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盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

盾の勇者の成り上がり

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アルプス

「なんか……凄い婆さんがやってきたな」

 フォウルがアトラを背負ってやってくる。
 他人事の様な事を言いやがって。
 ラフタリア達は100で打ち止めだが、お前は120になるんだぞ。
 ステータスを使う能力が必要なのも事実だが、高いステータスがあるのも重要なんだ。

「何を呆けているんだ? お前も教えて貰うんだよ」
「げ……」

 フォウルの奴、多分アトラにかまけて俺の指示を碌すっぽ聞いていないんだろうなぁ。
 理由はわからんが、最初の頃のキールみたいに俺に反抗的なんだよな。
 まあキールは飯で懐いたが、フォウルはダメだったが。
 ちなみに妹のアトラは性格が穏やかな事もあり、完治すれば言う事を聞きそうだ。

「尚文様、お久しぶりです」
「まだ二日と半日だぞ?」
「ですが、逢えました。尚文様がすぐに出て行ってしまって……私……不安で」

 ああ、薬が何時切れるか怖かったんだな。
 俺が使わないと効果薄いしな。

「ぬぬぬ……」

 フォウルが凄く渋い顔をして俺を睨んでいる。
 何をそんなに悔しがっているんだ?

「ぬ? そこに居る少女」

 ババアがアトラを見つけて近寄る。
 自己主張の激しいババアだな。
 リーシアかラフタリアかアトラ、どれか一人に絞れよ。

「小童、何故、その少女を背負っておるのじゃ?」

 そしてフォウルに問い詰める。
 質問にフォウルはキッとババアを睨む。
 そりゃあどう見ても病人だからだろ。
 ババアが嫌がらせをしている様にも見えるが、さすがにこの年齢でそんな事をしたら老害認定して追い出すぞ。
 俺は年寄りに厳しいからな。
 主にクズの所為で出来上がった先入観だけどさ。

「アトラは目が見えなくて歩けないんだ!」
「はて? 感じる気からはそのような気配は無いのじゃが? 一度立たせてみるのじゃ」
「ふ、ふざけるな。アトラを立たせるって――」
「お兄様……試してみたいです」
「……わかった」

 フォウルは渋々、アトラを降ろして立てるように手を握る。
 いや……アトラの時も思ったが気ってなんだよ。
 魔法のある世界だからどうこう言うつもりは無いが、さも当然の様に言われるとな。

「尚文様もお願いします」
「ああ、わかった」

 どうせ立てはしないだろう。こういう病弱な女の子はそう言う風に相場が決まっているものだ。
 ……さすがにイグドラシル薬剤もそこまで効果は……。
 ババアが目の前にいる。
 ありそう。なんか立てる気がしてきた。

「よいっ……しょ」

 アトラは俺とフォウルの手を借りて……立ちあがった。

「わぁ……これが、立つと言う事なのですね」
「あ……アトラが、アトラが立った!」

 お前はどこのアルプスの少女だ?
 やべぇ。フォウルの名前を聞いていなかったら、アルプスってあだ名を付けていた。
 谷子みたいに訂正するつもりすらなかっただろう。
 ていうか、谷子の本当の名前知らないんだが。無論、知るつもりも無いし、どうでもいいがな。
 よろよろとアトラは歩きだし、微笑む。

「ありがとうございます尚文様、お兄様」
「うう……アトラ、元気になって」
「はい、お兄様」

 ヤバイくらい弱っていたのに元気になったものだ。
 イグドラシル薬剤、効果が凄いな。
 ババア然りアトラ然り。

「それで尚文様……私たちは何をしたらよろしいですか?」
「そうだな、お前の兄貴には戦って貰う予定だ。どうせLv上げには参加したんだろ?」
「ええ、お兄様はLv上げに参加致しました」
「お前はどうするんだ?」

 歩けるようになったと言っても、まだ頼りない感じだ。
 一応アトラもハクコ族な訳だから120までは上がるはず。

「私も、戦う術が欲しいと思っております」
「アトラ! お前はそんな事をしなくても良いんだ!」

 フォウル改めアルプスが遮る。
 まあ、目に入れても痛くない大切な妹が戦いたいなんて言うんだから断りもするか。

「いいえ……私は小さなころから思っておりました。もしも自由に歩けるようになれたなら……守られてばかりではなく守れるようになりたいと」
「だ、だけど」

 さすがにアトラの強い意志にアルプスが困ってる。
 ……このまま俺の思考がアルプスで固定されたら、咄嗟に言ってしまうかもしれない。
 フォウルで統一しておこう。
 谷子? 知らんな。

「ですから尚文様、私にも戦う術を……Lvを上げる組に入れてください」
「わかった。とりあえずフォウル。お前はどうする?」
「俺も戦う! アトラを守るのが俺の役目だ」
「いや、そこじゃなくて……」

 俺は村の連中に教えている勇者の力による補正の説明をした。

「だから本当に強くなりたいのならLvをリセットした方が良いんだが、どうする?」
「そ、それは……」
「補正だけでアトラがフォウルを抜くかもなー」

 と揺さぶってみる。

「お兄様に勝ちたいです」
「ぬ……」

 フォウルが迷いながらアトラの顔を見る。
 目に入れても痛くない妹にボコボコにされたら恥だよな。立ち直れなさそう。

「……わかった。俺はリセットする」
「なんか面白い話してるね」

 ドスドスとサディナもやってくる。

「それなら私もしようかな。盾の勇者様」
「ふむ……」

 どうせ龍刻の砂時計に行かないといけなかったんだ。調度良いか。

「じゃあ直ぐに出発する。で、戦闘顧問のお前は、ラフタリアやリーシアと一緒にLv上げ作業も手伝ってくれ」
「了承したですじゃ」

 サディナがでかいからフィーロの馬車に台車を連結して……。おっとそうだった。

「ルーモ種の連中はいるかー?」
「なんですか?」

 ルーモ種が集まってくる。

「お前等Lvは上がっているか?」
「はい。元々Lvが多少ある者は既に30に達しています」

 イミアの叔父が率先して説明する。

「そうか、じゃあお前等の中で鍛冶を覚えたい奴は付いて来てくれ」
「鍛冶ですか? それなら自分が」

 イミアの叔父が手を上げる。
 なんだ?

「多少心得があります」
「そうか、じゃあついて来てくれ」
「わかりました」
「そのうち、炭鉱夫も募ると思う、そっちは誰かいないか?」
「それなら皆、得意としております」
「わかった」

 頼りになる。

「そういえばイミアは何処だ?」
「イミアは洋裁を心得ている者に服の作り方を自主的に学んでいる最中です。ダメでしたか?」
「いや、それなら気にせず真面目に取り組んでくれと伝えろ」
「はい」

 イミアは服作りに興味を覚えたか。
 まあ、洋裁屋と一緒に何かを作ってくれれば良いだろう。
 最近じゃあ村の連中もまともな服を着始めているし……。

「なあ、なんでお前はふんどしなんだ?」

 サディナは何故かふんどしを愛用している。上にはチョッキを着ているけど、変な格好だ。
 キールにもふんどしを上げているようで……キールがふんどし姿で歩いてる。
 壊滅的にセンスが悪い。俺の村をふんどしにするつもりか。イミアの努力を期待するしかない。

「趣味」

 一言で片づけられた。

「ただいまー。メルちゃん忙しいって断られちゃった」

 フィーロが丁度、隣町から帰ってきたので呼びとめながら考える。
 タイミングが良いな。隣町に呼びに行く予定だったんだがな。

「では、私はどういたしましょう?」

 育てるのは決まったが、予定が無いアトラが聞いてきた。
 やる気があるのは良い事だ。
 そういえばフォウルはリセットするために城下町へ行くのだけど、アトラはその必要が無いんだよな。

「戦闘顧問、この子はどう思う? いきなりLv上げで問題無いか?」
「……戦闘センスが天才派ですじゃ、ワシが教えずとも真理を理解しておる。即座に実戦投入で大丈夫ですじゃ」
「いい加減な事を言うな! もっと大事に扱え!」

 フォウルがキレた。
 コイツいつも怒っているよな。
 ……俺も人の事は言えんが。

「どうしたのー?」
「フィーロさん。どうも私が戦いに出るのをお兄様が嫌がっていまして」
「へー……アトラちゃん強いの?」
「さあ?」
「フィーロにパンチ」

 フィーロがお姉さん風を吹かせてアトラの攻撃を受けとめようとする。

「え、あ……はい」

 アトラが手をグーにして、フィーロの腹部に拳をぶつける。
 なんかバシンって良い音がした。
 次の瞬間、俺は絶句した。

「あきゃあああああああああああああああ!」

 フィーロがもんどりをうって倒れた。

「何の冗談だ?」

 俺もフォウルも呆気に取られながらフィーロを見つめる。

「う、嘘じゃないよ。アトラちゃんのパンチ、凄くいたい。ごしゅじんさま治して……」

 凄い涙目でフィーロが俺に懇願する。
 演技か? 凄い大根……悪ふざけも大概にしろ。

「フィーロちゃんの大きな力の流れを少し突いただけなのですけど……そんなに痛かった?」
「うん……」
「ごめんなさい」
「ううん。良いの。もういたくないや」
「ふざけるのも大概にしろ、この魔物め! 妹を戦わせようとしやがって!」
「アトラちゃん。パンチ」
「あ、はい」

 フィーロの指示を受け、アトラは兄のお腹に拳を出す。
 フォウルはそんな妹の攻撃、弾いてくれると腹を突き出したのだけど、命中した瞬間。

「かは……」

 大きく声を出して、うずくまった。
 そして涙目で。

「き、効かないな……だから、お前は留守番を、して、して……いろ」
「無茶があるやせ我慢だぞ……」

 というか凄いな。
 どうしたらフィーロとフォウルにダメージが入るんだ?
 目が見えないから別の所で補完しているのか?
 兄よりも……強いんじゃ。
 これが伸びたら凄い事になりそうだ。さすがはハクコ種。
 良い意味で予想外だ。
 ババア効果を早く実装して、戦力に入れないとな。

「じゃあとりあえず無理のない範囲でLv上げをして来い。俺達はその間にLvリセットをしに行こう」
「はーい」
「お、俺はまだ、アトラが戦うのを認めていない」
「お兄様、何があろうとも私は戦います。ですからお兄様は尚文様に従ってください」
「だ、だが……」
「フィーロ、フォウルを馬車に乗せて出発だ」
「うん!」

 抵抗するフォウルを余所に、俺の指示通り奴隷共は準備を終える。

「ドラゴンの雛も一緒にLvを上げておいてくれ、じゃあ俺達は出かけてくる」
「いってらっしゃいませナオフミ様」
「ああ、行ってくる」

 そういえばラフタリアを見送った事はあっても見送られた事は無かったなぁ。
 ま、気にする必要もないか。
 こうして俺はLvリセットする奴隷と親父に預けに行く奴隷を連れて出発したのだった。
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