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盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

盾の勇者の成り上がり

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献身願望

「じゃあ他にも聞いておくか。クラスアップは知っているだろ?」
「クラスアップがどうしたんだ?」
「この世界の連中は上限が100らしい。だけどそれを超えるクラスアップが存在するらしいんだが失伝しているそうだ」
「あー……俺の世界のゲームとは違うみたいだ。転職はあっても100を超えられないは無かった」
「ふむ……」
「40での一時上限はあったんだけどな」

 錬の世界の知識もかなり怪しくなってきてはいるなぁ。
 元康も同様である可能性が高い。
 役に立たない知識ばかり判明して行くなぁ。これで限界突破のクラスアップの方法が判明したら良かったのだけど。
 さらばガエリオンが出来ない。

「ところでお義父さん。お義父さんにくっ付いている小さな天使はどうやったら手に入りますか?」

 元康を無視して会話を続ける。

「というか思うんだが、この世界って重要な情報ばかりが抜け落ちている気がしないか?」
「そうだよな。正直な話、100の限界突破のクラスアップなんて普通は忘れない」

 だよなぁ……変幻無双流に関してもこれだけ優秀な武術なら何故、伝承者がババアだけになる。
 過去の争いと言うのも気にはなるが、追及してたらキリがない。
 意図的に狙い澄ましたかの如く、欲しい情報が入ってこない。

 なんとなく嫌な雰囲気だ。目に見えない悪意を感じる。
 まだまだ謎が増えて行くのだけはわかる分マシではあるが、厄介事が増えて行くな。

「俺の想像なんだが良いか?」
「言ってみろ」
「限界突破は勇者が必要と言う可能性だ。試せないなら失われるかもしれない」
「ああ、俺もその辺りは推理した。ただ、勇者は時々、召喚されたり選定されたりするらしいからどうにも怪しいんだ」
「そうなのか……定期的に召喚されているのなら、忘れる訳がない」

 これも錬と話をして答えが出る問題じゃないな。
 わからない事を話しあったって正解が出る可能性の方が低い。

「本当、波とは何なのだろうか」
「ああ……」

「お義父さん。小さな天使について教えてくださいよ」

「効率の良い狩り場とかの情報は無いか?」
「ああ、それなら――」

 と、俺は錬に洗いざらい尋ねて情報を仕入れた。
 一応、錬の知るゲーム知識だと、メルロマルクは優秀な狩り場が多い拠点に成りうる国であったらしい。
 90代の狩り場や100を超えた辺りの狩り場を教えて貰ったが、モンスターブックで行った事のある狩り場であるのが判明した。確か60前後の狩り場だったはずだ。

 生態系の変化による弊害、波による変化を考慮されていないのかもしれない。
 波の度に敵が強化される世界みたいだし、ネットゲームで言う所の配置変更とかがあるんだろう。
 ま、この世界はゲームじゃないけどさ。

「役に立てなくて申し訳ない」
「気にするな。そんなに頼りにしてた訳じゃない」

 元々、大失敗している連中の知識だ。
 失敗を前提に聞いていたからダメージも無いに等しい。

「尚文は、俺に霊亀の責任を本気で追及してこないな」
「あ? 嫌味は言った覚えがあるぞ?」
「いや、命で持って償えと言うかと思った」

 思いっきり言ったんだが……本人はカースに侵食されていたからな。
 まあいい。善人ぶって錬を味方に引き込んでおこう。

「ぶっちゃけると俺はこの世界の連中が嫌いだ。そんな連中が生きようが死のうが関係ない。目の前の良くしてくれた連中を守れるだけで十分なんだよ」
「ドライだな」
「抜かせ」
「それくらいの方が……良いのかもしれないな」

 錬が俺を羨ましそうに見つめる。
 何を誤解しているのだか。

「あのさー」
「え?」
「お前さ、どうもナイーブな奴だと思っていたから言うけどさ。お前が倒した魔物にも家族が居て、幸せを噛みしめていたかもしれないんだぞ?」

 俺の質問に錬の表情が徐々に青くなって行く。
 ああ、そう言う発想が無かったのか。

「そう言う奴に、お前の家族を殺したのは俺だ。責任を持つとか言って回るのか? 魔物は魔物だとか区切りを入れるなら元康が大事にしているあのフィロリアル共はどうなる?」
「え、あ……う……」

 はぁ……面倒な年頃だな。

「これは言うか迷ったんだが、魔物舎で魔物の面倒を見ている女の子が居るだろ?」
「あ、ああ」
「アイツはお前が殺したドラゴンが育てていた亜人の子だ。お前の所為で一度は不幸になった経緯がある」
「な、なんだって!」

 錬が急いで家から出ようと扉に手を掛けた。

「何処へ行く?」
「急いで謝らないと」
「謝ってどうなる? お前の親を殺して申し訳ありません。ここで代わりに死にますってか?」

 この際、谷子を呼ぶか?
 ま、呼んだ所で本人は物すごく渋い顔をするだろうな。
 実際錬が知らなかっただけで、本人は知っている訳だし。

 憎しみの連鎖は止めたいとか言っていたし、錬にそこまで恨みを晴らしたいとか思ってないみたいだ。
 野生動物、この場合は魔物だけど、その辺りはシビアに生きているからな。
 いつ死ぬかもわからないのだから、いつまでも恨んでなんか居られない。
 ガエリオンの教育による良心が根強い。

 復讐とかは考えない所は感嘆に値する。
 尊敬はするが、俺は実践できない。

「だ、だが――」
「本人に殴られるぞ。だからやめておけ」
「それでも……俺は」
「肉を食うのだって、野菜を食うのだって同じだ。結局は何かを犠牲にして生きている。女騎士の言う綺麗事じゃ世界は回っていない。むしろ誰かを踏みにじって生きていく覚悟を持って、罪を償えば良い」
「矛盾していないか?」
「はぁ? 世界を救うために魔物を虐殺して強くなる勇者が何言ってんだ? 弱肉強食だろ? むしろゲーム感覚で殺される方が俺はイヤだね」

 人間を殺しても経験値が入る世界だぞ?
 人と魔物は違うとか寝言は寝てから言えっての。

「だから錬、アイツに謝罪するなら魔物を殺す時、ちゃんと覚悟を持って殺せ」
「わ、わかった」

 納得しかねる顔をしている。
 錬は女騎士と一緒にいるからな。理想が高いのかも。

「それでも俺は……謝って、みんなを守りたい」
「あっそ」

 これはもう病気だ。
 ゲーム脳から献身救世主願望に切り替わっただけだ。
 しかも自虐癖まで追加された。

「お義父さん。教えてくださいよ」
「うっせー。さっさと帰って勉強して寝ろ!」

 元康の奴、俺の話を聞いちゃいないな。
 無視して、別の話題を振ろう。
 元康から聞きたい話か、何かあったか?
 一応あるな。

「そうそう。元康、お前の使っていた槍……ラストエンヴィースピアだったか。代償の方は何かあるのか?」
「?」

 元康の奴が首を傾げている。
 おい、何疑問符を上げているんだ。

「何か使いましたでしょうか?」
「テンプテーションだよ。他にルサンチマンだったか?」
「ああ、あのスキルはⅣになって出現したスキルですよ」

 なん、だと!?
 つまりブルートオプファーよりも上位のカーススキルか?
 代償無しで発動するスキルとかどれだけチートなんだよ。

「使った事で何かあったか?」
「良く分かりませんが、ルサンチマンを使った後はお義父さんを羨ましいとは思わなくなりました。変えようとは思いませんがあの槍には変えられません」

 ……嫉妬を代償に発動する?
 じゃあテンプテーションはどうなんだ?
 考えられるのは色欲を代償に使う。
 だが……。

「元康、フィーロと婚約したら何をしたい」
「ははは、お義父さんは気が早いですね。そりゃあ幸せな家庭を築くことですよ。子供はいっぱい欲しいです」
「「むううううう!」」

 取り巻きがポカポカと元康を叩き始めた。
 言葉を濁しているがどう見てもフィーロと卑猥な事をやりたいと思っているんだろうな。
 カーススキルでも取り除ききれないほどの色欲が元康にはあるんだろう。

 というか、色欲を基本に嫉妬が混じったという状態だったのは明白だ。
 だから中途半端な嫉妬は元康から失われてしまったと考えて良いだろう。
 人間としてどうなんだ?

「ああ、ですがフィーロたんとお義父さんには一つ謝らないといけない事があります」
「一つ所じゃねえよ」

 腐る程謝罪しろ。
 あの世でも詫びるくらいに。
 魔王にでもなんでもなってやるからよ。

「実は一人だけ、フィーロたん以外に目移りしてしまった方が居ます」
「あっそ。そっちへ行け」
「ですが一回しか会っていないのでわかりません。とても大きな、フィロリアル様でした」

 フィトリア……お前は元康に会っていたのか。
 あの時、自分で行かなかったのは、そんな理由があったんだな。

「この子達を次期女王候補にと来てくださったらしいのですが、気が付いたら居なくなっておりました」
「……何をした?」
「さあ? 気がつくと大量の抜け羽が残されていただけでした」

 ……抱きついたな。
 で、元康を必死に引きはがして逃げた所か。

「ああ……フィーロたんのように美しく、それでいて包容力のある……すいません。この私、元康はフィーロたん一筋です!」
「いや、目移りして良いから」

 あのアホ鳥女王。面倒事を最終的に押し付けたな。
 言う事を聞かないフィロリアルじゃなくて、元康を俺に出会わせたかったのだろう。
 ……フィーロの発情も怪しいもんだ。
 まったく……話を終えてから錬達はそれぞれの家に帰らせた。


 その後は、アトラがサディナと一緒に俺の家に来て寝る。
 もはや日課だな。
 ちなみにフィーロは謹慎させているので、メルティの所で寝ている。

 時々ガエリオンが来るので招くが、最近じゃキールとかイミアが俺のベッドで寝る状態だ。
 日替わりで担当を変えているらしい。

 一応、キールは奴隷共の中でも古株で友好関係が広く、イミアは物作りのチームと関係が根強い。
 だから、村の状態を尋ねるには調度良い人材といえる。
 ついでにアトラ対策にもなるしな。

「兄ちゃん。一緒に寝に来たぜ」
「よろしくお願いします」
「ああ、早めに寝ておくか、イミア、お前の仲間達はどうだ?」
「はい。みんな、連日徹夜で物を作っております」
「……体を壊さないようにと注意しろ。量産は重要だが、病気になられたら困る」
「はい、わかりました」

 ルーモ種や水生の手先が器用な奴隷は好きなのか注意しないと徹夜で物作りに励む時がある。
 その分、儲かっているけど……。
 売り上げの一部を与えたり、何か礼が無いか聞くと、俺に料理を作ってくれとか頼んでくるんだよなぁ。
 その程度で良いのかねー……。

「うう、尚文様。何故私だけ寝所にご一緒してはダメなんですか?」
「アトラ、お前は一緒に寝ると寒気がするんだ。だからダメだ」

 主に俺を肉食獣として狙っているような気がするんだよ。
 俺は所帯を持つつもりもなければこの世界に残留する気も無い。


 翌朝、錬が谷子を思いっきり構いだして谷子が嫌がっていた。
 谷子もガエリオンの話題こそしないけれど、錬の様子に俺を睨んでいたが、知らんな。

「さて、ガエリオン。どういう事か説明してもらおうか?」

 谷子と錬が魔物舎の外で問答をしている最中、俺は腕を組んでガエリオンを睨む。
 その後ろには魔物の姿のフィーロが待ち構えていた。
 返答次第ではどうするかを脅すためだ。

「な、なんだ?」
「錬から竜帝とやらがどうも霊亀と同じ存在である応竜という話を聞いたのだが、どうなんだ?」
「な!? し、知らぬ!」

 目を思いっきり泳がせてガエリオンは言い放つ。

「嘘は言うなよ? 返答次第じゃフィーロの餌にするぞ」
「んー? ガエリオンを?」

 嫌がるかと思ったがフィーロの奴、口を開けてカモンしてる。
 そんなに嫌いか。

「本当に知らぬ! 竜帝の欠片を集めるとそうなるのか!?」

 うーむ……この焦り様、本当に知らないようだ。

「仮にそうだとしても理由を我は絶対に話すし、汝を裏切る気はない!」
「集まった欠片に自我を乗っ取られるとかありそうだし」
「それなら迷わず我を討て!」
「ああ、はいはい。わかったわかった」
「ところで剣の勇者がウィンディアにちょっかいを出そうとしているようだぞ。どいてくれないか?」
「責任を持ちたいんだろう。好きにさせてやれ」
「汝……さては話したな」
「それがどうした? アイツは責任感だけは強いからな。谷子の返答に期待だ」

 あ、平手打ちの音が聞こえる。
 谷子の奴がキレて錬の頬を叩いたな。

「謝ったってお父さんは帰ってこないの!! だから、許してほしかったら世界を救いなさいよ!」

 と言う大声が聞こえてくる。
 ま、覗き見る必要もないな。
 その後、どのような経緯があったかは知らないが錬は良く谷子と一緒に居るようになっていった。

 というかな谷子……お前の親は形こそ変わっても近くに居るんだぞ?
 未だにガエリオンが隠している理由がわからんな。
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