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盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

盾の勇者の成り上がり

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矛盾の実践

前回、更新時30分程欠けた物を投稿していました。
そちらを見てしまった方は欠けた部分を見てから、
続きを見てください。
 城の庭は今、決闘会場と化していた。
 辺りには松明が焚かれ、宴を楽しんでいた者達がみんな勇者の戦いを楽しみにしている。
 しかし、決着がどう付くかは既に周知の事実となっているのだ。
 攻撃する手段の無い俺と、槍の勇者である元康の戦い。
 盾の勇者一行と槍の勇者一行の戦い……ではなく、俺と元康の一騎打ちになった。
 さすがに元康自身のプライドが許さなかったらしく、一対一になった。
 結果は誰だって想像くらい出来る。
 現にこの手のお約束である賭博行為をする声がまったく聞こえてこない。
 まあ城に居るのが貴族が多いと言うのもあるけれど、波で戦った冒険者だって居るのだ。
 普通であれば賭博が行われないはずが無い。
 つまりみんな分かっていて尚、俺に敗北を要求している。
 錬や樹も城のテラスからこちらを傍観して笑っている。
 俺が負け、奴隷を失う瞬間を楽しみに見ているのだ。

 クソ! クソクソクソクソ!

 どいつもこいつも俺から毟り取る事しか考えやがらない。
 波での戦いであっても俺に火の雨を降らす。
 世界中の全てが俺をあざ笑う敵にしか見えない。
 ……良いだろう。俺には敗北しか選択肢は無いのだろう。だが、タダで負けてなんかやらない。
 見ていやがれ元康。お前には抑えきれない程の恨みがあるんだ。

「では、これより槍の勇者と盾の勇者の決闘を開始する! 勝敗の有無はトドメを刺す寸前まで追い詰めるか、敗北を認めること」

 手首が上手く回るか試し、指を鳴らしつつ、俺は構える。

「矛と盾が戦ったらどっちが勝つか、なんて話があるが……今回は余裕だな」

 元康に至っては鼻に掛けた態度で俺を蔑むように睨んでいる。
 ふざけやがって。

「では――」

 元康、戦いは相手を倒すことだけじゃないことを教えてやる。
 矛盾とは最強の矛と盾を売ろうとした商人にどっちが最強なんだと聞いた回りの連中から話が始まる。辻褄が合わない事を指す言葉だ。
 だけど、この矛盾という言葉自体が、矛盾であると俺は思っている。
 そもそも、何を持って勝負が決するというのか。
 将棋と囲碁で勝負するようなものだぞ。
 仮にそれでも勝負するなら持ち手はどうだ?
 矛の目的は相手を殺す武器。
 盾の目的は持ち手を守る防具。
 ここまで視線を広げると、最強の矛から持ち手を守った盾の勝利、であるという考えもある。
 根本的に目的が違うんだ。矛と盾では。

「勝負!」
「うおおおおおおおおおおおおお!」
「でりゃあああああああああああ!」

 俺はテレフォンパンチの構えをしながら元康の方へ駆け寄り、元康も矛を構えながら走って、俺に一突きしようと試みる。
 距離が一気に近づき、元康の槍の間合いに入った俺に元康は勢いを付けて矛を前に突く。
 どこから出てくるか分かる攻撃に対処できない攻撃は無い。

「乱れ突き!」

 元康の矛が一瞬にして何個も別れて飛んでくる。
 スキルか! いきなりかましてくるとはやってくれる。
 俺の突進は止められない。
 盾で頭を守りながら走り抜ける。
 ガインガイン!
 ズシュ!
 く……肩と脇腹に痛みが走った。
 かすり傷だけど、やはり勇者の攻撃だけあって耐え切れない。
 しかし元康のスキルはそれで一度打ち切り、クールタイムに入ったようだ。

「喰らえ!」

 それでも元康は俺に向けて矛を放つ。
 槍、もしくは矛の弱点はその射程にある。
 中距離を得意とする長物の武器は射程の内側に来られると途端に扱いが難しくなるのだ。
 本来であれば近付かれる前に敵を倒せば良い。だが俺は、盾は一撃では倒れない。
 俺は紙一重で元康の突きを避け、全体重を掛けて突進し、組み伏す。
 そして元康の顔面に拳を叩き込んだ。

 ガン!
 チッ! やっぱり俺ではダメージを負わすことができない。
 しかし、俺の攻撃はこれだけで納まるはずも無い。
 元康の野郎は俺の攻撃が痛くも痒くも無いのか舐めた目をしやがる。

 何時までそんな顔で居られるかな?

 俺はマントの中から必殺武器を取り出して元康の顔にねじ込む。
 ガブウ!

「いて!」

 波の時に火の雨を受けて全滅してしまったが、城に来る途中で拾ってきた脅しの道具だ。

「な? な!?」

 ククク……元康の奴、メチャクチャ戸惑いの声を上げてやがる。
 ガブガブガブ!

「いて、いて!」

 元康は大事な顔を噛まれて痛みに悶えている。
 そう、俺の攻撃は何も素手だけではない。
 バルーンと言う人間専門の便利な武器があるんだよ!

「オラオラオラ!」

 顔に二匹、そして立ち上がれないように足で元康を押さえつけながら股間にバルーンを投げつける。

「な、なんでバルーンが!?」

 観衆が悲鳴を上げる。
 知ったことか!
 後は全体重を掛けて、股間にバルーンと共に蹴りを加え続ける。

「グ……てめえ! 何の真似だ!」
「どうせ勝てないなら、精一杯嫌がらせしてるよ! ターゲットはモテ男の命である顔と、男の証である股間だ! てめぇなんて面と玉がなけりゃタダのキモイオタクなんだよ!」
「なっ!? やめろおおおおぉぉぉぉ!」
「不能になりやがれれえええぇぇぇ!」

 ガツンガツンと俺は元康の股間を執拗に蹴り付ける。
 元康は顔面に引っ付いたバルーンを引き剥がすのがやっとで、倒れた体勢では強く矛も振るえない。
 そのため、顔面のバルーンを割るごとに俺が追加のバルーンを投げつけるとまた対処に時間を食う。
 無論バルーンだけではなく、エグッグなども含め元康は針の筵状態だ。
 この間に出来る限りの嫌がらせをする。
 どうせ負けるんだ。なら、最大限のトラウマを元康に刻み込んでやる。

「オラオラオラ!」
「くっ! このやろおおおお!」

 全力で起き上がろうとする元康を全体重で押さえつけ、俺の陰湿な攻撃が続いていく。
 フッフッフ!
 爽快だなぁ! もっと苦しそうに喚け!
 と、自然と笑みが零れて笑っている中。

「ぐあっ……!」

 突然背後を強く押され、よろめく。
 何があったかよろめきながら来たと思わしき方角を見る。
 するとそこにはあの地雷女!
 マインが人混みにまぎれてこっちに向けて手をかざしていたのだ。
 おそらく、風の魔法だ。
 確か、ウイングブロウという拳大の空気の塊を当てる魔法。
 空気の塊故に見た目は透明。良く見なければ視えない。
 マインの奴、してやったりという笑みを浮かべ、あっかんべーと挑発している。

「てめえええええ!」

 俺の叫びは俺がよろめき、押さえが軽くなって起き上がった元康の反撃にかき消された。
 倒れた俺に元康が肩で息をしながら、矛を首筋に当てる。バルーンは既に全部割られていた。

「はぁ……はぁ……俺の、勝ちだ!」

 厄災の波よりもつらそうな表情で元康は槍を掲げて宣言した。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
感想に対する返事ですが、
タイミングが良いのか悪いのか、この話が尚文の最底辺です。
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