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盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

盾の勇者の成り上がり

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不老不死

「ボクの説明が変だと思った?」
「ああ」
「だって……ルールなんて世界毎に違うんだもの。何が正しいなんて人それぞれでしょ? ボクにはそう見えなくもないよ。その正義感を満たすため、力を補充すると銘打って世界を滅ぼす時もあるんだから」
「は? だって滅びから救うのが目的なんだろ?」
「君の世界で言う所の、武器を持った犯罪者に素手で戦える? 目減りする力を補充するために、世界を犠牲にするのさ」
「本末転倒だな」
「大の虫を生かすために小の虫を殺す、なんだろうね。間違っている?」

 ……否定はできない。
 ルールはそこにいる人々が作って行くモノか。確かに一理ある。
 俺が経験した事で言うなら盾の勇者を迫害する事はメルロマルクのルールだ。
 実際、俺が戦ってきた多くの勢力からすれば、俺は悪い奴と映るはず。
 俺が悪なんだから、悪を倒すのは正しい事となる。

「ただ……もう世界に乗り込まれてしまっているんだよね?」
「ああ、既に八つの世界が引っ付いてしまっている」
「多分、君が行こうとした世界は、その女神が降り立つのに必要な量が八つの世界を繋げる事なんだね」
「理屈はわからんが、おそらくな」

 今までの情報をまとめるとそうなるな。
 でなければ、奴自身が直接乗り込んでLv上げとやらをすればいい。
 それが出来ない理由があるとすれば、消去法で一番無難なのがそれだ。

「そうだね。紙に物を乗せるのをイメージして、軽い石なら乗っかるよね? だけど重い石なら? それが乗れるだけの厚さかな。紙は世界、石は神だよ。実際は少し違うんだろうけど、無理矢理乗ろうとしても弾かれてしまったんだろうね」

 紙と石か。
 そういえば、世界融合が始まってから魔物のLvが急上昇したな。
 紙の容量が大きくなったから、魔物のLvも上がった?

 世界には広さがあって、それを乗せられる重量が決まっている。
 自分が乗れるラインまで大きくして、その世界に乗れば良いって事か。
 一応筋は通っている。

「……話はわかった。じゃあ保護する世界に通報すれば世界は救われるんだな?」
「多分、無理だね。そこまで行かれると難しい」
「なんだと?」
「君の世界に乗り込んだ者は、もう遊んでいるんだと思うよ。ゲームみたいに世界の国々を戦わせてどちらかが勝つまで戦わせる。自分達の国が勝っても相手の国が勝っても、敵が近づこうものなら即座に世界から力を吸い取って逃げるつもりなんだ。自分を信じた者、戦争に勝利して喜んだ者が絶望する瞬間を見て笑う為に。聞いたことがあるよ。そう言う事を喜ぶ連中の話を」

 どこまで外道なんだ。
 まだ起こっていない事なのに腹が立ってくる。

「要するに、ボタンひとつで世界は滅んでしまう状況なんだ。助けに行ける領域じゃない。手遅れだよ。過去現在未来とか御託を並べたって土台となる世界が無くなれば巻き戻せるはずもない。次元跳躍や並行世界移動なんて似たようなモノでしかないよ」
「だからって諦める訳にはいかないんだ!」

 俺には、あの場所が平和になってほしいという願いがある。
 決めたんだ。あの世界を救うって。

「わかってるよ。ボクは何も君に諦めろなんて言わない。それにしても……そこまでの事を仕出かしていると言うなら、マークされていそうなんだけどなー……内部犯だったのかな?」

 ローブの呟きに、警察内にいる犯罪者を想像する。
 信用を笠に着て、着実に犯罪をするんだ。
 精霊が通報をしても、その通報する先がアイツだったのなら、助けは来ない。

「じゃあ、お前は……そんな保護する世界の住人なのか?」
「ううん。ボクは違うよ。あくまでボクがやりたいからしているだけだよ。ボクはボクの信じる事をしてるだけ。それこそ人の数と同じように戦う目的があるんだよ」
「まさしく無数に存在すると?」
「そう、正しさなんて場所毎に様々さ。君が戦う相手は悪趣味過ぎるとボクも思うけどね」

 そうかー……と呟きながらローブはトコトコと何歩か歩いて指差す。

「君が行こうとしている世界は、多分あそこだと思うよ。ただ、ここからだと見えるけど随分遠いね」

 遠い空を指差した。
 そこには、一つの大きな玉が浮かんでいる。
 ただ、歪に歪み始めているのが一目でわかる。
 中で何かが玉を小さくさせているような、そんなふうに見えた。

「あそこには一度行った事があるんだ。警備の存在もいたはずだったけど、今はいないみたいだね」
「行った事があるのか?」
「ボクもあの世界には少し、力を授けているんだよ? 君みたいな子に力を貸せるようにね」
「……」
「三つの願いを叶えましょう。さて、君は何を願うかな?」

 突然、問題を出してきた。
 ……俺はランプの魔神とかの話を思い出した。

「金、死者の蘇生、権力、好きな人に振り向いてもらう。そして……不老不死だよね?」
「あ、ああ」
「あの世界にはその不老不死になった者とかを殺せる力を授けておいたんだ。そうやって不老不死になった者が世界を滅茶苦茶にしていくのを見て楽しむ世界もある」

 どこの世界にも外道がいるのか。
 俺達の敵であるクソ女神だけじゃない……本当、理不尽な世の中だ。

「君の世界だと、娯楽かな? 映画とか漫画、動画に該当する。その世界じゃ放送される物語となっている感じだよ」
「迷惑な話だな」
「だね。で、ボクは立ち寄った世界にはね。自分で対処できるように、その程度の相手なら保護する世界が出てくる程度でもないように力を与えているんだ。君が概念攻撃を受けて生き残れたのは多分、その力のお陰かなー……」

 だから絶対とか永遠とかの攻撃を受けて俺とラフタリアは現実世界に逃げる事が出来た?
 そう言えばアトラが行く前にそんな事を言っていた気がする。
 先ほどの話に繋がると思う。

 不老不死になった奴がする事はなんだ?
 自分の王国を作り、不死である事を振りかざすんじゃないか?

「魔神はどうするんだ? 上手く事が運べなかったら、乗り込んでくるんじゃないのか?」
「このタイプの神は完全娯楽派だから諦めも早い。死ななければいくらでも機会や世界があるからね。だけど今回は違うよ。完全に武闘派だね。勝てるはずもない」
「お前の理屈はわかった。冗談にしか聞こえないが筋も無い訳じゃない。じゃあ、どうすればいい?」
「ボクが倒して来ようか? 君を助ける訳じゃないけど、利害が一致しているからね」
「近寄るとすぐに世界を滅ぼすんだろ?」
「それは保護する世界の気配に詳しいからだね。ボクは……精霊に認識されないようにある程度は察知されない。近寄る事は出来ると思う」

 精霊が認識できないと言っていた。
 つまり、コイツには何かあると見て良いだろう。

「ただ、世界を守るというのは難しいかな。乗り込んで目の前にまで行ったらさすがに気づかれるし、遠くから倒そうとするとあの世界の異分子そのモノを消し飛ばしてしまうと思う。ボクはそこまで器用じゃないんだ。最悪、世界と一緒に倒す事になるだろうね」
「異分子? あの世界の異分子さえ倒せば良いんじゃないのか?」
「まって、異分子ってのはね。異世界から来た者、その世界の理から外れた存在、その他諸々だよ。敵味方区別無く消し飛ばしてしまう。きっと、要となっている勇者も殺しかねないなぁ……」

 フッとローブの右手から光が溢れる。
 それは0の爪のような形状をした光のツメだった。
 但し、サイズはかなり違う。
 フィーロが使った0の爪は爪の形状が保たれたまま、光り輝いていた。

 だが、ローブが見せた爪は、幾本もの剣が連なっているかのようだった。
 たぶん、コイツが授けた力と言うのは、フィトリアの遺跡にあったあの小瓶だと思う。
 つまり……コイツが俺の命の恩人なのだ。

 ならば信じて良いのかもしれない。
 いや、考えてみれば最初から死ぬ事を承知で来たんだ。
 最低でも奴を倒す手段があるのならば、世界と一緒に俺達が死んでもコイツがクソ女神を倒してくれるなら、無念は晴らせる。

 ……ダメだ。
 倒すならあの世界を守って、クソ女神を倒さなければならない。
 それが出来ないから悩んでいるんだが、そこだけは譲れない。

「世界は滅んでしまうかもしれないけど、その女神は殺せると思うよ。第二第三の犠牲者を出さない為に、ここで終わらせる?」
「待て」

 俺はローブの肩を掴んで言い放つ。
 決めたんだ。あの時、世界を守る為に行くと。

「どうしたんだい?」
「別の手段は無いのか?」
「ない……と言って君は諦めるかな?」

 俺は無言で首を横に振る。

「だろうね」

 ローブは光の爪を消して振り返る。

「俺は……あの世界を救うと決めたんだ」
「じゃあその覚悟を持って、振り返らない決意がある? 後悔しないでいられる? 世界を救うために、犠牲になる事だって厭わない?」
「愚問だな。それが出来ない奴がむざむざ死にに戻ってくるか?」

 守りたい人々がいる。
 助けたい人がいる。
 愛すべき人がいる。

 その上で自分が犠牲になるくらい、安いもんだろう。
 というか、今までとあんまり変わらない。

「長話をさせたな。直ぐにでも行かなければならないんだ」

 俺はローブが指示した世界に向けて足を向ける。

「普通の人が歩いて行ったら大変な事になるよ。送るからもう少し待っていて」
「知るか! 俺は行かねばならない。その為に何かあるとしても」

 俺は行くと決めた時から思った事を告げる。

「後悔しない」

 俺の返答にローブは諦めたように肩を落とす。

「……わかったよ」

 ローブは羽織っていたローブを取って畳んだ。
 そこには……フィトリアの遺跡にあった壁画に描かれていた変な生き物が立っていた。
 ぶっちゃけると猫のような生き物で、二足歩行、ちょっと横に長い。
 ただ、ハンティングのネコでも無ければ、青ダヌキ程でも無い。
 オーバーオールを着た、尻尾がトカゲみたいな形状をしたネコの獣人にしか見えない生き物だった。

 盾の精霊が俺の周りを飛び回り続けている。
 まるで信じろと言っているかのようだ。

「死ぬよ? それでも良い?」
「異世界に行って、生きるというのは戦いだと知った。ぬるま湯のような場所で安穏としていたって死ぬ時は死ぬ。後悔しないように俺は行くだけだ」

 この選択で後悔したとしても……俺は厭わない。

「じゃあ……この道をずっと進んだ先にある世界を通って行くと良い。そこに君は行こうとしてボクにぶつかったんだろうし、結果的だけど近道になると思う」
「そうか、参考になった。感謝する」

 まあ、本当かどうかはわからない。ただ、あの小瓶の持ち主で命を間接的に助けてくれた分だけ信じるとしよう。
 ん? ちょっと待った。
 歩いて空の星に行けるのか? とは思うが他に手段が無い。

 盾の精霊も俺を送りつけるような事は既に出来ないみたいだし。
 だからと言って目の前の怪しい奴を信じて送ってもらうと言うのも嫌だ。
 あまりにも不確かな事をやろうとしているのはわかる。
 そもそも目の前に行くべき世界があるのだから素直に行くべきじゃないのか?

「そう言えば、俺だけ自己紹介をして、お前は名乗っていないな」
「ボクの名前? 色々とあるけど、一番長く名乗っている名前で良い?」
「ああ」
「アーク」
「そうか、じゃあな」
「待って、上手く行くおまじないをさせて欲しいな」
「なんだ?」
「まずは握手して」

 はぁ……こんな事をしている暇は無いんだがな。

「次に意識を集中して……してなかったらわかるからちゃんとね」
「うるさいな」
「まあまあ……うん、もう良いよ。御武運を」

 俺はアークと別れて進もうとしていた道を歩き出した。
 本来、盾の精霊が導いていた光は既に無い。
 車やロケットに乗って行くかのような異世界へ、歩いて行く無謀な考えが脳裏を過ぎる。

 だけど、そんな事は知った事では無い。
 どうせ、後は無いんだ。
 あの場所で盾の精霊が導いてくれるのを待つと言っても無理だっただろう。
 アトラの理屈だと最後の力みたいに言っていた。
 あのアークって奴が送ってくれるようだったけど、それも遅いな。
 大変な事になる? 大いに結構、既に大変な状況だ。
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