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盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

盾の勇者の成り上がり

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正義VS正義

「ナオフミさん、ありがとうございます。後は任せてください。イツキ様を必ず説得してみせます」
「ああ、少しは期待してやる。女騎士同様、今のお前なら出来るかもしれないしな」

 状況を理解して錬が下がる。
 決闘なのに二対一では卑怯だと思ったのか、あるいはリーシアの決意に触れて下がったのか。
 理由は知らないが、自分と女騎士に当てはめて邪魔するべきではないとでも思ったんだろうよ。

 どちらにしても、やっと樹がリーシアを敵として認識したか。
 問題はリーシアが敗北した場合だが、ラースシールドとガエリオンとのコンビネーションで、まさしく殺すしか方法がないだろうな。
 幸いフィーロもいる。勝てなくはないだろう。

 それにしてもリーシアも樹に対して大概だよな。
 どんだけ好きなんだって話だ。
 まあ、その好きな相手と本気で命のやり取りをしている訳だから、色々と大変なんだろうが。

「行きます! はぁあああああああああああああああああ!」

 かなり早い速度でリーシアが樹に詰め寄る。

「チッ! セントアローレイン! スプレッドストレイフィング!」

 樹はバックステップをしながら矢を何度も射出し、リーシアを射抜こうと試みる。
 前方に矢を放った直後、時間差で上に放った矢がタイミング良く、リーシアに降り注ぐ。
 回避するのは難しい。

「変幻無双流突剣技! 円!」

 しかし、リーシアが突剣を一回転振り回すと、甲高い音を立てて、樹の放った矢を全てなぎ払った。
 全力で戦っていなかったとは思っていたがリーシアの奴、勇者である樹に一歩も引かずに戦えているじゃないか。
 これが本当の変幻無双流という事なのだろうか?

 リーシアの方が難しい方を体得しているような事を女騎士も言っていた。
 個人の才能に左右されるのかもしれないが、確かにリーシアはとても強くなっている。
 矢を全て叩き落とされ、苛立ったような顔付きで樹はリーシアを睨みつける。

「イツキ様? 今戦う相手は私です。注意が散漫になっていますよ」

 時々、俺の方をチラッと見たりするからな。
 樹の中ではリーシアは俺と戦うための通過点程度の認識なんだろう。
 そんな認識ではリーシアに勝てるはずもない。
 今のリーシアはステータス、技術、覚悟、そのどれをとっても俺の配下の中では最上位の一人だ。

「ふ……言うようになったではありませんか、リーシアさん。ですが僕の本気がこの程度だと思っているのですか?」

 禍々しい気を立ち上らせて樹は弓を掲げる。

「レヒトファナティッカー!」

 バシッと辺りに何か結界の様な物が張られるのを感じた。
 これはフィーロやガエリオンの放つサンクチュアリと似た感覚だ。

「うおおおおおおおおおお!」

 樹の目が赤く、怪しく輝き始めた。
 そして禍々しい気が集まり、全身を包む鎧と化す。
 一見すると神々しい羽の生えた天使を模した全身鎧……なのだが、所々の装飾に角や悪魔を模した意匠が散見する。

 セルフブーストスキルだな。間違いない。
 しかもスキルで疑似的に鎧を作りだすとか。
 レンジャーモノやライダーとかの戦闘服的な全身鎧だ。

 ちょっと俺の鎧に似ている様な気もするが、あっちの方がかっこいい。
 俺のは世紀末の雑魚っぽいからな。
 カーススキルかどうかは不明だが、樹の方が性能高そうだ。

 リーシアは、ただ静かに樹の攻撃を待ち構える。
 その表情は、真剣そのものだ。
 ここで下手な横やりをしようものならリーシアが許さないだろう。

 一歩踏み出して援護したいとうずうずしている錬を俺は手を前に出して止める。
 錬の時のような真似はしない。
 俺は約束は守るからな。良くも悪くも。

「行きますよ、リーシアさん。これで僕の主張を理解し、尚文を共に倒しましょう!」
「いいえ、私は今のイツキ様を絶対に認めません。例え、命を奪われようとも!」

 リーシアは突剣を床に突き刺し、屈んだような態勢で構える。
 なんだ? 地面からもリーシアは気を集め、突剣全体に気を纏わせている。
 女騎士が攻撃を当てる瞬間に似ているが、纏っている気の量が圧倒的だ。

「変幻無双流……奥義、一の型……」
『その愚かなる罪人への我が決めたる罰の名は神の正義による断罪! 我が信念を代価に作りだされし断罪の爪をその身に受けよ!』
「ゲレティヒカイト――」

 樹がスキルを唱えきる前にリーシアは突剣を引き抜き、走り出す。

「アラインヘルシャフト!」
「陽!」

 リーシアが光を発しながら突剣を樹に向けて突きだした。
 何だろうか。スーパー的な神々しい能力アップをしているような気がする。
 同時に、樹が放ったスキルはなんだ!?
 樹から光の玉が無数に飛び散り、天井をぶち破って巨大な獅子を形取った禍々しい気の塊が降り注いだ。

 ……まずい。
 どこからどう見てもプルートオプファーに匹敵するカーススキルだ。
 当たったら、さすがに超強化されたリーシアでもきついだろう。

「二の型、月!」

 リーシアを中心に展開していた光が更に広がり、巨大な獅子を三日月形に切り伏せる。
 すげぇ……カーススキルを正面から突破した奴なんてリーシアが初めてなんじゃないか?
 一体どんなスキルだったのかはわからないけど、樹も自分の放った必殺スキルを突破されて驚愕の表情を浮かべている。

「まだだ! まだ僕はベストを尽くしていない!」
「三の型、星!」

 そんな事を言っている暇も無く、リーシアが樹の目の前にまで詰め寄って突きを繰り出す。
 女騎士の多層連撃だったか。それに匹敵する連続攻撃だ。
 一発毎に樹を守っている鎧のパーツが壊れて霧散して行く。

「ぐ……」

 樹に向かって突き出される攻撃の数々、その一つ一つに気が混じっているのを俺は感じ取っていた。
 あれはシャレにならない。
 一応訓練している俺なら耐えきれるとは思うけれど、カース状態の錬や元康でも、おそらく突破される。
 それほどのスペックを秘めた攻撃だ。

「いい加減にしろぉおおお!」

 ドンと禍々しい気を爆発させて樹はリーシアを吹き飛ばす。

「ふぇ――まだです!」

 吹き飛ばされながらも受け身を取って着地したリーシアは呼吸を整えて攻撃に備える。

「正義が、リーシアさん程度に止められるはずがないでしょうが! 必殺技を潰すんじゃない!」

 潰すなとか何を言っているんだか。
 ターン制のRPGじゃないんだぞ。
 むしろアクションゲームとかだと必殺技とかは進んで潰しに行くだろう。

 ……ああ。ヒーローモノだとヒーローの必殺技は相手が待ってくれるのか。
 光線とか、キックとか、五人の武器を合わせて放つ技とかな。

「イツキ様、もうやめましょう。今のイツキ様は私を止める事は叶わないようです」

 リーシアは感情の籠った声で強く言い放つ。
 確かに一方的に責めている様に見える。

「イツキ様、貴方の正義は間違っています! 早くその力を手放してください」
「違う! 僕は、この新しく手に入れた力で、世界を、人々を救うんだ!」

 弓の形が歪んでいく……。
 それに呼応して樹の禍々しい気も色を変えていくのが俺には見える。
 ……おそらく、錬や元康と同じように何か別のカースが目覚めた。

 複数のカースで樹が強化されればリーシアでも分が悪いか?
 見た感じ元康とは違って、勇者全員の強化はされていないと思うけど……。

「大丈夫か、リーシア?」
「はい。まだ、手助けは無用です」
「……そうか。やりたい様にやるといい」

 状況次第では助けに入らなければならないが、リーシアがそう言うのなら見守っていよう。
 みんな、息を飲んで状況を見ている。

 本当だったら樹の説得なんて無視して多勢に無勢で仕留めたいが、頑張っていたリーシアの懇願なのだ。
 やりたい所まで見守るしかあるまい。
 勝てるかどうかは別の話だがな。

 現に女騎士が錬を説得した時と似たように樹を昏倒させる事は難しいようだ。
 なんだかんだで腐っても勇者、という事なのかもしれないな。
 決定打が足りないという点では同じだろう。

「喰らえ! シャドウバインド!」

 樹が動くリーシアの足元に狙いを定めて矢を放つ。
 字面から非常にイヤな予感がする。

「リーシア――」

 但し、命中はしなかった。
 リーシアの後方に矢は落ちる。

「か、体が!」

 俺が注意する前に、リーシアが動けなくなった。
 やはりそうか。
 相手の影に当てる事で動きを封じるスキルだ。

「バインドアロー!」

 動けなくなったリーシアに樹は更なる束縛スキルを放つ。
 壁にリーシアは矢で縫いつけられる。

「ま、まだ負けません!」
「いいえ! これで終わりです!」
『その愚かなる罪人への我が決めたる罰の名は真鍮製の雄牛による炙り殺し也。猛る雄牛の様な断末魔の悲鳴を上げながら悶え苦しめ!』
「ファラリスブル!」

 アイアンメイデンのように……雄牛を象った像の腹部が開いてリーシアを閉じ込める。
 そして腹部に業火が巻き起こった。

「リーシア!」

 樹が勝利を確信した笑みを浮かべる。
 間違いない。アイアンメイデンに匹敵するスキルだ。

「これで僕の勝利です。さあ、尚文、首を洗って待っててください」

 く……勝てるかと思ったが、やはり甘かったか。
 まずはリーシアを助ける事を考えないと。
 錬なんて咄嗟に走り出しているぞ。

 そう思った所で……。
 バキっと樹の作りだした雄牛にヒビが入る。

「何?」

 樹の顔が驚愕に彩られた。
 そして甲高い音を立てて雄牛は砕け散り、リーシアが飛び出す。

「四の型! 魔!」

 リーシアが樹に最接近して大きく突剣でなぎ払う。
 なんだ? リーシアの剣先が輝いて軌跡が黒く染まる。

「ぐ……め、目が!?」

 樹が両手で顔を覆って呻きだす。
 盲目の付与効果のある攻撃?
 かなり優秀な攻撃方法だ。

「勝手に勝ったつもりにならないでください」

 肩で息をしながらリーシアは言い放つ。
 処刑器具名のスキルすらも突破するか……リーシアの成長は驚愕の域に達している。
 間違いなく、現状元康を除外して俺の配下の中で一番強いだろう。

 もしかしたらラフタリアもコレ位超強化されているのかもしれない。
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