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盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

盾の勇者の成り上がり

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盾の魔王

 もはや洗脳された連中の正義、正義コールは雑音にしか聞こえなくなってきた。
 ラースで焼き払いたい衝動に駆られるけど、こいつ等を攻撃するのは躊躇われる。
 下手に事件が解決した後に損害賠償されたら困るし治療費を請求されたら……しらばっくれるか。

「フィーロ」
「なーに?」
「なぎ払え! 殺すくらいに!」
「知ってる人たちだから、やー!」

 く……死なない程度に吹き飛ばすのは良いが殺す気だとイヤか。
 まあ、俺よりも町に顔を出しているからなぁ。
 記憶力は高いし、町の連中の顔を覚えているのかも。
 つーか、群がってきて進みづらい。

「尚文って時々、外道な事を言う冗談が好きだよな」
「基本的にみんなわかってますよね」
「そうです、尚文様の優しさを理解してくださっているのです」
「キュア!」
「知らない、早く終わらせて帰りたい」

 今、帰りたいと言ったのは谷子だ。さすがにウンザリしている。
 何を勘違いしているのかは知らないが、結構素で言ったぞ。
 訂正するのは面倒なのでしないがな。

 戦うのも面倒になった俺は仲間共に集まるように指示して魔力を込めた流星盾を展開した。
 どうやら魔力を込める事で範囲が拡張されるようだ。
 半径5メートルくらいか、地味に広くなった。

 流星盾で作られた結界によって、俺の仲間、奴隷じゃない奴は外へと弾きだす。
 錬達を流星盾で守りながら歩いているのだけど、面倒くさいなぁ。
 難点として奴隷は流星盾を突破してくる。

 その時は近くに居る奴が戦って昏倒させて縛り上げる。
 ゾンビモノのノリだけど、ファンタジーでこう言うのをやられると困るよなぁ。
 犯人が吸血鬼とかだったら物語としては楽しめるけど、この状況は全然楽しめない。
 で、教会の奥にある大きな扉を開ける。

 そこには……。
 部屋の内装は……教壇のある教会の内装その2と言う感じ。
 入った所は冠婚葬祭用の祭壇で、こっちは儀式用の祭壇だったか。
 こっちの方は魔力的、地理的に神聖な意味合いがあるとか紹介された覚えがある。
 再度罠を張っているであろう三勇教の残党と樹の元配下こと鎧が教壇のある演説台の上に席を設けて座って待っていた。

「やっと来たか盾の悪魔。待ちわびたぞ」
「……お前がここに居るって事はヴィッチも居るのか?」
「同志であるマルティ王女か? 残念だがここにはいない」
「ちっ! ところでこの騒ぎを起こした主犯格はお前であっているのか?」
「騒ぎ? 正義の為の聖戦を騒ぎと言うのか貴様は!」
「聖戦とか。冗談が上手だな。テロリスト共」

 鼻で笑いながら挑発する。
 鎧の顔がみるみる怒りの色を帯びて赤くなっていく。
 こいつは無駄にプライドが高いからな。
 話を聞き出すには怒らせる方が楽だ。

「なんだと!」
「もしかしてお前って三勇教徒? あの邪教と名高い」
「いいや、三勇教は我等が正義に同調してくれた同志に過ぎない」
「あっそ」

 相変わらず自分勝手な正義病に掛っているって訳か。
 この鎧、元々偉そうな態度だったから、大方メルロマルクの貴族出身って所だろうな。
 それにしても態度はデカイが随分と簡単に答えたな。
 やっぱりこの手の輩は怒らせるに限る。

「つーかさーお前に何か恨まれる事したっけ?」

 考えてみれば三勇教に恨まれる謂われはあっても、鎧に恨まれる心当たりは無いのだが。
 まあ嫌われてはいると思うけど、精々馬が合わない程度だろう。
 そもそも接点が少ないからな。
 カルミラ島で本当に短時間パーティーを組んだ位だ。

「知れた事。お前が洗脳の力で我等の正義を阻むからだ!」

 ……は?
 えーっと、経過が飛んでいて理解が追い付かないんだが。
 洗脳の力ってお前等が使っている事だろってのは置いておくとしよう。
 コイツの正義って今、何をしようとしているんだ?

「一応確認だ。お前の正義って何?」

 どうせろくでもない事を言うんだろうけどさ。

「我等の正義とは悪の存在しない。我等の理想とする平和な世界を作る事だ。よって悪は力によって断ずる!」

 すっげー独善。
 こんな典型的な独裁者みたいな事を考えている奴が本当にいる事の方が俺としてはビックリだよ。
 そもそも自分が正義ですらない事に気付いているのか?
 樹の負の遺産がここに根付いてやがる。

「で? 俺がお前等の何を阻んだ訳?」
「お前が……いや、偽者の勇者が我等の評判を下げた所為で正義であるはずの我等は追われる立場になった! その罪を償え!」

 ふむ……つまり樹のミスによって評判を落とした所為で、勇者の仲間としての恩威が受けられず思い通りに世直しが出来ないのは全て四聖勇者の所為だと?
 しかも行商でメルロマルク国内の活気を促す俺の行いは善行として評価されて行くのに腹立たしい思いで見ていたとかそんな所か。

 そういや行商中の奴隷共に依頼を持ってくる町の連中とかもいるとか報告に上っているな。
 欲しい素材を調達すると高値で買い取ってくれるから任せていたんだった。

 権力が上手く使えないからとか、逆恨みも甚だしいな。
 いい加減にしてくれ、このイカれた考えの連中の対応。
 もう物理で殴って黙らせたくなってくる。

「盾の悪魔……いや、盾の魔王! 我等、新しき勇者がお前を倒す!」

 チャキっと見覚えのある剣を鞘から取り出し、後ろに担いでいたらしき盾を鎧は構えて俺達に宣言する。
 悪魔を超えて魔王か。
 勇者の敵といえば魔王と相場が決まっているが、どう考えてもこいつ等じゃ勤まらないだろう。

 というか新しき勇者ってお前かよ。
 自分で言っていたら世話が無いぞ。

 この戦いで負けたら全ての責任は俺に被る事になるのか?
 考えてみれば洗脳した奴隷共を使って革命をする必要って無いんだよな。
 城の方は奴隷共を使って暴れさせて、正義の名の元に殺せば良い。

 ここでも似たようなもんだ。
 最終的に亜人奴隷は皆殺し、洗脳された人間連中は口当たりの良い台詞を言って配下にしておく。
 とんだ独善組織が動いているもんだ。

「悪、か……尚文、どうする?」
「正義や悪なんてくだらないな。俺達がやらなきゃいけないのは最小限の被害で波から生き残る事だ。手段なんて選んでいられるか」
「尚文らしいな。いや、尚文の方が正しいと今なら思える。あと……思い出したのだけどヴィッチと一緒に居たのはアイツだ!」

 錬は剣を前に向けて鎧を睨む。
 ああ、やっぱりそうなのか。
 なんで覚えてないんだよ。
 まあ、あの頃の錬って、ソロプレイ状態で自分の仲間以外は外野とでも思っていたんだろう。
 人の事は言えないが、樹の仲間の顔をまともに見てなかったんだろうな。

「こんな事をする奴が間違っても正義だなんて俺は思えない」
「はい! 私もそう思います!」

 リーシアもやる気だ。
 鎧相手にしっかりと自分の意思を示せる様になるとは……リーシアも変わったな。
 最初の頃はおどおどしていたっていうのに。

「どうしますか? 尚文様」
「キュア!」
「やるの?」

 アトラとガエリオン、谷子もやる気で良いな。

「む……そこに居るのはリーシアか。やはり裏切り者であったか!」
「裏切るもなにも、お前等が追い出したんだろ」
「……私は……こんな事を先導するあなたを認めません!」

 リーシアは堂々と鎧に向けて言い放った。
 さり気なく敵も味方も俺の事を無視してないか?
 人を背景とか考えてやがったらぶっ飛ばすぞ。

「これが正義なわけないです!」

 ところで気になっていたのだが、鎧の持つ剣と盾……。
 剣の方は見覚えがあるぞ。
 ゼルトブルでオークションに掛っていた霊亀剣だ。

 手が出せないと思っていた高価な武器を鎧の奴、なんで持ってんだ?
 まあ、考えられるのは貴族からの援助で競り落としたという所か? もしくは貴族が競り落として提供した。
 他に輸送中に奪ったとか複数あるな。

 奪う……そういや、他人の家のタンスを開ける勇者も居たな。
 これは滑稽。確かに勇者だ。
 まあ、そっちは良いや。別に俺のじゃないし。

 その霊亀剣とまるで対になっているかのような盾。
 あれはもしかしたら。

「おい! その盾はもしかしたら奪った物か?」
「何を言う。盾の魔王が作った悪しき盾を、正義の行いによって浄化したまで」

 おい! あれって武器屋の親父とイミアの叔父が作った俺の為の盾だぞ。
 絶対に許さん! 成敗してくれる。
 何が浄化だ。この泥棒野郎。

「その盾は俺の物だ!」

 というか、下手に他の連中と戦わせて傷でも付けたら価値が下がるじゃねえか。

「あー、あの鎧は俺が相手をするからお前等は他の連中を仕留めてくれ。別に生かす必要はないから殺すつもりでいけ。でも洗脳された連中は殺すなよ」
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