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盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

盾の勇者の成り上がり

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出る杭を打つ

 世界各地で起こる波を鎮める戦いはある程度目途が立ってきている。
 今までは一ヶ月半のペースでメルロマルク近隣だけをしておけばよかったんだけど、今は数日毎に波がある状況になってしまっている。
 それも後少しの波を抑えるだけで一週間に一回くらいのペースで抑えられるようになりそうだった。

 ただ、聖武器と眷属器が欠けた状態での波はその分、負担が大きい。
 それさえどうにかすれば、後はゆっくりとした波が訪れる。
 というのはグラスの弁だったかな。

「どうにか収まりましたか」

 波を抑えて、俺たちは合流したグラスと話をした。
 今は波の起きた場所の近くで問題が無いか、調査している所だ。
 これが終わればポータルで帰還して終了となる。

「そっちはどうだ?」

 グラスは定期的に波へ入っては戻ってくる。
 なんと言うか波によって繋がる世界は基本的にはグラスの世界……だとか。
 稀に違うと言って直ぐに戻ってくるけどな。
 最近だと海での波だな。
 って、そんな事は良いんだよ。グラスの世界の状況と言うのがあるんだ。

「お前の世界の方の波が負けるとどうなるんだ?」
「一応、私に協力してくださっている眷属器の所持者が沈めています。こちらの世界が早急に抑えた場合は波から魔物
が溢れだす状況が続き……しばらくすると勝手に静まりますからどうにか……という状況ですね」
「あんまり芳しくなさそうだな」
「ええ……相変わらず転生者は眷属器を所持したまま逃げ回っています」
「厄介な事だな」

 正式な所持者であるかすら怪しいもんだな……。

「貴方達が羨ましい限りですよ」
「そっちが揃ってたら潰しに来たんだろ?」
「……ですね。何が幸いするか分かりませんが」
「幸いでは無いだろ?」

 不幸中の幸いでグラスは辛うじてこの世界に協力しているに過ぎない。
 本当に運が良かったら、最初からこんな事にはなっていないからな。

「しかし……世界融合してしまう事に関して転生者は何も思う所がないのか?」
「むしろ何故妨害するのか? と、思っているようです。あっぷでーとみたいなもの……などと訳のわからない事を言っており話になりません」

 アップデート……波がか?
 ゲーム脳も極まっているな。
 まあ見方を変えれば敵が強くなったり、新しい装備が増える訳だから、あながち間違ってもいないんだが、それとこれとは別だろう。

「嘆かわしいな」
「まったくです。この世界には転生者はそこまでいないのですか?」
「正直に言えばわからないというのが正解だな」

 自己申告だし、目立つような事をしていればわかるが、経歴だけでは判断しきれない。
 ただ、悪い芽は摘むと言う訳ではないが、妙に頭角を現しているような奴はマークしているとクズは言っていた。

 メルロマルクを始め、様々な国が内密に有能な者に目を光らせている。
 貴族や王族出身、特に勉強をした訳でも無いのに改革的な発明や作戦をするような者、山籠りを始め、国の記録も無いのにLvの限界を突破した者、他過去に見た事も無い能力を人前で使った事のある人物は秘密裏に捕縛しているとか。

 黒かどうかはわからないから厄介極まりない。
 勘付かれる前に抑える必要があるからな。
 これで隠すのが本当に上手な者だったら厄介だけど、この辺りは目立つ傾向があるからな、そこまで難しくは……無いらしい。

「一応、転生者がいるというのは秘匿している。下手に目立つ方法で捕まえたり弾劾するような真似は碌な事にならないからな」

 危険回避能力だけは高そうだからなぁ。
 問題は内部にそういう奴が潜んでいる可能性か。

「多分問題ないと思う連中を強化している最中だ」

 今の所、頭角を現している層は俺の所の奴隷や極一部の連中で、それも画期的な強くなる方法を見つけた訳でも無い連中だ。
 これでこの中に転生者が混じっていそうな奴と言ったら、まさしく俺の村で戦力となっているような連中しかいない。
 付き合いがそれなりに長いから、それも問題は……無いと思いたい。
 サディナ辺りがあまりにも万能過ぎるから怪しいと睨んでいたら押し倒されかけたしなぁ……。

「お姉さんの事じろじろ見てどうしたの? しょうがないわねぇ。村の子達の前で実践する時が来たのね。ナオフミちゃんったら大胆ね。お姉さん頑張るわ」
「ふざけんなやめろ! コラ、押し倒すな! 服を脱ぐな! うわっ! ら、ラフタリア、コイツを止めろ!」
「サディナ姉さん!」

 とか問答をしたのは記憶に新しい。
 かなり危なかった。本当に押し倒されかけた。

 あれは大丈夫だろ。
 まず女だし、ゲーマーっぽくない。
 女の転生物でバトルとか、何処まで武闘派な訳?
 これで転生前は男で女に転生したとかだったら、脳ミソ壊れてるだろ。

 女であるのを受け入れて、オタクとわかる現代人を押し倒そうとするか?
 ラフタリアの両親とも何か繋がりがあるし、世界を大事にしている。
 俺に隠れて、策略を練っているにしては隠すのが上手すぎる。
 ま、一概に言えないけどな。

 とにかく、波に挑む勇者以外のメンバーはある程度、注意深く観察している。
 その範囲では大丈夫、だと思いたい。
 むしろクズに調査させている貴族や冒険者で画期的な活躍をしている連中の方が怪しいのが出てくる。

 そういう奴等はさっきも思いだしたが、秘密裏に処理というか抑えている最中だ。
 最近では大人しく……いつのまにか行方知れずになっているのも多い。
 タクトも競争相手には敏感だったのか、フォーブレイの方じゃ政敵を処分していたみたいだ。

 これは幸運だったのかな?
 画期的な活動をした貴族ーってのはこれである程度減っていたとは……なんとも皮肉な結果だ。

「後は完全無関係で冒険者やっている層くらいなものだけど、冒険者の方はギルドで管理しているから筒抜けなんだ」

 俺は使った事の無いギルドだけど、Lvとかその辺りの記録は取るらしい。
 だから異様に頭角を現している、なんて奴は一発で判明すると言う訳だ。
 いきなり強力な魔物を倒してきたーとかの奴は危険度最大で要注意人物と断定される。
 今の所、限界突破は独占状態だから冒険者ギルドも世界の危機的状況に困っている最中……というのを演じて炙りだしをしているとか。
 ま、こんな感じだ。

 出る杭は打たれる、出ない杭は無視で問題ない。
 だから転生者が暴れる土壌はもう無い。
 暴れたら一発、勇者が出撃して一撃必殺と言う状況だな。
 どんな能力を所持しているかわからないのが怖いが……タクトの様な勇者の武器を奪う能力はもう使えない。

「なるほど、やはりいるのですか」
「怪しい。だけだけどな。限りなく黒で存在する。そういう連中には参加させていない」

 むしろ波を軽視するような連中だ。
 もしも波をもっと広げさせる妨害は……出来ない空気だ。
 世界中が躍起になっているからな。

「グラス、お前の世界はどうなんだ? 波を抑えようと言う運動は?」
「あるにはありますが、転生者が世界の半分を牛耳っている手前、破滅を信じていない者も多くなってしまっていて……」
「その点で言えば……こっちはまだマシか」

 権力を持って支配される前に手を打てたんだ。
 そういう意味ではタクトの存在に逸早く気付けたのは不幸中の幸いだ。
 まあ、その分犠牲も大きかったが。

「転生者を処分……出来ればよいのですけどね。ところで気になったのですが」
「なんだ?」
「あの転生者を痛めつけた後に火炙りの刑に処された女性は確か勇者と共に居た者でしたよね。何があったのですか?」
「ああ、そう言えばお前は一度戦った事があったんだったか」

 グラスは一応、錬、元康、樹とその一行と過去、戦った事がある。
 既に錬達がボロボロに倒れて、その中にヴィッチも混じっていた。
 あの時は爽快だった。
 倒れているヴィッチの頭を踏んづけたからな。

「アイツはな――」

 俺はグラスにヴィッチが行った軌跡と言うか悪行を語り始めた。
 クズの所で王女として生まれ、傲慢に育ったらしき話、フォーブレイでタクトと知り合い、四聖召喚に関わって俺を罠に嵌め、元 康の所で贅沢三昧し、風向きが悪くなるや逃亡して錬に取り入り、結託して樹を騙して国家転覆を画策。
 捕縛されて政治的生贄にされたが、命からがらタクトに助けられて実の母親の殺害に加担して世界戦争にまで発展させた。
 そのツケで処刑されたという話を。

「なるほど」

 俺は……次にグラスの言った言葉の意味を同情と言う意味でしか受け取れなかった。

「何処の世界にも、似たような者がいるのですね」
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