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盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

盾の勇者の成り上がり

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フェンリルフォース

「なによそ見してんだぁああ!」
「ああ、悪い悪い」

 さて、余裕を見せているのはこれくらいにしてと。
 ラフタリア達は大丈夫そうだ。
 そろそろ俺も本気で相手をした方が良いだろう。

「皆、俺に援護魔法をかけるんだ! 皆の力があればこんな奴、簡単に倒せる!」

 おいおい……いつのまにかルールが変わっているぞ。
 お前一人で大丈夫なんじゃなかったのか?

「ツヴァイト・ブースト!」
「ツヴァイト・マジック!」

 ……etc。
 という感じでそれぞれが援護魔法をかけたみたいだけど、あんまり変わらないな。

 しかし、それに比べてアル・リベレイション・オーラⅩの性能は凄いな。
 三倍近いLv差を埋めるほどの能力上昇が見込めるとは。
 まあ勇者でもなく、ポイントの割り振りも無ければこんなものか。

「よし! これならいける!」
「お前、本当にそれで大丈夫か?」
「強くなったからって調子に乗ってんじゃねぇ!」
「それはお前にだけは言われたくないな」
「笑っていられるのも今のうちだ。皆の力で高まった俺の魔法を受けてみろ!」

 いや、笑っているんじゃなくて、呆れているんだが……。
 なんて考えているとタクトが魔法を詠唱し始めた。
 一応……早いな。

『力の根源たる真なる勇者が命ずる。真理を今一度読み解き。彼の者を焼き払う炎の嵐を!』
「ドライファ・ファイアストーム!」
「ドライファ!?」

 ちょっと待てよ。
 魔法を極めたとか言っておきながらドライファかよ。
 こりゃあ滑稽だな。

 まあ良く考えればリベレイション系は勇者専用の魔法だからな。
 世界基準で言えばドライファが一番強い系統になるのか。
 実際、今まで見た中では一番早い詠唱だった。

「くらえぇえええ!」

 タクトが笑みを浮かべながら魔法を発動させる。
 そして炎の竜巻が巻き起こって俺に向かって飛んでくる。

『力の根源たる唯の勇者が命ずる。真理を今一度読み解き、彼の者を焼き払う嵐を散らせ!』
「アンチ・ドライファ・ファイアストーム」

 俺はタクトが唱えた魔法を読み取って、無効化の魔法を発動させる。
 すると炎の竜巻は何事も無かったかのように四散して消え去った。
 これだけのタイムラグがありながら完全に無効化出来たぞ。

「呆れてものが言えないな。お前……本当に魔法を極めた訳? この世界に何年生きてんだよ」
「な――」

 必殺の魔法を容易く無効化されて絶句している。
 範囲魔法みたいだったが、この魔法でLv上げでもしていたのか?

「これが杖の能力……絶対に奪ってみせる!」
「ちげぇよ……」

 なにを勘違いしたのか、杖の能力だと思ってやがる。
 昔の錬達を思い出すな……こんなクソみたいな気分になるのは久々だ。
 まあ、解析が早いのはそうだけど、魔法を読み取るのは俺自身の研究結果だよ。

「というか、竜帝が付いているなら龍脈法も授かっているんだろ? そっちの魔法は妨害が得意だろうが!」

 本気で呆れる。
 こいつ、本当に魔法を極めたのか?

 確かに詠唱は早い。
 ドライファを唱えるのに五秒も掛らなかった。
 だが、俺はその上の速度で唱える余裕がある。
 クズの杖と援護魔法のお陰だけどさ。
 俺の推測だとコイツは……まあ、後で良いかそんなの。

 ん?
 魔法の気配に振り向く。
 するとヴィッチが懲りずに俺に向けて魔法を唱えようとしている。
 その隙にタクトが攻撃するとかそういう結果を想像しているんだろうな。

 させるか。
 ステップして射線を合わせ、タクト諸共消し飛ばしてくれる。

「ツヴァイト・ウイングブロ――」
「フェンリルフォースⅩ!」

 気を織り交ぜて、俺はタクトとヴィッチを一度に屠れるように射線を合わせてスキルを放った。
 お前との因縁、ここで終わらせてもらう!
 杖が輝き、オオカミの装飾のある部分が開く、そして宝石の部分から、光線が放たれた。

「うお!」

 俺の前に極太のレーザーみたいなのが出てヴィッチに向かって飛んでいく。
 はずだったが、反動で僅かにずれた。
 至近距離だったタクトにもかわされてしまった。
 地味に反射神経がいいじゃないか。

 正味3秒くらいだったかな?
 ずれたからキャンセルした訳だけどSPの消耗が早い。

 あ……撃ってから気付いた。
 もっと苦しめてから殺さないとダメじゃないか。
 じゃないと俺の気分が晴れない。
 そういう意味では丁度良いのか?

「チッ! 外したか」

 俺の放った光線から数メートル離れた所でヴィッチが腰を抜かしている。
 完全に外しちまったからな。余計な奴に当ててしまった。
 覚えている限りじゃメイド服を着ていた人間の女が消えた。
 跡形も残らなかったようだ。
 俺にライフルを構えていたし、生死は知らん。

 これ、殺人に該当するのか?
 全然罪悪感が湧かない。
 隙さえあれば俺を撃ち殺そうとしている連中だ。
 正当防衛だろ。
 ヴィッチだけじゃなく、撃とうとしていたしな。

「あ……」

 タクトが呆然と、消えた女の物らしき宙を舞うスカーフを目で追う。

「次は外さん」

 クールタイムが地味に長いな。
 杖を握りしめてチャージを開始する。

「てめぇええええええええええええええええええええええええええ!」

 昔のクズみたいに激怒したタクトが、俺に向かって滅茶苦茶に武器を振り回す。
 爪、鞭、斧、槌、投擲具。
 その全てを避ける。

「貴様は! 貴様は今、エリーを殺した! 絶対に許すものか! むごたらしく殺してやる!」
「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」

 タクトのハーレム勢も状況にやっと追いついたのか悲鳴と共に混乱し始める。
 しかし、怒りの所為か動きが単調になった。
 よくアニメとかで怒りは強さに変わるけど、実際はこんなもんか。

 ふいに女騎士とカースに侵食された錬が戦った光景が思い出される。
 あの時きっとこんな感じで避けていたんだろうな。

 ちょっと矛盾しているが、もっと冷静に怒るべきだ。
 相手を如何にして殺すのかを考えながら怒るんだ。
 今の俺みたいに。

「お前はわかっているのか! エリーは……俺が小さな頃からずっと一緒に居る幼馴染で! 俺の初めての相手で、受け入れてくれた存在なのに。それを、それをお前なんかが殺す資格なんてある訳がない!」
「知るか! 戦場に出たらいつ死ぬかなんてわかる訳がない。お前は自分が今まで殺してきた連中に同じ事を言えるのか!」

 なんという屁理屈。
 自分の仲間は死なず、相手を殺すなんて理屈が通じるはずもない。
 出来れば死んでほしくないと思うのなら、その身で守る覚悟が必要なんだ。

 アトラは……その事を常に俺に言っていた。
 戦場では無い場所で死ぬかもしれない。
 大事ならば常に守れる場所にいなければならないんだ。

 俺が杖を振りかぶった時、コイツは何をしていた?
 守ろうと動く事すら出来なかったじゃないか。
 いや、むしろ避けたお前が原因で幼馴染とやらは死んだんだよ。
 そんなに大事なら咄嗟に体を張ってでも守れよ。
 脅威だと思うのならな。

「ここでは殺した俺が言おう。守れなかったお前が悪いんだ」

 論理も何も知った事では無い。
 この戦争は人殺し同士の争いなんだよ。
 出来る限り死者を出さずに守りたいのなら、自身の命を賭けろ。
 やり方は幾らでもあった。
 飛び火で死ぬかもしれないって覚悟が欠落しているんだよ。

 ああ……イライラする。

「エアスト・フロートミラー、セカンド・フロートミラー」

 フロートシールドの杖バージョンのスキルを展開させ、タクトの周りを回転させる。

「くぬ! くそ! 逃げるな!」
「なんでお前の攻撃を受けなきゃならない。盾とは戦い方が違うんだぞ?」

 そう、別に俺は反射神経が悪い訳じゃない。
 もちろん、本気で良い奴には追いつけないが、これだけの援護魔法が掛った状態じゃ、避けられないはずもない。
 盾があってもそれは変わらないな。

 俺は敢えて避けないんだ。
 盾役が避けてどうするんだよ。
 相手の動きを止めるのが役目なのに。

「色々と魔法を放ってやるから受け止めろよ」
「受ける訳ないだろうが!」

 詠唱が短い魔法を唱える。

「ツヴァイト・ファイア! ツヴァイト・ウォーター」

 ちなみにこの二つしか属性魔法は覚えてない。
 元々使えないんだ。
 借り物の杖で使えるようになっているだけで、そこまで覚える必要もないだろ。

「そんな攻撃――」

 一直線で飛んでいく魔法をタクトは容易く避ける。
 だがな、それが目的じゃないんだ。

 避けたタクトの背後にそれぞれの魔法が命中する。

「ぐ!? な、なんだ!?」
「それくらい、わかるだろ?」

 フロートミラーの能力、それはスキルや魔法を指定した角度で反射するという物だ。

「じゃあわかりやすく見せてやるよ。エアスト・ブラスト!」

 チャージしていた杖を握ってスキルを放つ。
 魔力がビームみたいに発射される。
 タクトはまたも避けようとするが、俺が意のままに操ったミラーがブラストを反射し、タクトの周りを飛び回る。

 当てるつもりは無いから、まさしく遊んでいる。
 意外と追いつけるもんだな。
 ブラストで檻みたいに出来たぞ。

 あ、コンボ発生。
 そう言う事も出来るのか。
 というかミラーが勝手に動いてくれている。
 便利だな。

 これってクズはコントロールできるのか?
 ……できるんだろうな。
 それはそれで大変そうな気がする。

 やはりどの武器もなんだかんだで適性があるみたいだな。
 今のクズならもっと上手く扱えそうだ。
 これの上位スキルも使えると話していたからな。

 なんでも、反射の多角面体を放って、それにエアスト・ブラストを当てて反射させ、広範囲を打ち抜くとか。
 遮蔽物に隠れていても関係なしに当たるのが長所らしい。
 味方にも当たりそうな気もするが、計算でなんとかなると言っていたが、俺には無理だ。

 精々俺ができるのはミラーを思い通りに動かす程度だ。
 これはフロートシールドの経験から来ている。
 ああ……やはり俺は盾の勇者という事か。

「ブラストプリズン!」

 叫ぶと同時にブラストで作られたプリズンが炸裂する。

「グハァア!」

 爆発と同時にタクトが吹っ飛んで行った。
 取り巻きの女共が悲鳴を上げる。
 一部はやっとのことで混乱から立ち直って俺に向かってライフルを構えだしたな。

「まだだ! 俺は……痛くも痒くもない。こ、こんなの……かすり傷だ」
「あっそ」

 やせ我慢を……そう思っていると外野の女共が回復魔法を唱える。
 張り合って援護魔法まで掛け始める。
 それはプライドが許すのか? 怒りでそれ所じゃないか。

「そんなに女に死なれるのが嫌か? じゃあ優先的に狙っていけばお前は守る事しか出来ないな」

 ハッとタクトは青ざめ、周りの女共に目を向ける。
 そしてその女共は俺を見て、震え出した。

 なんだろう……めっちゃ悪役の気分だ。
 凄く気分が良い。
 こんなに復讐が爽快だなんて……初めて知った。
 今まで武器が盾だった所為で、間接的にしか敵を苦しめる事ができなかったからな。

 誰だ、復讐は何も生まないとか言った奴は。
 復讐相手が反省とか善行をしていない場合は殺した方が良い結果になるじゃないか。
 だよなぁ? ヴィッチ。

 しかしこの思考はやばい。
 調子に乗っているとカースに侵食されそうだから、やめておこう。
まだまだバトルフェイズは終了してないぜ。
作者的にはそろそろドン引きですが。
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