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盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

盾の勇者の成り上がり

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 着地したラフタリアが剣を振るって液体を拭いながら俺達を見る。

「あれ?」

 うわ。なんか俺の視界はラメが入ったかのようにラフタリアの周りだけキラキラしている。
 見慣れたはずの顔なのに見つめるだけでドキドキしてくる。
 凄い美少女だ。狸やアライグマを連想する尻尾と耳はあるんだけど、そこがミスマッチしているスレンダーな美少女。
 狸の擬人化とか家庭的で恰幅の良さそうな感じだけど、ラフタリアは全然違う。

「えっと……あの……」

 お礼を言おうと思ったのだけど声を掛け辛い。
 おかしいな。普段は当たり前のように話をしていたはずなのに、視線を合わせていられない。

「凄い……」
「ラフタリアちゃん。強くなったわねー」
「いえ、本当に、剣も触れずに真っ二つになったんですよ」

 ラフタリアがキョトンとしてラースドラゴンの死骸を指差して答える。
 それ所じゃないけどさ。

「確か、盾に支配されそうになった時、ラフタリアさんに助けて貰ったと尚文様は仰ってましたよね?」
「そうですが……」
「思いっきりラフタリアちゃんの存在が弱点だったのねーお姉さん達、苦労しちゃったわー」
「フィーロちゃん。大丈夫なの?」
「うん。さっきまできつかったけど今は大丈夫だよ」

 アトラを乗せたフィーロがメルティを抱き寄せて頷く。

「尚文様が出発して、すぐにラフタリアさん達が帰ってきたんです。それから事情を説明して急いでこちらに」
「大変そうなフィーロは置いて行くと言ったのですけど、譲らなくて……」

 困ったようにラフタリアはフィーロを撫でる。
 それにしてもあの道を良くこんな短時間で到着したな。
 まあ馬車の無いフィーロが全速力を出したら、これるのか?

「だって、間に合わないと思ったんだもん」
「結果的にはそうですね。アトラさんもありがとうございます」
「全ては尚文様の為ですわ」

 良かった。これで事件も解決か。後でガエリオンとは話をしなきゃならんな。

「キュア?」

 ガエリオンが谷子に向かって飛びついて顔を舐める。
 元に戻ったのか? それともブリッ子いているのか?

「ガエリオン。大丈夫?」
「キュア!」
「フィーロから取った物を返して!」
「キュア!」

 またガエリオンはフィーロと睨みあいをするが、すぐにラースドラゴンに視線を移す。

「多分、あそこだってさ」
「というか、その小さい子竜がガエリオンなのですか?」
「うん。無理しちゃって小さくなった見たい」
「経験値返して!」

 ラースドラゴンの溶けた死骸にフィーロは抗議している。
 馬鹿だけど可愛いな。

 それよりもラフタリアだよ。
 ……やばい。
 こんな子が彼女だなんて、俺はなんでもっと手をつないだり、一緒に寝たりしていなかったんだ?

 ラフタリアだって俺に恋愛感情を抱いているはずだ。
 そうに違いない。

「お、おお……」

 違和感の無いようにラフタリアに声を掛ける。
 若干声が裏返った気もするが。

「あ、ナオフミ様……?」

 ラフタリアが俺に眩しい視線を向けて首を傾げる。
 うわ、なんかそれだけでドキドキする。

「あの、ナオフミ様ですよね?」
「そ、そうだけど」
「何かおかしく、ありませんか?」
「なんで?」
「目付きは元より、何か……変です。主に雰囲気が」
「そうかな?」

 ほぼ一緒に行動してて、俺を慕ってくれる女の子。
 よーし、今夜は寝かなさいとか、キザな台詞を村に戻って言うぞー。
 ……? なんだ? 今凄くトラウマを刺激された。
 何かを忘れている。

 いや、しかし、ラフタリアは大活躍したんだ。
 まずは、手始めに誉めよう。

「とても助かった。ありがとう。正直危なかった。これも全てラフタリアのお陰だ」
「ナオフミ様?」
「良ければ、今夜二人で話でもしないか?」
「ナオフミ様の様子がおかしいです。目付きが変ですし、こんな気持ちの悪そうな笑みはしません。それにこんな饒舌では無かったと思うのですが、私の知らない間に何かあったんですか?」
「ああ、ナオフミは今、そこで転がっているドラゴンに色々と吸われちゃっておかしいのよ。戦ってはくれたけど気持ち悪くてね」

 事もあろうにメルティが変な因縁を付けてくる。

「メルティ、そんな失礼な事を言う口はここかな?」

 メルティの顎をつまんで、きざっぽく言ってみる。
 やってみたかったんだよな、これ。

「「絶対おかしいーーー!」」

 確信に満ちた声でラフタリアとメルティが俺を指差す。
 なんでそうなるんだよ。

「俺はメルティとのこれからを心配して――」
「ちょっと黙ってなさい!」

 なんか知らないが、メルティは赤い顔で俺と距離を取り、ラフタリア達と話を始めた。
 ラフタリア、メルティ、アトラの美少女三人が一緒にいると絵になるな。

「どうしたら私達の知るナオフミ様に戻りますか!?」
「私はどんな事があろうとも尚文様に付き従いますわ」
「何を言ってんのよ。こんな気持ち悪い奴がわたしたちの知るナオフミな訳ないでしょ」
「根底は同じですわ。このままの方が尚文様はきっと幸せになれるでしょう。ラフタリアさんも受け入れてください」
「イヤです!」

 アトラの言葉をきっぱりと断ったラフタリアがサディナとラトの方に顔を向ける。
 うん、ラフタリアは他の奴等と違って別格だ。
 見ているだけで幸せな気持ちになってくる。
 なんか……おかしな気がするんだが、今日は凄く気分が良いから気にしない。

「ナオフミ様を元に戻せませんか?」
「さあー。お姉さんわからないわー」
「そこで溶けてるドラゴンに投げ入れてみたら?」

 なんだかんだ言ってサディナもラトと同じようにドラゴンを指差している。
 それを聞いたラフタリアが俺の方に近付いてきた。
 思わず見とれていると両脇を掴まれた。
 ドキっとする心臓のままラフタリアに視線を向ける。
 すると……。

「ちょ、ちょっと待て! 何をするお前らー!」

 ラフタリアとメルティ、そしてラトとサディナが協力し俺を担ぎあげて、事もあろうにドラゴンの死骸に向けて投げ入れた。

「ごめんなさいナオフミ様、ですが……元に戻ってください」
「これでナオフミちゃんがドラゴンに取りこまれたらギャグよねー。ラフタリアちゃん頑張ってー」
「「「い!?」」」

 良く考えて投げろコラー!
 何考えているのこの子達。俺が気持ち悪いとか失礼にも程がある!

「ごしゅじんさまー何やってるの? フィーロも混ぜてー」

 ボヨンとフィーロまで液状化したドラゴンに潜り込む。
 その瞬間。

「ラフタリア! お前は俺のー……!」

 ドクンと音を立てて、盾に何かが吸い込まれて行く。
 同時にフィーロにも何かが少しずつ流れ込んでいるのが感じる。

 ……なんで忘れていたんだ?
 あのヴィッチやこの世界の連中への恨みを。

 つーか、俺が少しでもおかしかったりしたら、気持ち悪がるってなんだよ。
 俺も血迷ったな。よりにも寄って使命優先のラフタリアにナンパしようなんて、愚かにも程がある。
 なにより、メルティやアトラにまで色目を使うとか、昔の元康かっつーの。

 やがて、するするとラースドラゴンが溶けた液体が盾に吸い込まれて消えた。

「ふむ……迷惑を掛けたな」

 直前の記憶はある。
 考えてもおぞましい状態だった。
 発情期かっつーの。
 しかし、最後何を言おうとしたんだ?

 ……忘れた。
 もはや過去の事だな。
 というか、むしろ憤怒の方が俺の本体みたいになってないか?

 ……さっきの状態よりはマシだ。
 この考えはやめよう。

「あ、目付きが戻ったよ」
「ナオフミちゃんは少しささくれている方が魅力的なのねー」
「は? 何を言っているんだ?」
「うん。やっぱりこれくらいが一番よね」

 などと全員が、俺の変化を一目で見分ける。

「ラフタリア、助かった。これから村へ帰るが、お前はどうする?」
「村までは同行しますが、そこからはまた戦闘顧問の修業が待ってます」
「そうか、修行中に呼び出してすまなかった」
「いえ。緊急事態だったようなので仕方ありません」

 俺はガエリオンに目を向ける。

「キュア?」
「事情を説明しろ」

 確かコイツ、喋っていたよな。
 俺の耳元で小さくだけど。

「キュア!」

 ぴょんと俺に飛び乗り、ガエリオンはじゃれ始める。
 ふざけるなと視線を送るが変化は無い。
 元に戻っているのか?

「あー! ごしゅじんさまと遊ぶのはフィーロなの!」
「騒がしいぞペットズ! 今日はもう帰るんだ。所でフィーロ。調子はどうだ?」
「体は楽になったけど……ガエリオンに取られたのはあんまり帰ってこなかったの」

 ステータスを確認する。
 フィーロは……Lvが41になっている。かなり降下してしまった。
 その反対にガエリオンは……わき目も振らずにラースドラゴンの呪縛から逃げたらしいのにLv60か。
 ひっくり返ったまんまか。

「返して!」
「キュア!」

 バチバチと睨みあいをフィーロとガエリオンは始める。

「キュア! キュアキュア!」
「ガエリオンは多分、そんなの知らないって言ってるよ。盾の勇者のお気に入りはガエリオンだって」
「むー!」

 先制攻撃はガエリオンだったか。ペシっと短い尻尾でフィーロの頬を叩いて笑った。

「返せ返せ返せ!」
「キュアキュアキュア!」

 ポカポカとガエリオンと殴り合いを始めるフィーロ。
 ここは、全ての原因はガエリオンにある訳だし、反省もしていないようだ。しかもこいつはどうやら純真な振りして猫を被っているようだしな。
 俺の嫌いな行動オンパレード。今回の騒ぎは命を持って清算して貰うか。

「よしよーし。じゃあガエリオンはフィーロに返そうな。その体で持って、フィーロの餌にでもすれば少しは返せるかもしれないし」

 ガシッとガエリオンを掴み、フィーロの口を開けさせてねじ込もうと……。

「キュアアアア……!?」
「ダメ!」

 谷子に阻止された。

「むー! 何食べさせようとするのごしゅじんさま!」
「お前は食いしん坊だろうが、ドラゴンは精が付くかも知れんぞ」
「もう、ドラゴンは、やー!」

 ああ、食い意地が張っていたのが嫌になったか。
 偏食だな。

「食わず嫌いはやめろよフィーロ」
「やー!」
「ナオフミ様……フィーロに変な食べ癖を付けさせないでください」
「お仕置きだよ。フィーロは恐怖の代名詞にするくらい受け入れるさ」
「やー!」
「フィーロちゃんに変な事しないでよ!」

 今度はメルティがフィーロを庇う。
 そして谷子と睨みあいを始める。

「今回の騒動はその子なんだから、処分すべき!」
「もう大丈夫だもん!」

 ああもう。面倒だな。
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