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盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

盾の勇者の成り上がり

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フィトリアの依頼

「うーむ……」

 フィトリアか。
 中身がお花畑な所はあんまり変わらなそうなんだけど、とりあえず聞いてみるか。
 俺はフィーロのアホ毛をむんずと掴んでマイクのようにして声を出す。

「見ているんだろ? どうにかする手段はないのか?」

 受信を待つ。
 やがてフィーロがうんうんと頷いた。
 携帯電話みたいで便利だな。
 この世界にも通信技術とかあったら楽で良いんだけど、無線機とか詳しく無いし。

「えっとねー……無い訳じゃないけど、一つ仕事を手伝ってほしいってー」
「ここにきて交換条件とは何様のつもりだ!」
「ならこの話はナシだって、むしろ我を忘れたフィーロをパワーアップさせてくれるって、そっちは簡単なんだって」

 ぐ……なんて酷い提案を出しやがる。
 発情したフィーロが今よりもパワーアップって、間違いなく俺は襲われかねないぞ。
 いや、真っ向から対立する事も可能か?

 フィーロは諦めると言う手段も無い訳じゃないが、その手は使いたくないな。
 なんだかんだで頑張っているし評価している。
 ……というか、フィトリアがこの騒ぎの元凶なんじゃないか? 疑わしくなってきた。

 魔物紋の制御を超えているというところが怪しい。
 ガエリオンは文字通り腐っても竜帝だからな、魔物紋の効果をすり抜けることが出来たとしても不思議じゃない。まあ、勝手にハーレム作ったらフィーロの餌にするくらい本竜もわかっているだろうけどさ。
 が、こっちも拒否する事が出来ない状況、話を聞いてみるしかない。

「わかった。何をすればいいんだ?」
「あのね。最近、ごしゅじんさまのいる国で馬車を狙った山賊が居るんだって」
「馬車?」
「ああ、そう言えば、そんな話が私の方にも来ているわよ?」

 メルティが話に加わってくる。
 隣町でも有名になるという事は、その山賊とやらは相当暴れまわっているって事か。

「なんでも夜限定で出現する山賊という話なのよ。馬車で行商とかしている商人や冒険者に勝負を挑んできて、負けると馬車を奪っていくらしいの」
「積み荷を取られるか……そりゃあ大変だな」
「違うのよ。積み荷は後で帰ってくるんですって、ただ、馬車だけが目的みたい」
「はぁ!?」

 馬車だけが目的ってなんだよ。
 変わった山賊もいたもんだ。
 そもそも、夜に馬車を走らせる意味がわからない。

 人間じゃないかもしれないな。
 となると、フィトリアの群とは違う別のフィロリアルの群とかか?
 それならフィトリアが依頼を出してくるのも頷けるな。

「貴族の馬車とか何台か取られたらしいの。最近じゃ変わり者の山賊で少し有名ね。しかも稀に馬車がぼろくなって帰ってくるのだけど、その馬車には宝が満載されていて被害者は大喜び。今では意図的に馬車を持っていく商人もいるくらい」
「ちょっと待て、なんだそれ? しかも――」

 フィトリアからの依頼と同じだとすると。

「フィロリアルは馬車を奪い合う習性でもあるのか?」
「うん。あるってー」

 うわぁ……。
 要するに縄張り争いの解決を俺に任せようって魂胆か。
 まあ野生のフィロリアルなら、簡単には負けないだろう。

「負けた方は勝った方に馬車を渡さなきゃダメなの。後、恋の季節なら相手に勝たないと恋は成就しないんだってー」

 ヤドカリかよ。

 ん? つまり、勝負で勝てばいいんだ。
 しかもフィーロは駆けっこが得意だ。
 なら駆けっこでフィーロを追い抜けば、フィーロは俺を諦めるんだな?

「よしフィーロ。俺と勝負しよう。城まで勝負だヨーイドン!」

 ガエリオンの転送妨害地域から出たら迷わずポータルシールドを使えば余裕で勝てるな。

「ごしゅじんさまはズルするからダメ!」

 チッ! 見破られていたか。
 何が悲しくてコイツと本気で駆けっこなんかしなくちゃいけないんだ。
 ポータルシールドも無しに勝てるわけねーだろ。

「……で? フィトリアは俺に何を依頼しているんだ?」
「なんかね。その辺りにいるフィロリアルが指示を聞かないから懲らしめて欲しいんだってー」

 ふむ……悪い話ではないが……。
 メルティの話から察するに、何か裏があるような気もする。
 他のフィロリアルクイーンとかが人型で指揮でもして縄張り拡張を狙っているのか?
 確認するしかないか。

「わかった。場所を教えてくれ。念の為に戦えそうな連中も連れて行くとしよう」

 戦闘も視野に入れるとメンバーは俺、フィーロ、リーシア、アトラ、後は……。

「メルティは来るか?」
「なんかイヤだけどフィーロのちゃんの為だから我慢するわ」

 ふむ……となると女騎士は、錬の相手をしていてダメだな。
 他に……。

「ラトは来るかー?」
「私に何を期待しているの?」
「研究に来るかと思ってな」
「話聞くだけで十分だわ。魔物の管理で忙しいし」

 フィロリアルの縄張り争いだもんな。
 フィーロの発情を抑える事が交換条件で無ければ、俺でも拒否する。
 どうでも良いか。

「研究は進んでいるのか?」
「順調ね。後はドラゴンの核石をガエリオンから拝借すれば少しは進むかしらね」

 ガエリオンが吐き出す核石か……確か竜帝の欠片が足りないとかで拒否したのだったか。
 どんな物が完成するか見ものだな。
 後は候補を上げるとしたら谷子とガエリオン辺りだ。

 ま、冷静に考えれば経験値目的じゃないのだから人数の制限なんて無いか。
 どんな勝負をするんだ? ヤドカリみたいな馬車のぶつけ合いか?
 よくわからんなぁ。

 どちらにしろフィーロの負担になりすぎないように人員は削って、少数精鋭が良いか。
 谷子は別にフィーロと仲は悪くないけどガエリオン関係だから連れて行くのもなぁ。
 今回はやめておくか。

「じゃあフィーロとリーシア、アトラとメルティが今回の仕事で連れて行くメンバーにする」
「はーい!」

 と、決めて、俺達は準備を整えて出発した。

 ……何か見落としている気がする。
 いや、どちらかと言えば考えない様にしていた。


「この辺りだったか?」

 あの後、フィーロは時々発情しかけたが、どうやら馬車を引く本能の方が優先度が高いようで抑え切れている。
 時刻は夜、あんまり移動したくない時間帯に差し掛かっていた。
 空には月が浮かんでいる。
 場所はメルロマルクの山岳地域、山道が多い区域だ。
 山道をトコトコとフィーロに歩かせている。

「そうね。この辺りらしいわよね」
「というかフィロリアルからの依頼って、俺はなんでも屋なのか?」
「ちょっと羨ましいと思うわよ」

 フィロリアルマニアの言葉で慰められてもなぁ。

「ナオフミさん。ここでフィロリアルさんを懲らしめるのですか?」

 リーシアが打ち合わせをしてくる。

「そうだな。大方、馬車同士のぶつけ合いとか、何かしらの勝負にはなると思う。念の為にお前達を連れてきたんだ」
「はい。頑張ります」
「頑張りましょうね。リーシアさん」

 メルティ以外は素直な連中だから、連携も取りやすいだろ。
 リーシアもかなり優秀に育っているし、相当難しい仕事でない限り楽勝だと……思う。

「何も起こりませんね?」
「そうだな。盗賊を探すようなモノだからしょうがないか」

 この辺りで出るらしいんだがなぁ。
 今日は出ないのか?

「アジトとかは無いのか? フィロリアルなら巣とか」
「わかんないってー」

 役に立たない情報だな。
 というか出てくるのはフィロリアルだろ?
 と思っていると遠くから松明の灯りみたいな物体が土煙を上げて近づいてくる。
 ドッドッドと結構早い速度で遠くの山からこっちへ向かってくるようだ。

 あれだ、松明持ちとは親切だな。
 こっちもわかりやすいようにランプを馬車に付けていたので目指してくる。
 さて、どんな奴等なんだ?

 な、なんだ?
 俺は山賊を見て……眉間に皺を寄せて考え込んでしまった。
 土煙が晴れ、山賊とかフィロリアルだとか言われる集団、というかボロボロでもはや台車に成り掛っている馬車が一台、俺達の前に立ちはだかった。

 馬車を引いているのは三人の赤、青、緑……羽の生えた幼女。
 荷台の上には――

「お久しぶりです、お義父さん。走り屋の元康です」

 そこには、槍に旗を括りつけて、走り屋を自称する槍の勇者がいた。
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