挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

盾の勇者の成り上がり

336/835

八番目

「陸地……? ど、どうなっているんですか?」

 事前に話していたはずの樹が声を漏らす。
 そりゃあ知っていたとしても、これは言わずにはいられないだろうな。
 視界のタイムアイコンは通常の砂時計……ゼルトブルの物に戻ったが、それ所では無い。

「ぼさっとしているな! 今は……波から出た魔物を仕留める事を意識しろ。あんなLvの魔物が人家に行ったらどうなるかわかっているだろ!」
「は、はい!」

 そう、樹を含め、ここにいるみんなが思っている事。
 それは……俺達の前に見知らぬ大地が広がっていたと言う事だ。
 波が静まったお陰で新たな魔物が出現する事こそ無くなったが、それ以外の爪痕が酷かった。

「陣形を組んで、出来る限りの魔物を仕留めるんだ! 被害を最小限に抑えろ! 良いな!」

 俺の掛け声に周りに居る者達全てが頷く。
 そして見知らぬ大地の方へグラスが駆け出し、あちらに居る連中と共に魔物の掃討を始めている。

 それから数時間後。
 やっと波の魔物を全て片付けた。

「どうなっているんですか?」

 樹が俺に尋ねてくる。

「少しは話しただろ? 後、波の亀裂から見えたものだって、わからないはずはない」
「しかし……」
「俺だって確認したい所だ。ガエリオン」
「キュア!」

 子竜モードだったガエリオンが俺を乗せて巨竜モードに変身する。
 谷子は……乗せないみたいだな。
 バサァっと翼を広げ、空高く羽ばたいた。
 どんどん地面が遠ざかり、雲の近くまで上って行く。

 俺は目を凝らし見知らぬ大地を眺める。
 そして盾から国の地図を出して、見える範囲で測量した。
 ここからじゃ完全に調べきれないがー……少なくとも、高い所から見渡せる範囲で、新たな大地が出てしまっている。

「ふむ……最悪の事態にはならずに済んだようだが、いつ起こってもおかしくは無い所まで来ている。覚悟するべきだぞ」

 ガエリオンも状況を察しているようだな。

「コップに例えるのなら、もはや決壊寸前か……どれだけ持ちこたえられる?」
「わからん。緊急手段が無い訳ではないが……」

 どうすればいいんだよ。
 タクトを抑えておかなきゃもっと酷い状況になるのだから、どちらかを優先になんて出来なかった。
 それに結果的とはいえ、グラスを完全な敵として殺さずに済んだのは正解だったかもしれないな。
 まあ……未だ味方とは限らないから、仮に敵だったとしたら波の延長戦をするだけだが。

「世界を救うと決めたんだ。やる所までやるしかない」
「なんとも希望的目測であるな。まあ、我もそう思いたい」

 と、話を終えた俺達は地上に戻って行った。

「……」

 波の魔物の掃除を終えた俺達にグラスとその仲間、軍団に近い連中が近づいてくる。
 一触即発な雰囲気……ではないか。
 警戒は怠っていない。
 当然だ。今まで敵だった奴等だしな。

「まずは話し合いの席を設けたいのですが、よろしいですか?」
「わかった。色々と聞きたい事もあるからな」

 俺とクズが代表してグラスの前に立って話を受ける。
 一応、英知の賢王が話を聞けば少しは事態が好転に向かう案が出てくるかもしれないしな。

「そうだな。そちらの世界の勇者はどうなっている? お前は眷属器の方か?」
「はい。そちらの世界での四と付いているであろう勇者は、こちらでは既に一名で……三名は亡くなりました」

 ……厄介な状態になっている。
 他人事ではない分、嫌な問題だ。

「ですから私が単身、世界を生かすため、死ぬ気でこちらの世界に突撃したのですが、誰一人倒すことが出来ず、時間も差し迫り、このような事態に」

 グラスは頭を垂れる。
 まあ、わかっていた事だがな。
 辛うじて抑え込むことが出来たが。

「世界を保つための手段であるから、しょうがないじゃろう。こうなってしまったからには如何に事態を収拾するかを考えるほかあるまいて」

 クズがグラスを宥めて答える。

「尚文さん、どういう事なんですか?」
「前に話しただろ?」

 一応、決戦前には勇者には話している。
 勇者の武器とは本来、どんな役割を持っているかと言う事をだ。

「そうですが、確認させてください」
「わかった。グラス、お前の世界との差異も確認したい。聞いてくれるか?」
「もちろんです。概ね違いはないでしょうが」

 俺はみんなに聞こえるように事実を再確認する。

「では聞いてくれ。本来四聖と呼ぶ勇者は……波において、世界を守る要石の役割を持つ。事、波が起こっている最中に、四聖の全てが死亡すると……その世界は死滅するんだ。もちろん、予防線として眷属器が存在するから即座に滅ぶ訳じゃないけどな」

 連合軍の連中が声を裏返す。
 俺はフィロリアル代表として近づいてきた、馬車を引くフィロリアル……フィトリアを手招きする。

「そして七星……じゃないな。八つの眷属器は四聖を補佐する為に存在する武器なんだ」
「八つ? 七星なのに八つあるのですか?」
「そうだ。おそらく、あそこに居るフィロリアルが八番目の眷属器だ」
「クエ」
「フィロリアルがですか?」
「おかしいか? 今じゃ斧と爪もフィロリアルが任命されたようだぞ?」

 クズが腕を組んで考え込み、連合軍に向けて話す。

「妻の手記にも書かれておった。八つ目があるかもしれないと、そして何故八つ目の伝承が消失していたかは……おそらく、人の目に触れる事の少なさが原因じゃろう」

 そう言う事だ。
 仮に八つ目が存在したとして、何処に居るのかわからないままずっと存在だけ語り継がれていたらいずれ、わからなくなる。
 フィトリアが何故そんな真似をしていたかはよくわからないが……。

「お前はフィトリアだよな」
「クエ」
「なんで波で後方援護していた? お前強いだろ?」

 ぶっちゃけ古の勇者の強化方法をフルコンプしているだろうに。
 手を抜いているなんて事は無いと思うが、実際どうなんだよ。

「クエ」

 ……おい。

「喋れるならちゃんと話せ」
「クエクエ」
「えっと、過去の勇者に人語でなるべく話をするなと注意されているからだそうです」

 みどりが代表して代弁する。
 ……俺もフィーロに喋るなと言った事があるが、過去の勇者も似た様な事をしたのか。

「連携が大事だから、あくまで援護したに留まっていた。長い時間で眷属器を再覚醒する必要があるからそこまで強くないそうです」

 なるほど、長過ぎる時間で眷属器もある程度、休眠と覚醒を繰り返している訳か。
 だから、精々今の俺達程度の強さしか所持していないと……厄介な。

「わかった。じゃあ伝承とかは知っているか?」
「クエ?」

 ……うん。
 これはよくわかる。

「あんまり覚えてないって、ただ人里から離れた砂時計はフィトリアとフィロリアルの担当だそうです」

 ……そう言う所にもあるのか。
 という事は俺達が知らない個所にも龍刻の砂時計はあるんだな。

 考えてもみれば、俺達はシルトヴェルトやシルドフリーデン、他にも点在する多くの国に行った事が無い。
 巨大な山脈や大きな森……人が行かない様な秘境を探索した事なんて、数える程しかなかった。
 フィトリア達はそういった場所で起こる波に対処していたのか。

 人知れず世界を守るって何処の正義の味方だ。
 おつむのつくりはフィーロ並みみたいだけどな。

「ふおおおおお! でっかいフィロリアル様!」
「クエエエエ!?」

 元康がフィトリアに気付いて我を忘れて突撃を始める。
 フィトリアがこれでもかと叫びながら逃げだした。
 凄い、まさしく命がけの逃げ方。
 そこまで嫌いか。

 元康はフィーロにも嫌われているが、フィロリアルに嫌われるフェロモンでも発しているのか?
 いや、他のフィロリアルと程々に良好な関係を築いているし、行動に問題があるんだろうな。

「みどり、俺が許可する。元康を黙らせろ」
「え、あ、はい! えい!」
「ふぐ――」

 眷属器を所持するみどりが、元康を背後から斧で殴り飛ばした。
 そのまま元康は前のめりに倒れる。
 腐っても勇者だ。怪我はしていない。

 にしても、フィトリアも元康が苦手なのかよ。
 フィーロを発情させたのは間違いなくコイツだな。

「話を続けるぞ」

 元康を黙らせたのでフィトリアも冷静さを取り戻して戻ってくる。
 まったく、こいつ等は緊張感が足りないな。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ