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盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

盾の勇者の成り上がり

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英知の賢王

「準備は万端か?」
「はい。イワタニ殿」

 波がやってくる……そしてフォーブレイが攻めてくる当日、城でクズと話をする。

「色々な作戦を考えつく物だ」

 翌日から俺達はクズが仕掛ける作戦に対しての準備をある程度行った。
 もちろん、その合間に修練もしておいたけどな。
 幾ら勇者がLv限界が無いと言っても、数日で自称Lv350タクトに追い付くのは不可能だ。
 だが、俺達には奥の手がある。

 俺が教えた知識とクズ、そしてフォウルの七星武器から得た知識を総動員して作戦は軌道に乗った。
 この国の砂時計の数字はもう少なくなっている。
 城下町の塀から遠くへ目を凝らすとフォーブレイの軍団が攻め込んでいる最中だ。

 昨日、メルロマルクの砦の一つが奴等の手で陥落している。
 おそらく、そこを拠点にしているだろうな。
 その辺りはクズの作戦の想定範囲だ。

 俺、錬、元康、樹はクズの打ちだした作戦を暗記し、場合によって対応を変えることを決めてあった。
 一応、内容はタクトへ攻撃をするのが俺と錬、波に挑むのが元康と樹だ。
 戦場での作戦指示と拠点防衛はクズが担当している。

 ああ、フォウルは俺と一緒だ。
 リーシアは樹と一緒に行動する。
 つまり勇者は戦争と波の二手に分かれる。

 ラフタリアとフィーロ、ラフちゃん、ガエリオン、サディナは俺と一緒に行く予定だ。
 キールや村の連中で対人が出来る奴は戦場へ、逆に対人が出来ない連中は波に参加してもらう。
 フィロリアルはそれぞれの戦場を半々に割り振って戦う。
 ラフ種は別働隊として動いてもらう予定だ。

 後はクズの作戦次第だな。
 空に浮かぶ秘策が上手くいってくれる事を祈るしかない。

「イワタニ殿、あくまでこれは」
「わかっている」

 クズの作戦だからと侮っていたが、ここまで念入りに作戦を組まれていたら頷くほかあるまい。
 少なくとも、俺が考えるよりは成功率が高いだろう。
 こういうのは出来る奴にやらせるのが一番なんだ。

 皆が皆、その時にできる事を最大限やれば、悪い結果にはならない。
 いや、俺が悪い結果にはさせない。

「そろそろですぞ」
「ああ……」

 挨拶を終えた俺はクズから受け取った杖を軽く振って、作戦通りに動き始めるのだった。



 数時間後

 タクトは占拠した砦の見晴らしのいいテラスからメルロマルクを傍観していた。
 メルロマルクの城下町の方で黒い煙が上がっている。

「報告です!」

 タクトは周りに女子を連れて、砦のテラスから戦場を見ている。
 その表情は勝ち戦に酔っている。
 報告も吉報であると確信しているらしく、実際吉報だ。

「タクト様の新兵器と作戦によりメルロマルクの首都に我が国の兵士の降下策戦は成功、あちらの指揮は混乱しています。勇者勢は波へと招集されている模様。波を放棄し、辛うじて駆けつけた勇者がタクト様の軍と交戦していますが多勢に無勢、戦闘の継続が出来なくなるのは時間の問題かと」
「ふふふ、そうだろうなぁ。この作戦で今まで勝てたんだ。奴等の頭も程度が知れる」
「さすがはタクト様!」
「凄いですわ!」
「あの一斉射撃に耐えきれる兵士などおりません!」
「タクト様が提案した飛行機による爆撃と降下策戦に手も足も出るはずありませんわ」
「そう褒めるな。これも世界の為、人々の為なんだ。早く戦争を終わらせてあんなクズばかりが支配していた国を終わらせないとな」

 タクトは若干笑みを浮かべながら告げる。

「ええ、早くあの勇者達が捕まって処刑される所が見たいですわ」
「わかっているよマルティ。君をこんな目に合わせた連中はこの世にいちゃいけない」
「ああ、タクト様」
「しかし、ここまで余裕だと面白みがないな。だが、勝ち戦程楽しくもあるものもないか。特に、俺の作戦の元にこうなるとなぁ」
「ええ」
「そうですわ」
「ハハハハハ!」

 高笑いが木霊する。

「――というのはウソだ」
「は?」

 タクトは高笑いを中断し、報告に来た兵士……の振りをしていた俺達に振り向く。
 警備……ザルだったな。
 正確には占拠させた建物で事前にポータルを取得していたんだ。
 そこから進入し、伝令兵のフリをしてタクトの所まで来た。

 伝令兵の装備一式は闇ギルドから回してもらった。
 フォーブレイは元々古い歴史の国だし、結構そういう品は流れているそうだ。

「大体、こんなに伝令兵がいるわけないだろ」

 呆気に取られているタクト達に変装を解いて見せつけてやる。

 フィーロやガエリオン、サディナは戦闘形態に入った。
 ラフちゃんは……そのままだな。
 魔法で隠れていたけどよくここまで隠れていた物だ。
 ラフタリアの背中に乗って隠れている。

 ラフタリアとラフちゃんが協力して匂いまで変えられる幻影魔法だ。
 何も姿を消すだけが幻影では無いって事だ。
 さすがに鼻の利く連中でもわからなかったみたいだな。

「随分と楽しげに高笑いをしていたな。残念だがあそこの煙はお前の作った飛行機が撃墜された煙だ」
「そんな! ルーリナ達が!?」

 そう、クズの作戦によってタクトの導入した飛行機は、尽く撃墜されているはずだ。
 だって、クズに言えと言われていた内容を報告したらこう返した訳だからな。
 報告も吉報ではなく凶報だ。
 いや……俺達にとって吉報だな。

 今頃、空爆と降下作戦に導入された飛行機は、クズがメルロマルク上空に集めさせたグラウェイク鉱石の鉱山に阻まれているはず。
 飛行機の短所は急旋回が出来ない事だ。
 だから高度の高い場所にそんな物があったら空爆は出来ない。

 この世界には空中にそう言った鉱石が浮いている事が多いから、避ける事も視野に入れていたんだろうけれど、そこはラフ種の連中に頑張ってもらった。
 隠蔽技能は並はずれて高いからな。
 合唱魔法の要領でメルロマルクの上空にそんな物が無いように見せたのだ。

 幸い今日は晴天。
 一見、飛行機が飛ぶには最高の環境に見える。
 実際はそこ等中にグラウェイク鉱石が浮かんでいるんだけどな。

 もちろん、それだけでは突破される事も計算の内、グラウェイクの鉱山を足場にパラシュートの降下部隊へ、メルロマルクの魔法使い達が協力して風と重力の魔法を多段詠唱してもらっている。
 パラシュートの難点はそのままだろうからな。
 傘の部分に魔法でも当てられたらそのままお陀仏だ。

 緊急時は風の魔法で着地する事を視野に入れていたんだろうけれど、重力の魔法で落下速度が上昇したのまでは殺しきれない。
 しかも下からもこっちからは魔法や弓で狙撃をしている訳だから幾ら高Lvであろうとも唯では済まないだろう。

 何より、不安要素だった空を飛ぶ亜人や……タクトの傍にいるグリフィンがここにいる。
 つまりクズ達戦場側には想定上厄介な敵が少ない。
 今まで勝ちっぱなしだったのが、油断になっているな。

 珍しく俺達に追い風がある。
 英知の賢王様々だな。

「な、なんで!?」
「長々と話すつもりは無い。強いて言うなら、仮にも過去の戦争で名声が轟いた英知の賢王を度外視し過ぎたな」
「くっ!」

 タクトの取り巻きが銃器を取り出して構える。

「英知の賢王曰く、お前の作戦は下の下策だそうだぞ。選択も最悪と言っていた」

 そう、タクトの作戦案の中で一番愚かな作戦が、今回の結果だ。
 俺達がここに来る所まで計算されていないのがその証拠……だそうだ。
 俺が見た中で割と危なそうな可能性がタクトが第一線で一騎当千すると言う案だったが、それもクズ曰く下策だったか。
 まあ、勇者勢で一網打尽に出来る算段だったし、驚異度は低かったな。
 しかも戦いが始まった直後にクズがこんな事を言っていた。

『想定し得る最も愚かな一手を打ってきおったな……まるで重要な駒を取ってくださいと言っている様なものじゃ。これは誘われているのか? いや、舐められているとも考えられる……よし、罠であるならばハマったフリをし、相手の出方を見る。罠で無ければ後に響く一手となろう』

 なんて言っていたが、今頃その後に響く一手とやらは効果を発揮しているんだろうか。
 まあいい。
 俺は俺のできる事をするだけだ。
 戦場は全てクズに一任している。

 俺達がここまで来れたこの状況なら最悪、完敗とまではいかないはずだ。
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