挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

盾の勇者の成り上がり

277/835

新・七つの大罪

 復興祭も終わりを告げるかのように夜のキャンプファイアーが町の広場で上げられる。
 これで有名な楽曲が掛けられたり祭囃子が聞こえたら、俺の知る祭りなんだけど、流れているのはフィーロと詩人の歌だった。
 休憩にと村の方へ行くと、何やら村の方でも騒がしくイベントをしているようだ。
 もう終わりが近いからか、村の連中は帰ってきているみたいだ。
 奴隷や魔物、フィロリアルが何か集まってしている。

「では第五回、みんなの人気投票の結果を開示しまーす」

 ……何をしているんだ?
 第五回?
 俺はラフタリアに隠蔽の魔法を掛けて貰い、様子を見る。

「最初は『魔物に聞きました。好きな人は?』です」
「投票の結果、一位はラトさん、二位はウィンディアちゃん、三位は盾の勇者様だそうです」

 魔物達が各々、何処からか音を出している。
 亜人と魔物とフィロリアルが集まって集会をしている光景ってなんか異様だな。
 そう思ってラフタリアの方を見ると、別に不思議でもなんでもないかのように、その様子を見つめてる。

「ラフタリアはアレをどう思うんだ?」
「何か?」
「いや……」
「ナオフミ様のお陰で村のみんなが楽しく生活しているようで私も楽しいです」
「ああ、そう」

 おっと、司会が何か補足している。

「ちなみに前回は盾の勇者様一位、ラトさんとウィンディアちゃんが同数二位でしたが、フィロリアル枠を別にした事でも差が出ましたね」

 魔物共がそれぞれ頷き合ってる。

「次は『フィロリアルに聞きました。好きな人は?』です」
「投票の結果、一位は盾の勇者様、二位はメルティちゃん、三位は槍の勇者様でした」
「「「クエエ!」」」

 フィロリアル達がそれぞれ囀り始める。
 俺が一位ってなんだよ。
 元康が基本的に面倒見ているんだから必然的に一位になるもんじゃないのか?
 この事実を元康が知ったらどんな顔をするのだろうか?
 見てみたいような見たくないような。

「盾の勇者様はみんなの人気者ですね。次は『みんなに聞いたカッコいいと思う男の人』です」

 パチパチと拍手が起こる。

「これは毎度票が別れます。今回は、一位は槍の勇者様。二位はイミアちゃんの叔父さん。三位はフォウルくんでした」

 と言うかなんか下らないと思ってきたな。そろそろ無視して家に帰るか?
 でも何故イミアの叔父が二位?
 見た感じ、真面目なモグラっぽい獣人だぞ?
 というか、元康とフォウルを見るに、これって外見だよな。

「やっぱみんなイミアちゃんの叔父さんに惹かれているんですね」
「やはりそうでしょう。あのカッコよくハンマーを振るって私達の武器や防具を作ってくれるあの姿は惚れ惚れしますよね」

 俺はラフタリアの方を見て尋ねる。

「そう言う事か」
「まあ……男らしい仕事をしているのにそんな素振りを見せませんし、人当たりは良い人ですよ。でもなんでみんな本名で呼ばないのでしょうか?」

 イミアの名前が凄く長いからなぁ。
 むしろラフタリアは何故、あんな長い名前を覚えられるのだろう。
 俺も一度聞いたけど覚えて無い。
 なんだったか?
 喉まで出てるのだけど出てこない。

 トー……から始まった名前だと思う。
 あいつはなんて言うかイメージとは全然違うんだよなぁ。
 武器とか作ってくれる鍛冶師って腕は良いけど癖が強くて酒飲みで豪快って感じだけど、イミアの叔父って全然違う。
 ギャンブルはしない。酒は飲まない、タバコのような嗜好品もない。
 村の子達の面倒を見るのが趣味って感じだ。

 ってこれだけの要素があれば人気が出るのも頷けるか?
 武器防具の作成って手に職だから実は金に困らない職種でもあるし。
 工房を建てた時に作ってくれた包丁がよく切れるんだよな。
 手入れも行き届いているし、腕は中々の物だ。
 まあ俺の奴隷だから当たり前だが、タダで作ってくれるしな。

 武器屋の親父もそうだけど、この世界の鍛冶師って人当たり良いよなぁ。
 錬も弟子にしている。錬も懇切丁寧に教えてくれるとか言っていた。

「次は『みんなに聞いたカッコいいと思う女の人』です」

 女……ね?
 この村、地味に女性率高いんだよなぁ

「今回も一位はサディナ姉さん。二位はラトさん。三位は魔法の先生でした」

 これ……カッコいいと思う女の人じゃなくて、年上の女性じゃ……。
 特に魔法屋はかっこいいというか、頼りになるって感じだろ。
 知性的な意味で。
 ああ、全員人当たりが良くて親切な感じがするのか。

「ラフタリアは何位なんだろうな?」
「さあ……」

 五回も投票やってるってあいつ等も暇だな。
 いや、密かにこういう遊びをして楽しんでいるんだろう。
 なんかまだ色々とジャンル投票の結果をしている。
 けれど面倒だったので、その場を後にして家に帰った。


 翌日。
 城の方に呼ばれたのでポータルで行くと女王にシルトヴェルトからの使者との謁見を頼まれた。
 亀みたいな……獣人だ。
 尻尾が蛇? 小太りに見えるのか気の所為か?

「ゲンム種です。一応、亜人では有名な種族ですよ。この方はシルトヴェルトでも有名な貴族です」

 ゲンむ……げんぶ?
 どういう読み方なんだよ。
 ハクコもそうだよな。

「これは盾の勇者様、ご活躍はお聞きいたしております。お会いできて光栄の極み」
「はぁ……」
「今回は三勇教の洗脳事件で、盾の勇者様の領地に亜人が毒を撒いたと聞いて使者を送ってきたのですよ」
「はい。犯人は違ったご様子ですが、盾の勇者様、そろそろメルロマルクから出て我等が国のシルトヴェルトへと来訪してくださいませんでしょうか?」
「そう言われてもな……」

 シルドヴェルトって遠いし、なんか危険な匂いのする国だから出来れば行きたくない。

「盾の勇者であるイワタニ様は、この国の意識改革にご協力している手前、まだそちらの国に行く余裕がないのです。真に申し訳ございません」

 ゲンム族の使者が女王を温和な目で見つめる。
 一触即発の状況かと思ったけど案外、平和に交渉が進んでいるように見える。

「そうでしたか、ですが我が国の国民は何時、『盾の勇者様が我が国に帰還』を待ちわびております。それを勇者様に直接聞いて頂きたかった所存です」

 雰囲気は温和なんだけど、言いたい事は言うのな。

「それよりも何時まで戦闘態勢なのですか? こちらも警戒を解けないのですが?」

 女王が若干、殺気を放ってゲンム種の使者に微笑む。

「……これはこれは、私は常にこの姿で身を守っている手前、忘れておりました」

 ゲンム種の使者が……亜人の姿に変わる。
 亀みたいだった姿が、小太りの男性に変わる。
 年齢は50歳前後の初老。
 見た目の印象は悪くない。
 サディナやキールが使う獣化と同じ物だろう。

「さて、では盾の勇者様のご帰還はいつ頃になるでしょうか? それを聞かねば私も帰れないのですよ」
「まだ未定です……次の波を乗り越えた頃にこの話はしましょうと書状で伝えたはずですが?」
「ええ、ですが我が国の上層部も荒れておりましてね」
「心中お察しします」

 なんだ? 気の所為か使者が後方の……赤い若者に目を向けているような気がする。
 赤い奴に俺が目を向けるとサッと視線を外されたが……なんか奴の視線が熱い。

「シュサク種の方々が熱望しておりましてね。隠居していた私がこうして駆り出された訳ですよ」
「裏で糸を引くの間違いでは?」
「これはこれは、今回はそのような話ではないかと思うのですが?」

 女王と使者の寒気の走る応酬が続いている。
 ただ、俺もこの話し合いの意図がわかってきた。
 この使者はどちらかと言えば、俺にシルトヴェルトへは来て欲しくないと思っている派閥なのだけど何か理由があって派遣された。後ろの赤い奴は来てほしい派閥で、使者が何か不手際が無いかを見張っている感じだ。

「そうそう……盾の勇者様」
「なんだ?」
「勇者様の所にハクコの者が厄介になっていると聞いたのですが、真偽のほどはどうなのでしょうか?」

 ここは素直に答えるべきか?
 フォウルとアトラは一応は戦力として期待している。
 話によると没落した奴等みたいだけど……シルトヴェルトでハクコはいまだにどんな立ち位置なんだ?
 ここで肯定しようものなら、二人の身がどうなるか分からん。
 かといって誤魔化すのは難しい。
 だが、ここは俺らしく答えるか。

「知らんな。俺は奴隷で使えそうな奴を育てているだけだ。亜人の種族に興味は無い。聞いた話ではあいつ等は人間との混血らしいぞ」

 知らずに配下に居ると言って、聞くような連中じゃないのは百も承知だ。

「もしも俺の配下に手を出すなら俺も相応の返答を行うぞ」
「そうでしたか、混血……わかりました。盾の勇者様の名の元に……」

 使者は手を合わせて祈る。
 ここは素直に引く……と言う事だろうか? 後ろの赤い奴が何か言おうとしているが、俺が睨むと途端に黙りこんだ。
 これはアトラやフォウルに注意しておいた方が良いだろうな。
 で、その後は軽い雑談と、女王が全面的に亜人差別をやめようとする方針の説明で終え、次の波に関する話へと移る。

 次の波は鳳凰という西の地に封印されている化け物だと。
 一週間前には出発し、封印が解けるであろう場所で待機し、事前に周囲の避難誘導、各国の連合軍とのすり合わせとの案の出し合いと難しい話を続けられる。
 まあ、この辺りはギルドの会議に近い。

 シルトヴェルトから出兵する連中は空が飛べる勢力を多めにすると言う話で終わった。
 使者が会釈して謁見の間を出た後、女王は肩の力を抜いて俺に言う。

「イワタニ様のご協力感謝いたします」
「亀の方は俺にシルトヴェルトへ来てほしくないような感じだったな」
「穏健派ですし、盾の勇者様にだけ頼った考えに異を唱える勢力なのですよ」
「シルトヴェルトってどんな国なんだ?」

 考えてみればよく知らない。

「トップに四つの種族が座っている国です。昔はその中でもハクコが筆頭でありましたが、現在は他の三つの種族がけん制し合っている状況ですね」

 メルロマルクと長い間戦争をしていたのだったか。
 クズの所為でハクコは勢力を大きく削がれたと言う所なんだろう。
 で、ゲンムは穏健派で盾をあまり信仰していない?
 種族単位でみるのは早計だな。

「後方で控えていたのはシュサク種です。あちらもそのトップの一つですね」
「ふむ……」
「どちらかと言うと中立派であるはずですが……あの若者は過激派のようでしたね。納得させるのに骨を折りました」
「亀の方と繋がってる感じだったな、女王は」
「よくおわかりで」

 やはりか。
 うすら寒い会話をしているが、戦う感じではなかった。

「どうやらあちらはハクコ種が余計な手出しをしたのではないかと懸念していた様子でしたね。盾の勇者の配下として特別に扱われているのでは? と」
「あっちのパワーバランス的に危ないのか?」
「ハクコは元々過激派の筆頭でしたからね。まあタイランが亡き今は勢力も大人しいですが、復権を危険視しているのでしょう」
「結局はどうなったんだ? どうも話が見えなかった」
「イワタニ様の返答にあちらも一応は納得したと言う形ですかね」

 下手に戦争をする訳にも行かないと言う考えはあっちも同じって事か。
 むしろ俺の活躍はあちらが喜びこそすれ、怒る道理も無い。
 長年の敵であったメルロマルクを盾の勇者が実質、敵であった者達を処刑して行っている訳だし。

「元々勇者の血を入れる以外は排他的な種族でもある者達ですから……勇者様の配下にいるハクコはハクコとしてみられていないのでしょう」

 クズの妹の血が混じっていると言うだけで種族のカテゴリーから外されていると。
 何が幸いするか分からないな。
 まあ、ハクコ内ではどうかは知らないが。

「朝からご迷惑をおかけいたします」
「気にするな。戦争が起きる方がもっと面倒だ」

 ここで女王が追い返したとなれば戦争になったかもしれない。
 もちろん、女王の手腕は外交らしいから戦争にはならないだろうが、あいつ等も静かにしていてくれると良いな。

「あの使者団は近々イワタニ様の領内を見学に行くと思います。ご注意を」
「同じ亜人で問題を起こしたりする奴なのか?」
「穏健派で人格者ではありますので大丈夫かと」
「……わかった」


 女王と別れ、ポータルで村に戻った俺は、メルティが復興祭で得た収益を纏めたと言われたので、メルティの屋敷に行って確認を取る。
 その最中、またも俺の所に死者蘇生を願う馬鹿と貧乏そうな怠け者が話しかけようとしてきたので町の兵士に相応の場所に預けさせた。

 そうして山のように金袋が物置に使っている部屋に通された。
 おおう、一瞬目が眩んだ。
 これ、取ったら牢屋に入れられたりしないよな?

「ナオフミ、一応確認の為にチェックしてね」
「ああ」

 ラフタリア達はフォウルと一緒に村で訓練をしている。
 で、メルティは俺に金の管理を任せて祭りの片付けに出かけた。
 すげー……今回の祭りだけでこんなにも儲けが出たのか?
 思えば無一文からここまで上り詰めてきたんだよな。

 徐に金袋を一つ広げて中身を確認する。
 金貨がジャラジャラと袋から零れる。
 ……ふふ、この金で次は何をするかな?

 もっと大きな事につぎ込むか、工房や研究所の施設拡張を図るか?
 ラトが研究していた魔物の創造も本格的に挑む必要がある。
 出来れば一か月以内に完成させるにはどうしたら良いだろう?

「くっ……!」

 と、自然と笑っていた時だったかと思う。
 突然、頭を貫くような痛みと共に視界が歪んだ。

 カースシリーズ 新・七つの大罪
 遺伝子改造の盾の条件が解放されました。
 環境汚染の盾の条件が解放されました。
 社会的不公正の盾の条件が解放されました。
 バイオプラントの改造回数によるグロウアップ!
 カースシリーズ、遺伝子改造の盾の性能向上!
 バイオプラントの改造拡張によるグロウアップ!
 カースシリーズ、遺伝子改造の盾の性能向上!
 遺伝子改造の盾による貧困の盾の強制解放!
 遺伝子改造の盾による過度の幸福の盾の強制解放!
 etc……。

 ――っ!
 頭が痛くてふらつく。
 なんだ!?
 一体何が起こっているんだ!?

 新・七つの大罪?
 条件が解放されたって俺は何をした?
 ぐ……なんか盾からどす黒い感情が浸食してくるのを感じる。

 憤怒の時の様な腹の底から出てくるような怒りじゃない。
 憤怒ならば抑える事が出来る。
 だけど……これはそんなんじゃない。
 もっと……別の……抑え方がわからない。

 新・七つの大罪シリーズをコンプリート致しました!

「ラフ、タリア……」

 俺は朦朧とする意識の中で、助けてくれた女の子に助けを求めるかのよう手を伸ばし、倒れる。
 そこで意識がスーッと遠くなっていった。
アンケート終了しました。
投票ありがとうございます。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ