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盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

盾の勇者の成り上がり

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命乞い

「治療院も全力でバックアップし、ヴィッチには夜伽の相手にして頂くそうです」

 冷淡に答える女王。
 ヴィッチは聞くまいと耳を必死に押さえようとするが拘束具で出来ないというのにやろうとしている。

 思わず笑みが零れる。
 尚、今回ばっかりはラフタリアも口を挟んでこない。
 どちらかと言えば、事態に困惑しているって感じだけどな。

「事実上、死刑よりも辛い刑ですかね。男を惑わせ続けた者は男の手によって死する、と考えていただければ良いかと」
「しかしなぁ……」

 聞いた限り、最悪なゲス野郎なんだろうが、相手が男という事が引っ掛かる。
 懐柔されたりしたらたまったもんじゃないぞ。
 これで人を騙す事だけは天才的だからな。

 お得意の無駄に良い外見を使って、フォーブレイの王を意のままに操るとかされるかもしれない。
 そんな事になったら今回の件よりも被害が広がる。

「ヴィッチが例外になる可能性があるんじゃないか?」
「懐柔などの線は0とは言いませんが、これまで我が国以外の国でもしていたかと思います。あれで世界最大国家故、仮に味方に付ければ世界を手にしたも同然ですからね。ですが、女の言葉を聞いたという前例は過去にありません」

 悪い意味で元康みたいな野郎だな。
 変化前の元康と今の元康をゲス野郎に変え、足して割ったみたいな奴だ。
 考えてもみれば、異世界人を凝縮した奴なんだから、前の元康みたいな奴という例えは適切か。
 まあ、元康はフェミニストだったがな。

「ヴィッチも話の通じる相手と通じない相手の区別位できるでしょう。ですよね? 前に一目で選ばれて真っ青になっていましたよね。考えても見れば留学した時点で決まっていたのかもしれません」
「ママ! おねがいよ! 一生のおねがい! どうか! どうか猶予を頂戴!」
「そうですねー……確かに私も心が苦しいモノではありますよ。ですが自称洗脳されていたとはいえ世間が許さないでしょうし……そうですね。では勇者様方に委ねてみましょうか?」
「はぁ!?」

 女王が扇を閉じて俺達に微笑む。
 何をする気だ? どうせ碌でも無い事だろうけどさ。

「ここにいる勇者様の中で一人でもヴィッチを引き取りたいという方がいらしたら、この話は延期にして差し上げましょう」
「ふざけ――」

 俺が言い終わる前にヴィッチが俺の足元に兵士の鎖を力技で押し退け床に這いつくばった。

「盾の勇者様! 何でも致します! どうか、どうか私をもう一度仲間にしてください!」
「……」

 すっげー必死。
 涙目でわき目も振らずに全てをかなぐり捨てて頭を垂れていやがる。
 俺は無言でヴィッチの頭を踏みつける。

「ありがとうございます! 幾らでも踏んでください! なんでも致します。豚の真似をしろと言うのなら一生致しますブヒィイイイ!」

 すっげー愉快な気持ちになってくるのは俺が外道だからか。
 ラフタリアが微妙な顔でこっちを見ている。
 だが、やめん。

「豚に犯されて、死ね!」

 思いっきり突き落としてやった。
 ヴィッチの奴、親の仇みたいに俺を睨みつけたがそれ所じゃないようで、次は錬の元に駆け寄る。

「剣の勇者様――」
「地獄に堕ちろ!」

 錬の目が死んでる!
 さすがにヴィッチの事を許せはしないか。
 ここで許すとか言い出したらぶっ殺すつもりだったがな。

「槍の勇者様! どうかお許しを!」
「フィーロたん、この後ドライブにでも行かないかい?」
「やー!」

 ヴィッチは元康の方に駆け寄るが元康の奴、フィーロにハァハァしていて聞いちゃいねー。
 フィーロが怯えているぞ。
 というか、ドライブって……どこへ行くつもりだ。
 そもそもフィロリアルに乗って出掛ける事をドライブと言うのか?

 要するに元康はヴィッチに反応すらしない。ヴィッチは女だからな。
 しかしヴィッチも諦めない。
 必死に元康へ懇願している。
 まあ付き合いは長いだろうし、この中なら唯一助けてくれるかもしれない相手だ。
 ……以前の元康ならな。

「何ですかこの醜い赤豚は。せっかくのフィーロたんが見えないじゃないか。どけ、豚」
「元康ー拒まないと付いてくるぞ」
「じゃあ失せろ!」

 アッサリと元康はヴィッチを突き飛ばした。
 すっげーあんなに大事にしていたヴィッチが涙目で懇願しているのに無視とか。
 人間変わるもんだな。
 で、樹は欠席。

「ママ! 弓の勇者が居ません! これは不正な裁定です」
「お前が言うな!」
「そうだ! 誰の所為で樹がああなったかわかっているのか!」

 錬が強い口調で糾弾している。
 樹はお前の所為で欠席だよ!
 間違っても……まあ後で説明するけど樹だって冷静になったら断るわ!

「チッ! フォーブレイに行かされるくらいなら! ここで死んでやるわー!」

 ぶちっとイヤな音が響き渡った。
 ヴィッチの奴、自らの舌を強く噛み切った。
 口元から血飛沫が上がる。
 自害した? そんなにも嫌なのか!?

「殺すな! 生かして連れていけ!」

 自分でもなんだこの台詞とか本気で思う。
 兵士共がヴィッチに駆け寄り、治療師が自害しようとするヴィッチに回復魔法をかけ始める。
 ヴィッチの口に布がねじ込まれ、自害を妨害された。

「と言う事で、ヴィッチの裁定、どうでしたでしょうか?」
「まだ決定してないがある程度満足……というか、困惑している」

 あんなに必死に自ら頭を下げたヴィッチを罵倒出来たのだから少しは溜飲も下がる、か。
 それは錬も同様でうすら寒い笑みを浮かべている。
 仲間の為に自分の身さえ投げ出しそうな今の錬が、だ。
 元康はー……いい加減フィーロの尻を追うのをやめろっての。

「ではヴィッチのLvを龍刻の砂時計で1にしてからフォーブレイに輸送いたしましょう……我が城の兵だけでは不安ですね。イワタニ様が直々に送りますか?」
「断る。何が悲しくてコイツと長時間一緒にいなくちゃいけないんだ」

 しかし、女王の意見も尤もだ。
 この城の兵士だけでは不安なのは間違い無い。
 かといって、俺が行くとすると領地の後始末や樹という不安要素を残していく事になる。
 まあポータルで飛んだり帰ったりといった面倒な事をすればどうにかなるかもしれないが……。

 ……そうだ。

「ふむ……どこかでヴィッチの協力者が奪還とかをしないように元康を輸送隊と一緒に行かせたい。良いか?」
「お任せを!」

 女王が答える前に元康が胸を張って言い放つ。

「ではお任せしましょう」

 女王の話は耳に入って無いんだろうなぁ。
 元康って女の言葉を聞いちゃいないし。

「元康、仮に連行しようとしている途中……豚が逃げそうになったら迷わず殺せ。ついでにこの豚がフォーブレイの王とやらに犯される所まで確認し、水晶で映像を取ってから戻って来い」
「はい! 承知致しました」

 これでもしもの憂いも心配ない。
 まあ、元康がやられたら元も子も無いけどさ。
 後で女王の話が嘘だった場合はヴィッチを殺せと命じておこう。

「俺の所のフィロリアルの乗り心地は地獄そのものらしいから、フォーブレイに到着するまで苦しいだろうなぁ。到着したら更なる地獄が待っているんだろうがな」

 ククク……っと俺は舌を噛み切って意識を失っているヴィッチを見て笑っていたのだった。

 それから治療されつつ龍刻の砂時計でLvダウンされたヴィッチを見届け、元康とフィロリアル達にヴィッチを乗せた馬車を任せる。
 意識を回復させ自害出来ないように口を詰められ、縛られたヴィッチが馬車の窓から俺達を睨み付けてきた。
 その瞳には絶望に満ちた涙が彩られている。
 抵抗しようにもLvが1に戻された反動で身動きも取れない。

「むー!」
「存分に、最後の旅を楽しむんだな」

 こうしてヴィッチは地獄への片道を転がり落ちていった。
 自業自得だけどな。


 尚、これは先に記述しておこう。
 元康に証拠品として持たせた水晶……以前、俺の指名手配の時に使われたあのカメラみたいな水晶で、映像記録という物があり、ヴィッチが豚男……いや、フォーブレイの王に犯されるグロ映像をもらった。
 ちなみに声付きだ。

 正直、気持ち悪い事この上なかったが、ヴィッチの末路がしっかりと記録されている。
 なんでも、フォーブレイの王とやらは快く応じてくれたそうだ。
 そっちの方がヴィッチが嫌がるとかなんとか……本当クズいな。

 実際に会う事だけは本気でお断りしたいが、フォーブレイの王とやらは証拠映像を取って来いという俺の意見を大層気に入り、招待したいとか言ってきたらしい。
 勘弁してくれ……。
 先入観もあるが、色々な意味を含めて、丁重に断っておいた。

 ちなみに、フォーブレイの王がそういう事を言うのは相当珍しいそうだ。
 女王やフォーブレイの伝達役が驚いていた。

 こうして元康がフォーブレイにヴィッチを送り届けてから、二週間程で死んだという報告がやって来た。
 その後、氷の魔法で凍結されたヴィッチの死体が送られたきたのは証拠品という事だろうか。
 あまりにも無残な死に様だった。

 フォーブレイの王とやらは水晶プレイが偉く気に入ったのか、何十個も送ってきたな。
 あんまり目を通していないけど、死の瞬間まで記録されていたのは呆れた。
 こんな物で友好を育めるとでも思っているんだろうか?
 ヴィッチではない、別の女の映像を送ってくるな……。

 俺はまだ見ぬ、大国の闇を垣間見た気がした。
 できれば、係わり合いにはならない。
 そう心に刻んだ。


 こうして長きに渡るヴィッチとの因縁がついに切れた訳だが……あっさり過ぎて逆に拍子抜けだった。
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