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盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

盾の勇者の成り上がり

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残党

「キュア!」

 守りの堅い教会に、フィーロに乗って突撃する。
 人が凄い勢いで飛んでいく。
 ……大丈夫だよな。死んでないとは思うけど。
 なんて言うか、無双しているような気持ちになってくるな。

 そこへガエリオンが降り立ってきた。
 フィーロがガエリオン相手に威嚇を始める。
 こんな時でも喧嘩?
 コツンとフィーロの頭に拳を振り下ろすとガエリオンが笑う。

「むー!」
「そんな状態じゃないだろ! で、ここに何かあるのか?」

 リーシアと一緒にフィロリアルに乗っていたアトラに尋ねる。

「禍々しい気が絡み合っていて、良く分からないです」
「ふむ」

 ここに樹が来ていれば良いが、希望的観測だな。
 俺達は教会へと踏み入る!
 中では、今まさに作業中と言うかのように、見覚えの無い連中が教会内を弄っていた。
 具体的には教会のシンボルにしていた四聖教のマークの盾を削り取り、盾が装飾されたオブジェクトを破壊して回っている。

「良く来ましたね」

 そこにはなんか一人、見覚えのある奴が俺に向けて堂々と言い放つ。
 誰だったか。
 というか、見覚えがあるのに思い出せない奴が多くて困る。
 その癖、服装は修道服を着ている。
 この教会が建った時にいた教会関係者では無いはず。
 まあ、俺は元々敵が多いから覚えていられない。

「盾の悪魔に、神の裁きを」
「……ああ、そう言う事ね」

 盾の勇者が管理している教会を、正しき信仰に変えるって言う名目で教会を占拠したのは三勇教の残党か。
 何人か見覚えがあると思ったら聖水を買いに来た時に安物を売り付けようとした奴だ。
 で、俺に向かって言い放った奴が誰か思いだした。
 龍刻の砂時計で俺達を追い出したシスターだ。

「こんな所に居たのか、国賊共」
「悪魔が何を言おうとも、メルロマルクの国教は三勇教。我等が亡き教皇様の意志を継ぎ、世界を統治なさいます」

 世界を、統治……ね。
 宗教にありがちな狂気的思考だな。
 一つになった世界なんて気持ち悪い事この上ない。

「そして……罠に掛りましたね。盾の悪魔!」

 バキンと足もとに巨大な魔法陣が浮かび上がる。
 その瞬間、体が重くなったように感じる。

「く……」

 錬やリーシア達が呻く。

「キュアァ!?」

 ガエリオンは谷子を庇うように翼を広げ、攻撃に備えているようだ。

「何をした?」
「動かれると困りますので、束縛の魔法陣を設置させていただきましたよ」

 へぇ……この魔法陣の中では動きが鈍るのか。

「ん? 重い?」

 トコトコとフィーロは魔法陣を闊歩して三勇教の残党に向かって歩き出す。
 圧倒的な能力差って奴だな。
 特にフィーロは俺の加護を強く受けているので、束縛を負担に感じていないのだろう。

「出力を上げなさい!」

 バチバチと魔法陣の輝きが強まり、錬達が地に伏しかける。
 どこで強弱を掛けているか、わからないがー……。

「尚文様、どうしましょう?」

 ……アトラはなんで平然としていられるのだろうな。
 何もなかったかのようにフィーロの隣で立ってるし。
 ま、俺はステータスでどうにか出来るけどさー……。

 ふむ……良く考えてみれば、この布陣じゃ余裕じゃないか?
 そう思った所で、洗脳された俺の奴隷達が教会の中に入ってくる。
 そうも言ってられそうもないみたいだ。

「信仰に目覚めた者達よ。例え愚かで下劣な亜人であろうとも、我等の為に散るのなら神はお許しになるかもしれません。さあ懺悔の為に戦うのです!」

 凄い曖昧なセリフだ。
 思わず突っ込みたい衝動に駆られたぞ。
 どうして俺の周りにはこう、アホが集まるんだ。

 最初から殺す事が前提ってどうなんだよ。
 悪魔の国の人という認識なんだろうけどさ。
 ……かもしれないってなんだよ。本当曖昧だな。

 にしても少しやばいな。リーシアは大丈夫かもしれないが、錬やフィロリアル共は危ない。
 ガエリオンと谷子も大丈夫か。
 錬を除くと、クラスアップしている奴は大丈夫そうだ。

「キュア!」

 バシンとガエリオンが奴隷共の顔をシッポで叩いて応戦するが、束縛の魔法陣の出力が高くて動きが遅れ気味だ。
 というかこの魔法陣、俺達にだけ効果があるのかよ!

 どうする? フィーロに頼めば勝てない相手では無い。
 だが下手に打って出ると動きの鈍った錬達が危険になる。
 まあ、結局はやるしかないのだけど、何か良い戦法がある気がする。
 そこでふと、思い当たる手段を閃いた。

 盾に手をかざして変化させる。
 変える盾は霊亀の甲羅の盾。
 もちろん、多少強化はしてある。
 ソウルイーターシールド程では無いが防御力はあるはずだ。
 そして専用効果グラビティフィールドを使う。

「お? 体が軽くなった?」
「ああ、ちょっとな」

 途端に錬達、束縛の魔法陣で重みを感じていた連中が体を起こす。
 そう、このグラビティフィールドは重力をある程度制御する。束縛とは体に重み、何かで縛りつける効果だと踏んで、それが何かを考えた。

 ならば周りを軽くするイメージでフィールドを展開させたのだ。
 一応、事前に試した事のある効果でもある。
 難点は軽くするとふわふわとしてしまい。攻撃に重みが無くなる事だ。
 逆に重くすることで動きは鈍るが威力を上げられる。

 後は、味方と敵の判別が出来ないのと、飛んでいる奴を強制的に落とす効果がある。これは軽くするとかの影響外で適応される。
 武器屋の親父が盾として作るのが大変だったと言うだけの素材ではあるだろう。

「それで少しは動けるようになるはずだ。この罠を解除させるまで辛抱してくれ」
「ああ、これで少しは戦える!」
「私も頑張ります!」
「はい」

 錬の言葉にリーシアとアトラが頷く。

「行きます!」

 リーシアが投げナイフを投擲し、敵意をむき出しにするシスターに急接近する。
 やはり中々の動きをする。アトラもそれに追随して、洗脳された奴隷を突く。

「うぐ――」

 アトラの一撃を受けて洗脳された奴隷が呻く。

「少し眠っていてください」
「すまない! 流星剣!」

 錬が加減しながら流星剣で洗脳された奴隷と三勇教の残党を切りつけた。

「何をしている! もっと束縛の範囲を広げて強めろ!」

 陣形がバラバラになった所為で魔法陣からそれぞれ抜けだした。
 俺もフィーロの背に乗りながら三勇教の残党に攻撃を指示する。
 まあ、実力差は相当あるから、雑魚も同然なんだけどさ。
 代表のうざいシスターが高らかに指示を出す。

「盾の悪魔に魔法を降り注がせるんだ!」

 きた!
 俺はこの時を待っていた。
 即座に霊亀の心臓の盾にする。

 専用効果はCマジックスナッチ Cグラビティショット 生命力増強

 Cはもちろんカウンターの略称だ。
 マジックスナッチとグラビティショットがなんであるか、それは。
 三勇教の連中が俺目掛けて合唱魔法を唱える。

「合唱魔法! ライトニングジャッジメント!」

 高出力の十字架を模した雷が俺とフィーロに向かって降り注ぐ。
 俺は雷に向けて盾を構えた。

「尚文!」
「尚文様!?」
「ナオフミさん!」

 ふむ……若干パチパチするが痛くもかゆくも無いな。

「わぁああああ……フィーロの羽毛が逆立ってるよごしゅじんさま!」

 静電気にフィーロが大興奮で俺に報告する。そんな事よりも相手を見ろよ。
 俺に群がる洗脳奴隷共をついでに守ってやらないといけないんだからよ。
 奴等にとっては今は味方だろ? 諸共とは相変わらずだ。

「問題ない」
「さすがですわ尚文様!」
「凄いな……」
「はい」
「キュア!」

 ガエリオンと谷子も同意しながら一人と一匹で魔法を詠唱中だ。
 こいつ等、得意魔法の系統が同じだからか、二人掛けで魔法が使えるんだよな。

『我ここにガエリオンの力を導き、具現を望む。地脈よ。我に力を』
『キュアキュアキュア!』
「ハイファイアブレス!」

 谷子が唱えると同時にガエリオンが大きな炎を吐きだして教会のシンボル諸共三勇教の残党を吹き飛ばした。
 おお、中々の高威力じゃないか。連携攻撃っぽくてカッコいい。
 と言うのはどうでも良いか。

 さて、谷子達が圧倒しているその最中、合唱魔法を受けきった俺なんだが。
 俺の盾が青く輝き、カウンター効果が作動する。
 合唱魔法に参加した三勇教の残党に向けて俺の盾から複数の青白い玉が弾けて飛んで行った。

「な――」

 予想外の攻撃だったのだろうな、三勇教の連中は驚いて避けきれない奴が多数。
 まあ、玉の速度は結構速いからクラスアップしてるか怪しい奴じゃ避けきれない。

「な、なんだ? 何も起こらないじゃないか。盾の悪魔め、驚かせるとは!」
「驚くのはその後だよ」

 俺はニヤリと笑みを浮かべる。
 何せこいつ等、自分たちが受けた攻撃の正体が何か点でわかって無いのだから。

「ぐ……体が!?」

 突然、地に手を付けて立ち上がろうと必死になっているようだが、そうも言ってられないだろう。
 お? 束縛の魔法陣が消えたな、集中が切れたか。
 そして青白い光が玉の当たった三勇教の残党から漏れ出し、俺に戻ってくる。

 ステータスを見ると魔力が若干回復する。
 そう、マジックスナッチとグラビティショットがそれぞれ役目を果たしたのだ。
 この二つは魔法にも効果が作動する便利なカウンター攻撃。

 マジックスナッチは文字通り、相手から魔力を奪う。グラビティショットは相手にしばらく重力による行動阻害を行う反撃だ。
 直接的なダメージが出ないのが難点だけど、今の奴らにはちょうどいい攻撃だろ。

「やれ!」

 俺の指示に味方全員が頷く。

「うん!」
「任せろ!」
「キュア!」

 厄介な三勇教の残党は洗脳奴隷や洗脳された連中を盾にして態勢を立て直そうと躍起になって教会の奥の方へ逃げ込む。
 させるかと追いかけようとしたのだが、敵が多い。

「くそ……逃げ足だけは一人前だな」
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