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盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

盾の勇者の成り上がり

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色欲

「勝ち―!」

 まだフィーロは勝利の踊りをやめない。
 勝負事が好きなのか? メルティ達はもはやグロッキー寸前で大変だぞ。

「さて……確か勝った方が負けた方から一匹、フィロリアルを奪うんだったか?」

 あんまりいらないけど、そう言う決まりごとだったしな。
 えっと、良く見るとこの三匹、それぞれ個性があるっぽい。

 赤いのはなんか目付きから気が強そうな印象のあるショートボブの髪型。
 青いのはお嬢様っぽくて清楚っぽい印象があるロング。
 緑は大人しそうな、言ってはなんだがリーシアっぽい地味系委員長みたいな三つ編み。

 フィーロがアレだから中身までそうとは限らないが、見た感じ扱いやすそうなのは緑だな。

「よし、じゃあその大人しそうな緑色の奴を寄越せ」
「ダメだぁあああああ! みどりはダメだぁああああ!」

 元康が三匹に抱きついて庇う。
 みどりって名前か?
 俺が言えた義理ではないが、酷いネーミングセンスだ。
 他の二匹も色から取った名前の可能性が高いな。

「お前なぁ……」

 自分から勝負を売っておいて負けたらダメってなんだよ。
 ぶっちゃけいらないけど。
 フィーロでさえも手に余っているんだ。
 二匹目などいらん。

「もっくん!」
「もーちゃん!」
「もとやすさん!」

 呼び方統一しろ!
 とは言わないでおこう。うるさそうだし。
 三匹揃って元康に縋りついて一緒に泣いている。
 別れ惜しむってか?
 いらんわ。

「もう良いからさ、帰れよ。迷惑を掛けるな。フィロリアルの女王の指示に従え」

 よし、これにて任務は完了。
 フィーロも大人しくなるだろう。

「お義父さん!」
「その呼び方やめろ!」

 まったく、壊れっぱなしじゃないか。

「娘さんをください」
「またか!」

 ああもう……面倒くさい。
 というか勝負に負けてまだ欲するか。

「うう……やっと気持ち悪いのが治ってきた」
「乗り物酔いに効くツボがわかってきました」

 いつの間にかアトラがメルティとリーシアの介抱をしている。
 復帰は早そうだ。

「「「むー……」」」

 元康の取り巻きがフィーロと同じ事を言っている。
 所詮中身は同じか。

「やー! 負けたなら帰れ!」

 フィーロが高らかに宣言する。
 まったくもってその通りだ。
 捕縛が仕事だが、ガエリオンはいないし、関わりたくない。
 早く帰ろう。

「フィーロちゃんに届け! 俺の想い!」

 突然元康が槍を振り回してポーズを取る。
 なんだ? あの旗付きの槍、良く見てなかったけど、柄が黒いな。
 なんとなく……カースシリーズの匂い。

「テンプテーション!」

 バシィっと元康を中心に何か、結界のような物が展開されるのを感じた。

「な――」

 何をしやがったコイツ。
 字面から非常に嫌な単語が浮かんでくる。
 こう言ったスキル名の効果って大体、魅了系の攻撃である事が多いんだ。
 俺は目を凝らして元康を見る。

 あれ? なんだ?
 元康が輪を掛けて美形に見える。回りにはラメが入ったみたいにピカピカと光が走り、背景がピンク色に染まっている。

 ヤダ……凄いイケメン……ここまでの美形なら俺も掘られて良い……。

「……わけねえだろ!」

 頭をブンブン振るって意識を保つ。
 危なかった。
 取り返しの付かない事になる所だった。

「大丈夫か!?」

 メルティ達に目を向ける。

「あ、うん。大丈夫……ちょっとあの人がカッコいいと思っちゃったけど大丈夫」
「ふぇえ……私にはイツキ様がいるんでダメです……」
「何がです?」

 アトラは……目が見えてないから感じないのか?

「何があろうとも私は尚文様一筋です」
「あっそ」

 とにかく、元康……お前、いきなり何すんだ。

「お前さー……その槍、何?」
「ラストスピアⅣです。お義父さん」

 Ⅳ! ラースより上!?
 どんだけ患ってんだよ。
 というか受け答え出来るだけ性質が悪い!
 ラスト……最後、じゃないな。色欲だな、間違い無い。
 素直に答えるのはなんなんだろう。

「お義父さん。フィーロたんが望めば、私との婚約を許してください」
「お前はフィーロを誘惑スキルで洗脳したいだけなんじゃないのか?」
「違います! 私の心が呼び出した『愛』をフィーロたんに伝えるスキルです!」
「別の女も誘惑しているぞ。男にも掛るってどうよ」

 お前が洗脳スキルを覚えてどうするんだよ。
 あれだけ俺に洗脳の盾の存在を主張した癖に、お前が使ってどうする。
 壊れる前の元康は洗脳洗脳うるさかったからな。

「フィーロたんの愛以外いりません」
「あっそ」

 むしろフィーロへの色欲が俺の憤怒さえも超えたと……。
 凄いな。もう負けで良いよ。帰りたい。
 というか……フィーロが静かだな。

「フィーロ?」
「はぁ……はぁ……ん……」

 この荒い呼吸、掛ったな。元康も本望だろ。
 終わった、もう諦めようかな。
 アトラに頼んで元に戻させようか?
 過去のRPGに続く、魅了や混乱は味方の攻撃で戻るものさ。
 戻らないのもあるけど。

「よしアトラ、フィーロを突け」
「はい!」

 バシッとアトラがフィーロの脇腹辺りを突く。
 のだが……。

「はぁ……はぁ……」

 戻らない。

「フィーロちゃん?」

 ああ、戻れないのか。
 これはフィーロの為に元康を倒さないと無理か?

「フィーロたん! 俺はここにいるよ!」
「「「むぅうううううううううううう!」」」

 嫉妬に燃える三匹を置いて、元康が高らかに腕を広げ、フィーロが来るのを待つ。
 槍の力で相手を誘惑するのは愛なのか?
 しかし……元康の企みは――

「――しゅじんさま。食べたい」

 別方向で開けてはならない箱を開けてしまった。
 フィーロがドシンと、事もあろうに俺の方に振り向いて歩き出した。

「はぁ……はぁ……」

 目が朝よりもヤバイ。
 背筋に寒気が走る。なんだろう。俺の本能が危険だと警報を放っている。
 鳥肌と悪寒が止まらない。
 今すぐここから立ち去らねば大変な事になる気がする!

「ポータルシールド!」

 これに頼りっぱなしだがしょうがない。
 頼らなかったら逃げ切れん。
 だが……。

 転送不可!?
 元康の張ったスキルの所為だな。

「逃がさない……」

 良く見たら……フィーロの周りから霧みたいな何かが立ち込めて、辺りに蛍みたいな灯りが浮かんでいる。

「……サンクチュアリ……」

 ふわりとフィーロが、魔法を唱えきった。
 おそらく、ガエリオンが使うドラゴンサンクチュアリと同系統の魔法だと思って間違いない。

 龍脈法か?
 いや、フィロリアルは使えないはず。だが、フィトリアが出てきた時の空間と辺りが似ている。
 なんでフィーロが使えるんだよ。

 ガエリオンに俺が頼る前に使える事を教えろ!
 いや、間違いなく……この状態だから使えるとかそんな所か。

「フィ、フィトリア! 報酬を前倒しで寄越せ!」

 俺の言葉を聞いてか聞かずか、フィーロのアホ毛が光ってる。
 だが、効果が無いようで、バシンバシンとアホ毛の周りに黒い何かが纏わりついて沈黙している。

「尚文様!」

 アトラがフィーロの前に立つ。

「どいて」

 ノシッとフィーロはアトラの肩を素早く掴んでどかせる。

「あ――」

 なんて早業だよ。アトラも結構動きは良い方なのに。
 まあ、フィーロと比べると酷か。俺の配下の中で最速だからな、コイツ。

「アトラ、フィーロに何が起こっているのかわからないか?」
「はい! あの方から出た黒い何かがフィーロちゃんに纏わりついています」

 と、アトラは元康を指差した。
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