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盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

盾の勇者の成り上がり

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最強の七星勇者

 鞘から剣を抜く。
 俺は剣術の経験は無い。
 けれど錬やラフタリア、女騎士の剣技を腐るほど受けてきている。
 だから、多少は使えるだろう。

 この剣は、武器屋の親父とイミアの叔父が急ピッチで作ってくれた、鳳凰の素材を元に作られている。
 霊亀の素材の様な癖があるらしいが、一度経験した二人はすぐに対応し、作ってくれた。
 その名も鳳凰剣。
 効果は色々とあるんだけど生半可な目利きじゃ鑑定不可能なのは霊亀剣と同じだ。

 先ほど錬が放った鳳凰烈風剣と言うのはこの剣をコピーして出たスキルだ。
 基本的なステータスは錬の持つ霊亀刀の基礎値と殆ど変らないらしい。
 成長する力と言う専用効果が問題だな。

「お前に勇者の武器は過ぎた玩具である事を教えてやる。かかってこい」

 タクトのプライドを破壊する為に宣言した。
 と、同時だっただろうか。
 ドスンと音がして、音の方へ目を向ける。
 するとそこには頭が吹き飛んだ龍が今まさに倒れた瞬間だった。
 もちろん、その龍の頭を吹き飛ばしたのはフォウルだ。

「待たせたな、兄貴」
「遅いぞ、フォウル。何回コイツを殺しかけたかわからん。あまりにも弱いから杖を貸してやった」
「コイツが空に飛んで逃げたから仕留めるのに手間取った」

 フォウルに悪態を突きながら、こっちに来るのを待つ。
 するとタクトが信じられない者を見る目で叫んだ。

「ネリシェン!」

 だが、龍は既に事切れていて、タクトの叫びに答えない。

「てめええもか!」

 タクトが血の涙を流す様な形相でフォウルに向かって走って行く。

「おっと」
「へぐ――」

 タクトの攻撃、魔法を全て避けたフォウルが咄嗟に、タクトの顔面に蹴りを入れる。

「いきなり何をするんだ」
「大事な仲間が殺されて激怒してんだ。アオタツ種を無残に殺されたからだろ?」
「それは俺の言葉だ。アトラの命はお前の女を全て入れても釣り合わない程重いんだ」

 ゲシっとこれでもかと体重を掛けてフォウルはタクトを踏みつけて俺の方へ来る。

「で? 兄貴は杖まで奴にやったのか?」
「ああ、コイツには絶望を叩きこまねばならないからな。勇者に必要な事を……身を持って教えてやろうと思って」
「そうか、じゃあ俺も勇者ではなく、一人のハクコとして……アトラの兄として戦いたい」

 そうか……フォウルも俺と同じ気持ちなのか。
 ならば俺も勇者ではなく、一人の人間……岩谷尚文として戦う。

「許さない……絶対にお前等を殺してやる!」

 タクトが懲りずに杖を振りかぶってフォウルに向かってくる。
 フォウルが小手でそれを受け止めて弾くとケタケタと笑いだした。
 案の定、小手が光となってフォウルの手から離れ、タクトの手に移る。

 直前の話を聞いていなかったのか?
 フォウルはアトラの仇を討つ為に、敢えて勇者ではなくなったというのに……。
 それとも、そんな事もわからない位怒っているのか?
 例えそうだとしても、それは俺達だって同じだ。

「これで俺は全ての七星武器を手に入れた! 世界唯一の最強の七星勇者になった。もうお前等に勝算は無い! 素直に……死ね!」

 その言葉に取り巻きも大興奮だ。
 さっきまで地獄絵図でも見るみたいに固まっていた癖にな。

 にしても、世界唯一の最強の七星勇者……なんだその痛いフレーズは。
 そこに四聖の武器が全て加わると史上最強の勇者にでもなるんだろうか。
 くだらん。

「ああはいはい。武器が増えただけで調子にのるな。勝てなければ意味がないんだよ」

 以前女騎士が言っていたな。
 最強になった後何をするか、だったか。
 少なくとも俺には理解できない話だ。

「さて、最強の七星勇者様……第二ラウンドの始まりといこうか」

 剣を前に向け、俺は意識を集中する。
 それはフォウルも同じだ。

「「無双活性!」」

 俺のはフォウルと違って見よう見まねだ。
 それでも完全に概念を習得しているから、出来なくはないだろう。
 リーシアやアトラみたいに高い資質を持っている訳ではないから何分持つか知らないがな。

「ドライファ・ブーストⅢ! あれ!? 奴の魔法の様にできない!?」

 そりゃあ杖とリベレイションは無関係だからな。
 なにより杖が本当に力を貸していないから最大限強化はできないみたいだ。
 仮にそうなったとしてもまだこっちには切り札があるけどな。

「エアスト・スラッシュ!」

 タクトが爪で俺達を横凪ぎにしようとする。
 それをまさしく紙一重でかわして、近付く。
 前に攻撃を受けた時もそうだけど、見えない訳じゃない。
 ただ、盾の勇者が敵の攻撃を避けてはいけないから、あの時は受け止めたに過ぎない。
 まだオーラの効果時間は過ぎていない。

「ヴァーンズィンクロー!」
「またか!」

 にしてもコイツ、爪好き過ぎだろ。
 スピード狂って奴か?
 奴が持っている七星武器の中で一番早そうだし。

 さすがに杖を持っている時よりも早いけどさ。
 それでも避けられない訳じゃない。

「えっと……魔法剣ってこうするのか?」

 剣先に手を添えて、ツヴァイト・ディケイを付与して思いっきり突く。
 もちろん、防御比例攻撃である点は織り込み済みだ。
 ディケイと言う魔法は回復に該当する魔法の……攻撃だ。

 この魔法は腐敗を意味する。
 つまり、対象の細胞を腐らせる効果がある。
 本来はそこまで威力は無い。
 回復が遅れるという効果を与える魔法だ。

「ガハ……」

 折れないように注意しないといけないな。
 せっかく親父とイミアの叔父が作ってくれた剣なんだし、後でラフタリアにあげようと思っている。大事にしよう。

「ぐ……俺の真の恐ろしさを、その身で味わえ! ドライファ・エレメンタル!」

 杖を振り回しながらタクトは魔法を唱える。
 ああ、その辺りは再現できるのね。

「無駄だ」

 エレメンタル。
 確かリーシアが得意にしている総合属性魔法だったはずだ。
 俺とフォウルは気を集中させ、アトラが得意としていた集を使って、タクトの放った魔法を集め、玉にして撃ち返した。
 もちろん、威力が高いから殺しきれない所はしょうがない。

「な――」

 白い閃光がタクトに向かって飛んでいき、やはり吹き飛ばされる。
 取り巻きはその間に入る事すら出来ず唖然としているな。

「おっと、簡単に吹き飛ぶなよ」

 フォウルが吹き飛ぶタクトに蹴りをして俺の方に飛ばす。

「ぐ……Lv100前後の雑魚の癖に俺に攻撃が入るだと!?」
「お前、さっきから誰の攻撃をしこたま受けてピンチになっているか忘れているんじゃないか?」

 飛んできたタクトを俺は剣で、思いっきり突き刺す。
 もちろん、見よう見まねの剣術だ。

「なんちゃって多層崩撃!」
「う……ぐ……が……うぐ……」

 これを女騎士に見せたらどんな顔をするかな。
 にしても硬い。
 今まで勇者の杖を使っていたからか、尚の事よくわかる。
 ラフタリア達はこんなに低い火力を工夫して戦っていたのか。
 変幻無双流なんて流派が生まれるのもしょうがないと思う。

「タイガーランページ!」

 俺が思いっきり突いている所にフォウルが駆けつけて思いっきり殴り始める。
 それに合わせてこちらからも鳳凰剣で斬り付ける。

「もっと、もっとだ!」

 点を織り交ぜ続けながら俺はタクトに向けて連撃を繰り返す。
 正直、威力が全然足りない。
 その分、気や魔力を駆使して手数を増やすしかない。
 幸いフォウルがこっちにいるから手数は十分だ。
 さながらコンボゲーみたいな感じになっている様な気もする。

「やめろぉおおおおおおおお!」

 堪えきれなくなった取り巻きの女達が武器を片手に走ってくる。
 フォウルが女の一人を殴り飛ばし、ボウリングの様になぎ払う。
 そして俺に近付いてきた奴は問答無用で切り捨ててやった。
 一般人である今の俺ではLv250の者を殺す程の威力が出るかは疑問だが、当たり所が悪かったのか悶えている。

「今の俺に加減できると思うな! 死にたくなければ黙って見ていろ!」

 血が沸騰するかの様な激情に支配されている。
 防御以外での戦闘経験が少ない所為か、それとも敵が許せない程憎い相手だからか、それはわからない。
 どちらにしても、自分でも今の自分が別人なんじゃないかって思う位、感情を露にしていた。

 昔見たマンガでは戦争などで強い興奮状態で戦意が高揚する者がいる、なんて見た事があったが、それに近いかもしれない。
 そうしてタクトへの追撃を再開し、メッタ刺しにする。

「七星武器の全てを手に入れてこの程度か? 冗談も大概にしろよ」
「兄貴、まだやるのか? 俺はそろそろトドメを刺したい」
「悪いなフォウル。まだまだコイツは苦しめないといけないんだ。世界が許さない。いや、世界が許したとしても俺が許さない。もっと……むごたらしく殺すんだよ」
「おう!」

 地面に伏すタクトに俺は剣で尚突きまくり、フォウルは思いっきり踏みつけ続ける。

「オラオラ! もっと苦しめよ。お前が殺した連中はこの程度の痛みじゃなかったんだぞ!」

 身体が炭化する程の痛みがお前にわかるのか!
 けして治る事のない致命傷を受けて、最愛の人に看取られて死ぬ者の絶望がわかるのか!
 死ぬとわかっていて誰かの為に犠牲になる事を選んだ者の気持ちがわかるのか!

「兄貴、そろそろ手加減しないと楽にさせてしまう!」
「はぁ……はぁ……そうだな」

 息が切れる程思いっきり突いてしまった。
 杖の時は遠距離で、しかも火力があったからな。少し冷静を欠いていた。

 しかし……伝説の武器がなくても結構やれるな。
 動きが見え見えなんだよ。
 本当に350で計八つも伝説の武器を持っているのか怪しい強さだ。

「な、舐めるなぁああああああああああああ! ライトニングウィップ!」

 さすがに調子に乗りすぎたか、タクトが鞭を取り出して範囲スキルを放つ。
 俺達はそれぞれ、しゃがんだり飛んだりしながら避け、フォウルは飛び蹴り、俺は柄に手を添えてタクトの肩口を貫く。

「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」

 あ、やっぱり杖で突くよりは硬い……点が効果的に作動する盾じゃないからか?

「これはお前に殺された変幻無双流のババアの分だ。そしてこれが女王の分! 次が村の奴等の分! 共に戦った連合軍の分!」

 剣の柄に細工されている留め金を外す。
 鳳凰剣はその名が示す通り二つに分離する仕掛けが施されている。
 刺さったまま、二つに分離するとどうなる?
 しかも、剣身が赤く輝きだして、タクトの肉を焼き焦がす。

「ウグウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ!」

 二刀流はやったことがないし、上手くできる自信は無い。
 なので、ハサミのようにクロスさせてタクトの胸を斬る。

「そしてこれが――」
「アトラの分だ!」

 剣を一つに戻し、フォウルと連携してタクトの体中を無残に斬りつけた。
 もはやタクトの服はボロボロで全身血まみれだ。
 これで最強の七星勇者とは、ハハ、笑わせてくれる。
 そしてトドメに。

「ドライファ・ディケイ! そうだな……腐敗剣!」
「滅竜烈火拳!」

 魔力と気を混ぜられるだけ混ぜ込んだ腐敗魔法を付与させた鳳凰剣で切り裂く。
 加えてフォウルの見るも止まらない連続打撃が決まる。
 そして俺とフォウルの一撃が共鳴するかの様に交差した。

「ぐわぁああああああああああああああ!」

 切ったその場で傷口が膿んでいく様に見える。
 結構エグイな……この攻撃。
 だが、威力はその分高い。

 そりゃあ変幻無双流の概念を全て継ぎ込んだ攻撃だ。
 一般人の限界にも近いが、限りなく勇者に等しい攻撃と言えるだろう。

 それはフォウルが放った攻撃も同じだ。
 フォウルが放った技は小手のスキルを再現した物。
 転がっている龍を殺す時にも使っていた。

「かっ……ハ……」

 俺とフォウルのツープラトン攻撃にタクトは倒れた。
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