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盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

盾の勇者の成り上がり

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恩赦

「やはりそうか」
「はい」

 ここからは推測でしか出てこないが考えが複数浮かぶ。
 そのクズの大切にしていた妹が、慰み者としてシルトヴェルトにいるハクコに犯され身ごもった子供がフォウルとアトラである可能性か。

 ただ、どうしてその事を交渉の材料にしなかったとか色々と問題が出てくるよな。
 しかしフォウルやアトラが話していた昔の話を又聞きした範囲では、悪い扱いは受けていない。
 となると昼ドラみたいに、実は妹は相手のハクコと愛し合っていたとか?

 どんな経緯があったかはわからない。
 けど、アトラはクズをフォウルと見間違えたと言う事は血の繋がりが感じられるとも言える訳か。
 ただ、地味に金は持っていたって言っていたがー……。

「フォウルとアトラは人間のハーフなのか?」
「さあ……何分、私も小さな頃だったので……詳しい事はお兄様に聞かないとわかりません」
「そうか」

 フォウルが帰ってきたら聞いてみるとするか。
 つまり、クズが大人しくなったのはアトラの顔を見て全てを悟った。
 もしくは目に入れても痛くない妹の再来を感じたんだろう。

「前の名前と姓は私の父から引き継いだモノです。我が国は夫の名前を妻が決める制度と伝統の名があるのですよ」
「ふーん……」

 そんな有名だったクズが今ではあれか。
 子供が出来てダメになったとか言ってたな……。

「では母上、アトラちゃんは私にとって親戚と言う事になるのですか?」
「もしかしたらですよ……そっくりで済むかもしれません」
「まさか」

 そうだよな。因縁がありすぎだって。
 絶対、血を感じる。
 まあ、亜人を差別するメルロマルクの王の親戚が亜人だってのは隠した方が良い事実かもしれない。
 そもそも今更言い出した所で無意味な混乱を招くだけだ。

「話はわかった。ところで、聞きたいのだが、剣の勇者を捕獲したのだが、どうしたらいい」
「そうなのですよね……最近では巷の噂も沈静化しつつあるので、処罰に悩む所です」
「伝承とかで波の時には殺すなとあるんだったか?」

 女騎士が言っていた。アレはどういう意味だろうか。

「予言にはそう記されている物があります」
「以前思いっきり教皇に殺されかけたのだが……」
「自分の都合の良い伝承を信じる者が、そのような伝承を信じるとお思いですか?」

 ……説得力はあるなぁ。
 とはいえ、有力な説があるともいえるのか。
 ガエリオンまで言っていたとなると確実かもしれない。

「沈静化とは何があったんだ?」
「元々霊亀の眠っていた国は些か外交に問題を持っていた国でもあったのです」

 ああ、そう言えば錬の話でもあったな。
 国に頼っても意味が無いとか、霊亀の力で洗脳されているとか。

「封印で有名な七星勇者は本来我が国の物だ、明け渡せ、と龍刻の砂時計も無いのに主張し、四聖勇者の伝承は我が国が発祥だとか……面倒な問題ばかり起こす国でもあったのですよ」

 ……何処の国も困りモノなんだな。
 その国が壊滅した訳で……結果的には利益もあった……のか。

「我が国を初め、近隣諸国にも多大な被害を出しましたが、波での損害ならと民衆も四聖勇者が関わっていると言う噂は偽りであると認識し始めております。今では事前に被害を抑えようと出征したが邪魔され、汚名を着させられているのかもしれないとまで言われる始末」
「好意的な解釈な事で」
「勇者の伝説の大半が善行で語られている手前、多くの国で勇者は生きる伝説……場所によっては神と崇める国もある位で、悪い事は偽者が起こしたとされてしまうのです」

 そう言えば、俺の世界でも過去の偉人が実は……って話はあんまり聞かない。
 調べると案外しょうもないことや、常識知らずな事をしてるなんて事例は腐る程出てくる。
 ましてやこの世界は俺の世界に比べて情報に関して一歩、二歩以上に遅れているから、勇者の実情なんて案外知られていないのか。

「それに……波に関して、勇者は不要だと言う勢力も今回の被害を目の当たりにして勇者の必要性を再確認し、勧誘を画策しているという情報もあります」
「そんな矢先に勇者を殺したら……隠しきれそうだけどどうなんだ?」
「召喚時に使った機材で生存が調べられるのです。既にフォーブレイへ提出していますが……」
「……はぁ」

 処刑は出来ない。
 しかも安易に監禁していても波が起こったら呼び出される訳で。
 実際、錬を監禁出来るのは二か月程度か。
 次の波で殺すとかなら手だけど、意図的に殺そうとしたとかで戦争になるかもしれないし、波がある時に殺すのも危ないらしいしなぁ。

「報告では大人しくしてくださっていると聞きました」
「ああ、お前の配下である騎士が面倒を見ているよ」
「あの者ですか。イワタニ様の領地に勤める事を望んだ者ですが、剣の腕も有り、土地勘もありますから、勧めたのですが少々問題行動が目立ちますね」
「確かに」
「イワタニ様が望むなら左遷させますが? 戦力としては優秀なので城仕えとしておくのが無難でしょうか」
「……アイツは錬の手綱だからな。錬の処遇次第では近くに置いておきたい」
「わかりました。あの者の父はそれはもう優秀な方だったのですが、娘は少々独特の価値観を持っている様で、イワタニ様の領地経営を見て父と同じく柔軟な思考を持って欲しかったのですが、あまりうまく行っていない様ですね」

 確かに堅物だもんな。
 その原因は優秀な父とやらの遺言だけどさ。
 となると、柔軟な思考を持っていたと言うから、女騎士が受け取った意味とは別の意味で発した言葉なのかもしれないな。

「民の為ならば、自身の手さえも汚せる覚悟を知ってほしかったのですが……」
「ま、今のアイツじゃ歪曲して自分も相手も清廉潔白を望みそうだな」

 人としてそれはそれで良いんだろうが、出世は難しいな。
 後、領地は任せられないな。
 クソ真面目過ぎて衝突が生まれるし、独善が入るから人が寄り付かなくなる。

 近い人物で言うと樹か。考えてみれば、発想が少し似ているよな。
 どっちかと言えば樹の方が極端で自分本位だが。
 まあ独善の塊である俺が言えた義理では無いか。

「それで、錬はどうする?」
「剣の勇者様は協力的だと聞きました」
「罰は与えないのか?」
「平時であれば別ですが、現在は先が見えない状況です。ですから勇者は等しく、世界の為に戦うのが罰……では無いでしょうか?」
「俺は悪くは無いが……」
「自身に罪悪感があるのでしたら『特別に』恩赦を与えつつ監視を強め、このまま味方に引き込むのが上策だと思いますが?」

 俺も冤罪で犯罪者だった時に殺されなかったのは同じ理由だったけど、昔のアイツ等もこんな気分だったんだろうか。
 知らんが、納得しかねるなぁ。

「それほど、世は切迫しているのです。今年は世界各国で飢饉、そして魔物の凶悪化に見舞われております。戦争の兆候も見られますし、これまでの波による戦力の損耗、霊亀による被害……波への戦力なら犯罪者すら駆り出さねばならなくなるでしょう。何より波が何度やって来るかもわかりません。できれば強い戦力を抱え込んでおきたい、というのが本音です」
「……わかった。錬にはうまく言っておく」
「イワタニ様の心情を思えば、相応の罰を与えたいのですが……我慢を強いる事、度重ね謝罪します」
「問題無い。勇者が味方なら心強いのは事実だし、俺も楽ができるからな。……他に樹は見つかったか?」
「いえ……消息不明です。ゼルトブルにも要請は出しておりますが、発見は難しいかと」

 どこへ消えたのかは知らないが、アイツも転送スキルを持っているはずだ。
 さすがの影も転送に追い付くのは無理だろう。
 ん? 良く考えると俺を監視している影も同じ理由で俺を何度か見失っているんじゃ?
 まあ別に悪い事をしている訳でも無いし、問題無いか。

「それにしても、お前の娘は本当に害悪だな」
「本当に……もはや発見と同時に……いえ、なんでもありません」

 甘い事で、いやこの場合は厳しいのか?

「ああ、後」

 女王が手をあげると影が現れて複数の宝石みたいな石を俺に渡す。

「これは?」
「竜の核石です。もしかしたら竜帝の欠片がここにあるかもしれませんので」
「わかった。助かる」

 城の宝とか、有名な武器に施されていた物か?
 色々と援助が助かるな。
 政治的な理由で錬に罰を与えられない代わりとでも思っておくか。

「俺達はクラスアップに行く。じゃあな」
「実りある話、こちらも感謝致します」


 それから俺達は龍刻の砂時計へ行き、クラスアップを終えた。
 ああ、メルティは物すごい速さで儀式が終わった。触る前から羽が反応してたし。
 俺の仲間じゃなくても大丈夫なのか?

 ただ、魔力の流れを察知すると俺の盾から何か漏れているのを感じる。
 ……イヤな能力に目覚めたな。
 アトラもフィーロのアホ毛の影響を受ける事が出来た。
 フィーロの口からフィトリアの代弁を聞くに竜帝の加護も掛りかけていて掛け辛かったとか……。
 これで戦力アップも進んだな。

「さてフィーロ」
「なーに?」
「メルティ次期女王とアトラを連れて――」
「ナオフミ……いい加減にしないと怒るわよ」
「はいはい、お前はいつも怒っているだろ……わかったから魔法を唱えようとするのをやめろ」

 ま、今度余裕があったら行かせるとしよう。

「ではアトラを連れてLv上げに行ってこい」
「うん!」
「そんな! 尚文様!」

 フィーロがアトラを担いで走り去っていく。

「尚文様ぁあああああ――」

 これで静かになるな。
 後は村に帰って、錬の処遇を話したのだった。

 翌日から女騎士のブートキャンプが始まったのは余計な事か。
 夜になると疲労からなのか、錬の奴が爽やかな顔をして寝ている事にイラっと来たので、嫌味を囁きまくってやった。
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