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盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

盾の勇者の成り上がり

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勇者紹介

「おお……」

 感嘆とする声に俺はハッと我に返る。
 纏まらなかった視点を前に向けるとローブを着た男達が何やらこちらに向って唖然としていた。

「なんだ?」

 声のするほうに目を向けると俺と同じように状況を飲み込めていないらしき男が三人。
 一体どうなっているのか、首を傾げた。
 俺、さっきまで図書館に居たよな、なんで……ていうかここはドコだ?

 キョロキョロと辺りを見渡すと石造りの壁が目に入る。
 レンガ調という奴か? とにかく、見覚えの無い建物だ。間違っても図書館ではない。
 下を見ると蛍光塗料を塗られて作られたかのような幾何学模様と祭壇。
 なんとなくファンタジー物に出てくる魔方陣に似たのがある。そんな感じだ。
 その祭壇に俺達は立たされていた。

 でだ……なんで俺、盾を持ってるんだ?
 妙に軽く、ピッタリと引っ付く盾を俺は持っていた。何で持っているのか理解に苦しむので地面に置こうとするのだけど手から離れない。

「ここは?」

 とにかく、どうなっているのか気になっている所で前に居る剣を持った奴がローブを着た男に尋ねた。

「おお、勇者様方! どうかこの世界をお救いください!」
「「「「はい?」」」」

 異口同音で俺達は喋った。

「それはどういう意味ですか?」

 何だろうこのフレーズ。ネット小説とかで読んだ事があるような気がしないでもない。

「色々と込み合った事情があります故、ご理解する言い方ですと、勇者様達を古の儀式で召喚させていただきました」
「召喚……」

 うん。あれだ。何かのドッキリである可能性は非常に高いが、一応は話を合わせて聞いておくにこしたことは無い。

「この世界は今、存亡の危機に立たされているのです。勇者様方、どうかお力をお貸しください」

 ローブを着た男が深々と俺達に頭を下げる。

「まあ……話だけなら――」
「嫌だな」
「そうですね」
「元の世界に帰れるんだよな? 話はそれからだ」

 俺が話を聞こうと喋っている最中、遮るように他の三人が言う。

 はい?

 必死に頭を下げている奴になんて態度で答えるんだよコイツ等。
 話だけでも聞いてから結論を述べれば良いだろうに。
 俺が無言の眼力で睨むと三人は俺に視線を向ける。

 ……なんで半笑いなんだよ。微妙にテンションが上がってるのが分かるぞ。

 実は嬉しいんだろお前ら。
 まあ、これが真実なら異世界に跳躍できたという夢を叶える状況だけどさー……。
 お前らの態度も常套句だよな。でもさ、だからこそ話を聞いてやれよ。

「人の同意なしでいきなり呼んだ事に対する罪悪感をお前らは持ってんのか?」

 剣を持った男、パッと見だと高校生くらいの奴がローブを着た男に剣を向ける。

「仮に、世界が平和になったらっポイっと元の世界に戻されてはタダ働きですしね」

 弓を持った奴も同意してローブの男達を睨みつける。

「こっちの意思をどれだけ汲み取ってくれるんだ? 話に寄っちゃ俺達が世界の敵に回るかもしれないから覚悟して置けよ」

 これは、アレだ。自分達の立場の確認と後の報酬に対する権利の主張だ。
 どれだけたくましいんだコイツ等は、なんか負けた気がしてくる。

「ま、まずは王様と謁見して頂きたい。報奨の相談はその場でお願いします」

 ローブを着た男の代表が重苦しい扉を開けさせて道を示す。

「……しょうがないな」
「ですね」
「ま、どいつを相手にしても話はかわらねえけどな」

 たくましい奴らはそう言いながら着いて行く。俺も置いて行かれないように後を追うのだった。
 それから俺達は暗い部屋を抜けて石造りの廊下を歩く。

 ……なんだろう。空気が美味しいと表現するだけしか出来ないのは俺の語彙が貧弱だからだろうか。

 窓から覗く光景に俺達は息を呑む。
 どこまでも空が高く、そして中世ヨーロッパのような町並みが其処にはあった。
 そんな町並みに長く目を向ける暇は無く、俺達は廊下を歩き、謁見の間に辿りついた。

「ほう、こやつ等が古の勇者達か」

 謁見の間の玉座に腰掛ける偉そうな爺さんが俺達を値踏みして呟いた。
 なんとなく印象が良くないなぁ……。
 人を舐めるように見る奴を俺はどうも好きになれない。

「ワシがこの国の王、オルトクレイ=メルロマルク32世だ。勇者共よ顔を上げい」

 さげてねーよ! と、突っ込みを入れたい衝動に駆られたがグッと我慢する。
 一応は目上の相手だし、王様らしいからな。

「さて、まずは事情を説明せねばなるまい。この国、更にはこの世界は滅びへと向いつつある」

 王様の話を纏めるとこうだ。
 現在、この世界には終末の予言と言うものが存在する。いずれ世界を破滅へ導く幾重にも重なる波が訪れる。その波が振りまく災害を撥ね退けなければ世界は滅ぶというのだ。

 その予言の年が今年であり、予言の通り、古から存在する龍刻の砂時計という道具の砂が落ちだしたらしいのだ。
 この龍刻の砂時計は波を予測し、一ヶ月前から警告する。伝承では一つの波が終わる毎に一ヶ月の猶予が生まれる。
 当初、この国の住民は予言を蔑ろにしていたそうだ。しかし、予言の通り龍刻の砂時計の砂が一度落ちきったとき、災厄が舞い降りた。

 次元の亀裂がこの国、メルロマルクに発生し、凶悪な魔物が大量に亀裂から這い出てきた。
 その時は辛うじて国の騎士と冒険者が退治することが出来たのだが、次に来る波は更に強力なものとなる。
 このままでは災厄を阻止することが出来ない。
 だから国の重鎮達は伝承に乗っ取り、勇者召喚を行った。
 というのが事のあらましだ。
 ちなみに言葉が分かるのは俺達が持っている伝説の武器にそんな能力があるそうだ。

「話は分かった。で、召喚された俺たちにタダ働きしろと?」
「都合のいい話ですね」
「……そうだな、自分勝手としか言いようが無い。滅ぶのなら勝手に滅べばいい。俺達にとってどうでもいい話だ」

 先ほどの笑い方から、内心は大喜びの癖にぬけぬけと何を言っているのやら。
 まあ、俺も便乗するか。

「確かに、助ける義理も無いよな。タダ働きした挙句、平和になったら『さようなら』とかされたらたまったもんじゃないし。というか帰れる手段があるのか聞きたいし、その辺りどうなの?」
「ぐぬ……」

 王様が臣下の者に向けて視線を送る。

「もちろん、勇者様方には存分な報酬は与える予定です」

 俺を含め、勇者達はグッと握り拳を作った。
 よし! 話し合いの第一歩。

「他に援助金も用意できております。ぜひ、勇者様たちには世界を守っていただきたく、そのための場所を整える所存です」
「へー……まあ、約束してくれるのなら良いけどさ」
「俺達を飼いならせると思うなよ。敵にならない限り協力はしておいてやる」
「……そうだな」
「ですね」

 どうしてコイツ等は常に上から目線なんだよ。
 現状、王国が敵になったら一番困るのは俺達だぞ。
 まあ、ここはしっかりしておかなきゃ骨折り損のくたびれもうけになりかねないからしょうがないか。

「では勇者達よ。それぞれの名を聞こう」

 ここで俺は気が付いた。これ、さっきまで読んでいた本。四聖武器書に似ていないか?
 剣に槍に弓、そして盾。
 勇者という共通項もあるし、という事は俺達は本の世界に迷い込んでしまっているのかもしれない。
 剣の勇者が前に出て自己紹介を始める。

「俺の名前は天木錬だ。年齢は16歳、高校生だ」

 剣の勇者、天木錬。外見は、美少年と表現するのが一番しっくり来るだろう。
 顔のつくりは丹精で、体格は小柄の165cmくらいだろうか。
 女装をしたら女の子に間違う奴だって居そうな程、顔の作りが良い。髪はショートヘアーで若干茶色が混ざっている。
 切れ長の瞳と白い肌、なんていうかいかにもクールという印象を受ける。
 細身の剣士という感じだ。

「じゃあ、次は俺だな。俺の名前は北村元康、年齢は21歳、大学生だ」

 槍の勇者、北村元康。外見は、なんと言うか軽い感じのお兄さんと言った印象の男性だ。
 錬に負けず、割と整ったイケメンって感じ。彼女の一人や二人、居そうなくらい人付き合いを経験しているようなイメージがある。
 髪型は後ろに纏めたポニーテール。男がしているのに妙に似合っているな。
 面倒見の良いお兄さんって感じだ。

「次は僕ですね。僕の名前は川澄樹。年齢は17歳、高校生です」

 弓の勇者、川澄樹。外見は、ピアノとかをしていそうな大人しそうな少年だ。
 なんていうのだろう。儚げそうな、それでありながらしっかりとした強さを持つ。あやふやな存在感がある。
 髪型は若干パーマが掛かったウェーブヘアー。
 大人しそうな弟分という感じ。
 みんな日本人のようだ。これで外人とかだったら驚くけどさ。
 おっと、次は俺の番か。

「最後は俺だな、俺の名前は岩谷尚文。年齢は20歳、大学生だ」

 王様が俺を舐めるように見る。
 背筋が何かむず痒いな。

「ふむ。レンにモトヤスにイツキか」
「王様、俺を忘れてる」
「おおすまんな。ナオフミ殿」

 まったく、抜けた爺さんだ。そりゃあ……なんとなくこの中で俺は場違いな気もするが其処はこう、忘れないで欲しい。

「では皆の者、己がステータスを確認し、自らを客観視して貰いたい」
「へ?」

 ステータスって何!?

「えっと、どのようにして見るのでしょうか?」

 樹がおずおずと王様に進言した。
 いきなりステータスとか何の話だよコラ!

「何だお前ら、この世界に来て真っ先に気が付かなかったのか?」

 レンが、情報に疎い連中だと呆れたように声を出す。
 知るか! というか、何だその情報通ですって顔は。

「なんとなく視界の端にアイコンが無いか?」
「え?」

 言われるまま、俺は何処を見るでもなくぼんやりとすると視界の端に何か妙に自己主張するマークが見える。

「それに意識を集中するようにしてみろ」

 ピコーンと軽い音がしてまるでパソコンのプラウザのように視界に大きくアイコンが表示された。

 岩谷尚文
 職業 盾の勇者 Lv1
 装備 スモールシールド(伝説武器)
    異世界の服
 スキル 無し
 魔法 無し


 さらっと見るだけで色々な項目があるけれど割愛する。
 ステータスとはこれの事か。 
 っていうかなんだよこれ! 妙にゲームっぽいな。

「Lv1ですか……これは不安ですね」
「そうだな、これじゃあ戦えるかどうか分からねぇな」
「というかなんだコレ」
「勇者殿の世界では存在しないので? これはステータス魔法というこの世界の者なら誰でも使える物ですぞ」
「そうなのか?」

 現実の肉体を数値化して見ることが出来るのが当たり前なのか、これは驚きだ。

「それで、俺達はどうすれば良いんだ? 確かにこの値は不安だな」
「ふむ、勇者様方にはこれから冒険の旅に出て、自らを磨き、伝説の武器を強化していただきたいのです」
「強化? この持ってる武器は最初から強いんじゃないのか?」
「はい。伝承によりますと召喚された勇者様が自らの所持する伝説の武器を育て、強くしていくそうです」
「伝承、伝承ね。その武器が武器として役に立つまで別の武器とか使えばいいんじゃね?」

 元康が槍をくるくる回しながら意見する。
 それもそうだ。というか俺は盾。武器ですらない物を持たされているのだから必要なものだ。

「そこは後々、片付けて行けば良いだろ。とにかく、頼まれたのなら俺達は自分磨きをするべきだよな」

 異世界に勇者として召喚されるという燃えるようなシュチエーション。
 是が非でもやってみたいという思いが沸々と湧いてくる。
 なんていうか夢一杯の状態で興奮が冷めそうに無い。
 それは他の連中も同様でみんな己の武器にご中心だ。

「俺達四人でパーティーを結成するのか?」
「お待ちください勇者様方」
「ん?」

 これから冒険の旅に出ようとしていると大臣が進言する。

「勇者様方は別々に仲間を募り冒険に出る事になります」
「それは何故ですか?」
「はい。伝承によると、伝説の武器はそれぞれ反発する性質を持っておりまして、勇者様たちだけで行動すると成長を阻害すると記載されております」
「本当かどうかは分からないが、俺達が一緒に行動すると成長しないのか?」

 ん? なんか武器の所に伝説の武器の使い方とかヘルプがついていた。
 みんな気が付いたようで目で追っている。

 注意、伝説の武器同士を所持した者同士で共闘する場合。反作用が発生します。なるべく別々行動しましょう。

「本当みたいだな……」

 というか何このゲームっぽい説明は。
 まるでゲームの世界に入り込んだみたいだ。
 ズラーっとこの武器の使い方が懇切丁寧に記載されているけれど、今は全部読んでいる暇はなさそうだ。

「となると仲間を募集した方が良いのかな?」
「ワシが仲間を用意しておくとしよう。なにぶん、今日は日も傾いておる。勇者殿、今日はゆっくりと休み、明日旅立つのが良いであろう。明日までに仲間になりそうな逸材を集めておく」
「ありがとうございます」
「サンキュ」

 それぞれの言葉で感謝を示し、その日は王様が用意した来客部屋で俺達は休むこととなった。
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