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盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

盾の勇者の成り上がり

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行商

 翌日
 洋裁屋に顔を出すとあのオタクっぽい子が笑顔で出迎えてくれた。

「はいはーい。服は出来てますよー。久々に徹夜しちゃった」

 その割りにギンギンとテンションが高い様子の洋裁屋。その洋裁屋は店の奥からフィーロの服を持ってきた。
 基本色が白のワンピースだった。真ん中には青いリボンに所々青い色を使ったコントラストが施されており、素朴だけど綺麗に作られているのが分かる。
 なんていうのだろう。着る相手を選びそうなシンプルイズベストという感じだ。

「ごしゅじんさまーこれを着るの?」
「ああ」
「わーい!」

 今までマントを羽織っていたフィーロはその場で全裸になろうとする。

「ダメです」
「えー」

 それをラフタリアが止めて、店の奥へと案内してもらう。
 俺は店内で着替えてくるのを待った。

「じゃあ魔物の姿にも変わってね」

 あの店員の声が店の奥から聞こえてくる。

「なんでー?」
「じゃないとリボンが肉に食い込みますよー」
「やー!」

 微妙に怖いことを言うな。

「分かったー」

 ボフンと変身する時に聞こえる音がして、そして。

「うん。やっぱり似合うわぁ……」

 なんともうっとりするような声が聞こえた。

「じゃあ行きましょうね」
「うん!」

 店の奥から女性陣が出てくる。
 そしてフィーロの方へ目を向ける。
 ……うん。元々の容姿が良いからか本格的に天使みたいになっている。
 白いワンピースに、純白の羽……胸に青いリボンがアクセントとして、なんていうか。
 二次元のお子様天使ヒロインみたいだ。

「ごしゅじんさまー」
「あ?」
「どう? 似合う?」
「まあ、似合うんじゃないか」

 ここまでフィーロの外見のスペックを生かした服を作れるとは、オタクっぽい洋裁屋、お前も中々の逸材なのだろう。

「えへへ」

 照れたフィーロが服をひらひらとなびかせて笑う。
 服の代金は既に武器屋の親父に払っている。
 まったく、とんだ出費だ。
 拠点にしているリユート村へ戻る為にフィーロに荷車を引かせる。
 あの服、フィーロが魔物の姿になると確かに消えて、リボンがフィーロの首輪に変わるという離れ業をかます様になっていた。
 高いだけあって便利な機能が備わっている物だ。

「あ、盾の勇者様」

 魔法屋のおばちゃんが城下町を出るときに偶然会う。

「リユート村に行くのかい?」
「ああ」
「私もちょっと用事で行くんだよ。ついでに乗せてってくれないかい?」

 魔法屋のおばちゃんは笑顔で提案してくる。
 まあ、どうせ行きがけの途中だし、魔法屋のおばちゃんには色々厄介になっているから断るのもどうかと思う。

「乗り心地は保障しないが良いか?」
「ええ」

 ラフタリアは既に乗り物酔いと戦う為になんか遠くを見ている。

「じゃあ失礼して」

 魔法屋のおばちゃんは荷車に乗る。

「よし、フィーロ。あんまり速度を出さないように進めよ」
「はーい」

 通りかかった通行人がフィーロの方を見て驚いている。喋る魔物は珍しいのだろう。
 トコトコと荷車は道を進んでいく。
 まったく、ここ数日がとても忙しく感じた。
 いや、普段から忙しいけど、特に忙しいというか。
 その全てがフィーロに集約されているというのがなんとも……。

「どうだい? 魔法の勉強は捗っているかい?」
「う……」

 魔法屋のおばちゃんが痛い所を突いてくる。
 正直、捗っているとは言えない。
 水晶玉をくれれば良いじゃないかと言い返すのもなんだし、安くフィーロの服の糸を作ってくれたのだから文句も言い辛い。

「俺は異世界人ですから、文字がまだ読めなくて」
「そうなの……ごめんねぇ」

 おばちゃんは本当に悪そうに謝る。だから俺も自身の勉強不足を酷く嘆いた。
 俺はやられた事はやり返す。
 良い意味でも悪い意味でも。
 だからおばちゃんから善意を受けたなら、それに報いたい。
 なるべく、覚えなくてはいけない。
 あのクソ勇者のような知識は俺には無いのだ。だからこそ、俺は常に学び続けなければいけないのだろう。
 そして、波から生き残る為に出来る限りの良い装備を手に入れねばならない。
 文字翻訳とか、レシピの解放の可能性はこの際、考えから外そう。
 ずいぶん時間は掛かるだろうけど、覚えてみようと決めた。

「ふぁ……軽い」

 トコトコと荷車を運びながらフィーロは欠伸交じりに呟いた。
 3人も乗っている荷車が軽いのか。
 良い傾向だ。俺にはとある考えが既にある。フィーロがいなくては出来ない事だ。

 リユート村に到着すると魔法屋のおばちゃんは俺に銅貨25枚くれた。

「これは?」
「運んでくれた料金よ」
「ああ、なるほど」

 これも考えの一つに混ぜておこう。
 リユート村は合いも変わらず復興中だ。宿屋に顔を出すと店主が快く俺達を出迎えてくれる。
 一応としてキメラの肉について謝罪しておいた。
 あっちも無いなら無いでしょうがないと妥協してくれたので助かる。

「さて、これからラフタリアの乗り物酔いの訓練と材木運びに出かける」

 肉の賠償として復興の手伝いをすると約束した。少ないが報酬もくれるとの話だ。

「え!?」

 ラフタリアが渋い顔をする。まあ、苦手の克服となったらしょうがないか。

「これから俺達の移動手段はフィーロの引く荷車になるんだぞ、馴れろ」
「は、はい」
「はーい!」
「フィーロ、お前は引く側だ」
「うん!」

 フィロリアルは本当に荷車を引くのが好きなんだな。フィーロの目がメチャクチャ輝いてる。

「あの……何か考えが?」
「ああ、これから俺達は行商を始めようと思うんだ」
「行商、ですか?」
「あんまり品揃えは良くないが薬を基本にな、後は運び屋とかだな、手広く行きたい」
「はぁ……」

 ラフタリアはピンと来ないようだ。まあ、俺自身も成功するか見通しが立たない。けど、どうせそろそろ色々と回らなくちゃいけない頃合なのだ。
 せっかくの荷車があるのだ。利用しない手は無い。

「と言う訳で、運び屋もするとなるとフィーロの最高速で荷車を引いていく事にもなる。その度に乗り物酔いで倒れられたら俺も困るんだ」
「理由は分かりましたけど……」
「何……酔いにくいと言われる場所を知っている。最初はそこで馴れるといいさ」
「そんな所があるんですか?」
「ああ」

 と、本日の仕事を始める前に、俺はラフタリアを酔いにくい場所……フィーロの背中に乗せる。

「ごしゅじんさまが良いのに、なんでお姉ちゃんを背中に乗せなきゃいけないの……」

 フィーロはラフタリアを背中に乗せてブツブツと呟く。

「それはこちらも同じです。これ、かなり恥ずかしいんですよ」

 フクロウみたいな体形をしているフィーロが中腰でラフタリアを乗せると何か変な感じだな。

「きつくはないか?」
「うん。楽だよー」

 元々の体形に近いからなのか、フィーロ自身は問題ないらしい。

「じゃあ行くか」
「うん!」

 フィーロはラフタリアを乗せながら荷車を引いて行く。
 結構な重量のはずなのに、本人曰くそこまで重く無いとか。
 俺はその間に、翻訳しながら中級レシピの本の解読を始めた。
 ……ゴトゴト。
 …………ゴトゴト。
 心地の良い車輪音をバックミュージックに難解な異世界言語に集中していると。

「あの……」

 ………………ゴトゴト。

「あ、あの……」

 ん?
 ふと気が付いてフィーロの方を見ると何故か人型になってラフタリアを背負っている。ラフタリアが困り顔で俺に何度も話しかけていたのだった。
 ヒソヒソと通りすがりの冒険者が俺達を指差しながら囁き合っている。

「変な噂が出るような事をするんじゃない!」

 奴隷の女の子に女の子を背負わせた挙句、荷車を引かせて強制労働させている。なんておかしな噂が流れたらやっと良くなってきた俺の風聞がもっと悪くなる。

「えー……」
「荷車を引いているときも人化するな」
「はぁい」

 不満そうにフィーロは頷き、魔物の姿に戻る。
 たぶん、退屈なのだろう。ラフタリアもまだ乗り物酔いをしていないようだ。
 ならば少しハードにしても大丈夫だろう。

「よし、じゃあスピードアップだ」
「わーい!」

 俺の指示にフィーロはテンションを上げて頷き走り出す。
 ガラガラガラ!
 荷車の車輪が音を立てて回る。

「わ!」

 ラフタリアが驚きの声を出し、フィーロにしがみ付く。
 まあ、目的地まで早くたどり着けるだろう。
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