何が悲しくてクソ女神を倒すために神にならねばならない。

「決めなくても、君達は行くべき世界の為に力を付けて行く。だけど、それで勝てるの? 何かに突出しないと勝てないとボクは思うな」
「そうだな。中途半端な力じゃ、奴には勝てないだろうよ」
「さっきの薬を飲めばその女神を倒す十分な力を得られるよ」

 そう言って例の赤い薬を渡そうとしてくる。
 それが悪意ではない事は変質した身体から理解できた。
 だが。

「……わかった」
「じゃあ、これを――」
「違う。他者からもらった力じゃ、奴には勝てないとわかったんだ」

 コイツに自分の目的があるように、俺にも俺の目的がある。
 それを成す上で『女神を倒す力』を手に入れた所で、女神は倒せても俺の目的は達成できない。
 それでは意味がない。

「ナオフミ様……」
「ラフタリア……ああ、そうだな」

 ラフタリアと目を合わせる。
 するとラフタリアが何を言いたいのか伝わってきた。
 ……俺は他者を守る盾であり、ラフタリアは剣だった。

 俺は、自身の方向性を決めた。
 元から俺は誰かの盾になる事しか出来なかった。
 ならばそれを極めよう。
 ラフタリアが何を定めたのかも伝わってくる。

 俺……岩谷尚文の本質は守る事。
 抗いようもない、どんな不条理からも皆を守る。

 全ての理不尽から――全てを守る力。

 そんな夢みたいな力でなければ、ダメなんだ。
 ラフタリアはその想いに応えてくれた。
 もちろん、ラフタリアだけじゃない。
 俺の力へと変わる性質は俺だけでは成し得ない。
 守る者がいて、初めて意味ある力になるんだ。

「君達は、本当に心で繋がっているんだね。凄いと思うよ。そこまで相手を信頼した、方向性を定めるなんて」

 視界が広がる感じがした。
 さっきまで自覚していなかったけど力が溢れてくる。
 今までの自分を超越した力。

 ……これなら女神メディアと互角以上に戦う事ができる。
 そりゃそうだ。
 敵と限りなく同じ存在になったんだ。
 後は物理的に勝つ方法を作り出せばいい。

 解り易い、皆を守る為の象徴……簡単だな。

 俺は、力をほとんど失ってストラップとなっていた盾に、自分の力と外部の力を混ぜる。
 三つの力を融合させて、新たな盾を生成した。

 その強固さは今までとは違う。
 持っている力を全て防御に割り振ったんだ。
 それこそ、どんな存在からも全てを守る力とする為に。 

「信頼は力になる。だけど、依存は違う事を心に刻んでおいてね。君達は大丈夫だと思うけど」

 俺達が認識を広めると同時に、アークの後ろに門がある事に気づいた。

「そろそろ行った方が良いんじゃないかな? 時間はもう無いと思うよ?」

 四聖武器書を広げる。
 すると、ページが書き込まれていた。
 メルロマルク軍の陣形が瓦解し、転生者達がメルティに向かっている最中だった。
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