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盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

盾の勇者の成り上がり

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ラフちゃん

「さて、その子等はどのような能力を所持しているのですかな?」

 俺はラトに目を向ける。

「個体毎にバラバラね。ただ……どの子も魔法は幻覚系が使えるわ」

 そりゃあモデルがラフタリアらしいからなぁ。
 ラフタリアの得意な魔法は幻覚系。
 カテゴリーは光と闇らしいが、姿を消す、惑わすなどはお手の物だ。
 ま、ラフタリア自身はそこまで魔法を使わず剣技を重点的に使っているけどな。

「幻覚系の魔法の使い手……今回の作戦に使えそうだわい。しかも単体でも能力が期待できる」
「ところで侯爵、その子の事なんだけど」
「どうした?」

 ラトがラフちゃんを指差して尋ねる。

「みた感じ、その子は他と違う気がするのだけど、侯爵は何か知らない?」
「俺もよくわからない。フォーブレイに行く時に馬車の下に捕まって隠れていた奴なんだ。Lvも高いし」

 再度見直す。
 ……なんでLvが上がってんだ? 90?

「ちょっと触診させてくれない? 私だけじゃ捕まえられなくて」
「ああ、ジッとしてろよ」
「ラフー?」

 ラトがラフちゃんの触診を始める。

「既存のラフ種とは肌触り、魔力の反応が違うわね。どちらかと言うとフィロリアルの変異体に近いかしら?」
「変異体って、フィーロ共か」

 と言う事は俺の知るラフ種の誰かが何かしらの要因で変化したと考えて良いのだろうか?

「コイツは何者なんだろうな?」
「さあ……」
「お前は何処からきたんだ?」
「ラフー」

 ビシィっと海の方を指差す。
 その方向はサディナの秘密基地跡だ。
 いや、作られた場所を指差してるのはわかるから。

「応答はちゃんとするし頭良いわよね」
「何を伝えたいのかわからないのか?」
「ミー君とか一部の魔物はわかるんだけど、侯爵が純粋培養で作ったラフ種はわからないわね」
「ラフー」

 身振り手振りで何処から来たのか説明しようとしているのだけどいまいち伝わらないなぁ。
 まあ個人的にはフィロリアルみたいに喋らないで欲しいという願望はあるんだけどさ。

「まあ良いや。お前は他に何が出来るんだ? みんなと同じなのか? それとも結界魔法とか使えるのにも理由があるのか?」

 試しに聞いてみる。
 するとラフちゃんは一度小首を傾げてから考えるように二本脚で立って腕を組む。
 うわ。その動作、可愛らしいなぁ。
 何処かの鳥共と違って、あざとさが無いから余計に。

「ラフー」

 ラフちゃんは何故かラフタリアを指差して近寄る。

「私ですか?」

 そして近寄ったかと思うと尻尾を膨らませて何か能力を作動させるようだ。
 バリバリと全身の毛皮を逆立たせて……。
 ボフンと……変身した。

「な――」

 そこには幼き頃、俺が初めて出会ったラフタリアと寸分違わぬ姿のラフタリアが立っている。
 懐かしいな。
 そういえばこんな姿をしていたっけ。

「ラフー」

 褒めてと言わんばかりにラフちゃんは両手を上げているが……。
 問題はそこじゃない。

「なんで裸なんですか!」

 俺は視線を逸らしてみないようにする。

「これは幻覚魔法を見せているのかしら?」

 と、ラトが俺に見えないように白衣でラフちゃんの姿を隠し、ラフタリアが跳ねるラフちゃんを掴んで抑える。

「とりあえず服を着るなり、着ているようなりしてくれ」
「ラフー?」

 ボフンとラフタリアの服装を小さくした様な服をラフちゃんは着ているように見せる。
 幻覚魔法の応用か?
 そしてラトがラフちゃんの頬に触れてみる。

「そうねぇ。触覚まで騙す高度な幻覚魔法を使っているのかしら?」
「ラフ~……」

 プニプニと頬を触りまくるラトにラフちゃんは嫌がるように鳴く。

「凄いわね。本物みたいよ」
「ラフー!」

 謎が深まったぞ、おい!
 ラフちゃんって一体何者だよ。
 俺の知るラフ種より遥かに高スペックな気がする。
 ラトが言ったフィーロみたいなラフ種と言うのは正解かもしれない。

「あら? 服の精度は低いのね。肌に触れるわ」
「ラフー」

 くすぐったいと言うかのようにラフちゃんはラフタリア(幼児)形態で俺の後ろに隠れる。

「あらら、逃げられちゃったわ」
「ラフー」
「他には何が出来るんだ?」

 ラフちゃんはまたもラフタリアを見て。

「その動作に底知れない嫌な予感しかしないのですが……」
「ラフー」

 今度はラフタリアそっくりに化けた。
 凄いな。背格好までそっくりだ。

「ラフー?」

 なんとなくラフちゃんの方が締りがない。
 まあ、狸は化けるのが得意だから、こう言う事が出来るのかもしれない。

 だが、人化するのはそこまで好きじゃない。
 と言う俺の考えを読んだのかラフちゃんがラフ種の姿に戻る。
 よしよし、どこぞの鳥より賢いな。

「色々と変身できるのね?」
「ラフー」

 コクリと頷くラフちゃん。

「魔法でそう見せかけているんだろ」

 ぶんぶんと首を横に振られた。

「え? アレって変身出来るって事?」

 肯定とばかりに縦に首を振る。
 く……そう言えばおかしくなった俺は謎の研究でラフタリアを作ろうとしていたらしいからな。
 ラフちゃんがそんな技能を持っている可能性は否定できない。
 これで喋り始めたら第二のフィロリアルだ。

 ……何だろう。凄く嫌な予感がする。
 後の歴史に神獣として崇められるラフ種が脳裏を過ぎる。

「ラフー」

 胸を張るラフちゃんだけど、出来ればピーチクパーチク喋らずに居て欲しい。

「他は?」
「ラフー?」

 リクエストにラフちゃんは首を傾げる。

「ミー君みたいに成れないの?」
「無茶を要求するなよ」
「ラフー!」

 ラトの問いにラフちゃんが変身する。
 おい……熊みたいなラフ種にも成れるのかよ。
 と言うか村の連中に似たのが居るよな。

「ラフー」

 但し、ミー君みたいなスライム技能は所持していない様子なのを身振り手振りでして見せた。

「へー……」

 背中に乗れそうだなぁ。
 むしろこっちの方が好きだ。
 フィーロも喋らずにいれば寄りかかって昼寝とかしたくなるんだけどな。
 隣の妖怪みたいなポーズがしたくなるな。
 それに近い感じだし。

「多芸ね」
「そうだな」
「ラフー」
「ああ、もう……」

 ラフタリアが微妙な顔をして頭を抱える。
 自分をモデルに改造されているような気持ちなんだろうな。
 気持ちはわかるが俺は嫌いじゃないぞ。

「色々と出来るみたいじゃな」

 黙って見ていたクズが聞く。

「そうだな」
「では、こう言う事も出来るのかのう?」

 クズがラフちゃんに提案する。その内容に、俺も納得する。
 上手く出来れば、ラフタリアとラフちゃんには非常に有意義な事だ。

 問題は、その内容にラフタリアが微妙な顔をしている所だろうな。
 俺がラフタリアの立場で実際にやれと言われたら同じ顔をすると思う。
 いや、むしろラフちゃんは幻覚が得意なんだから出来るかも。

「本当にそれをやるのですか?」
「出来れば便利だろ?」
「まあ、そうですけど」
「ラフー」

 そういや、ラフちゃんはラフタリアの事をニセモノーと言わないんだよな。
 言いそうにはなるけど。
 後でその練習をしたら、簡単に出来たらしくてラフタリアは更に微妙な顔をした。
 良いじゃないか大して練習しなくて済んだんだから。

「後は俺の所の戦力、戦争までに必要な武器があるのなら、ルーモ種の連中がある程度まで作ってくれる」

 これは後でイミアやイミアの叔父に頼む事になるだろう。
 俺が信頼する腕利きの連中だ。

「城の者達と協力すれば……わかった。イワタニ殿の説明は参考になりましたぞ」
「それなら助かる。お前の戦略、期待しているからな」
「お任せを、ではここの戦闘員を見てから、再度城へ帰還し、案を練り直しますぞ」
「ああ」

 こうしてクズは俺の村で戦争に参加する者の選定を始めた。
 相手は人間だからか、やる気はあっても参加させるべきではない者も居るとクズは俺に提案した。
 本人はやる気があるようだったので、宥めるのに苦労したがな。

 だが、クズの指摘通り、やる気はあっても実戦では手が震える連中が確かに居た。
 魔物を相手には平気らしいが、事殺人は出来ないと理解する者もいるのだ。
 そんなのは出来なくて良いと、戦争に参加できず涙する者を宥めた。

 統計で言えば、最初から村に居る連中はその辺りを苦手としている物が多かった。
 元から女子が多かったからなぁ。

 で、夜も更けてきた所で、錬を使ってクズを城へ送り届けさせる。
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