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盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

盾の勇者の成り上がり

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たまごガチャ

「これはこれは勇者様。今日はどのような用事で?」

 テントに顔を出すとあの紳士の奴隷商がもったいぶった礼儀の掛かるポーズで俺達を出迎える。

「おや?」

 奴隷商はラフタリアをマジマジと見つめて関心したように声を漏らす。

「驚きの変化ですな。まさかこんなにも上玉に育つとは」

 とか言いながら俺の方を何かガックリ来るように肩を落とす。

「……なんだよ」
「もっと私共のような方かと思っていたのですが期待はずれでしたな」

 それはどういう意味だ? とは言わないよう我慢しよう。

「生かさず殺さず、それでいて品質を上げるのが真なる奴隷使いだと答えてやる……」

 ドスの利いた声で奴隷商に返答する。

「お前の知る奴隷とは使い捨てるものなのだろうな」
「な、ナオフミ様?」

 ラフタリアが上目使いで心配そうにこちらを見上げた。
 自分でもちょっと調子に乗っていると自覚はある。
 なんというのか以前より少し余裕ができた。

「……ふふふ。そうでしたか、私ゾクゾクしてきましたよ」

 奴隷商の奴、俺の答えが気に入ったのかこれでもかと笑みを浮かべる。

「して、この奴隷の査定ですな……ここまで上玉に育ったとなると、非処女だとして金貨7枚……で、どうでしょうか?」
「なんで売ることが既に決定しているんですか! それに私は処女です!」

 ラフタリアの言葉に奴隷商は驚きの声を発する。

「なんと! では金貨15枚に致しましょう。本当に処女かどうか確かめてよろしいですかな?」
「ナオフミ様!」

 ラフタリアが金貨15枚だと!?

「ナオフミ様!? ねえ、なんか言ってくださいよ」

 金貨15枚、確かLv75の狼男が買える金額だぞ!
 そんな思考をしているとラフタリアが凄く怖い顔でガシッと俺の肩を握り締める。

「ナオフミ様……お戯れは程々にしませんと怒りますよ」
「どうしたんだ? 怖い顔をして」
「私が査定されているにも関わらず、全然擁護しないからです」
「余裕を見せないと舐められるからだ」

 と、誤魔化すしかないだろう。ちょっと考えが脳裏に過ぎったのを見抜かれたらラフタリアに見限られかねない。
 さすがに俺をこの世界で唯一信じてくれた子を売るような真似はしない。

「金貨15枚か……」

 小さく呟くとラフタリアの力が強くなる。

「いたい、いたい!」

 ラフタリアの攻撃力って……俺の防御力を上回っているんだなぁ。
 これは頼りになる。戦闘的な意味で。

「……このまま逃げてもよろしいでしょうか?」
「冗談だよ。ラフタリアがそんなにも綺麗になって高く評価をされているんだなと思っただけだよ」
「そ、そんな……ナオフミ様ったら……」

 なんかラフタリアが大人しくなって照れている。
 この動作はむかつく。
 ……自分でも思うが、何故? 一体どうしたと言うのだ?

「まあ奴隷商、コイツは売らないと決めているんだ」
「そうですか……非常に残念です。して、何の御用で?」
「ああ、お前は聞いてないか? 城での騒ぎ」

 俺の問いに奴隷商はまたもニヤリと笑う。

「存知ておりますぞ。奴隷の呪いが解かれてしまったのですね」
「知っているなら話は早いな……というか、何しに来たのか分かっているなら査定をするな」

 主に俺がラフタリアに愛想を尽かされそうになっていたというのに。
 まったく……。

「あの王の妄言程度でこの国の奴隷制度はなくなりませんよ。ハイ」
「ん? 貴族は奴隷を買わないんだろ?」
「いえ、そんな事はありませんよ。むしろ富裕層の方々の方が多い位であります。使用用途は色々ありますからね。ハイ」
「あのクズ王、元康……槍の勇者の肩入れしてあんな事言ったら貴族が反感を抱いたりしないのか? いや、俺なら抱くぞ」

 そうなると滑稽なんだがな。
 というかむしろそうなってくれればこの国も良くなるのに。

「まあ、この国も一枚岩ではございませんので。そんな事をすれば手痛い目に遭うのは掲げた貴族です。ハイ」
「あのヒゲ親父が、そんなに権力を持っているのか?」

 独裁国家的な国なのだろうか。
 だとしたら十年持たないな。いずれ反乱でも起こって滅亡するだろう。
 なんせクズ王が国を治めて、ビッチな王女が後継者だもんな。

「それはですね。この国では王より――」
「あの……奴隷紋の話はどうなったのですか?」
「そういえばそうだったな」

 脱線してしまった。考えてみれば、もう会わないクズ王の事なんてどうでも良いな。

「で、呪いを掛けてもらいに来た訳ですね。ハイ」
「ああ、出来るか?」
「何時でも出来ますよ」

 パチンと奴隷商は指を鳴らすと奴隷認証をした時の壷を部下が持ってくる。
 ラフタリアは恥ずかしそうに胸当てを外して胸を露出させる。

「ど、どうですか?」
「何が?」
「……はぁ」

 ?
 何をそんなに恥ずかしそうにしているのだろうか。
 しかも溜息までする始末。
 俺が何かしたのだろうか?
 後は前やった時と同じように俺の血を染み込ませたインクをラフタリアの奴隷紋があった場所に塗りつける。

「文様は破壊されていますが、修復も割合可能なのですよ」
「へー……」

 消えていた文様が浮かび上がり、ラフタリアの胸で輝き始める。

「くっ……」

 やはり痛いのだろう。ラフタリアは痛みを堪えている。
 俺の視界に奴隷のアイコンが復活する。
 命令や違約行為に対する該当項目をチェック。
 ……前よりは少なめにして大丈夫だろう。
 ラフタリアは俺に信じてもらう為に奴隷に戻ったのだ。俺もラフタリアを信じなければいけない。

「さて」

 どうするかと考えていると不意に残ったインクのある皿が目に入る。
 触れてみると盾が反応していた。

「なあ、このインクを分けてもらえないか? その分の金は払うから」
「ええ、良いですよ」

 インクを入れた皿から盾に残ったインクを掛ける。
 スー……と盾はインクを吸い込んだ。

 奴隷使いの盾の条件が解放されました。
 奴隷使いの盾Ⅱの条件が解放されました。

 奴隷使いの盾
 能力未解放……装備ボーナス、奴隷成長補正(小)

 奴隷使いの盾Ⅱ
 能力未解放……装備ボーナス、奴隷ステータス補正(小)

 奴隷使いの盾か……まあ、なんとなく頷ける結果だな。
 ツリーは独自の物なのか新しく出現。元はスモールシールドから派生している。その分、あまり強くない。
 だけど、装備ボーナスがちょっと魅力的だ。

 成長補正か。
 というかインクを少し流しただけでなんで二つも開いたんだ?
 徐にラフタリアの顔を見る。

「なんですか?」

 そういえば髪の毛を盾に吸わせた事があったな。あの時はラクーンシールドに目が行ってたけど、こっちも満たしていたのかもしれない。
 たぶん、奴隷使いの盾Ⅱがそれだったのだろう。ツリーを満たしたので一緒に解放された。
 そんな所だと推察する。
 となると……。

「ラフタリア、ちょっと血をくれないか?」
「どうしたのですか?」
「いやな、少し実験してみたくてな」

 首を傾げつつ、ラフタリアは俺がインクに血を入れた時と同じように指先にナイフを少しだけつけて血を滲ませ、俺が差し出した盾に落とす。

 奴隷使いの盾Ⅲの条件が解放されました。

 奴隷使いの盾Ⅲ
 能力未解放……装備ボーナス、奴隷成長補正(中)

 よし! 推理は当たった!

「ナオフミ様? なんか楽しそうですよ」
「ああ、面白い盾が出てきたんでな」
「それはよかったですね」

 俺は盾を奴隷使いの盾に変えて解放を待つことにした。

「さてと……ん?」

 ここでの用事も大半が済んだし帰ろうとすると、テントの隅に卵の入った木箱に目がいった。
 見覚えが無いものだ。なんだろうか。

「あれはなんだ?」

 奴隷商に尋ねる。

「ああ、あれは私共の表の商売道具ですな」
「お前等の表の仕事ってなんだよ」
「魔物商ですよ」

 なんかテンション高めに答えられた。

「魔物? というとこの世界には魔物使いとかもいるのか」
「物分りが良くて何より、勇者様はご存じないですか?」
「会った事はない気がするが……」
「ナオフミ様」

 ラフタリアが手を上げる。

「どうした?」
「フィロリアルは魔物使いが育てた魔物ですよ?」

 聞いたことも無い魔物の名前だ。一体何を指しているんだだろう。

「何だ、それは?」
「町で馬の変わりに馬車を引いている鳥ですよ」
「ああ、あれか」

 チョ○ボにしか見えないあの鳥ね。
 この世界独特の動物かと思ったら魔物だったのか。

「私の住んでいた村にも魔物育成を仕事にしている人がいましたよ。牧場に一杯、食肉用の魔物を育ててました」
「へー……」

 あれか? この世界にとって牧場経営とかの類は魔物使いというカテゴリーに組み込まれているのかも知れない。

「で、あの卵は?」
「魔物は卵からじゃないと人には懐きませんからねぇ。こうして卵を取引してるのですよ」
「そうなのか」
「既に育てられた魔物の方の檻は見ますか?」

 欲しいのなら売る。奴隷商は商魂逞しいな。

「いや、今回は別にいい」

 他に用事もあるし。

「で、あの卵のある木箱の上に立てかけてある看板は何だ?」

 なんて書いてあるのか分からないけど木箱に矢印がついていて、数字らしき物が書いてある。

「銀貨100枚で一回挑戦、魔物の卵くじですよ!」
「100枚とは高いな」

 俺達の所持金は銀貨508枚、かなりの大金だ。

「高価な魔物ですゆえ」
「一応参考に聞くが、フィロリアルだっけ? それはお前の所じゃ平均幾らだ?」
「……成体で200枚からですかね。羽毛や品種などで左右されます。ハイ」
「成体という事はヒナはもっと安いのか。更に卵の値段だけで、育成費は除外だとすると……得なのか?」
「いえいえ、あそこにあるのは他の卵も一緒でございます」
「なるほど……くじと言っていたからな」

 ハズレもあれば当たりもあると言う奴か。
 ハズレを引けば目も当てられない。当たりを引けば元より高め。

「で、あの中には当たりが無いって所か」
「なんと! 私達がそんな非道な商売をしていると勇者様は御思いで!?」
「違うのか?」
「私、商売にはプライドを持っております。虚言でお客様を騙すのは好きでありますが、売るものを詐称するのは嫌でございます」
「騙すのは好きだけど、詐称は嫌いって……」

 どんな理屈だよ。と、半ば呆れつつ考える。

「それで? 当たりは何なんだ?」
「勇者様が分かりやすいように説明しますと騎竜でございますね」

 キリュウ、騎竜……たぶん、騎士団の将軍クラスが乗っていたドラゴンか?

「馬みたいなドラゴン?」
「今回は飛行タイプです。人気があります故……貴族のお客様が挑戦していきますよ」

 飛ぶドラゴンかー……夢があるな。

「ナオフミ様?」
「相場ですと当たりを引いたら金貨20枚相当に匹敵します」
「ちなみに確率は? その騎竜の卵の出る奴だけで良い」
「今回のくじで用意した卵は250個でございます。その中で1個です」

 250分の1か。

「見た目や重さで分からないよう強い魔法を掛けております。ハズレを引く可能性を先に了承してもらってからの購入です」
「良い商売をしているな」
「ええ、当たった方にはちゃんと名前を教えてもらい。宣伝にも参加していただいております」
「ふむ、確率がな……」
「十個お買い上げになると、必ず当たりの入っている、こちらの箱から一つ選べます。ハイ」
「さすがに騎竜とやらは入っていないのだろう?」
「ハイ。ですが、銀貨300枚相当の物は必ず当たります」

 自然と笑みが零れる。
 待てよ……コレってコンプガチャじゃねえか、コラ!
 こういうのは大本が得をする様に出来ているんだ。
 あと少しでまた騙される所だった。 

「うーむ……」

 しかし、中々面白いものを見せてもらったなぁ。
 考えてみれば仲間がラフタリアだけではちょっと心もとなくなってくるかもしれない。
 奴隷を新しく買うのと魔物を飼うのではどっちが得だ?
 新しく出た奴隷の盾を試してみるのも面白いよな。ラフタリアはLvが上がっているから成長補正の恩威が少し受けづらいし。

 しかし、ふと元康とかの顔が浮かぶ。
 あいつ等、奴隷を解放しろとかうるさかったからなぁ……ラフタリアが美少女だからかもしれないけど。
 それにラフタリアとだって面倒だなと感じた事は何度もある。
 そもそも奴隷には装備を買わなければいけないから、金の無い俺には厳しい。

「よし、じゃあ試しに1個買わせて貰うか」
「ありがとうございます! 今回は奴隷の儀式代込みでご提供させていただきます」
「太っ腹じゃないか。俺はそういうの好きだぞ」
「ナオフミ様!?」
「どうした?」
「魔物の卵を買うのですか?」
「ああ、ラフタリアだけじゃこの先の戦いが厳しくなるだろうと思ってな。奴隷を買うのは装備代を考えると高くつくし、一発魔物辺りでも育てて見るのも一興かとね」
「はぁ……でも、魔物も大変ですよ」
「それくらい分かってる。ラフタリアもペットくらいは欲しいだろ?」
「……ドラゴンを狙っているのでは無いのですか?」
「最悪ウサピルでも問題は無い」

 小動物は嫌いじゃない。ネトゲでだってテイミングペットがあるじゃないか。あれと同じ感覚で、一種の清涼剤代わりになってくれれば良い。何より奴隷と同じく命令できるのなら俺よりは攻撃力があるはずだ。
 金銭に余裕が少しだけあるからか財布の紐が緩んでいる自覚はある。だけど悪い投資ではないはずだ。
 何より奴隷に盾があるならば魔物にあっても不思議じゃない。

「育てて売れば奴隷より心が痛まないしな」
「ああ、なるほど、そういう事ですか」

 愛着は沸くけれど、俺達には金銭が無いんだ。我慢するしかない。
 奴隷は相手が人故に売る時が一番厳しいと思う。何だかんだでラフタリアが俺を慕ってくれるようにいらなくなった、慕う奴隷を売るとなると、俺には出来るかわからない。
 その点、魔物には喋る口が無いからな。どんなに懐いていたって、心が少し痛む程度で済む。
 良い買い主に巡りあえよ。とか勝手な願望を押し付けられるし。

「そういう斡旋もやってるだろ?」
「勇者様の考えの深さに私、ゾクゾクしますよ! ハイ!」

 奴隷商のテンションも上昇中だ。
 とりあえず一杯並んでいる卵を見る。
 サーチとかはできないようにしてあるっポイ事を言っていたからな。
 まあ、ここは適当に選べば良いだろう。 

「じゃあこれだな」

 なんとなくの直感で、右側にある一個を選び、取り出す。

「では、その卵の記されている印に血を落としてくださいませ」

 言われるまま、卵に塗られている紋様に血を塗りたくる。
 カッと赤く輝き、俺の視界に魔物使役のアイコンが現れる。
 奴隷と同じく禁止事項を設定できるようだ。

 ……俺の指示を無視すると罰が下るように設定する。ラフタリアに比べると厳しい目にチェックしておく。
 所詮は魔物だ。こちらの言葉は理解できるのか良く分からないからきつい方が良いだろう。
 まだ孵化していないけどな。
 奴隷商はニヤリと笑いながら孵化器らしき道具を開いている。
 俺はその卵を孵化器に入れる。

「もしも孵化しなかったら違約金とかを請求しに来るからな」
「ハズレを掴まされたとしてもタダでは転ばない勇者様に脱帽です!」

 奴隷商の機嫌も最高潮に達している。まったく、潜在的な被虐願望でもあるんじゃないかコイツ?
 男を詰る趣味は無いが……まあ、他のクソ勇者が苦しむ顔は見たいな。

「口約束でも、本当に来るからな。白を切ったら乱暴な俺の奴隷が暴れだすぞ」
「私に何をさせるつもりですか!」
「心得ておりますとも!」

 奴隷商の奴、すっげー機嫌が良い。

「何時頃孵るんだこれ?」

 銀貨100枚を奴隷商に渡してから尋ねる。

「孵化器に書いております」
「ふーん……」

 なんか数字っぽいこの世界の文字が動いている。

「ラフタリアは読めるか?」
「えっと、少しだけなら……明日くらいに数字がなくなりそうです」
「早いな。まあ良いけど」

 明日には何かの魔物が孵化するのか、楽しみになってきた。

「勇者様のご来場、何時でもお待ちしております」

 こうして俺達は卵を持って、テントを後にするのだった。
+注意+
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