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盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

盾の勇者の成り上がり

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霊亀甲

 イライラも限界に近付いている。
 別に生かすつもりはないが、はっきりと言っておけばストレスも少しは吐き出せる。

「わかった! だが……樹の元仲間なんだろ? 良いのか?」
「もはや仲間でも何でもない。この国、いや……世界の膿だ。早急に退場して貰う。三勇教の残党は生かす価値も無い」
「わかった」

 錬の返答に全員頷き、走り出した。
 俺もフィーロから降りて鎧に向けて近づく。
 フィーロは他の連中の相手をして貰っている。コイツに任せるとせっかくの盾に傷が付くだろうが。

「死ね!」

 勝利の確信を持って鎧は霊亀剣を俺に向けて振り下ろした。
 ああ、三勇教の残党が鎧に援護魔法を掛け続けているようだ。
 会話する余裕はその時間稼ぎだな。何処までも姑息な連中だ。
 だがな……俺は片手で霊亀剣の刃を直接掴む。
 ガキンと火花が散った。

「ぐぬ!? す、素手だと!? 馬鹿な!」

 鎧の表情が驚きで彩られる。
 ぶっちゃけ、俺は刃に手を添えているだけだというのに、鎧は全体重を掛けて剣を抜こうと試みている。
 完全強化が済んでいる勇者相手に見た感じ、成長補正とかを施されていない奴が勝てると思っているのか?
 鎧のステータスを見た事は無いが、精々昔のリーシアに色が付いた程度だろ?
 援護掛けたってタカが知れてる。

「ぬお! 放せ魔王! 下劣な気配を近寄らせるな! 汚れる!」

 自分から切り掛っておきながら、掴まれたらこれか?
 反撃はルール違反だよー! この卑怯者ーって子供の遊びかよ!
 岩谷菌でも感染させてやろうか?
 ……別にイジメられた事なんて無いが、考えてて微妙な気分になってきた。

「馬鹿な! 剣の勇者があの程度なのに……真正の魔王はやはり生半可な手段では――」
「うっさい」

 ペイっと鎧の剣を強く掴んでテコの原理で奪い取る。
 無刀取りって奴? こっちはノーダメで相手の武器を奪うってゲームであるよな。
 実際に出来るとは思わなかったけど、案外簡単に出来た。
 盾の防御力が高いお陰だけどさ。

 この剣、結構高値なんだよなぁ。高く売れそう。
 ラフタリアや奴隷共に使わせるという手もあるな。
 その前に錬にコピーさせてやるか。

「錬!」

 俺は奪った剣を錬に向けて投げる。
 錬は霊亀剣を受け取って握る。

「おお……凄い剣だ」

 コピーが作動したのかステータスが見えるっぽいな。
 が、それに呼応したように渡した剣が……ボロボロになって折れた!

「あー! 後で再利用しようと思ったのに!」
「その……すまない」

 呪いの所為なのはわかっているけど、忘れてた!
 くぅううう……。
 まあいい、別に無くたって困りはしない。
 元々俺の物でもないしな。

「な……聖剣が錆に……この化け物共め!」

 確かに傍から見たら異常な光景だよな。
 俺からすれば斬ったら洗脳状態になる短剣も相当だが。

 いや、今はアイツからどうやって盾を取り返すかだ。
 親父達が作った盾は特別だからな。
 あれは絶対錬には触らせない。

「錬、絶対に鎧の持ってる盾に触るんじゃねえぞ」
「わ、わかった。だから殺気を放ちながら睨まないでくれ」

 錬が剣を霊亀剣に変える。

「さて、そっちの盾も返して貰おうか」

 俺が一歩前に出るとさっきの威勢は何処へ行ったのか、逃げるように鎧は後ずさる。
 ご自慢の武器が無くなって自信が無くなったか?

「お前は主犯格みたいだからな。洗いざらい吐いて貰う。無謀にも俺に喧嘩を売ったツケを払ってもらうぞ」

 すかさず鎧の胸倉を掴んで引き寄せる。
 鎧の奴、咄嗟に盾を前に出して守ろうとしたみたいだけど遅かったな。
 前々からむかつく奴だったんだ。この機会に拷問してやる。
 正義正義うるさいし。

「しょうがありません。マルド。アナタの犠牲を忘れませんよ!」
「なんだと!? 裏切ると言うのか!」

 ゴロンゴロンと三勇教の奴等が爆弾のような物を俺達に向けて投げてくる。

「てい!」

 リーシアがその投げた爆弾に向けて短剣を投げて空中で爆発させる。
 その一部は爆発する前に投げた相手に戻っていく。

「ぎゃあああああ!?」

 味方諸共、相手を倒そうってか?
 馬鹿も限度を知れっての!
 ちょっと不利になると仲間を切り捨てるとは、さすがはヴィッチの息が掛かっているだけの事はあるな。

 さて、どうやってこの鎧から盾を奪うか。

「アトラ!」
「はい!」
「フィーロは?」
「お前がやるとシャレにならない。奴隷共の相手でもしていろ」
「うん!」
「気絶させる良い方法はないか?」
「やってみるー」

 さてと、指示を出し終えた所でアトラが駆け寄ってくる。
 俺はグイっと鎧をアトラの方向に押し出し、命令する。

「コイツの急所にこれでもかと突け」
「はい。尚文様の命ずるままに」
「ぐふ――うげ――やめ――」

 アトラがぐりぐりと鎧を突きまくる。
 おお、突く度に顔色が変わって面白いな。
 その隙に取り落とした盾を、開いた片手で拾い上げる。
 盾を握るとピカッと光ってウェポンコピーが作動した。

 ウェポンコピーが発動しました。

 霊亀甲の条件が解放されました。

 霊亀甲 0/70 C
 能力未解放……装備ボーナス スキル「Sフロートシールド」「リフレクトシールド」
 専用効果 グラビティフィールド Cソウルリカバリー Cマジックスナッチ Cグラビティショット 生命力向上 魔法防御(大) 雷耐性 SPドレイン無効 成長する力
 熟練度 0

 すげー……霊亀の盾系統の良い所を全て集約させたような能力をしてる。
 基本性能だけでラースを除けば今までの盾よりも能力が高い。
 成長する力ってこっちにも付いているのかよ。これってどんな効果なんだろうか?
 ラースみたいにグロウアップするのか?

 Sフロートシールドは間違いなくEフロートから連なる浮遊系の盾を生み出すセミパッシブスキルだと見て良い。
 セカンドシールドの例から二個目の盾が出てくるとか、そんな所だろう。

 リフレクトシールドってなんだろうか?
 字面から俺の知るゲームとかだと受けるダメージの何%かをカウンターするとかだけど、雑魚相手じゃ何の意味も無いんだよな。

 後は能力解放とかでどんな専用効果が出るのかを調べるだけだ。
 基本的に優秀な盾ほど新たな技能って出ないんだけどさ。

 そしてここからが重要な事なんだが、この盾を使う事を想定して強化素材は既に集めていた。
 霊亀シリーズは似たような強化素材を必要とする事が多いから特定は簡単だ。
 ただ、強化する暇が無いのが惜しいけどさ。

「行きます!」
「「ピイ!」」

 アトラの呼吸に合わせてフィロリアルの雛が一緒に鎧に蹴りを入れる。

「ぐはぁあ!」

 鎧が錐揉み回転しながら吹っ飛んで行った。
 ざまあないな。
 盗人には良い末路だ。

 つーかこいつ等の思考回路はどうなっているのか実に不思議だ。
 アレだよな。知略を駆使して格上の相手に勝つって、強者側から見るとこう見えるのかも。
 すっげー姑息な手段で勝とうとしてくるよな。

 これで俺が負けたら知略で勝ったとかあっちはのたまうんだろう。
 卑劣極まりないけど言い方を変えるだけで正しい事をしているかのようになるんだ。
 大体の戦記モノに登場する軍師なんかは、立場が変われば卑怯者だったりする。

 ……別に批判するつもりはない。俺もマンガやラノベが好きだし。
 ま、要するに敵から見た俺は悪逆非道に見えるんだろうな。

「さて、実力の差と言う物がわかったか? 自称新勇者様」
「ぐ……」

 見れば洗脳された連中以外はほぼ蹂躙したようだ。
 苦痛に呻く三勇教の残党の忌々しいという呪詛に満ちた目付きが心地良い。

「捕らえろ! 刃向かう者は全員殺せ!」
「悪役みたいだぞ、尚文……」

 錬のツッコミがやかましいなぁ。
 似た様なもんだよ。
 俺が睨むと、錬は思う所はあるんだろうが敵に視線を戻して言った。

「逃げたら殺す」

 ドスの効いた声で錬は三勇教の残党にコピーした霊亀剣を向けて脅迫する。

「か、神よ……どうか盾の魔王の呪縛を退けください」

 懇願する三勇教の残党のシスター。
 目の前に居るのは神を語る偽者の勇者じゃなかったのか?
 今更になって命乞いとは見苦しいにも程がある。

「悪いが俺にはお前等のやっている事が正しいとは思えない。洗脳なんて関係なく」
「それが既に洗脳なのです!」
「……話にならない。自分の都合の良い事だけを信じるお前等は狂信でしかない。間違っていた俺だからこそ言う。お前達は間違っている! やり直すなら今の内だ。今なら命だけは助かる様に努力する。投降してくれ」

 何を甘い事を。今更コイツ等に更生の余地なんて無いだろう。
 ……錬の立場で考えれば、自分も女騎士に間違っていると説教されて、現在やり直している所だから助けたいんだろうが、相手が悪かったな。
 案の定、錬の言葉が気に入らなかったのか、シスターは懐からあの短剣を取り出し。

「我等が正義に目覚めよ! 偽者!」

 斬りかかった。
 しかし、それも無意味に終わる。
 何せ既に背後にはフィーロがいる訳で。

「てい!」
「ぎゃあ!」

 軽くかかと落としをしてシスターは、地面にめり込んだ。
 ……死んだか? つーか死ね。
 周りは大体そんな感じで洗脳された奴以外、まったく脅威になっていない。
 ガエリオンなんて残党を一人、シッポで掴んで他の残党にぶつける遊びをし出している。
 洗脳された奴以外は手加減無用だからな。

 ゾンビみたいに湧きまくっているから撤退時期を見誤るときついか。
 まあ、少なくともコイツ等を殲滅するには十分だ。

「く……」

 鎧の奴、よろよろと立ち上がった。
 意外とタフだな。

「そろそろトドメだ。別にお前を生かす理由は無い。俺に牙を剥いた事を後悔して貰おうか」
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