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盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

盾の勇者の成り上がり

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洗脳

 後は……井戸に毒を入れた奴だろうな。
 川からの水が……というのはあり得ないだろう。
 井戸水と川の水は根本的に違う。
 仮に川に流れた毒が地下を通って井戸にまで到達したと考えるにしても時間が掛る。
 それに土を通じてろ過されていくのも考えて、間違いなく井戸に直接毒を流し込まれたと考えるのが妥当だ。

 でだ。ここで大きな問題が残る。
 俺の村は易々と入れるように作られてはいない。
 元々俺が警戒心が強いのもあってか、奴隷や極一部の信用した者しか入ってこれないよう見張りを立てている。
 もちろん、ガエリオンやフィロリアル共にもその辺りは理解していておかしな奴が居たら俺に何か言うはずだ。

 そんな中で井戸に毒を盛られたというのは、内部に犯人が居ると言う証拠に繋がる。
 疑いたくは無い。
 というかこう言う離反行為を行ったら命で代価を支払って貰う様に設定していたはずなんだが。

「ガエリオン!」

 俺の呼びかけに応じてガエリオンが飛んでくる。

「なんだ?」
「お前、今日は村に居たよな」
「うむ」
「井戸に何かした奴はいなかったか?」
「そう言われてもな。特におかしな連中はいなかったぞ」
「城から出兵した兵士や来客もか?」
「ああ」

 犯人の特定が難しいな。奴隷紋が作動していない。それでいてガエリオン曰く兵士共や村に来てくれている魔法屋でも無い。
 まあ、ガエリオンの警戒能力がそこまで信用できるかと言うと怪しいのだけどさ。
 だから村に戻って奴隷共を集めて尋ねる。

「誰が毒を流し込んだか時間を特定したい。最後に水を飲んで安全だった奴は?」

 俺の問いに、数名の奴隷が手を上げ、時間帯をそれぞれ話しあう。
 聞く限りだと、料理用に水がめに井戸水を移したのが発覚する少し前。
 で、川に毒を流されたのはそれよりも前だったようだ。

「犯人は誰なんだろうか?」
「あの、尚文様」
「ん? どうした?」

 アトラが手を上げて進言する。その表情は何か緊迫した様子だ。
 何かアトラにしか感じ取れない物があるのか?
 アトラは徐に治療院から戻って、食堂の隅で休んでいるイミア達を指差す。

「イミアちゃんの叔父様、貴方に禍々しい何かが巻きついています」
「え?」

 イミアの叔父はアトラに突き付けられて困惑の表情で見渡す。

「な、何を言っているんだ? 冗談も大概にしてくれ」
「そうだよアトラちゃん。幾らなんでも叔父さんにそんなもの――」
「そ、そう……いや……確かに、何かを流した覚えが――」

 イミアの叔父が頭を抱えて呻きだす。そしてイミアを他の奴隷たちの方へ突き飛ばし、よろよろとおぼつかない足取りで距離を取る。

「た、盾の勇者様、どうか、私を……」

 苦しむようにイミアの叔父は俺に助けを求める。
 いや、あれは……。

「私を罰してください。これ以上、罪を犯す前に!」
「盗賊に捕まって何か呪いでも掛けられたか!?」
「わ、わかりま……うぐ……」

 俺はイミアの叔父の奴隷項目を呼び出す。
 状態に問題は……違うな。砂嵐が混じっている。
 何かおかしい事が起こっているのは間違いない。

 冷静に考えてみれば、本来到着する日の翌日に見つかったのだ。
 しかも本来、襲撃された場所は不確か。
 エレナが通りかからなかったらどうなっていたのか、ではなく。
 強そうな冒険者の居る所へ逃げるように誘導していたらどうだろう?

 保護されたイミアの叔父はそのまま治療院へ連れて行かれる。
 そして特に疑われる事も無く村へ帰り……命令された通りに井戸へ毒を流す。
 問題は治療院の目を逃れる程の何かがイミアの叔父を浸食していると言う点だ。

「盾の勇者様!」
「尚文様!」

 奴隷共、錬、アトラとその場に居る奴等がみんなして俺に助けを求めるように目を向ける。
 俺は万能じゃねえぞ! とは言いたいが、確かに救いを求めたくなる気持ちはわかる。

「う……うああああああ!」
「ダメです!」

 リーシアが前に出てイミアの叔父を止める。
 この中ではステータス面で一番高いからな。

「ど、どうする!? 俺は……俺は手が出せない」

 錬も奴隷の家族と知って手を出せないか。女騎士も同様に動けそうもない。
 考えてみれば異常事態。ここでイミアの叔父を切り伏せるとかをしでかしたら俺は女騎士を追放させる。

 だが、決断力が無いとも言えるか?
 俺だって状況についていけない。
 どうしたらいい?

 よくゲームとかだと誰かに操られているという元仲間を説得で引きもどすという手段を講じるが、ゲームではなく、実際に洗脳を解除しようと試みれば相当難しいはずだ。
 かと言って安易に殺す訳にもいかない。
 中々やってくれるじゃないか。

「叔父さん! やめて! 盾の勇者様の力になりたいって言ってたじゃない!」
「あが……う……」

 イミアの叔父の意識が混濁していて、説得に応じる様子が無い。

「スベテは……正義……」

 そしておかしな口調に変わり始めている。

「どうか……私を、止めて――」

 イミアの叔父が魔法を詠唱し始めた。
 ルーモ種はその種族故に適正は土。
 大地を操って穴を作ったり、岩を突きだしたりする魔法を使う。

『力の根源足る。私が命ずる。理を今一度読み解き。大地よ。我が前の者たちを屠れ!』
「ツヴァイト・アースドライブ!」
『『『力の根源たるわたしが命ずる。理を今一度読み解き、大地よ。我が前の術者の魔法を妨害せよ!』』』
「アンチ・ツヴァイト・アースドライブ!」

 イミアの叔父が唱えた魔法は同族が妨害し、僅かに地面にヒビが出来るだけに留まる。

「尚文様!」
「なんだ!?」
「四方に壁を作りだす力でイミアちゃんの叔父さんを閉じ込めてください! もちろん、一番強力な奴でお願いします」

 なるほど! そう言う事か!
 俺は魔力を練り、SPに織り交ぜて唱える。

「うう……」

 イミアが叔父に向けて組みついて俺の方を見る。

「今です! 勇者様!」
「良いのか!?」
「私が止めます! どうか! お願いします」
「わかった! シールドプリズン!」

 盾で作られた檻がイミアごと、イミアの叔父を閉じ込める。

「アトラ!」
「はい! 檻に遮られて禍々しい力は切れました!」
「そうか他にはいるか?」
「この中にはおりません」
「不幸中の幸いだな」

 イミアの叔父と同じように暴れ出す奴が居たら大変だった。クールタイムもあるし、それまで押さえつけるのが面倒だ。
 後は……。

「とりあえず、檻が消えるまでに状況を整理しよう」
「ああ」
「はい」

 井戸に毒を流したのはイミアの叔父で間違いない。
 おそらく、呪いの類。
 考えられるのは元康の時と同じく、伝説の武器によるスキルと見て間違いない。

 錬は使えないだろう。元々監視の目が強い。
 使えばすぐに気付かれる。

 元康は現在、カルミラ島へ行っている。
 そろそろ帰ってくるかもしれないが、俺に迷惑をかけたらフィーロに嫌われると理解しているだろうしな。
 それに被害者の中には元康が大事にしている量産型フィロリアルも混じっている。
 あのおかしな状態が演技なら救い様が無いが、多分違う。

 なにより――

「イツキ様……」
「の、可能性が高い」

 イミアの叔父が正義と呟いた事に由来する。
 そもそも、一体どんな力でイミアの叔父を操っていたかにも関わる。
 考えられるとしたら……奴隷共が行方知れずになっているのにも関係があるだろう。
 もう、隠していられないな。

「リーシア。実は言わなくてはならない事がある」
「な、なんですか?」
「実は随分前に樹を見かけたんだ」
「ふぇえ!?」
「アトラ達を買いに行った時の事を覚えているか?」
「はい」
「あの時、俺は樹をコロシアムで見つけた。なんか廃人のように、人の称賛をうけるため戦っていたようだった」
「……」

 リーシアが俯く。
 まあわかっていた事だが、隠していた訳だからしょうがない。

「話そうか迷ったが、あんな姿の樹を見たらリーシアがどうなるかを相談し――」
「もう、良いです。ナオフミさん」

 ここで、リーシアが離反しても、俺は止める術が無い。

「大丈夫です……それでイツキ様はどうなったのですか?」
「国の影が監視について行ったのだが、ある時、見失った。それからは消息不明だ」
「そう……なのですか」

 これはもはや樹の攻撃と見て良いだろう。
 俺に敵わないと考えて間接的に攻撃をしてきている。
 錬や元康よりも厄介な手段を使ってくるな。
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