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盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

盾の勇者の成り上がり

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異変

「あら、盾の勇者じゃない」
「お前は――」

 町の治療院に行くと、見知った顔の奴と遭遇した。
 えっと、確か元康の元配下だった……エレナだったか。
 相変わらず面倒そうな目をして淡々と治療院の受付に説明している。
 元康の部下だった時の温度差が嘘のようだ。

「なんでお前がここに?」
「親の手伝いよ」

 そういや、コイツの母親は商人なんだったか。
 しかも俺の領地へ来るかもしれないとか前に言っていたのを覚えている。

「あなたの町へ行く途中だったんだけど、なんか盗賊に襲われている亜人が居たから助けたんだけどね。そうそう、盾の勇者の隣に居る亜人と同じ種族の」
「じゃあ叔父を助けてくれたのはあなたですか! ありがとうございます」

 地味にクラスアップしているし、戦えはするだろう。
 エレナから事情を聞くに、どうやらイミアの叔父が盗賊に襲われ、大怪我を負いながら逃げていたのを保護したという話だった。
 ただ、馬車とかは見当たらず、叔父も相当重傷を負っていたらしいので、現場は何処かわからないそうだ。
 イミアの叔父は身を守れる程度のLvであるはずなんだがなぁ。

「気にしなくて良いわ。無視したら被害が飛び火するのは私の方だもの」
「そうか」
「ただ……盾の勇者に報告するべきかしら。その盗賊の話なんだけど、盗賊の割には身なりが良かったわ。もしかしたら違うかもしれないけれど」

 ふむ……今はイミアの叔父の容体を見なきゃいけないな。
 イヤ、武器屋の親父に報告するべきか?
 今はどんな状態か確認しないと始まらない。

「とにかく、イミアの叔父と話をしないと」
「はい!」
「エレナだったか。悪いが、一応取調べを受けておいてくれ」
「ああ、はいはい。状況的に一番怪しいものね」
「無罪を証明する場合も調べるもんだ」

 取調べを行うメルティ直属の部下にはしっかりと調べ、間違っても冤罪などは無い様注意しておいた。

 そして受付に話しかけ、事情を説明する。
 すると受付の治療師は快く俺達を案内してくれた。
 診察室で現在、回復魔法による治療を受けているイミアの叔父がそこに居た。

「うう……」

 イミアの叔父は体中に裂傷があり、血まみれだった。

「大丈夫……じゃないな」

 俺も薬を取り出し、回復魔法を併用しながら治療を手伝う。

「あ、勇者様……」

 か細く、イミアの叔父は俺を見ながら喋った。

「もうしわけ……ありません。せっかく作った物を……奪われてしまいました」
「気にするな。奪われたなら取り返せば良い。それよりもお前の命が助かって良かった」
「すいません……うう……」

 イミアの叔父が頭を抱えて苦しがる。
 大丈夫か? 盗賊の刃物に毒が塗られていた可能性がある。
 念の為に解毒剤も使っておこう。

 しばらく治療に専念していると、イミアの叔父も容体が安定した。
 体の傷を確認すると、基本は切り傷が大半なのだけど、一つだけ、何かで刺したような跡があった。
 致命傷になるような物ではなかったのだけど……どうも変な感じがする。

 治りが凄く悪かった。
 呪いの類である可能性が高かったので聖水による増幅、龍脈法で治療を施したらあっという間に完治した。
 イミアの叔父は今、ぐっすりと眠っている。

「さて……」

 武器屋の親父に伝達しておくのは重要だし、現場は俺の領地の近くだ。
 盗賊がこの辺りに出没するなんて、治安にも関わるからさっそく討伐に乗り出さないといけないな。
 俺の盾を強奪したと言うのも許せないし。
 一応は武器屋の親父に報告するべきか?
 あんまり言いたくはないのだけどなぁ。

「叔父さん……」

 心配そうに叔父の寝顔を見つめるイミアの肩を叩く。

「大丈夫だ。命に別条はない。目が覚めたら村で休ませてくれ」
「はい……」
「さて、ちょっと盗賊狩りに出かけてくる」
「はい!」

 このまま、舐められたままで済ませる訳にはいかない。
 俺はやられたらやり返す。
 俺の領地で略奪行為をするのなら、そいつ等から全てを奪ってやる。

 イミアは叔父の看病をしていて貰って俺はフィーロとアトラ、リーシアを連れてエレナが教えてくれた場所の近隣へと向かった。
 俺の領地の境界線ギリギリの林道だ。
 城下町から俺の村へ向かうなら使うルートの一つ。

「フィーロ、何か居るか?」
「んー……たぶん誰もいないと思うよ?」

 ふむ。
 そう簡単に見つかる盗賊じゃないか。

「何処かにアジトがあるかもしれない。探すぞ」
「はい」
「はーい」
「アトラ、何か感じるものはないか?」
「そうですね……何か、微かですが禍々しい力の残滓がありますね」
「禍々しい?」
「はい。槍の勇者様や剣の勇者様が持つ力に似た何か……」
「え?」

 さすがのリーシアも勘付いたか。
 騙し騙し気付かれない様にしていたが、限界が近い事はわかっていた。

 しかし、そうなると樹が近くに来ている可能性がある。
 だが、よりにもよってイミアの叔父を襲撃するメリットはなんだ?
 考えられるのはヴィッチに何かを囁かれていて、亜人を攻撃したという可能性。

 だが……エレナが気づかなかったというのはおかしい。
 そもそも、俺の盾をイミアの叔父は普通に持ってきていたのか?
 本人に話は出来ていなかったけど、台車とかを引いてきたかもしれない。

 にも関わらずイミアの叔父は何も所持してなかったそうだ。
 エレナに会ったのは事件現場では無く、逃げた結果かもしれない。
 探索範囲を広げるしかない。

「とにかく、警戒を強めて行くしかない。みんな、気を付けろよ」
「わ、わかりました」
「はい」
「はーい」

 ま、アトラとフィーロが居れば隠蔽からの攻撃は不可能だ。
 念の為に流星盾を展開しているし、不意の攻撃でもどうにかなる。
 そう思いながら日が沈みかけるまで捜索をしたのだが、目ぼしい物が見つかる事はなかった。

「骨折り損か?」

 町に戻った俺はメルティに状況を話しておく。
 一応、盗賊がこの辺りに居る事を公表して貰うためだ。
 上手く行けば冒険者が盗賊を炙りだしてくれる。

「ああ、そうそう。ナオフミに教えておいた方が良い事があったんだった」
「なんだ?」
「最近、町の出入りする人が減り気味なのよね」
「何かあったのか?」
「そう言う訳じゃないんだけど……なーんか変なのよねー……いきなり無愛想になった商人とかが出ているとか、豹変したとかね」
「ふむ……」

 何か、間接的な攻撃を受けているような気持ち悪さがある。
 そう言いたいのだろう。

「母上からの伝達にもあるけど革命派の動きも気になるし、もしかしたら諜報員が潜り込もうとしているのかもしれないわ」
「それで治安悪化か」
「悪化って程じゃないけど、なんかおかしいのよ。気を付けて」
「わかった。お前も次期女王なんだし、護衛を増やしておけよ」

 メルティもわかる違和感か。
 俺はフィーロをメルティに預けて村へと帰った。

「今帰ったぞー」
「ああ、お帰り」

 ちょうど錬が馬車から荷物を降ろしている最中だった。
 勇者が護衛しているだけあって、コイツ等は無事だったみたいだな。
 むしろ怪しい奴を見掛けたかどうか尋ねておきたい。

「近くで盗賊が出たらしいが、お前等は大丈夫だったか?」
「いや? 特に何もなかった」

 錬達には遭遇しなかったか。

「ただ、俺に掛った呪いが何なのかわかった」
「ほう……」
「どうやら、経験値が入らないみたいなんだ」

 暴食の呪いか。
 確か経験値を犠牲にして放ったのだから代償に経験値がしばらく入らないはありそうだとは思っていた。

「俺の近くで戦ったから、とかじゃないよな?」
「ああ」

 この前、元康と一緒に四聖勇者の共闘によるペナルティを調べた。
 その結果、勇者同士の成長阻害とは近くに居ると経験値が入らないという事だと言うのが判明した。
 他にもあるのかもしれないが、目に見えた問題として経験値は大きいだろう。

 勇者同士が近くに居て起こる経験値が入らない問題の適応範囲は半径1キロ前後。
 地味に狭くもあり、広くもある。
 この範囲で戦われると経験値が入らないようだ。

 もちろん、ある程度前後するのだろうけど、憶測の域を出ない。
 その範囲外まで出て、錬が経験値を得る事が出来なかったというのなら、呪いの可能性が高いだろう。
 まったく、成長に関する呪いばかり犯されやがって、錬も大概だな。
 本気で強くなるにはもう少し呪いが解けないと何もできないに等しいな。

「女騎士や谷子には入ったのか?」
「谷子? ウィンディアの事か?」

 錬の奴、俺が名付けたニックネームを知らなかったのか?
 まあ良い。

「そうだ。あいつ等にも入らなかったのか?」
「いや、俺だけだ」
「そうか」

 ま、普通に帰ってきたし、ある程度は信用しても良い段階だろうな。

「錬、どうやら俺の領地で何かをしようとしている連中が居るようなんだ。今日、配下の一人が襲われて重傷を負った。警戒しておいてくれ」
「なんだって? わ、わかった。全面的に協力する。なんでも言ってくれ」
「そうだな。見回りを任せると思う」
「任せてくれ」

 仮にも剣の勇者が見回りをするんだ。ある程度は対処できるだろう。
 俺も意識して行かないとな。

「そういや、他の行商組は帰ってきてないのな」

 キョロキョロと辺りを見渡しても、本日帰還の行商組が居ない。
 というかここ二三日、出かけた連中が帰ってこない。

 逃げたか?
 念のため、奴隷共の項目を確認する。

 ……?

 見えなくは無いのだが……何だろう。僅かに砂嵐のようにチラつく。
 生きてはいるし、俺の禁則事項を破っても居ないようなのだが……?

「そういやキールも今日はいないのか」

 今日の朝に行商に出かけたはずだ。
 量産型フィロリアルではなくキャタピランドによる近隣巡回組だったはず。

 さすがに地面に落ちたクレープを貪ろうとした、ふんどし犬が逃げ出すとは考え難い。
 今までの全てが演技だったという可能性は否定できないが、元々自分の村だった場所を離れる理由としては弱い。
 何より俺を騙せているのなら、スパイでもなんでもしていた方が有意義なはすだ。

「キャタピランドが帰ってきました!」

 お?
 どうやら、余計な心配だったようだな。
 と、声の方に振り向いて絶句した。

「何があったの!?」

 谷子が叫んで駆け寄った。
 キャタピランドがボロボロになって帰ってきたのだ。
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