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盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

盾の勇者の成り上がり

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戦力把握

 出発して4時間。
 フィーロのステータスの低下はアトラのお陰で辛うじて抑えられている状況だ。
 それでも少しずつフィーロの経験値が漏れ出して行く。
 Lvダウンのスピードこそ落ちているが、厳しい状況だ。

「アトラ。力が何処へ流れているかわかるか?」
「はい。フィーロちゃんに方向を指示しています」
「よし」
「はぁ……はぁ……」
「フィーロちゃん……」

 アトラがフィーロの背に乗り、馬車の運転はメルティに任せている。
 ラトと谷子が状況を整理し、サディナが後方を見張っている。
 フィーロが相当バテている。
 こりゃあ早くしないとやばいな。

 愛しのフィーロが大ピンチだぞ、元康。
 こんな時にアイツはどこで何をしているんだ。
 フラグを立てるなら今しか無いだろうに。
 まったく、アイツはウザイ時にはいて、使えそうな時にいないな。

「一体どこまで飛んでいくつもりなんだ?」
「そうね。見た感じだと何処か目的地があるのでしょうね」

 地図を広げ、ラトが現在位置と居るであろう範囲を指し示す。
 まだ夜中だ。時期に日も昇るだろうが、まだ遠い。

「最悪、ガエリオンは処分しなくちゃいけなくなる……わかるな」

 俺は谷子に暗に伝える。一番可愛がっていたのは谷子だったのだ。一応、ガエリオン自体は俺の所有物であるが、谷子にも権利はあると思っている。

「……うん」
「妙に聞きわけが良いな。もっと拒むと思っていたぞ」
「まだ諦めた訳じゃないんでしょ?」
「まあ、そうだけど」
「わかってる。アンタが悪い訳じゃない事くらい。だけど……ううん。多分、その時になったらまた抗議すると思う」
「そうか。俺は制止を振り切るぞ」
「わかってるってば! 最後の手段なんでしょ! 絶対にガエリオンを助けてよ!」

 本人も割り切ろうとして割り切れないという事か。
 そりゃあ、フィーロを苦しめている原因がガエリオンだとわかっているんだ。
 貢献度もある。もちろん、ガエリオンの処分は最終手段だ。出来れば回避したい。

「……勇者なんて嫌い」

 谷子はボロボロと涙して、ずっと泣き続けている。

「憎まれるのはなれてる」
「アンタじゃない!」

 ……なんとなく察してはいるが、谷子は俺以外の勇者に何かされているようだ。
 考えられるのは樹……か? 中途半端に救ったあのハイド=ジャスティスの蛮行。
 なんか違うような気がする。
 となると誰なんだ?
 そんな事よりも何処に向かって飛んでいるんだ?

「ラト、ガエリオンは何処へ向かっているんだ?」
「予測範囲だとメルロマルクの東へ向かっているわね」
「……東か」

 俺の記憶だとメルロマルクの東と言うと腐竜の……ああ。

「腐竜と出会った地域だ」
「なるほどね。そこを縄張りにしていたから戻ろうとしていると言う所かしら」
「だろうな」
「で? お姉さんはどうしたら良いのかしら?」

 サディナが後方を確認しつつ答える。追ってが来る訳じゃないけど、夜間移動なんてしていたら魔物と遭遇する確率もあがる。
 現に馬車の後方を追ってくる魔物が数匹いた。
 サディナはその魔物を魔法と銛で迎撃している。
 前方はアトラとフィーロとメルティで抑え込んでいる。実質フィーロは戦えない。馬車を引くのだって厳しいんだ。
 無理はさせられない。
 俺も流星盾を展開させて、最低限フィーロとアトラは守っている。

「ガエリオンを正気に戻させる方法を考えている。お前は周りを警戒していてくれ」
「はいはい」
「ガエリオンを助ける方法というと核を吐き出させるのが妥当ね。それも出来れば早く」
「……そうだろうな」
「無理やり体を押さえて、口に手を突っ込むしかないでしょう。本来は噛み切られないように道具も必要だけど」
「それは大丈夫だろう。俺の防御力を舐めるな」
「ま、伯爵なら心配ないわね」
「ラト、薬でガエリオンを抑えられないか?」
「なんで私が付いてこさせたかわかっているんでしょ?」

 ラトは薬を入れた注射器を俺に見せる。

「結構強めのマヒ薬よ。ドラゴンだってしばらくは動けないくらい強力な奴」
「そうか。頼りにしている」

 ラフタリアがいないし、周りのメンツのLvもそこまで高くない。
 ガエリオンのLvも少しずつ上昇しているし、盾の補正で能力も高い。
 挙句、フィーロからステータスまで搾取している状態だ。
 ドラゴンの形をしたフィーロと戦うようなもんだ。
 俺は大丈夫かもしれないが、他の奴は攻撃を受けたらシャレにならない。
 まったく、神様なんているのなら、とことん俺を苦しめたいようだな。

「まず、打ち合わせだ。ラト、やっぱり少しは弱らせた方が良いよな」
「そうね。出来れば」
「じゃあサディナ。ガエリオンと接敵したら弱らせろ」
「……私は?」

 谷子が震えながら提案する。

「お前は戦えないだろ?」
「ううん。ガエリオンを下手に傷つけるくらいなら私がやる! じゃないと危ない」

 責任感の強い事で。

「お前は何が出来るんだ?」

 谷子の戦闘方法を俺は良く知らない。
 最初は棒を持って居たが、最近は何をしているのやら。

「私が得意なのは魔法攻撃、みんなの中でそれだけは誇れるの」
「ほう……属性は?」
「わかんない。魔法を教えようとしたおばさんも、私が使う魔法は変わってるって」

 そういや、魔法屋が色々と奴隷に魔法を教えていたなぁ。頼んだのは俺だけど。
 谷子も魔法を教わっていたのか?

「わからないって、お前、何の魔法が使えるのかわからず使っているのか?」
「うん。お父さんから教わったの」

 特殊な類の専用魔法とかそんな感じか?
 いまいちわからない。もう少し、戦闘に付いて行けば良かった。
 奴隷共の能力把握が出来ていない。

 MMOのノリでギルドメンバーの自由に育成させていたような状態だからなぁ。
 レイドや攻城戦とかだと戦略が命で、職業の決まっているMMOなら職種とLvだけで割り振れた。
 実戦を見ないと評価なんて出来ないし、失敗と編成の繰り返しだ。
 経験させて、覚えさせる意味もあった。
 仲のいい者同士で組ませたり鉄板と言われる戦略を教え込む事でどうにかなった。

 これが現実との弊害だな。ルールなんて無いんだから。
 俺もまだゲーム気分で居た訳だ。

「アトラとなら連携が組めるか?」
「うん」
「メルティは?」
「その子? 何の魔法が使えるの?」
「水じゃないかしら? 感じる魔力でわかるわ」

 サディナがメルティの得意魔法を当てた。やはり水生系の獣人であるサディナはその辺りの感知能力は高いか。

「お前はどうなんだサディナ?」
「私は近接も魔法も出来るわよ」

 で、ラトは魔物の生態を理解してる状態異常担当か。

「じゃあ俺が先頭に出る。後方から魔法が得意な奴は魔法、サディナと……」

 アトラはフィーロの症状緩和をして貰っているから戦わせられないか?
 状況によって力を貸して貰おう。

「サディナは俺の後ろから銛で攻撃してくれ」
「はいはい」
「わかった」
「うん!」
「その作戦で行くしかないわね」

 そういえば、今気づいたけど、女子率たけー……。
 ラフタリアとフィーロ、ついでにリーシア程度なら気にならなかったけど、これだけ女子だけが集まるって、まるで元康じゃないか。
 フォウルをもう少し可愛がろう。シスコーンだけど男要員として欲しい。

「伯爵変な事考えてない?」

 どうして俺は考えている事を知られてしまうのだろう。この世界の人間はサトリの能力でも持っているのだろうか?
 女の勘と言う奴か? 冗談じゃない。

 更に数時間経過し、東の村に到着した。朝日が昇り始めている。
 フィーロの足もそうだが、ガエリオンの飛行速度も相当なモノだな。
 だけど……なんか東の村の山の方に暗雲が立ち込めていて暗い。

「あ、聖人様だ!」
「いや、盾の勇者様よ!」

 東の村の連中が俺たちを見つけて近づいてくる。谷子は……何故かシーツを被って全身を隠した。

「今朝、ドラゴンの叫び声が聞こえ、村の者たちが揃って家から出ると、山脈がああなっていまして」
「そうか、俺もドラゴンがこっちへ逃げたのを確認して追い掛けてきたんだ」
「「「おお!」」」

 家の、とは言わない。評判に関わるし。
 この場に居る連中も察して黙ってくれている。

「ただ……」

 アトラとフィーロの様子を見る。
 相当疲労しているようだ。
 ガエリオンの逃げた先は特定できた。

「一昼夜寝てないんだ。少しだけ休ませてくれないか」
「で、ですが」
「万全の状態じゃないと、勝てないかもしれないんだ。無理を承知で少し待ってほしい」
「わ、わかりました」

 ポータルシールドで場所を登録して村に言付けを残した方が良いだろう。

「よし、一回村に戻るぞ。ポータルシールド!」

 もちろん、位置を記憶し、村に飛んだ俺たちはラフタリア達が戻っているかを確認する。
 ……俺を含めて七人だが、飛べたな。
 俺以外の人物が六人まで、という事か。
 要するに俺を含めて七人まで転移できる様だ。

 元康……説明下手糞だな。
 合計七人とか言えよな。
 それとも基本3人+俺のLv÷20とか条件でもあるんだろうか?

 その合間にフィーロとアトラが壁に寄り掛かって安静にして休ませる。
 ステータスを再確認する。
 やはり少しずつフィーロのLvが低下していく。これは危険だな。 

「時間まで休んでいてくれ」
「わかったわー」
「了解、それまでに強力な薬を作れないか準備しておくわ」
「うん」
「フィーロちゃん……水よ」
「ありがとうメルちゃん」

 俺はラフタリア達を見つけられたかと尋ねた。しかし結果は芳しくない様子だ。
 ポータルシールドのクールタイム中に逃亡先を説明する。
 これでラフタリア達が帰ってきたとして、すぐに出発できる。
 時間が問題だ。
 フィーロのLvの下がり具合からして、半日以内に片付けないと危険だ。
 願わくば、出発までの間にラフタリア達が来てくれる事を祈るしかない。


「やはり無理だったか」

 クールタイムが終了したが、ラフタリア達は帰ってこなかった。
 これはあの人員でガエリオンを止めるしかない。
 覚悟していくしかないか。

「フィーロとアトラは村で休んでいてくれ」
「ご、ごしゅじんさま」
「もう長距離の移動は無い。ガエリオンが逃げた先は目と鼻の先なんだ。フィーロ。無理をするな」
「でも……フィーロ行きたい」
「ダメだ。無理をしたらそれだけ負荷が掛りすぎる。ただでさえ限界に近いお前を連れてなんて行けない」
「や、やー」
「アトラ、フィーロを頼む」
「わかりましたわ。フィーロちゃん。ここは尚文様に任せましょう」
「でもフィーロは――」
「尚文様はフィーロちゃんの為に言っているのです……これ以上は重荷になってしまいますよ。それでもと言うのなら私が止めます」

 アトラの言葉にフィーロは凄く渋々頷く。
 元々病を患っていたアトラの言葉は重たい。それに、今、フィーロはアトラによって進行を抑えて貰っている状況だ。同じ要領でフィーロの動きを止める事も可能なのだろう。

「メルティはどうする?」
「私は行くわ。フィーロちゃんの為だもの」
「無理はするなよ。お前は次期女王なんだからな」
「わかってるわよ。でも女王の地位なんかよりも大切なモノが私にはあるの」

 親友なんだな。本当に、仲が良くて良い事だ。
 やはり俺が元の世界に戻ったらフィーロはメルティに任せて良いだろう。

「フィーロちゃん。待っててね」
「メルちゃん……」
「安静にしてるのよ」
「う……うう……」

 両手で顔を抑え無力感からフィーロは泣きだしてしまう。
 こんなフィーロ初めてだ。
 それほどまでに堪えているのだろう。

「出発だ。ポータルシールド!」

 俺たちは東の村に戻り、暗雲立ち込める山に向かって歩き出したのだった。
感想で指摘されたので、説明を追加しておきました。
更に加筆で誤字とか……ぐだぐだでした。
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