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盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

盾の勇者の成り上がり

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狐七化け、狸八化け

「ふう……少しは……全然晴れないな」

 倒れたタクトを足蹴にしながら吐き捨てる。

「まったくだ。いい加減殺してしまいたくなる」
「そう言うな。コイツにはもっと絶望を叩きこむ必要だがあるんだから。アトラや女王、村の連中を殺した罪がこの程度で許される訳ないだろ」
「……わかっている。兄貴」

 さてと、周りを確認する。
 ラフタリア達はどうなっているかな。
 まずはラフタリアの方へ……目を向ける前にバチバチと雷鳴が未だに轟く方に意識が向いてしまった。

「ちょっとー、お姉さん全然満足してないのだけどー?」

 と、既に焼き魚みたいになってしまっている相手を片手で持ちあげながらサディナは尚も電撃を出し続けていた。
 タクトにした事を思えば、人の事を言える立場ではないが、やりすぎとも思える。
 サディナってこんなに凶暴だったのか……いや、俺の怒りを代弁してくれているのかもしれないが。

 相手の方は……既に死んでいるんじゃないか?
 感電死とか勘弁願いたいな。

「ナオフミちゃん。まだお姉さん暴れたりないわー」
「よくやるな」
「なんかこの姿だと、お酒に酔ったみたいで気分が良いのよー」
「いい加減戻れ」
「あら、お姉さん怒られちゃった」

 サディナは俺の指示に応じてシャチ獣人の姿になる。
 さて、説教……というか突っ込んでおくか。

「お前さ、治って無かったのかよ」
「うふん。ナオフミちゃんに染められちゃった所を見られちゃった」

 キャッとうざいポーズをとってふざけるサディナだが、その手口はシャレにならないぞ。

「お姉さんをルカ種と間違えて挑んでくるんだものー。アトラちゃんの事やナオフミちゃんの事でお姉さんもイライラしてたし、少しはスッキリしたわ」

 とか言いつつ、タクトに銛を向けつつ、バリバリと帯電している。
 口ではストレスが解消したみたいな言い方をしながら絶対怒っているのがわかるな。
 へらへらとしているけれど、本心では怒るタイプか。
 そりゃあそうか……村でのサディナは年長者で、皆の姉みたいな存在だしな。
 アトラの事で怒っていないはずがなかったんだ。

「フォウルの次はサディナっと……」

 サディナが何かしようと動く女共に銛を向ける。

「下手に動くとそこの子みたいになるからジッとしてなさいよー」
「ヒィ!」

 さすがにサディナに挑んだ奴の末路を見て、女共も下手に動けないようだ。
 まあタクトがボロクズの様に倒れ、アオタツ種の頭が吹き飛ばされて、更には感電死だ。
 正直、俺が奴等と同じ立場でも動けるか怪しいぞ。

「でりゃあああああああああああああああ!」
「キュアアアアアアアアアア!」
「あああああああああああああああ!」

 ん? 錬とガエリオンの掛け声が聞こえてくる。
 と、思って上を見ると巨大な竜帝が、今まさに砦の前に落下する瞬間だった。
 ガエリオンは巨大な竜帝の喉元に喰らいつき、錬は額に剣を刺している。
 ドスンと地響きが砦にまで伝わってくる。

「クゥウウア!」

 くぐもった声でガエリオンは鳴いた。

「ふ、ふざけるでない! 竜帝の欠片を寄越せだと! 勇者の助力を持って挑む矮小の欠片如きが我によくもそんな真似を言える!」

 再度暴れ出そうとする竜帝に錬が剣を強く押し込んで、咆哮を上げさせる。
 完全に決まっているな。

「死んでも渡すものか!」
「……ギャウ」

 スイッチが切りかわったな。アレは親ガエリオンだ。
 おそらく戦闘中に何度も子ガエリオンと人格を切り替えて錬と協力していたのだろう。
 そして負けた巨大な竜帝に最後の宣告を言い渡したと言う所か。
 バキっと嫌な音が辺りに響き渡った。

「グフ……」

 ガエリオンが敵の竜帝の首をへし折った音だ。
 痙攣し、動かなくなった竜帝から剣を抜いて錬は砦の壁を器用に足場にして上ってきた。

「終わったか?」
「一応はな」

 俺がタクトを足蹴にして宣言する。
 ガエリオンは何をしているんだ?

 う……。
 お食事イベント中と言うのだろう。
 血が噴水のように噴き出す中でガエリオンが竜帝の死骸に潜って行く。
 野生の魔物を捕食する光景はフィーロで見た事あるけれど、それよりもグロテスクだな。

 錬はその光景を見て口元を隠す。
 吐き気を抑えているのだろうな。

「な、何を……しているんだ?」
「敵のドラゴンが竜帝の欠片とか矮小の欠片って言ってただろ?」
「ああ」
「竜帝というのは幾千にも別れてしまった欠片を奪い合って、一匹の竜帝として降臨するらしい。過去の記憶とかそういう物が集まるとか……」
「良くわからないが、ガエリオンは欠片を所持していて、あの巨大なドラゴンからその竜帝の欠片を?」
「らしい。で、相手が渡さなかったから殺して現在、奪っているんだろ」

 世界の危機に一つに集まろうとする本能がーとか言う下りで全然ガエリオンにドラゴンが挑んでこないと思ったら、タクトのドラゴンが刈り取っていたのだろうな。
 ボリボリとガエリオンが敵竜帝の心臓辺りを貪っている。
 その辺りに欠片は集まっているんだろう。

「おそらく、Lv100の限界突破は竜帝から授かった技術と見て良い。上手く行けばガエリオンがしてくれるようになる」
「そうか! 村や国のみんながもっと強くなるんだな!」
「可能性だけどな」

 ま、その分も兼ねて現在、タクトを殺す訳にはいかないんだけどな。
 どうやって100を超えたかを聞きださなければこの先、厄介でしょうがないし。
 上空を見ると、フィーロはまだ敵のグリフィンと戦っている。

「中々……やるじゃないの」
「フィーロ負けないもん!」

 だが、どっちに軍配が上がっているのか、一目でわかるな。
 フィーロの方が動きにキレがある。
 相手のグリフィンはフィーロによって所々傷が付けられて、まさにやられる寸前と言う所だ。
 いずれ決着は付くな。

 っと、ラフタリアの方に目を向けるべきだろ。
 と、俺はラフタリア達の方に意識を集中させる。
 するとラフタリアとラフちゃんは幻覚対決を、キツネ女と共に続けていた。

「ラクーンの癖にやるではないか。思いだしてきたぞ……わらわを封じたラクーンもお前のような匂いをしておった!」
「そんなの知りませんし、興味もありません!」

 まさしく化かし合いだ。
 火を放ったり、水を呼び出したり、周りの景色が歪んだり。
 ラフタリアってあんなに魔法使えたっけ?
 と言うか、相手の幻術か?

 ラフタリアには幻覚を見抜く資質も高い。
 だからかキツネ女との斬り合いを繰り広げられるのだろう。
 相性って重要だよな。
 タクトがあの女共と連携してこなくて良かった。

 俺が行くとしたら杖が無い状態であの中に入るのは多分、無理だ。
 まあ、その場合はラフタリアがキツネ女の幻術を解く側に回っていたんだろうけどさ。

「ラフー」
「ふん、分身の魔法か。その程度見抜けないと思うてか」

 ラフちゃんがラフタリアそっくりに変身してラフタリアの隣に立つ。
 おい……気付いていないのか?
 ああ、なるほど、これがラフタリアの仕込みだったのか。
 それなら良い得物を渡すべきだよな。
 なんとなく決定打が足りない気がするしさ。

「ラフタリア! 受け取れ!」

 俺は鳳凰剣をラフタリアに向けて投げる。

「ラフー!」

 しかしラフちゃんがぴょーんと飛び跳ねて、俺が投げた剣を手にした。
 え? ラフちゃんが受け取るの?
 というかそれ以前の問題として、ラフちゃんって武器とか使えるのか?

「そっちが本物かー!」

 ラフちゃんが受け取った剣でキツネ女の攻撃を受け止める。
 ああ、そういう意図があってラフちゃんは剣を受け取ったのか。
 かわいらしい外見をしている割には頭が良いな。

「ははは、ラクーンのブスめ。その程度の幻でわらわを騙せると――ぐふ!?」

 笑みを浮かべるキツネ女の背中を本物のラフタリアが剣を突き刺した。
 思い切り化かされているぞ。
 狐七化け、狸八化けって言うもんな。
 ラフタリア達の方が上手だった様だ。

「残念ですが、はずれですよ」
「ラフー」
「馬鹿な……実体を持つ幻、じゃと!? 匂いまで同じとはどういう事じゃ!」
「真実を話す必要はありません。化かし合いなのでしょう? そもそも……この子をなんだと思っていたのですか?」
「ラクーンのブスが……幻覚で見せて竜帝とグリフィンの聖域を突破させた訳では……」

 タクト側ではラフタリアがサンクチュアリを使った事になっていたのか。
 一番幻覚に強そうな奴を化かしていた訳だから、ラフタリアと同列の種族と勘違いするのも頷ける。
 実際、同じ遺伝子で作られている訳だし、匂いも一緒だったのか。
 声や肌触りは違うんだけどな。今度調べてみよう。

「残念ながら、それも外れです」

 剣を引き抜き、ラフタリアはラフちゃんと打ち合わせた攻撃を始める。
 そう、この攻撃はクズに提案された物だ。
 どちらかをおとりにして、もう片方が隙を突く、そしてラフタリアとラフちゃんが――

「行きますよ! ちゃんと付いて来てください!」
「ラフー!」

 高速でラフタリアはキツネ女に向かって連続攻撃を繰り広げる。

「な――ぐ――う――」

 斬り、突き、凪ぎ、天命剣、蹴り、一式、二式、三式、後変幻無双流の剣技と次々と繰り返す。
 それをそっくり、鏡合わせのように真似するラフちゃん。
 さながら格闘ゲームで有名な大技を連想させる。
 確か夢魔のキャラだったはずだ。
 最後は二人揃って剣を下から上に持ち上げ、キツネ女に背を向けて剣に付いた血を拭う。

「イリュージョンミラー!」
「ラフー!」

 ポンっとラフちゃんが子狸モードに戻る。

「まだ……わらわは……負けておらん」

 倒れる筈だったキツネ女が、血まみれで囀る。
 どう見ても負けだろうと思ったが……キツネ女の造形が徐々に変わって行った。
 おいおい……まるで変身を解いたかのように、大きなキツネの化け物へと変貌して行くぞ。

 これは、助太刀するべきか?
 と、一歩前に出た所で。

「まだ……だ」

 タクトが意識を取り戻し、むっくりと立ちあがった。
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