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盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

盾の勇者の成り上がり

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競羽

「むしろラフタリアには袴とか和風な服装が似合いそうだよな」
「袴? 和風ってなんですか?」

 イミアが首を傾げて尋ねてくる。
 洋裁を専門にして貰っているから、こう言う未知のジャンルに興味を持つのか。

「えっと、サディナがキールに勧めたふんどしもある意味和風だ」
「ああ、東方の衣装ですか。なんなら調べて作りましょうか?」
「そうだな……似合うだろうし、頼んでみようか」

 ラフタリアに和服か。

「わかりました。後で作りますね。素材の指定はありますか?」
「戦闘用じゃないから良い……いや、出来れば良い素材で作りたいな。待っていてくれ」
「はーい」

 イミアが俺との話を終えて、別の客の応対を始める。
 ラフタリアに和服かー……。

「木の傘とどぶろく、葉っぱと言う衣装だったらやめさせよう」

 5歳児位ならまだギャグで済むが、今のラフタリアにそんな格好をさせたら犯罪だ。

「どうしてそんな発想になるのですか! ナオフミ様」

 だってラフタリアって狸……。
 信楽焼は俺の世界にしかないか。
 アレって雌の信楽焼があるんだよなってそんな考えはどうでもいい。
 今はラフタリアをどう宥めるか。

「あ、尚文様!」
「なんでお前がここに!?」

 イミアが誰と接客しているのかと思ったらアトラとフォウルだった。

「いちゃ悪いのか? それよりお前等は何をしているんだ?」
「私は尚文様をお探ししておりました」
「アトラ! 近寄るんじゃない!」
「で、フォウル。お前は何をしていたんだ?」
「アトラさんの服を選んでいたんですよ」

 イミアが答える。
 その手には、可愛い系のワンピースやアクセサリーがある。
 既に買っているのか。

「他にオーダーメイドの依頼も行ってますよ。可愛い服やぬいぐるみを頼まれました」
「そうかそうか」

 相変わらず妹を着せ替え人形にしようとしていると。

「動きやすい服が良いのですけど……」

 アトラがこれみよがしに告げる。
 まあ確かにゴスロリとか、かわいい系は戦闘には適さない。
 それにアトラみたいなばっさりしたタイプは好かないだろう。

「アトラ、お前は戦いなんてしないで、ゆっくりとしていれば良いんだ。まだ動けるようになって日が浅いんだから!」
「そう言われましても……」

 困った様子で顔に手を当てて、アトラはイミアの方を向く。

「私のお願いした下着は出来てますか?」
「あ、はい。魅力的に見える下着ですね」

 ……さっきラフタリアに見せた下着よりもさらに際どい、薄くてきれいな装飾が掛った下着を取り出した。
 色は黒。
 ただ、問題はアトラは幼児体型で見た目10歳前後だから不釣り合いというかなんというか。
 というか、アトラは目が見えないのに、何故そういう物を欲しがる。

「な――」

 フォウルが絶句していやがる。
 俺も同じ気持ちだ。
 アレを着て何をするつもりだ!

「やめろアトラ! そんな下着、兄ちゃんは絶対に認めないぞ!」
「お兄様」

 アトラは優しくフォウルの手を掴んで。

「妄想の妹はいません。現実の私を見てください。私はこう言う下着を着て尚文様にアタックします」
「何を言っているんですか!」

 ラフタリアが思いっきり怒鳴りつける。

「うあ……」

 信じられないとでも言うかのようにフォウルはアトラから目を離し、何故か俺を睨みつける。
 何故、俺が寝取ったみたいな感じになっているんだ?
 そういう展開いらないから。

「ああ、はいはい。俺が悪いと思いたい気持ちはわかるから、お前の妹の暴走はお前で止めろ」
「ぐ……わかった。兄ちゃんはアトラを元に戻して見せる!」
「頑張れよ」
「お前が言うな! さ、アトラ! 次に行くぞ、まだ買わなきゃいけない物があるんだからな!」
「ああ、尚文様ぁあああ!」

 下着を握りしめたまま、俺に手を伸ばさないでほしい。
 まるで下着を俺に渡そうとしているみたいじゃないか。

「アトラさんは凄いですね」
「ええ」

 ラフタリアとイミアがその様子を、遠い目をして頷き合っている。
 若干黄昏ているように見えるのは気の所為か?

「……私も買うべきでしょうか」
「何を言っているんだ? ラフタリアには普通の下着が良いだろ?」
「……アトラさんの気持ちがわかりました」

 アトラの気持ち?
 なんて話をしていたら町の外で騒がしい声が聞こえてくる。
 あっちは確か谷子主催で草レース場を急遽設置したんだったか。
 一応は魔物のカテゴリーにあるフィロリアルの健康面その他を考えてラトも一緒に出ているはずだ。

 わぁああああああ!
 っと喝采と怒号が聞こえてくる。
 アレは勝利の喜びと敗北の叫びが入り混じった声だ。
 少し騒がしいが、ラフタリアの機嫌を直させるには良いかもしれない。

「レース場の方でも見に行くか」
「あ、待ってくださいよ」


 フィロリアルのレース場を見ると、見覚えの無いフィロリアルと調教師が敗北に項垂れ、俺の所のフィロリアルが勝利の雄たけびを上げている。
 一応、全員クイーンやキング化している奴らだ。
 あ、錬と樹が警備員として見張りをしてる。

「クエ」

 フィロリアル共が俺を見つける也、駆け寄ってきた。

「「「クエエエエ?」」」

 勝ったよ? 褒めて褒めてーっとでも言いたげなフィロリアル共が俺に向かって頭を差しだしてくる。

「ああはいはい」

 こっちにはあのフィーロの配下一号のぶりっ子が指揮をしてレースをしているみたいだな。
 あんまり相手はしたくないけど、撫でまわしてやる。
 さっきの怒号は?
 と思って見ると、観客席で賭けに負けて泣いている来客共が居る。

「馬鹿な! 俺たちのファスト・ホマレが負けるだと!?」

 何その馬の名前みたいなの。

「伝説を作り上げたシールドライアンまでだぞ! どうなってんだ!」

 ……何処にも似たような名前の競争馬みたいなのが居るんだなぁ。

「貴方がこのフィロリアル達の調教師ですか!?」

 フィロリアル共に群がられた俺に、負けたフィロリアルの調教師共が近づいてくる。

「確か、ここの領主である盾の勇者様でございますよね」
「ああ、そうだが?」
「盾の勇者様の所のフィロリアル達は皆優秀ですね。是非、牡羽や牝羽として我等のフィロリアルと繁殖させて頂けないでしょうか?」
「「「クエ!?」」」

 俺の所のフィロリアル共が驚きの声を上げる。
 そして……話を持ってきた連中のフィロリアルの方を見る。
 すると、負けたフィロリアル共がなんか熱い視線をこっちに向けているような気がした。

「「「クエクエ!!」」」

 全員が首をブンブン振って俺の後ろに隠れようとする。
 数が多いから隠れきれてねえよ。
 というか、喋れる癖にフィロリアルの真似とか、まだ余裕があるんじゃないか。

「もちろん、交配料はこちらが持ちますので、どうかお考え出来ないでしょうか?」

 と、調教師がどれだけ金を出せるか算盤見たいな道具で俺に提示する。
 ……結構な金額だ。
 観客席の方では「おお! あの伝説のフィロリアルとの交配!? そりゃあ新たな伝説の始まりだ!」とか固唾を飲んで状況を見守っている感じになっている。
 ノリでは頷きたい状況だけど……でもなぁ。

 チラリと俺は後ろに顔を向ける。
 すると売られる子牛の様な潤んだ瞳でフィロリアル共が拒否してほしいと翼を合わせて祈ってる姿。
 健康チェックで出張しているラトと谷子を見ると。

 ラトは『侯爵が勝手に決めれば?』と肩を軽く上げてやる気無く返答。
 谷子も『それが結果的によい事になるのなら良いんじゃない?』って頷いてる。
 目を見るだけで分かるものなんだな。

「あー……一応責任者は俺だけど、育てているのは別にいるし、こいつ等も自由にさせておきたいんだ。そう言う話は……自然に……その……」

 なんで俺は言葉に詰まってんだよ。
 これは、俺が勝手に婚約を決めて良い訳じゃないからだな。
 後は元康が育てたフィロリアル共な訳だし、俺に権利は元々無い。
 だが、繁殖代を貰えるのは良いかもしれない。
 サラブレットの血統のフィロリアルが配下に加われば戦力増強も間違いないだろ。

「「「クエェエエエエ……」」」

 縋りつくなよ、お前等……。
 相手がかなり大きい組織らしいのはメルティから聞いているんだ。
 出資はゼルトブルだったか? コロシアムとか賭け事は大抵そこらしいからな。
 断るのも大変だし、将来的には良い話なんだ。
 出来れば、フィロリアル同士で上手く行かなかったで済ませておきたいんだよ。

「どうもこいつ等が乗り気じゃない。少しの間、俺のフィロリアル共とそっちのフィロリアルとで相性を図って、それでも上手く行かないなら諦めてくれないか?」

 だから折衷案で妥協して貰う。

「……わかりました」

 レース場が喝采に溢れる。
 上手く行けばフィロリアルレースが盛り上がるから、らしい。

「「「クエェエエ……」」」

 イヤイヤと首を振り続けるフィロリアル共。
 だからあっちに聞こえないように輪の中に入って小声で呟く。

「安心しろ。お前等が嫌がれば良いんだよ。無理やり迫ってきたら怪我しない程度に蹴り飛ばせば良い」
「クエエ……」
「後な、お前等の事を大事にしている元康がその話を飲むとは思えないしな」

 ついでに、まあ、これはフィロリアル共にも言えるか。

「お前等の中にも満更でもない奴が居るみたいだから、そいつらの事を汲み取ってやれよ」

 断りたい筆頭組と、別に良いと思って見返している組みがいる。

「全員がそう言う事をやれって言ってる訳じゃないんだよ。あくまで主導権はお前等にある。わかったな?」
「「「クエ!」」」

 分かってくれたのかフィロリアル共は元気に頷く。
 ちなみにフィロリアルの繁殖期間は一か月。
 満更でもない組みが預かったフィロリアルと交配し、後の名羽となるのはまた別の話なのと、元康がそのフィロリアル達と壮絶な喧嘩をするのは別の話。

 ま、その後のケアで大変だったのは血迷った預かりモノのフィロリアルがよりによってフィーロに狙いを定めた時だったか。
 フィーロの蹴りで危うくとんでもない賠償金を払いかねない状況になりかかった。
 仮にも次期女王に迫ったのだから、自業自得だけどなー……。
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