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盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

盾の勇者の成り上がり

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命の御礼

 さて、これからどうするか。
 そう考えた所で波で余った回復薬を思い出す。
 念のために準備していたのだけど、使わないのだから薬屋に売った方が金になるだろう。

「薬屋に行って、それから武器屋かな」
「ナオフミ様、もう援助金は手に入らないのですから財布はきつく結んでいてくださいね。今回の様な事はご自身の首を絞めます」
「分かっている」
「今のところ、装備に困っておりません。必要になってから購入をお考えください」
「……」

 ふむ、これも理にかなってはいる。
 しかし、俺達が持っている装備は他の勇者達に比べれば安物だ。
 この際、より強い敵と戦う為に良い武器をラフタリアに持たせるのが得策だと思うのだが……。

「それに武器を新調してからまだ数日ですよ? 親父さんがどんな顔をするか考えてください」
「うーん……」

 確かに武器屋の親父には色々とサービスしてもらっている。下取りを込みでサービスしてくれているのだから、今の所持金ではあまり強さに差が出るとは思えないか……。

「分かった。今は貯金しておくとしよう」
「はい!」

 ある程度、金に余裕が出てから買い揃えるのも悪い考えではない。

「じゃあ薬屋に行くぞ」

 宣言通りに薬屋に顔を出すと店主が俺の顔を見るなり、親しげに微笑む。

「なんだ? どうしたんだ?」

 何時もは渋い顔をしながら薬を買ってくれるというのに笑みを浮かべられると背筋に寒気がくる。

「いやね。アンタが来たら礼を言っておこうと思ってね」
「は?」

 俺もラフタリアも首を傾げる。

「リユート村の親戚がアンタに助けて貰ったと言いに来てね。出来れば力になってくれと言われているんだ」
「ああ……なるほど」

 波が終わった時、リユート村の連中は揃って俺に礼を述べていた。あの中に薬屋の親戚がいたらしい。

「だから今回はその礼に」

 薬屋の店主は戸棚から一冊の本を取り出して俺に渡す。

「なんだ?」
「お前さんが作ってくる初級の薬より高位のレシピを集めた中級レシピの本だ。そろそろ挑戦するには良い頃合だと思ってね」
「……」

 俺は徐に中級レシピの本を広げてみる。ややボロく、ちょっと問題のある装丁であるが文字が書かれているのが分かる。
 うん。読めない。

「か、感謝する。頑張ってみよう」

 せっかくの好意なのだからお礼を言わねば悪いだろう。
 たぶん、この中には高値で売れる薬だってあるはずなのだ。

「そう言って貰えて嬉しいよ」

 う……人の善意に答えられないプレッシャーが俺を刺激する。
 この世界の文字は読めないからと諦めていたけど……覚えた方が良いんだろうなぁ……。

「魔法屋の奴も来いと言っておったぞ」
「魔法屋?」
「ナオフミ様、魔法を覚える為の書物を扱っている店ですよ」
「ああ、なるほど」

 本屋だと思っていたあそこは魔法屋か……考えてみれば水晶玉とかが店の奥にあった。

「何処の店だ?」
「表通りの大きな所だよ」

 ……ああ、城下町で一番か二番に大きい本屋ね。

「で、今日は何のようだ?」
「ああ、今回は――」

 回復薬をいつもより高く買い取ってくれた。
 そのお金で機材を新調し、言われた通り魔法屋に顔を出す。



「ああ、盾の勇者様ね。うちの孫がお世話になりまして」
「はぁ……」

 誰の事を言っているか分からないけどリユート村の住民なのだろう。魔法屋のおばさんは俺達を丁重に出迎える。
 おばさんはなんていうか、小太りで、魔女みたいな衣装を着ている。

「で、俺に何の用だ?」

 本屋だと思っていた魔法屋の店内を見る。
 古臭い本が並び、カウンターの奥には水晶がたくさん置いてある。
 他に杖とか、なんていうか確かに魔法を扱っている雰囲気があった。
 そういえばこの世界で魔法ってどうやって覚えるんだ?

「その前に、盾の勇者様のお仲間は隣のお嬢ちゃんだけで良いのかい?」
「ん? ああ」

 ラフタリアと顔を合わせてから頷く。

「じゃあちょっと待ってておくれ」

 おばさんはそう言うとカウンターから水晶玉を持ち出して、何やら呪文を唱えだした。

「よし、じゃあ盾の勇者様、水晶玉を覗いてみてくれるかい」
「あ、ああ」

 一体なんだというんだ?
 と、俺は思いつつ水晶玉を覗き込む。
 ……なんか光ってるけど、特に何か見えるわけじゃないな。

「そうだね……盾の勇者様は補助と回復の魔法に適正があるようだね」
「え?」

 魔法の適正診断してくれてたのか!?
 早く教えてくれれば理解できたというのに……まあ、文句を言うのは間違っているが、説明が飛んでるぞ。

「次は後ろのお嬢ちゃんね」
「あ、はい」

 俺は横に退いて今度はラフタリアが水晶玉を覗き込む。

「うーん。やっぱりラクーン種のお嬢ちゃんは光と闇の魔法に適正が出ているようね」
「やっぱりという事は常識なのか?」
「そうねぇ……光の屈折と闇のあやふや差を利用した幻を使う魔法が得意な種族だから」

 なるほど、ラクーン種はタヌキやアライグマ辺りに似ている。俺の世界の日本でもタヌキは人を化かす妖怪だ、なんて信じられていた。
 そういう所はこの世界でも似通っているのかもしれない。

「で、結局なんなんだ?」
「はい。これが魔法屋のおばちゃんが渡したかった物よ」

 と、おばちゃんが俺達にくれたのは三冊の本だった。
 また本か! 俺は読めないと言うのに、どうしてこうも親切心で本をくれるかな。

「本当は水晶玉を上げたいのだけど、そうなるとおばちゃんの生活が大変でね」
「どういう意味だ?」
「盾の勇者様は知らないのかい? 水晶玉に封じた魔法を解放すれば対応した魔法を一つ覚えられるんだよ」

 何!? じゃあ文字が読めなくても魔法が使えるというのか?

「ずいぶん前に国が勇者様用に……大量発注して、それなりの数を出荷したのだけど、盾の勇者様は知らないのかい?」
「知らないな」

 あのクズ王の事だ。大方、俺以外の勇者に後で渡しているのだろう。
 まったく、意図的な仲間外れに殺意が沸いてくるな。

「魔法書はかなり大変だけど、真面目に取り組めば一月で10の魔法が覚えられるだろうね」

 水晶玉は一つ、魔法書は大体一冊三つと言った所か。読めればの話なのだろうが。いや、一月と言っていたからもっとあるのかもしれない。

「ごめんねぇ」
「いえ、タダで魔法書を譲ってくださるだけで十分ですよ」

 ラフタリアが微笑んで対応し、俺も頷く。

「大体、どれくらいの魔法までが使えるんだ?」
「どれも初級の魔法だね。これより高位は……お金を出して買ってくれないかい」
「あ、ああ」

 あっちも商売だ。身を切る思いで俺達に譲ってくれているのだから我侭は言えない。

「感謝する」

 難しい言い方をしてしまったけど、俺達は魔法屋から魔法書を頂いた。



「はぁ……」

 思わず溜息が出る。
 あんまり勉強は好きじゃなかったからな。成績の低い俺はどうしたら良いのだろう。
 分かっている。この書物を必死に解読してレシピや魔法を覚えた方が良いという事くらい。
 なんていうのだろう。
 盾の中に『異世界文字翻訳』とか無いかと思ってしまう。
 薬の方のレシピとかは盾にある可能性は高い。探せば見つかるとも思う。
 だけど、対応する盾を探す労力と、文字を覚え、本を読んで作れるようになるのとではどちらに軍配が上がることやら……。
 後者は値段と別の物にも挑戦できる利点がある。
 だけどなぁ……やっぱ異世界文字翻訳とかある可能性を考えてしまうと無駄な労力になりそうで、覚える気力が萎える。

「一緒に魔法を覚えましょう」

 ラフタリアが元気に俺に話しかけてくる。

「俺はこの世界の文字が読めないんだよ……」
「ええ、ですから一緒に覚えて行きましょうよ」
「まあ……そうなるよな」

 薬作りの合間に覚えておいて損は無い。か。

「そういえば次の波は何時来るのでしょう?」
「ん? ああ、ちょっと待ってろ」

 視界の隅にあるアイコンを弄り、波の襲来時期を呼び出す。
 後、45日と14時間。

「45日もあるぞ」

 一月毎じゃなかったのか!
 いや、まあ、二ヶ月分ではないけど……って良く考えたら事が起こってから俺達を召喚したんだよな、この国は。
 となると期限は思いのほか多いのかもしれない。
 ラフタリアが奴隷になって俺に会うまでの日数とかも考えると自然な結果か。
 一月後とは……大きい範囲で言ったものだ。

「まあ、時間があるのは良い事だけどさ」

 その間に出来る限りの事をしていくと考えると、少ないのかもしれない。

「とりあえず、ここでの用事は済んだのか?」
「そうですねぇ……奴隷紋に再登録と武器防具に薬の処分、そして本も貰いましたし、当面はありませんね」

 ラフタリアに確認を取る。
 何か忘れ物をして戻ってくるのはタイムロスだからな。

「じゃあ、飯でも食ってからLv上げに行くか」
「はい」

 今日の朝食には驚いた。味覚が回復していたからな。
 飯が美味いというのは活力を与えてくれる。

 乳鉢の盾の条件が解放されました。
 ビーカーの盾の条件が解放されました。
 薬研の盾の条件が解放されました。

 乳鉢の盾
 能力未解放……装備ボーナス、新入り調合

 ビーカーの盾
 能力未解放……装備ボーナス、液体調合ボーナス

 薬研の盾
 能力未解放……装備ボーナス、採取技能2



 食事を終えた俺達はその足で城下町を後にし、リユート村の方へ行く。
 あの辺りから先の場所に手ごろな魔物が生息しているからだ。
 俺は他の勇者が知っているような穴場の狩場は知らない。だから、この世界の住人から聞くか、自分の足で探すしかない。
 地図を広げて、手ごろな場所を見つけるというのも中々難しいが、それだけやり応えがあるとも言える。
 競っている訳じゃないけど、あの勇者共に遅れているのは若干悔しい。だが、知らない魔物と戦い勝てば盾が成長するので悪い話では無い。
 結構説明を省いているが、色々と盾が出ているのだ。大体が能力上昇系なのが困り所ではある。
 防御力アップが多いのは盾だからだろう。他に敏捷やスタミナ、魔力、SPと攻撃以外のステータスは上がっている。
 このお陰で前回の波では殆ど無傷で済んだ訳だしな。
 その道中…。

「……そういえば波の敵は盾で吸えるのか?」

 そのまま帰ってきたから忘れていたけど、盾の成長の為にも試してみたいと思う。
 で、リユート村が見えてきた辺りで、波の化け物の死骸をかなり見つけた。

 次元ノイナゴの盾の条件が解放されました。
 次元ノ下級バチの盾の条件が解放されました。
 次元ノ屍食鬼の盾の条件が解放されました。

 次元ノイナゴの盾
 能力未解放……装備ボーナス、防御力6

 次元ノ下級バチの盾
 能力未解放……装備ボーナス、敏捷6

 次元ノ屍食鬼の盾
 能力未解放……装備ボーナス、所持物腐敗防止(小)

 ついでに分解して他の盾が出ないか挑戦してみた。
 が、どうもこのシリーズでは満たせるものは殆ど無いようで一つしか解放できなかった。

 ビーニードルシールドの条件が解放されました。

 ビーニードルシールド
 能力未解放……装備ボーナス、攻撃力1
 専用効果 針の盾(小) ハチの毒(麻痺)

 まあ、こんなものだろうと歩いて行くと、キメラの死骸を村人達が撤去中だった。

「よ」
「あ、盾の勇者様」

 昨日今日の影響か、村の連中は俺を見ると快く歓迎してくれる。

「波のボスだったか、コイツは」

 キメラの死骸を見て俺はポツリと零す。
 なんていうか……良く見るとキメラとは言うが、この世界の魔物とは何か違うような感覚がある。
 色合いなのか、なんなのかを具体的に説明するのは難しいけど。

「恐ろしいものです」
「……そうだな」

 村人の声に俺も同意する。
 他の勇者や騎士団が素材を剥いで行ったのだろう、原型こそ留めているが皮や肉がごっそりと切り取られている。

「俺も少しもらって良いか?」
「どうぞどうぞ、処分に困っていた所ですから、何なら村で加工して装備にしますか?」
「それも悪くは無いけど……使えそうな所はあんまり無いぞ」

 皮は剥がされ、鎧などには出来ない。肉と骨……後は尻尾の蛇の部分くらいか。
 頭の部分は切り取られて無かった。見た感じ、三つくらいは生えていたと思われるが……。
 まあいいや、俺はラフタリアと一緒にキメラの死骸を分解して盾に吸わせてみた。

 キメラミートシールドの条件が解放されました。
 キメラボーンシールドの条件が解放されました。
 キメラレザーシールドの条件が解放されました。
 キメラヴァイパーシールドの条件が解放されました。

 キメラミートシールド
 能力未解放……装備ボーナス、料理品質向上

 キメラボーンシールド
 能力未解放……装備ボーナス、闇耐性(中)

 キメラレザーシールド
 能力未解放……装備ボーナス、防御力10

 キメラヴァイパーシールド
 能力未解放……装備ボーナス、スキル「チェンジシールド」 解毒調合向上 毒耐性(中)
 専用効果 蛇の毒牙(中) フック

 最後のはなんか色々と便利なボーナスがついているな。防御力もかなり高い。
 ただ、変化させるには必要Lvがかなり高く、しかもキメラシリーズを何個か解放しないと出来ないみたいだ。
 後回しで良いだろうけど、次の波でのメインになる可能性が高いな。

「残りはどうするんだ?」

 村人に聞く。

「どうせ埋めるだけですからご自由にお願いします」
「うーむ……」

 些かもったいない気もするけど、残った部分は殆ど肉と骨しかない。
 骨はまあ、物持ちが良いけど、肉は干し肉にするとか考えが浮かぶよな。
 食用では絶対に無いだろうけど。
 あれだ。魔法薬の材料とかになりそうなイメージがある。
 ……とはいえ、何処で誰が買い取ってくれるかわからないからなぁ……腐ると困るし、下手に保存して再生とかされたら恐ろしい。
 骨でも言えるけど。まだ安心できそうなイメージがある。
 だけど……さすがにそんな警戒するのもどうかと思う。

「じゃ、出来る限り頂いておこう」
「え、ですがかなりの量になりますよ?」
「この村で預かってくれるだろ?」
「え? 盾の勇者様がそう言うのでしたら……」
「まあ、肉は干し肉にして、少し残してくれれば行商とか買いたい奴に売っておいて良い。復興費くらいにはなるだろう。波の大物の肉とでも言えば研究材料目的で買う奴もいるだろ」
「確かにそれなら買う方もいらっしゃるかも」

 村人も復興資金が欲しいらしく、俺の提案を受け入れる。
 内臓とか腐りやすそうな部分は盾に吸わせて処分し、俺達がリユート村にたどり着いた頃には日も落ちかけていた。
 村は半壊していて、生き残った人たちは比較的破損が無かった家で纏まって生活している。
 俺達は割と安全だった宿屋の一室を店主が空けてくれたお陰でその日はゆっくりと休むことが出来た。

「……復興の手伝いとかはしてやりたいが、人の事を考えている余裕は無いからな……」

 今日はリユート村の連中に甘えっぱなしだった。
 キメラの死骸を肉や骨として処分したのは感謝されたが、食事と宿を無償で提供されると言うのは些か悪い。

「そうですね。私達も得をして村の方々にも得になる事が出来れば良いのですが」

 村の連中で読み書きができる奴にこの世界の文字を読む為の表を書いてもらった。
 分かりやすく言うなら、あいうえお表みたいな奴。英語で言うとアルファベット表。
 後は、少しだけ文字が読めるラフタリアにどの文字が俺の世界の文字で言う何に当たるかを発音してもらって、解読表に置き換える。

 おそらく、これに単語とかも合わさるのだから、解読は困難を要するだろう。
 だけど、一応……覚えておくに越したことは無い。
 薬を作る合間に、俺は文字を覚えようと四苦八苦するのだった。
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