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盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

盾の勇者の成り上がり

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作戦会議

 錬達が会議している城の会議室の前までやってきた。
 その途中で三匹と遊んでいた元康を連れてくる。

「これは盾の勇者様と……」

 俺の後方にはラフタリアと、なんて言うか見違えるようなオーラを放つクズが付いて来ている。
 それは城の兵士も理解しているようで、息を飲んでいた。
 一目で分かるって殆ど別人の領域ではないかと俺自身感じていた。
 確かに、今のクズはまるで別人の様な何かを感じる。
 初対面で感じていた、何かではなく、こう……目が離せないカリスマの様な何かが滲み出ている。

「国王様」

 兵士は言葉を選び、答える。

「うむ、勇者様方と連合軍の者達と話がしたい。道を開けて下さらぬか?」
「ハッ!」

 敬礼しながら兵士は扉を開いた。
 俺達はそのまま会議室に入る。

「尚文!」

 錬が俺を見るなり立ちあがって駆け寄る。

「傷は大丈夫なのか?」
「一応はな」

 まだ痛みがあるが動けない程では無いし、徐々に回復してきている。
 盾の恩威もあるし、奴との決戦までには戦える程度には回復できるはずだ。

「後……」

 錬がクズの方へ目を向け、絶句する。

「なあ、アレって……」
「ああ、同一人物だ。俺だって驚いている」

 クズがキリッとした表情で会議中の連中を一瞥して杖を見せつける。
 誰だ、お前。

「ほう……メルロマルクの杖の勇者が今更やる気になったか。少々遅過ぎやしないかの?」

 ゲンム種の爺さんがクズに向けて挑発的な態度で答える。
 それはシュサク種の若者も同様で、少し腹立たしい態度だ。

「そうじゃな。ワシも目が曇っておった。じゃが、今は違う。妻が……女王の遺言に従い、ワシがこの国を守らねばならん」

 普段のクズならここで激昂して、会議の場を滅茶苦茶にした揚句追い出される。
 しかし、今のクズは自らの非を素直に認めていた。

「メルティ」
「は、はい」

 会議を錬と共に指揮っていたメルティが背筋をピーンとさせて応じる。
 メルティは相手が実の父だが、違和感の様な物を抱いているのか、不思議そうな顔だ。

「会議を続けてくれないか? ワシとイワタニ殿も一緒に参加させて貰う」
「わかりました」

 クズは俺が座る椅子を引いてから、隣の椅子に座った。
 それだけで、何故か周りが息を飲む。
 過去の遺恨を水に流して、敬意を示していると周りに伝わるだろう。
 俺だって不思議だ。
 凄く真面目な表情で椅子を引いただけなのに、コイツは何か違うのではないかと感じてしまう。

 あれだな。
 今までダメダメだった奴が活躍すると凄くかっこよく見えるのと同じ理論だ。
 期待値をどこまで上回ってくれるのかが勝負か。

「何をしている? 早く会議をしないか。残された時間は少ないのであろう?」
「わ、わかりました」

 メルティは書類を取り出して壁に設置されたボードに書き記す。
 勇者曰く、タクトは元々異世界人ではないか? と書かれている。
 証拠として数々の経歴と発明品だ。

 そして戦況は絶望的だ。
 タクトはフォーブレイから一直線でメルロマルクに向かって進んでいるらしい。
 その間にある国には投降を呼びかけ、支配しながら進むその勢いは少々早過ぎるのではないかと思う程だ。
 数日中にはメルロマルクに到達するだろう。

 敵の新兵器……では無いのだけど、実用性の関係で破棄された飛行機を実戦領域に無理やり押し上げての作戦に各国は敗北している。
 そんな状況だった。

「剣、槍、弓の勇者様方は防衛線に参加しなかったそうですね」

 クズが尋ねる。
 するとメルティ、ゲンム種の二人が手を上げて進言する。

「何分、フォーブレイの勇者の能力が驚異故、あちらの勇者がいる限りは、こちらも不用意に出す訳には行かないと、涙を飲んで待機して頂きました」
「ふむ……賢明な判断だ。飛行機か……それはどのような兵器かはワシもある程度は知っておるが、そこまで驚異的であるのか?」
「はい。あちらがメインとして使っている飛行機はパラシュートによる降下作戦用で、近付いてきた者には機銃によって迎撃を行うようです。しかし各国の高Lv竜騎兵が接近戦へと持ち込むのですがパイロットのLvが我らより遥かに高いのか……」

 Lv差による強引な戦術で、近寄る事が出来ないと。
 シンプルだが、シンプル故に地盤が固いから崩し難い。
 魔法や遠距離攻撃で撃ち落せば良いんだろうが、高いLvで逃げられるって感じだな。

「飛行機は何機で来る?」
「最大5機で攻めてくるようです。戦場の近くで乗り降りを行い。相手の国の上空から兵士を降下させて制圧する作戦を行っています」

 考えられるのはその5機のパイロットが高Lvで他は一般兵か。
 タクトのハーレムの人数が何人かは知らないが、逃亡時の兵士共のLvはそこまで高く感じられなかった。
 となると、限られたエースパイロットによる作戦と見て良いだろう。

「……勇者様方、かの飛行機に関して、勇者様方の意見を聞きたい」
「そうは言われても俺達は概要程度しか知らない。実現可能だとは思うけれど、あくまでなんとなく程度でしかない」
「勇者様方の世界で、飛行機とはどのような運用か、戦争でどのように使われたのか、他にどの様な応用が効くのか等を聞きたいのです」
「そんな事が重要なのか?」
「ええ、念の為に聞いておかねば作戦を立てられません」

 と、クズは俺達から根掘り葉掘り、必要なのかと思えるほど、飛行機に関する知識を訪ね続けた。
 他にも銃器に関する事……これは樹が相当詳しく、部品などの名称まで説明してくれた。

 異能力のある世界出身なのにミリタリーオタクかよ。
 という突っ込みは役に立った訳だし、言わない事にした。
 まあ良く考えたら『命中』の能力なんて銃とか弓が無いと使いこなせない訳だから、当然の結果なのかもしれない。

「……まだ足りませぬ」
「は?」
「まだ、何か引っかかる」

 クズは散々聞いているにも関わらず、更に俺達に聞こうとしてきた。
 その様子を最初は怪訝な目で見ていた俺達とメルティだったのだが、他の国の首脳陣、特にクズに近い年齢の奴ほど黙って、確信に満ちた笑みを浮かべ出している。

「おい。何か知っているのか?」
「アレが英知の賢王が蘇った証。奴は必要な情報が出揃うまで、情報を集め続けるのです。そうする事によって、奴は我等に煮え湯を飲ませた故、頼もしい限り」
「はぁ……」
「奴が確信を得られないと言う事は、まだ、勇者様方から必要な情報を教えてもらえていない証なのです。ご協力を願いします」

 何処からそんな信頼が出てくるか分からないが、あんなクズを見るのは初めてだから期待するとしよう。

「イワタニ殿」
「な、なんだ?」

 クズに盾って呼ばれないだけで実は違和感があるんだ。
 しかも凄い眼光、なんか空気に呑まれてペラペラと喋りそうになる。

「あちらの……勇者に関してはイワタニ殿に一任します。それでよろしいですね?」
「ああ、奴は俺がぶちのめす」
「尚文、大丈夫なのか? お前は盾を奪われているんだろ?」
「大丈夫だ。そう言えば……」

 と、俺が思い浮かべたと同時だった。
 この場に居た勇者の武器が淡く輝き始める。
 光が錬、元康、樹、俺の盾があった場所を経由して、フォウル、クズの武器に当たる。

「なんだ? コンバート……?」
「強化方法の解放?」

 それぞれが言葉を漏らしながら目で何かを追って行く。
 そしてクズは徐に杖を俺に差しだした。

「杖が特例として盾の勇者様の所有物として力を貸す事を提示いたしました。受け取りください」
「……お前は良いのか?」
「ワシは知略が基本です故、そこまで重要では無いのです」
「そうか」

 俺はクズの杖を握りしめる。
 バッと、盾があった時と似たような項目が現れる。

 特例として盾の勇者の所有を許可します!
 特例武器の解放!

 フェンリルロッドの条件が解放されました!

 フェンリルロッド 0/90 C
 解放不可……装備ボーナス、フェンリルフォース
 専用効果 グレイプニルロープ 神への反逆
 熟練度 0

 と言うシステムメッセージが現れ、俺はステータスを確認する。
 俺が知る自身のステータスと見比べると、色々と変動しているな。
 これは戦い方を変えなければならないだろう。

 杖の形状は狼の様な装飾が杖を銜えた、杖だ。
 鎖が絡まっていて、少し持ちにくい。

 ウェポンブックにも目を向けると、相当解放されているな。
 おそらく、七星固有の能力としてコンバート、信頼する四聖勇者の武器の解放状態を継承できる。
 これだけで相当な能力上昇が掛った。

 だが……俺が覚えている数値よりも低い。
 これは、七星が四聖よりも下位の武器であるからしょうがないな。
 そして杖の強化方法に目を向ける。

「フォウル、お前もヘルプに載っている強化方法を俺達に話せ。俺達もお前に教える。それを実践するんだ」
「あ、ああ」
「錬、元康、樹もわかっているな。勇者の強化は信じる事だ。クズが持っていたこの杖とフォウルの小手に記載されている強化方法を今すぐ教える」
「わかった」
「わかりましたぞ!」
「はい」

 俺達はヘルプに記載されていた強化方法を、教えあった。

「ちょっと待て。その強化方法は、前に試そうとして出来なかった奴じゃなかったか?」
「七星の強化方法として使われていたんだ。勇者が協力しないと強くなれないって制約で」
「……今更になって面倒だと思った」

 錬が愚痴る。まったくだな。
 しかし、錬の愚痴はもっともだ。
 おそらく、これも波側の敵が妨害した事に寄る弊害……と言えば納得できるかもしれないが……。
 しかし、小手と杖は強化方法が種類こそ違えど同じとは、因果な物だな。

 俺は徐にフェンリルロッドを色々と強化しておく。
 ステータスが格段に伸びたな。
 それでも、霊亀甲の盾には及ばないがな。
 アレはアトラのお陰で解放された慈悲の盾の強化も混ざっているから比べるのは失礼か。

「解放はされたが装備ボーナスはまだ出来てない」

 フォウルが俺に報告する。

「時間は無いがやっておけ。強化する為の素材は国中、そして俺の村の倉庫から色々と取り出して使うんだ」
「わかった」
「勇者様方の話は終わりましたか? では、作戦を練りあげましょうぞ」

 クズが椅子に座って会議を継続する。
 それからクズは俺達から、それはもう根掘り葉掘り、異世界の知識を聞き続けた。
 もはやそれだけで画期的な発明が出来るのではないかと言う程、気が付くと外はもう日が暮れ出していた。

「まだ必要なのか?」
「……まだ手を加えるが、今日手に入った材料ではこんな所じゃ」

 クズはボードにガリガリと書き始める。
 それを城の兵士達は集まってメモを取り出した。
 ゲンム種の爺さんが指示をしておいたらしい。

 その内容を見て俺達は、なるほどと頷き、相手の新兵器の可能性と返し手まで書かれていて驚いた。
 コイツ、俺達から聞いた知識で何を始めるつもりだ。

「では、初期案はこの作戦でよろしいですかな?」

 案1から20まで書かれ、その全ての準備をクズは兵士に命じた。

「あ、ああ」
「勇者様方にはそれぞれの部隊に別れて行動して頂きたい」
「それはわかったのだが……」

 俺はクズが統一して、タクトがメルロマルクに攻めてくる日付に関して目を向ける。

「本当にこの日に攻めてくるのか?」
「はい。フォーブレイの勇者は間違いなくこの日に攻めてくるでしょう。ワシなら間違いなく、この日を攻めます故」

 確かに俺も、この日にこられたら困る。

 そう……その日とは、波が来る日だ。

 それは最も有効な方法だろう。
 俺達は一応、メルロマルクにある龍刻の砂時計を登録している。
 錬達の砂時計の確認したらメルロマルクだった。

「各国の波の状況はどうなんだ?」
「最短はメルロマルクの砂時計だそうで、他はまだ余裕があります」
「そうか……」

 これは非常に厄介な問題だ。
 フォーブレイとの戦争中に波で呼び出されたらたまった物では無い。
 かといって波を蔑に出来ない。
 ともなれば勇者を割く必要がある。

「なので、勇者様方にも事前に準備をして頂きたい。出来れば駿羽であるフィロリアルを使って早急に」
「わかりましたぞ! さあ、いくぞ天使達!」

 元康が勝手に三匹を連れて走り出して行った。
 お前等、どこへ行くつもりだ!

「では槍の勇者様はこちらの部隊へ」

 こうしてある程度、割り振りをしていく事になった。

「そうだ。クズ、情報源として紹介したい奴等がいる」
「わかりました。して、その者は?」

 一人は単純な情報源。
 かなり怨み辛みを溢していたし、確実に協力してくれるだろう。
 何よりアイツは俺の奴隷だ。拒否できるはずも無い。
 もう一人、というかあいつ等は……見てもらった方が早いな。
 見た事位はあるだろうが、能力については知らないだろうし。

「今すぐ連れて来るのは……無理だな。一緒に来てくれ」

 俺はそいつ等を紹介する為に歩き出した。
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