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盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

盾の勇者の成り上がり

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フィーロ

 翌日の昼前。ラフタリアが昨日の夜更かしの所為で寝坊した。魔法書片手にうんうん唸っていた。
 俺? 薬草を煎じて薬にしていた。
 寝坊の分も取り戻す為に出かける準備をしていると。

「あ、孵るみたいですよ」

 宿の部屋の窓際に置いておいた。昨日買った卵に亀裂が入っていたのをラフタリアが気づいた。
 何か生物の毛の様な、羽の様な、柔らかい物体が隙間から覗いている。
 本格的に生まれるのが近い様だ。

「そうか」

 何が生まれるのか興味がある。
 ヒビが入った卵を見に行く。
 ピキピキと卵の亀裂は広がり、パリンと音を立てて、中から魔物の赤ん坊が顔を出した。

「ピイ!」

 ふわふわの羽毛、頭に卵の欠片を乗っけたピンク色のヒヨコみたいな魔物と俺の視線が合う。

「ピイ!」

 元気良く跳躍し、俺の顔にぶつかった。
 全然痛くなかったけど、生まれたばかりだというのに元気そうな魔物だ。
 種族はわからないが、体調は良さそうなのでしっかりと面倒を見てやれば元気に育つだろう。

「これは何の魔物だ? 鳥系という事はピキュピキュか?」

 ピキュピキュはあまり高く飛べないデフォルメされたコンドルのような魔物だ。
 それの幼生体とかなら納得が行く姿をしている。
 成長すればバルーンなどと比べると、身体は俊敏で攻撃もクチバシがあるので期待はできる。

「うーん……私も魔物に詳しい訳じゃないですから」

 ラフタリアも困り顔で答える。

「しょうがない。村の連中に聞いてみるか」

 魔物商の扱っている魔物なのだからそこまで危険な魔物ではないだろう。聞けば答えてくれるかもしれない。
 俺が魔物の雛に手を伸ばすと、雛は俺の手に乗っかり、肩まで駆け上って跳躍し、頭に腰を据える。

「ピイイイ」

 スリスリと頬ずりをしている。
 なんか……可愛らしい態度だな。

「ふふ、ナオフミ様を親だと思っているのですよ」
「まあ刷り込みだろうな」

 事前に登録をしてあるし、始めてみる動く相手が俺だったから親と思っているのだろう。
 卵の欠片を片付けようとすると盾が反応した。
 よくよく考えてみれば、盾に卵の欠片を吸わせれば何の魔物か分かるかもしれない。
 だから卵の欠片を盾に吸わせてみた。

 魔物使いの盾の条件が解放されました。
 魔物の卵の盾の条件が解放されました。

 魔物使いの盾
 能力未解放……装備ボーナス、魔物成長補正(小)

 魔物の卵の盾
 能力未解放……装備ボーナス、料理技能2

 ……なんか予想とは違う盾が出た。でも便利そうだから解放中だった奴隷使いの盾Ⅱから魔物使いの盾に変化させる。

「何か分かりました?」
「いや、別の盾が出て分からなかった」

 結局、この雛が何の魔物なのだろうか。村の奴等が知っているとありがたいのだが。
 復興中の村の中を歩きながら、今日は何処でLvを上げるか考える。
 やはり妥当なラインは村の西部にある沼地辺りだろうか? 前回は北西部の山を探索したので、手ごろな敵が居る場所を探したい。
 という所で、村人と顔を合わせる。

「あ、盾の勇者様」
「おはよう」
「おはようございます」

 ここでは一週間と少しいたからな、波で守ったのもあるが顔なじみは結構多い。

「おはようございます」

 深々と頭を下げられてしまった。何か恥ずかしい気持ちになってくる。

「ピイ!」

 頭の雛が元気良く鳴く。

「おや?」

 村人が俺の頭に乗っかっている雛に目を向ける。

「どうしたんですか?」

 雛を指差して訪ねる。

「魔物商から卵を買ってね」
「ああ、なるほど」
「ただ、中身が何か分からないって触れ込みのくじ引きだった。この魔物が何か知らないか?」

 村人は雛をマジマジと見つめる。

「そうですねぇ……たぶん、フィロリアルの雛だと思いますよ?」
「え? あの馬車を引く鳥か?」

 それなら元の金額より高いから若干お徳だった事になるのだが……まあ、村人の話が本当ならの話だけど。

「ええ、なんなら村の外れに牧場がありますから見てもらうと良いですよ」
「じゃあ行って見るよ」

 俺はラフタリアと一緒にその牧場を経営している奴の家に顔を出す。
 牧場は波の被害を結構受けていて、飼育していた魔物が半分くらい死んでしまっていたらしい。

「と言う訳で、この魔物はフィロリアルであっているのか?」

 牧場主に聞くと、頷かれる。

「そうですね。見た感じ、フィロリアルの雌ですねぇ」

 雛を持ち、マジマジと鑑定しながら牧場主は言った。

「品種はよくある種類、フィロアリア種で、荷車を引かないと落ち着かない生態を持っています」
「……それは生き物としてどうなんだ?」
「何かおかしい所でも?」

 ああ、この世界で生まれたときから当たり前のように居たら不思議とか思わないか。
 うーむ……大方、卵とか巣など守らないといけない対象物を、便利に運べる荷車のような何かを使って守る生態とかがあるのだろう。

「ま、外れではなく、割と当たりって所か」

 成体が銀貨200枚の魔物を100枚で買えたと考えれば悪くは無い。
 育ちきるのにどれだけ金と時間が掛かるか分からないけど、出来なくは無いだろう。

「ピイ!」

 フィロリアルの雛は俺の頭の上で鳴いた。

「コイツは何を食うんだ?」
「最初は豆を煮とかした等、柔らかい物ですね。大きくなったら雑食ですから何でも食べますよ」
「なるほど、ありがとう」

 自分でも驚くほどすんなり礼が言えた。
 とりあえず、村で出している煮豆辺りで良いらしい。

「で、名前はどうしますか?」

 ラフタリアが雛を撫でながら聞いてくる。

「売るかもしれないペットに名前をつけるのか?」

 こういうのって名前を付けると愛着が沸いて売れなくなるとか聞く。

「ずっと雛ちゃんとかフィロリアルって呼ぶんですか?」
「む……」

 それは確かに面倒くさい。

「じゃあ……そうだな、フィーロとでも呼ぶか」
「……安直ですね」
「うるさい」
「ピイ!」

 名前をつけられたのを理解したのか雛は機嫌よく鳴いた。
 礼を言った後、俺達はフィーロ用のエサとついでに朝食を取ってから狩りに出かけた。

「今日は何処へいきますか?」
「ピイ?」
「そうだなぁ……どこが良い狩場なのかまだ知らないから自分の足で稼ぐしかないだろ、いつも通りに行くぞ」
「はい」

 ラフタリアが大きく、頼りになっているからな。前よりは戦いやすくなっているはずだ。
 フィーロは俺の頭の上でピイピイ鳴いていた。
 騒がしくて、ちょっと心地よい。



 夕方に差し掛かった頃、さすがの俺も異変に気が付いた。
 今日は思いのほか魔物との遭遇が多く、しかも効率的に倒して回れた。
 武器や防具を新調したお陰だろう。前来た時よりサックリと敵を倒せている。
 その日の結果はこうだ。

 俺 Lv23
 ラフタリア Lv27
 フィーロ Lv12

 フィーロは碌に戦っていなかったのに経験値が入ってLvが急上昇していた。
 それは良い。幼い亜人はLvが上がると肉体が急成長すると聞いていたし、魔物も同じ理屈で育ちが早くなるらしい。
 ただ……なぁ……。
 フィーロの外見が、目に見えて変化していた。
 小さなヒヨコみたいだったフィーロが、今では両手で抱えて持っても重い程に大きく成長していた。
 なんていうか、丸くて、饅頭みたいな体形になっている。そしてパラパラと羽根が生え変わり、色もピンクから桃色に変化していた。
 徐に羽根を吸ってみる。

 魔物使いの盾Ⅱの条件が解放されました。

 魔物使いの盾Ⅱ
 能力未解放……装備ボーナス、魔物ステータス補正(小)

 さすがにラフタリアの成長に気付かない俺だって分かる程の変化だ。

「ピヨ」

 鳴き方まで変わっていて、重いからと降ろしたら自分でトコトコと歩き出していた。
 ぐううう……。
 先ほどからフィーロから常時鳴り続けている音に嫌な予感がヒシヒシとする。
 一応、多めにエサを買っておいたのだけど、とっくに底を付き、雑食らしいので道端の野草とか牧草っぽいのを既に与えている。
 食わせても食わせても尽きぬ食欲……これは急成長の証なのだろうな。

「あの……ナオフミ様……」
「分かってる。魔物って凄いな」

 一日でこんなに成長するとは……これなら足代わりになるのも時間の問題だ。
 と、期待をするのは良いけど、体だけデカくて精神が未熟な魔物になりそうで怖い。
 だからかなり厳しい制限を施しておいた。
 宿に戻った俺は店主にフィーロを見せ、何処で寝かせれば良いか提案する。すると宿の馬小屋に案内され、藁を巣の代わりにさせて寝かせる事になった。

「ん? ここにはキメラの肉と骨が置いてあるんだな」

 まだ腐敗していない所を見るに、持ちは良いのか、それとも異界の化け物だから腐らないのか?

「とりあえず、加工しやすいように吊るして柔らかくなるのを待っているのですよ」
「へー……」

 食用じゃないだろうに、一応、扱いやすいように加工するのか。

「それから干し肉にしまして、購入者を募ろうと思っております。今でも欲しい方には売っています。魔法に携わる方が数名来てますよ」
「良いんじゃないか?」

 結構大きなキメラだったのでまだ在庫は結構あるようだ。牛二頭くらいはあるだろうか。
 食用にするには厳しいし、かといって研究資料に持っていくには多い。
 こんな所だろう。

「ピヨ」

 ぐうう……
 まだ腹が減っているのか。
 村で追加のエサを貰って与えているのだけど、あっという間に平らげてしまった。
 あの体の何処に入っているのだろうか……。
 ビキ……ビキビキ……
 骨と肉が軋む音? まだ成長しているのか?

「一日でここまで育てるなんて……かなりのご無理をなさったのでは?」

 店主が心配そうに俺の顔を見る。

「まだ、12なんだがな」
「へ? 12?」

 俺の答えに店主はフィーロを見て驚く。

「生後数日でここまで育つには20前後必要だったと思うのですが、さすがは勇者様の力ですね」

 んー……まあ、成長補正(小)があるし、影響を及ぼしている可能性は否定できないな。
 ステータスを確認すると、見るたびに変動する。成長中なのだろう。
 まだ戦闘には出せないな。

「ピヨ!」

 元気に鳴いているフィーロにスクスクと育て思う。
 フィーロの頭を撫で、寝息を立てるのを確認すると、俺はラフタリアと部屋に戻った。その後は、この世界の文字を覚える為に勉強をする。
 やることが多くて困りものだ。
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