挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

盾の勇者の成り上がり

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

333/846

盾の勇者が命ずる

「俺は……まだ負けていない!」

 タクトはふらつく足取りで敵意を俺達に向けてくる、
 そして辺りを見渡し、黒いオーラを立ち上らせた。
 カースシリーズの力か?
 まあ復讐にコイツの女共を殺しているからな。
 カースに侵食されていてもおかしくはない。

「許さないぞ……お前達! エリー、ネリシェン、シャテ、レールディアを殺した! 最強の勇者である俺が……絶対に殺してやる!」

 タクトは錬に視線を向ける。
 四聖の剣を奪えばまだ勝機が残っているとでも考えているみたいだ。
 よくやる。

 これだけボコボコにされているのに立ちあがれるのは、七星のお陰か?
 いや、根性とかそういう要素がからんでいるのかもしれないな。
 随分と立派だとは思うがそろそろ諦めてもらいたい。
 どんなにがんばっても俺達には適わないという事に気付け。

「まだやるのか。一般人にすら勝てない自称勇者、お前の人生は既に詰んでいると言っただろうが」
「ふざけるな! 俺は……まだ負けていない! この七星武器と四聖武器がある限り! パワーが足りないなら、奪うまでだ!」
「タクト! 頑張れ!」

 女共が活気づいてタクトを応援し始める。
 これでタクトがちゃんとした善行をしているなら、俺達が不利になるような状況だよな。
 きっと奇跡でも起こって力に覚醒するのだろう。

「そうかそうか、そんなに伝説の勇者であるという自覚がお前の行動原理として根付いているのか」

 これも想定通りだ。
 だからこそ、俺はその最後の希望を……奪ってやろうじゃないか。

「残念だが、今のお前では錬に勝つことは出来ない」
「やってみないとわからない!」

 タクトは爪を出して錬に向けてヴァーンズィンクローを放つ準備を始める。

「自覚しろ。七星は、四聖に勝てないんだ。そして錬に……いや、俺がさせないんだよ」

 俺は自分の盾のあった場所に手をかざして意識を集中させる。

「……力の根源たるタダの勇者及び一般人改め――盾の勇者が命ずる」

 肉体と魂が対である様に。
 勇者と武器が対である様に。
 通常一本の紐で繋がれた、切れている線に針を通す。

 本来ありえるはずのない分離をより強い形で接続する。
 それはさながら、肉体の為に作られた魂、魂の為に作られた肉体。

「理を今一度紐解き、我が盾をここに」

 バキンと音を立てて、タクトから光が一つ抜け出て俺の手元に戻ってくる。
 強い光が辺りを支配し、その場に居た全員の目が眩む。
 そして、俺の視界に懐かしい盾の項目が現れた。

「な――馬鹿な!」

 ヴァーンズィンクローを放つ先をタクトは俺に向ける。
 その攻撃を俺は真っ向から受け止めるべく、構えた。

「ふん!」

 盾で奴の必殺スキルを弾いて、無効化させた。
 以前に増して繋がりが強まった今、そんな攻撃は無いに等しい。
 ステータスも盾が戻った事で前の状態に……いや、以前よりも数段上がっている。
 まあ、攻撃能力は相変わらずだが。

「どうした? 奪える能力は作動したか?」
「馬鹿な! 馬鹿な! 馬鹿な! なんで俺から盾を奪い返せる!」
「だから言っただろ? お前は俺に勝てないって、既に詰んでいると」

 信じられない者を見るかのようにタクトは口をパクパクさせる。
 だが、それでも……まだ戦意はあるようだ。

「俺はお前が絶望に彩られる顔が見たくてしょうがないんだよ」
「兄貴、凄い悪人顔だ」
「尚文、その顔するの好きだな」
「そこがナオフミちゃんの魅力なのよね」

 サディナの言葉にフォウルと錬は視線を逸らす。
 うん、その気持ちは理解できる。
 俺の顔が悪人という事実は微妙な所だけどさ。

「そうかー? 兄貴はもっとこう……」
「多分、違うと思うぞ。むしろ面倒見の良さだろ」
「あら? お姉さん、こう言うナオフミちゃんも好きよー」

 外野がうるさい。
 俺の良い所なんて今はどうでもいいんだよ。

「さあ、お前に残った最後の希望を……奪ってやる」

 盾に手を添えて、アトラと盾の精霊が教えてくれた奥の手を発動させる。
 本当は出会った瞬間にこれを使っていたら、既に決着はついていたんだけどな。
 あくまで今までのは余興だ。
 最初からこれさえすれば、戦う必要性すらなかった。

「盾の勇者が命ずる。眷属器よ。我が呼び声に応じ、愚かなる力の束縛を解き、目覚めよ」

 カッとタクトの手に渡っていた爪が淡い光を放つ。
 それを確認して、俺は言葉を続ける。

「――汝から眷属の資格を剥奪する!」

 一つ、二つ、三つ、四つ、五つ、六つ、七つ。
 爪だけではなく、全ての七星武器が光り出した。

「な、なんだ!? 何が起こっているんだ! ぐ……力が抜けて行く!」

 あまりの異常事態にタクトは驚愕が隠せないみたいだ。
 そもそもが一人の人間に伝説の武器を複数持たせる事が間違っているんだ。
 四聖も七星も最初からそんな事が可能な様に出来ていない。

「新たな所有者を探し、宿れ!」

 光がタクトから七つ……溢れだし、上空に上って行き、散って行く。
 さながら願いを叶える玉の漫画みたいにな。

 お? 光が、こっちに飛んでくる。
 って、良く考えたらフォウルは小手に選ばれた勇者だったな。
 ……あれ? 二つ多いぞ。

「え? あ、キャ!」
「わ? なになにー?」

 ラフタリアとフィーロに光が降り注いだ。

「これは……槌?」
「なにこれ? つめー?」

 そう、ラフタリアとフィーロを七星と呼ばれる眷属器は選んだようだ。
 奴隷と魔物のアイコンにラフタリアとフィーロの名前が消失する。

「た、タクトから武器を奪うとは何事じゃ! 今すぐ返せ!」
「誰が返しますか!」

 ラフタリアが大きな槌を振りかぶってキツネ女改め、九尾のキツネに向けて振り下ろす。

「えっと……トールハンマー!」

 バチバチと、ラフタリアが九尾のキツネの頭にハンマーが振り下ろされると同時に雷が降り注いだ。

「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」

 キツネ女の叫び声を共に、ブチャっと嫌な音が響く。

「うわ……」

 どうやらラフタリアは九尾のキツネの頭を潰してしまったらしい。

「ラフー」

 耳を抑えて、轟音を堪えていたラフちゃんが勝利のポーズを取る。
 ほぼ、同時だっただろうか。

「死ね! フィロリアルの女王種!」
「わっと」

 咄嗟にフィーロは……何かを展開した?
 パッと見だけど、あれってアトラと俺が良く使っていた壁?
 なんでお前が使えるんだよ。
 いや、まあ、フィーロは俺達とよく訓練していたけどさ。

「え、あ?」

 ゴツンとグリフィンが壁に頭をぶつける。
 その隙をフィーロは逃さず、グリフィンの首根っこを足で掴んで……。

「エアスト・クロー?」

 ゴキっと空中で嫌な音が響いた。
 後はそのまま落下してくる。
 バサバサと羽ばたき、フィーロは着地した。
 その足には七星の爪が嵌っている。

「凄く軽いね! 思わず倒しちゃった!」
「トゥリナ! アシェル! お前……俺から七星まで奪っただと!? 一体どうなっているんだ!?」

 わなわなと震えるタクトだが、俺から見ると随分とちんけな存在に感じる。

「最初から遊びだったんだ。何をムキになっているんだ? 雑魚」
「くたばれ!」

 それでも現実を認められず、タクトは、素手で俺に向かって殴りかかった。
 ゴツンと音が響く。
 痛くも痒くもない。

「う……あ……あ」
「これでお前は勇者でもなんでもない。ほら、やれるものならこの状況を引っ繰り返してみろ」

 つまり勇者でなくなったタクトを処刑したって世界には何の影響もなくなった。
 もちろん、既に殺されている勇者達の関係で色々と問題は山積みなんだけどな……。

「わかるか? これが勇者と偽勇者の実力の違いだよ。仮初の力で誇っていたお前の時代は終わったんだ。世界で遊んだ罪、その身で贖え! シールドプリズン! チェンジシールド(攻)!」

 タクトの周りに盾で作られた檻が出現し、チェンジシールドによって針の付いた盾で串刺しになる。
 ま、死なない程度に加減しているから問題あるまい。

 今殺したい所だが、下手に殺せない理由もある。
 少なくとも、タクトが転生者である可能性が残っている限り、安易には殺せないんだ。
 コイツの裏に何がいるのか泳がせる必要もあるしな。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ