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盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

盾の勇者の成り上がり

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スタート地点

「まあこんな感じで樹が今の所暴れ出す様子は無い。要監視だが、リーシアが居ればどうにかなるだろ。逃げる事は一応できないし、兆候も無い」
「そうですか。ではお任せ致します」
「ま、それで逃げたりしたら今度こそ問答無用で処分させて貰う」
「……出来れば避けたい状況です」
「そうだな。他には元康にお使いで行かせたカルミラ島の温泉地を使わせて貰う」
「ええ、勇者様方は便利な跳躍能力をお持ちのようなので、療養すると良いでしょうね」

 元康がフォーブレイに行く前、錬にポータルを受け取る様指示しておいた。
 そうしてカルミラ島の伯爵と交渉して、呪いに効く温泉に毎晩入れさせて貰える事になった。
 これで呪いの解除が捗ってくれると良いんだがなぁ。

「……今回の事件で相当な損害が出ました」
「そうだな」

 俺の所も似たような物だ。
 一応は住民達の協力もあって復興させられる範囲ではあるし、材料の調達にうちのフィロリアル達が手伝ってくれるから復興は思いのほか早く済みそうだけど。

 あまり生産していなかったキャンピングプラントも量産させて町の方で配布する事態になっている。
 こっちも仮設的にキャンピングプラントを提供しているから、ある程度はどうにか出来るだろうけど。
 この国の財政はどうなるものか。

 そういや三勇教の残党が潜伏していた建物には貴族が貯めこんだ財宝があったんだった。
 それを徴収して今回の復興費に充てる事を女王と決めている。
 どちらにしても、これでやっとこの国の膿を出す事が出来たと見て良いだろう。

「……まったく、とんだ愚かな娘です」

 女王は憂いに満ちた表情で窓に手を掛ける。
 そりゃあ、あれだけワガママ放題で人を嵌めて私腹を肥やすような娘が居たらこんな顔をするか。

「何度も……何度もあの性格を治そうと、それはもう小さな頃から注意はしたのですよ」
「知らんな」
「そうですね……全ては私の教育不手際でしょうね」
「クズの手綱も握れていないな」
「……元々が素晴らしい方だったのが裏目に出てしまいまして、権力を握って変わってしまったのですよ」

 窓から下を見ると、まだアトラとフォウルがクズと問答をしているようだ。
 クズも、ヴィッチが去った方向をぼんやりと顔を向けながらフォウルと話をしている。

 ん?
 フォウルの奴がキョトンとしている。
 一体何を話しているんだろう。

「明日から処刑が始まりますがイワタニ様はどうしますか?」
「一応確認は取るが、主犯格以外は欠席したい。樹の件や次の波の事もあるし、あんまり悠長にもしていられない」
「そうですか。では追って連絡致します」

 これで波に専念できる。
 とにかく、やっとスタート地点に立った様な気がしてならない。

「さて、そろそろ出発するか」

 女王と話を終えて俺達は帰還の準備をする。

「あ、私達はもう少し修行の旅を続けますので」
「そうか」

 ラフタリア達とはお別れか……若干名残惜しいが、それももう直ぐみたいだから安心か。

「アトラ! アトラァアア!」
「お兄様、早く旅立ってくださいませ」

 そうそう、フォウルもクラスアップを済ませたんだよな。
 せっかくだからとフィーロと一緒に龍刻の砂時計にまで行ったのに、特殊クラスアップ出来ないとか。
 しょうがないからガエリオンを連れてきたら出来た。
 どういう基準なのだろうか。

 これでアトラはフィーロの方のクラスアップで、フォウルはガエリオンの方とルートが別れたな。
 どういう違いがあるか今の所不明だけど。
 種族が同じだから、違いが現れるかもしれない。

「まったく、フォウルさんの所為で修業が遅れがちなんですから大人しくしてくださいよ」

 うんざりした口調でラフタリアは名残惜しそうに手を伸ばすフォウルの鳩尾に拳をめり込ませる。

「うぐ……まだまだ」
「それなら私も」

 アトラはフォウルの後頭部に手刀を叩きこむ。

「ぐは! あ、あとらぁ……」

 コラ!
 何追撃してんだ。

「修業が遅れがち?」
「ええ、なんかあるとすぐに逃げようとするので大変なんですよ」
「そうですね。ラフタリアさんはいつもフォウルさんの面倒を師範に任されてましたよね」
「そうなのか?」

 まったく、コイツはとんだシスコンだな。
 せっかくの修業から脱走をしようとしてるのかよ。

「私が弟子の中で一番強かったので自然と……アトラちゃんが大切な気持ちは私にもわかりますけどね。その為に強くなろうと努力してほしいです」
「それも後少しなんだろ?」
「はい。楽しみにしていてくださいね」
「ああ。じゃあ城下町の外まで送って行くか」
「ありがとうございます」

 俺達はラフタリア達を連れて城下町の外まで見送りに出た。

「お土産を楽しみにしていてくださいね」
「土産?」
「はい。色々と持っていきますので」

 修行中に手に入れた素材とかか? それならぜひ欲しいな。
 ラフタリアは俺との接点も多いし、何が欲しいかわかっているだろう。

「それでは」
「またなー」

 と、手を振ってラフタリア達は再度旅立っていった。

「では私達も帰りますか?」
「そうだな。錬やリーシアは先に帰らせているし、そろそろ――」
「馬車ぁ……」

 ポツリとフィーロが俺に尋ねるように声を漏らす。
 微妙に泣きそうな顔をするなっての。

「ああ、はいはい。そういや武器屋の親父に顔を合わせて無かったから聞きに行くか」

 まったく、馬車が無いのがそんなに気になるかねぇ。
 ま、親父の方も気になってたし行くのも悪くないだろ。
 事件後に少し話はしたけどさ。

 なんか武器屋に三勇教の残党が駆けこんできて、集団心理の短剣を突き付けてきたらしい。
 一目で変な武器だと見抜いた親父は即座にそいつらをぶちのめして店を畳んで知り合いの家で潜伏していたそうだ。
 俺が注意していたから想定の範囲だったとか。
 大々的に事件が起こった後は無事な連中と共に避難誘導に尽力を注いでいたと親父は言っていた。
 なんとも頼りになる事で。

 というか親父は一体何Lvなんだろうか。
 Lvと実際の経験や技術は関係が無いから、野暮な事なのだろうけどさ。
 顔も広いし、戦闘経験も豊富っぽいしなぁ。

 ただ、武器屋の親父が作った武器が今回の騒動で相当使われていたらしい。
 良く売れていたのもここに理由があったんだな。解決にも使われた。
 なんて考えていると武器屋に到着した。

「おう。アンちゃんじゃないか」
「経過はどうだ? 店とか」
「色々と泥棒に盗まれちまったな。金とかは無事だったがな」
「そうか、再開の目処は立ってるのか?」
「いつでも再開可能だぜ。品揃えは不安だけどな」
「この際、俺の領地に来ないか?」
「またかアンちゃん。その話に答えるつもりは今の所無いぜ」

 まあイミアの叔父が帰ってきたばかりだし、しつこく勧誘するのは程々にしておこう。

「で、今回は何の用だ?」
「うちの鳥が馬車の完成を待ちきれなくてなぁ」
「ああ、そう言う事か、悪いな鳥の嬢ちゃん。まだ完成してねえよ」
「そっかー……フィーロがっかり」
「変わりにフォーブレイで使われている技術を組みこむから安心してくれ」
「何をするんだ?」
「馬車の車輪が起こす衝撃を吸収する仕組みだそうだ」

 ……サスペンションか?
 そうか、この世界にもそう言った技術があるのか。
 親父が設計図を広げて俺に見せる。
 簡単なスプリングを車輪の連結部に組み込むモノだった。

「じゃあ――」

 俺はショックアブソーバーをついでに設計図に書き込んで補足しておいた。
 とは言っても、竹筒水鉄砲みたいな絵で空気圧によるものだけどさ。
 俺だってそこまで詳しくないし。
 昔、車好きの友人が話した知識の受け売りだったりする。
 ただ、それでも親父は目から鱗みたいに感心したように何度も頷いていた。

「面白そうな事をアンちゃん知ってるんだな。ちょっと試してみるぜ」
「俺の世界には魔法が無い。だからこの部分には魔法的な装置を組み込めばもっと良くなると思う」
「わかってるぜアンちゃん。何も全てをトレースする必要はねえだろ。俺もアイデアが閃いただけだ」
「そうか。楽しみにしているよ」
「うん! フィーロ楽しみ」

 こうして親父に馬車が出来ているかとか設計図の話をしてから俺達は村に戻ったのだった。
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