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盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

盾の勇者の成り上がり

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敵の敵は

 死ぬために行く訳じゃない。
 みんなを守るために行くんだ。
 そう強く願った。

 メディアに勝つための力が無くったって、俺は行く。
 だけど出来ればみんなを守りたい。
 この身が朽ち果てようとも。

 ドサッと壁に当たったかのような感覚を覚えると同時に気が付く。
 ただ、痛みが全然ない。
 スポンジに当たったような変な感覚だった。

 辺りは夜で、空は大きすぎる星が瞬いている。
 いや、なんか気持ち悪いくらい大きな宝石みたいな星が光ってるんだ。
 ただ、地面は暗くてよく見えない。
 ……周囲を見渡していると、ラフタリアがいない事に気付いた。

「ラフタリア!」

 呼んでも返事が無い。

「ラフタリアー!」

 何度もラフタリアの名前を呼ぶのだが、声がしない。
 ここはもう異世界なのか?
 視界にステータス魔法が出ているか確認する。
 ……反応が無い。

 俺は星明かりを頼りに、辺りを探し始めた。
 丘の様な斜面を一歩ずつ踏み出して登る。
 ……どれくらい歩いただろうか?
 多分、30分くらいだと思う。

 丘の、大きな岩の上で全身ローブを羽織った奴と出会った。
 そいつは星空を見上げながら、座っていた。
 辺りにはたくさんの蛍の様な光が集まっている。

 身長は……小柄だ。
 俺の腰くらい。
 ただ、少し横幅があるので人間とは思えない。

「やっと来た……丘の上から見えていたよ」

 ローブを羽織った奴はそう、俺に話しかけてきた。
 見えていた? この足もとも見えない暗闇の山の様な場所で?
 とにかく、話をしてみるか。
 事と次第によっては戦わねばならん。

「道に迷ってしまってな。綺麗な女の子を見なかったか?」
「え? 何言ってるの?」

 胡散臭い奴だ。
 ローブで全身を隠していると言うのがいかにも怪しい。
 座っているんだけど、どうもローブの伸び方に違和感がある。
 後ろに不自然に伸びているのだ。
 尻尾の類があると見て良いだろう。
 亜人、もしくは獣人の可能性が高いな。

「それよりも、君達は何処へ行こうとしていたのか、教えてくれると力になれると思うよ」
「妙に親切だな。そう言う奴を俺は信じない性質でな」
「なーるほど……じゃあこっちの事情をお話ししていい?」

 岩から降りたローブを羽織った奴は俺の方へ歩いて来て答える。
 蛍火が辺りを照らす。

「正直に言うと、君達がボクにぶつかってきたんだよ。だから気になったんだ」
「は?」
「ここに来る時、何かにぶつかった感覚がなかった? それ、ボクとぶつかった時のだよ」
「はぁ……」

 さっきのがコイツの所為?
 じゃあ、異世界に移動する事が失敗したってことか?

「余計な事をしてくれたな!」
「な、なんで怒るんですか。ボクは普通に歩いていただけだよ。そこをいきなり進路を変えて突進してきたのは君達だよ?」
「む……」

 そういえば、アトラはあの世界に戻る事を強く願えと言っていたのに、俺は……みんなを守りたいと思っていた。
 同時にあの女神に勝ちたいとも考えていた。
 この考え方が……まさか行く方角を変えてしまった?
 げ……じゃあラフタリアだけ異世界に行ってしまったのか? どうしたらいいんだよ!

 盾! 何か反応しろよ!
 そう思って盾のストラップを確認する。
 すると盾のストラップから光が出現して、目の前のローブの周りを旋回する。
 って、良く見たらこの辺りを飛んでいる蛍火、全部精霊じゃないのか!?

「お前……一体何者だ! なんで精霊を連れまわしている」
「君には見えるんだ?」

 怪しいローブを羽織った奴は以外そうに答えた。

「連れまわしていると言われても……生憎とボクには見えなくてね」
「目が見えないのか?」
「そうじゃなくて、ボクは精霊と言う類の存在が見えないんだ。体質って言うのかな?」

 ……。
 ローブはチャリっと音を立てて、懐から何か光る物を取りだした。
 武器か!?
 思わず身構えるけど、ローブは俺に見えるようにそれを広げる。
 豪華な装飾の施された高そうなネックレスだった。

「これが精霊達の目印になっているんだ。精霊もボクを認識できなくてね」

 ポイっとローブは俺の前にネックレスを投げる。
 すると辺りの精霊たちはネックレスの周りに群がっていた。
 ……ウソは言っていないようだ。

「ボクが何者かと言われても、君にそれが理解できるかわからないし、事情を出来れば教えて欲しいな。普通の人がなんでこんな所にいたのかとかね?」

 盾の精霊とやらも盾から出てコイツに近寄ったのだ。
 話をしてみる価値があるかもしれない。
 そもそもここが何処なのかというのもある。

「一つ聞いていいか?」
「いくらでも答えてあげるよ?」
「……じゃあ、ここは何処だ?」

 星空が綺麗だとは思うけれど、足元が良く見えない。
 精霊の明かりがあってもそれは変わらないのだ。

「ここ? 次元の狭間と言えばわかる?」
「は?」
「世界と世界と間だよ。空に浮かんでいるのは、一つ一つ世界なんだ」

 ローブが空を指差して答える。
 よーく目を凝らして見ると星では無かった。
 なんとなく空に浮かぶ水晶玉と言うのか? 本当に星じゃない。
 しかも思いのほか近く見える。梯子とかで手を伸ばせば本当に届きそうだ。

「どんな世界でも辿り着ける狭間の世界。見た感じ君は魔法が無い世界から来たっぽいから、わかりやすく言うと宇宙かな? それに近い場所。ルールなんて無い混沌の世界。普通の人間じゃ迷子になる事請け合いだよ」
「まあ……俺の常識が通じない場所なのはわかった」
「そっか」

 俺は空を見上げる。
 満点の星々が輝いて見えた。
 この星、一つ一つが世界だと言うのか……俺が向かおうとしていた異世界は何処にあるのだろうか?
 盾の精霊が教えてくれないとわかりようがない。

「次はなんだい?」
「そうだな……お前は何者だ?」

 行くべき場所は盾の精霊が導いてくれると仮定して、その精霊が何故、近寄っているのかを問う。

「その前に君に関して教えて欲しいな。じゃないと答えようがない」
「む……」

 確かに、相手に根掘り葉掘り聞く前に名乗る必要がある。
 俺だって、自分の身分を隠して色々とやっていた事があるんだ。
 何かを頼むなら金か、相手が望む事をする必要がある。
 つまり、最低でも事情を理解してもらわねいといけないだろう。
 先ほどからこのローブは怪しいけど素直に答えてくれている。

「俺の名前は岩谷尚文。魔法の無い現代社会の大学生であり、とある世界に召喚された盾の勇者だ」
「そうなんだ? じゃあ君の言う現代社会ってどれくらいの文明?」
「……?」
「わからない? これだけ様々な世界があるという事は、魔法文明、機械文明と色々な世界があるんだよ。だから現代社会と言われても機械……ロボットがいる世界もあれば、魔法の存在する文明社会もある。だからどれくらいかの基準が欲しい」

 そう言われて黙りこむしかなかった。
 どれくらいの文明?
 俺の世界ってどの程度なんだろう?
 マンガやゲームで育ってきたからある程度は理解できるが、比較対象が俺の世界と魔法のある中世っぽい世界しかないから、判断に悩む。

「そうだなー……傾向と対策だけで良いから聞くね、年表幾つ? AI搭載型の自立起動型のロボットがいる? 情報伝達能力はどの程度?」
「年表は――」

 俺はローブの質問にある程度答える。
 するとローブは納得したように頷いた。

「なるほどね。よくわかったよ。そんな君を精霊が別の世界に召喚して力を貸してほしいと頼まれた訳だね」
「まあ……一応、間違ってはいない」
「確かに現代召喚だね。それで?」
「ああ、俺は世界が危機に陥っている世界に召喚され、そこで波と呼ばれる世界融合を相手に戦っていた。だが、神を自称する女に、謎の攻撃を受けてやられたと思ったら元の現代社会に戻っていた。そこから……召喚された世界へ再度行く最中だった」

 俺は事こまかに、ローブに向かって事情を説明した。
 ローブはふむふむと頷く。

「こっちはこれだけ言ったんだ。俺の質問にも答えてもらうぞ」
「当然、じゃあボクが答えられる範囲で、ボクの話をするよ」

 オホンと咳をしたかと思うとローブは改めて答える。

「ボクは君が戦った相手を殺す為に世界を渡り歩く存在、神狩りと言うのが、君にはぴったりかな」
「な――」

 まてまて、どういう事だ?
 そんな都合の良い存在がいるのか?

「信じて無いね」
「当たり前だ。そんな奴がいるならなんで直ぐにアイツを倒さないんだ」
「あのねー……この空を見てくれない?」

 俺は言われて空を見上げる。
 無数に存在する星に見える世界。

「ボクはあくまで一人なんだよ? その手の行為をするようなのはまさしく星の数ほどいるんだ。それに長い事、同時多発で行われていてボクじゃ対処のしようが無いよ」
「星の数ほど?」
「うん。これまでの話から君には奴等がどんな存在なのか教えてもよさそうだね」

 ローブは一つ一つ俺に教え始める。

「基本的に多いのは、長く存在し続けた世界の果てかな?」
「長く、ね」
「君の世界基準で言えば科学が発展し続けた先には何があると思う?」
「そうだなー……」

 ってコイツのペースに飲まれるのは癪だけど、考えてみようと思う。
 科学が発展した世界か。
 あの世界は魔法があって、勇者がいて、魔物がいた。
 ジャンルで言えばファンタジーだな。

 で、科学で発展した世界というとSFが浮かんでくる。
 超能力とか、巨大ロボットなんかが戦うんだよな。

「漫画やゲームだとロボットで戦争か?」
「その先、考えうる先の事」
「……わからないな」

 色々と分岐するだろ。
 衰退したり、発展したりと、別の星へ移民したりとか。

「まあ、ある程度少ないんだけどね。死なない研究を始める世界があるんだ」
「はぁ……」
「やがてその研究が完成し、人々は不死になる。体を切り裂かれても死なない体、何万年経っても衰えない精神ってね」

 それって、もはや創作物の物語とかを超越している先だな。
 不死を題材にした話は読んだ事があるけど、結構過酷な話だった覚えがある。
 だとしても、衰えない精神とやらが実在するなら耐えられるのかもしれない。
 ましてや、自分だけ不死になる訳じゃないだろうし、ある種、文明の完成形とも思える。

「こうなると自身を神と自称して元が同じ生命を馬鹿にし始める。それならまだ良いんだけどね。もっと支配しようと動き、自分の世界全てを支配する。じゃあ、次は? 新たに異世界を発見したとしたら?」

 ……なるほど。凄く単純だ。
 そんな事、俺の世界でもやっているし、あっちの世界でもやっている。

「異世界を支配しようと侵略を始めるのか」
「正解。この場合は科学と言う名の法則を持った魔法を別の世界に持ち込んで戦争するんだ。そして支配する世界を増やして行く。欲望の赴くままに、ね。返り討ちに遭うかもしれないけど大抵は成功するだろうね」
「厄介極まりない行為だな。それが奴の正体か?」
「あくまで一例だから違うね。手段も異なるし、どちらかと言うと魔法系だと思う。ある程度は想像が出来るよ」
「じゃあ教えろ。奴の目的はなんだ? 経験値が欲しいと言っていた」
「多分、そのまんまの意味か、力にする為だろうね」
「力?」
「うん。世界から魔法要素や命を吸い取り、自らの力とするんだ。そうなったら吸われた世界は消えるしかない。ま、力に出来る世界は限られているのだろうけどね」

 凄く詳しいローブの説明に俺は食い入るように聞き始める。
 つまり奴はあの世界から力を吸い取る為に乗り込んでいて、魔法の無い世界では何もしないという事なのか。

「永遠とか無限とか絶対とか攻撃手段に使っていて、何をされたのかわからないとなると考えられるのはー……概念攻撃だね。過去現在未来はそのままの意味で時間攻撃も出来るのかもね。並行世界まで来ると完全に殺しにかかってるよ」
「概念攻撃……」

 クソ女神から受けた攻撃が思い出される。
 訳もわからずに死んだ。
 おそらく、あれの事だろう。

「そう。相手に向かってそれを押し付ける。子供の喧嘩みたいな論理だよ。経過なんて実はどうでも良い『相手は死んだ』という情報を押し付けて現実化させる。そんな相手に世界の理で戦っても、絶対に勝てないだろうね。ご丁寧に自分には永遠とか不死とか永久とかの単位を当てはめているだろうし、速度とかにまでこだわるのなら相当の武闘派かな?」

 情報を押し付ける……。
 正直、意味がさっぱりわからないが、常識を離して考えてみる。
 普通なら敵を傷付けて、血が沢山出れば死ぬ。
 切り付ける事と血が出る工程を無くせば、何もせずに相手は死ぬ。
 そんな事が実際にできるかはわからないが、奴はそのとんでも理論に当て嵌まる事を確かにやってみせた。

「そんな奴に……どうやって勝てるんだ?」
「だから、同じ穴のムジナでそう言った力を使う奴を取り締まっている連中が駆けつけるのを待つのがベターじゃないかな? 君に力を貸していた精霊も、そう言った所から助けが来るのを待っていたんだ」
「何?」
「ああ、説明を忘れていたね。もちろん異世界侵略をする世界に対して、異世界を保護する世界もあるんだ。無限に世界はある。娯楽のように、正義感を満たすためにね」

 正義感を満たす、ね。
 昔の錬や樹、元康が頭に浮かんできた。

 確かに、人助けをするのは気持ちが良い。
 誰かに感謝されて不機嫌になる奴は珍しいだろう。
 それは敵がクズであればある程良いと思う。

 しかし、コイツ……随分と含みのある言い方をしたな。
 これは俺を安心させようとしているのかもしれない。
 普通に話をしているが、味方だと決まった訳じゃないし、信用できるかもわからない。

 ましてや、敵の敵が味方である、なんてルールはない。
 敵の敵は新たな敵である可能性だって十分ありえるんだ。
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