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盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

盾の勇者の成り上がり

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深夜の攻防

 夜になり、作業もある程度区切りを付けた頃。
 大分眠くなってきたので、そろそろ寝ようかと背伸びをする。

「そろそろ寝るのですか?」
「ああ、明日も朝は早いからな」

 ベッドに腰掛け、今日の見張りを誰に頼むか……そう言えばラフタリアが居るのだからアトラ対策はラフタリアに任せればいいんだと思いだした。

「ラフタリア、アトラが入ってきたら追い出すんだぞ」
「はい!」

 元気だな。
 普段のラフタリアとはなんか違う感じだ。

「……なんで寝巻を脱いでいるんだ?」
「え? あ……」

 全裸になりそうな勢いでラフタリアは服を脱ごうとしている。
 暑いのはわかるが、全部脱ぐ意味がわからない。
 ん? コンコンと部屋の扉を叩く音が聞こえる。
 なんとなくだけどイヤな予感がしつつ、扉を開ける。

「やっほー、ナオフミちゃん。アトラちゃんと一緒に寝に来たわよ」
「尚文様、今日も寝所を共にしにきました」

 ほろ酔いのサディナがアトラを連れて満面の笑みで来訪した。
 俺は無言で扉を閉める。

「帰れ!」
「なんでよー良いじゃないのー」
「そうですわ尚文様。昨日までは同じ部屋で寝かせてくれていたではありませんか」
「ラフタリアが来たからにはそうはいかないからな。サディナ、お前も同罪だ」
「あらー、追い出されちゃったわね」
「どうしましょう」

 ヒソヒソとアトラとサディナが打ち合わせを始めているようだ。
 ……フォウルはどうしたんだ?
 深く考えるのはやめておこう。

 ちなみに酔い潰れていた。
 サディナとアトラが結託したらフォウル如き、容易く突破されてしまうか。
 アイツは妹には弱いからな。

「まずは様子を――」

 なんとなく聞こえるが無視しよう。

「あの……」
「念の為に一緒のベッドで寝るか」
「は、はい!」

 ラフタリアがなんか背筋を伸ばして頷く。

「ラフタリアちゃんの思い通りにさせる訳にはいかないわ。でもここは少しだけ様子を見ておきましょうね。アトラちゃん」

 あの二人は目に見えない何かで建物の中を察する事が出来るのか?
 と、思ったら窓からこっちを覗き込みながら話し合いをしている。
 俺は無言でピシャっとカーテンを閉める。

「ふふふ、その程度で私達の覗きを無視できるとは思わないことよー」

 う、うぜぇ……。
 サディナの言葉は無視してラフタリアをベッドに招く。

「し、失礼します!」

 最初にイミアをベッドに招いた時と似たような反応だな。
 何を緊張しているんだ?
 前にも一緒に寝た事があるだろうに。
 というかおねしょしてたし、あの時は。

「よしよし」

 俺は横になって、手頃にラフタリアの尻尾に手を置く。

「ひ!? な、ナオフミ様、なんで尻尾を触るんですか?」
「ん? フィーロの羽、キールとイミアの毛皮が寝る時によく触れていたから自然と、だな」

 最近はこのどれかと触れて寝ている事が多かったから癖になったと言うか、習慣見たいな感じだ。
 抱き枕的な感触に慣れてしまったって所か。

「そんな事をしていたんですか……私の知らない間に変わってしまったんですね」
「別にそこまで変化がある訳じゃないだろう」

 徐にラフタリアのシッポを撫でる。

「あ……うう……」

 肌触りは、フィーロとキールの良い所を混ぜた感じだ。
 毛並みが良くなっているんだなぁ。
 ふかふかな感じだ。
 癖になりそうな、上質なさわり心地。

「はぁ……はぁ……」

 ラフタリアの呼吸が荒い。尻尾に触れられるのに慣れていないんだろうな。
 掛け布団を羽織って目を瞑る。

「…………」

 何だろうか? 寝入る前にアトラが入ってきたような寝付けない変な感じが続いている。
 おかしいな。フィーロでもふんどし犬でもイミアでも、他の亜人奴隷でも変な感じはしないのに、ラフタリアとだと寝つけないな。

「あ……うう……」

 ラフタリアも震えて落ちつかないみたいだ。
 尻尾を撫でると、その度にビクンと痙攣している。
 随分と時間が立った頃だろうか? いい加減眠いのに寝付けないイヤな感じで少しイライラしてきた。

「な、ナオフミ様……」
「ふむ」

 俺はムクリと起き上がる。

「悪い、ラフタリア。なんかお前じゃ寝付けそうにない」
「え!?」

 顔を若干赤くさせたラフタリアが声を裏返して答える。

「何故か知らないけど、寝付けないんだよな」
「ふふふ、ナオフミちゃん。それなら私達と一緒に寝ましょうよ」

 窓の外からサディナの声が響く。
 何がそれなら、なんだよ。
 というか、まだ居たのか。早く寝ろ。

「聞いたわよー。ナオフミちゃんがアトラちゃんを拒んでいた理由はラフタリアちゃんに誤解されるのが嫌だからなのよね?」
「まあ……」

 実際の所は寝ている最中周りに何か変化があると目が覚める。
 だったのだが、最近はあんまり気にならなくなってきている。

「ならラフタリアちゃん公認で私達と一緒に寝れば良いのよ。さあ、肉欲の宴の時間よ!」
「何が肉欲の宴だ! ふざけんな!」
「ナオフミちゃん。夜はこれからよー」
「サディナお姉さんは黙って帰ってください! アトラちゃんもです!」

 ラフタリアがカーテンを開けてサディナとアトラに向けて言う。
 そうだ。追い返せ。
 こういう時にはっきりと言えるのはラフタリアの長所だ。

「何を言っているのよ、ラフタリアちゃん。私はラフタリアちゃんの味方よ? ナオフミちゃんと、楽しい事をしたいのよね?」
「そうですわラフタリアさん。一緒に尚文様と寝ましょうよ」
「懐柔しようとしてもダメですよ!」
「そうだぞ。別に一緒のベッドじゃなくても良いんだ。隣のベッドでラフタリアが寝ていてお前達を警戒してくれればそれで問題ない」

 俺はラフタリアが開けたカーテンをもう一度閉める。

「と言う訳でラフタリア、隣のベッドで寝てくれ」
「はぁ……わかりました」

 凄く名残惜しそうにラフタリアは隣のベッドで横になる。
 ……さて、俺も寝るか。
 そう思って寝付いたんだが。

「サディナお姉さん……入ってきたのはわかっているんですからね」

 いつの間にか俺達の部屋にサディナが侵入し、ラフタリアに見つかった模様だ。
 起きるのが面倒なので、そのまま寝たふりを続行する。

「なるほど、ナオフミちゃんを得るにはラフタリアちゃんという障害を排除しなきゃいけないようね。お姉さん負けないわよ」
「加勢しますわ」
「良いでしょう……では私が相手になります! ナオフミ様はご心配なく、ゆっくりと眠っていてください」

 ガチャリと音を立てて、三人は部屋を出て行ったようだ。
 家の外で稲光と喧騒が聞こえてくる。

「なんで、アトラちゃんが無双活性を使うんですか!」
「リーシアさんのを見て覚えましたわ」
「見ただけで使えるように!?」
「尚文様も出来ますわ」
「私の修業は何だったんですか!?」
「負けません!」
「それでも、積み重ねた経験は私の方が上! 変幻無双流剣技――!」

 まあ、ラフタリアに任せておけば全て安心だな。
 さすがのアトラもラフタリアには勝てないだろ。

「ごしゅじんさまー一緒にねよー」

 メルティの所で寝ていたはずのフィーロがやってきた。
 夜道を走ってきたのか?
 ぼんやりとしている所にやってきたので、適当に頷く。

「ああ、じゃあアトラとサディナが万が一、ラフタリアを突破してきたら相手をしろよ」
「うん。キールくんとイミアちゃんも一緒だよー」
「兄ちゃん。ラフタリアちゃんとサディナ姉ちゃんとアトラちゃんが外で凄いバトルしてるよ」
「はい……接戦をしていてみんな起きだしてます」
「ああ、なんかうるさいと思ったらそれか、俺は明日に備えて寝るから後でな……」
「どっちが勝つと思ってるんだ兄ちゃん?」
「ラフタリアだ」
「そっかー、じゃあ俺も飽きたら兄ちゃんと寝るな」
「ああ、はいはい」

 ちなみに朝までラフタリアとサディナ&アトラは戦っていたらしく、朝家を出たら三人ともぐったりと座り込んでいた。
 ラフタリアもさっさと二人を黙らせてくれると思ったんだがなぁ。
 まあ、任せたまま寝た俺も俺だと反省するしかないか。
 ゆっくり休んでいてくれとラフタリアが言ってたから、信じていたんだけど……。

「な、中々やるじゃないですか!」
「凄いですわ。サディナさんが居なかったら負けていました」
「ラフタリアちゃん強くなったわねー。でもまだ負けないわ」
「もう朝だぞお前等」
「「「え?」」」

 気付かずに戦っていたのかコイツ等は。
 まったく、何処まで武闘派なんだよ。
 ラフタリアも相当な戦闘狂になってしまったようだ。
 俺が任せた所為だけど。

 というかサディナとアトラが結託するとシャレにならないなぁ。
 朝までラフタリアが戦う羽目になるって、どうにかしなきゃいけない。
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