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盾の勇者の成り上がり 作者:アネコユサギ

盾の勇者の成り上がり

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投げやり

 俺の言葉を聞いて最初に動いたのは錬だった。

「マインに触れるな!」

 錬が剣を振りかぶる。
 チュインと俺の腕に錬の剣戟が火花を散らす。
 相変わらずダメージは無い。未だに強化方法を認めていないみたいだ。
 この程度なら盾で受けるまでもない。

「お前さ、こいつの名前間違えると罰せられるの忘れてないか?」
「うるさい! マインから離れろ!」

 ヴィッチも暴れて、片手じゃ掴みきれない。

「流星剣!」

 おっと、さすがにスキルはダメージを受けるかもしれないし、今は高価な卵を背負っている最中だ。
 割ったらもったいないから離れる。
 代わりにラフタリアとフィーロが前に出た。
 ついでに元康も戦闘態勢に入った。
 事実上、錬とヴィッチ、そして女2を取り囲む形になっている。

「錬、ヴィッチは信じない方が良いぞ。そいつは女王の言う通りの奴なんだからさ」

 人に冤罪を平気で掛けたり、苦しむ様を見るのが大好きな奴なんだ。
 きっと錬も近い内に騙されて捨てられる。
 元康の様に!

「元康の顔を良く見ろ。情けない顔だろう? これが本当にそんな事をしていたような奴の顔か?」
「いや、元康も女王に取り込まれていると聞いた! 全ての元凶は女王だ!」
「その情報源はたった一人だけなんじゃないのか?」
「それでも俺は、俺を信じてくれる人の為に戦う!」
「冷静になれ。普段のお前ならちょっと考えればわかるはずだ」
「うるさい!」

 あー……こりゃ無理だ。自分が正しいと本気で思っている。
 気持ちはわからなくもない。
 俺も最初はおかしいなと思う事はあっても、信じよう信じようと自分を誤魔化していたからな。
 ましてや今の錬は精神的に不安定だ。甘い事を言ったヴィッチを信じたいんだろう。
 ……邪魔をするなら殺してやろうか。
 前とは違い、それをするだけの力は持っているつもりだ。

 そうだ。影がいるはず。
 影に奴隷紋を使わせれば態々錬と戦わなくても良い。
 何より、ちゃんと強化できた勇者はこれからの戦力的に欲しい。
 ……まあコイツ等が相手を信じるとか、想像もできないけどさ。

 俺の意図を察知したのかビッチの文様が輝く。

「く……レン様! ここは一旦引きましょう」
「わかった! 閃光剣!」

 不利を悟ったのかヴィッチの言葉に錬が頷き、スキルを放つ。
 するとバカの一つ覚えの如く、剣が輝き始めた。

「チッ! ラフタリア、フィーロ!」
「はい!」
「うん!」

 直後、錬の剣が強く発光する。
 そう何度もやられてたまるか。

『力の根源足る私が命ずる。理を今一度読み解き、目も眩む閃光を抑え、他者を癒せ』
「アル・アンチ・シャイニング!」

 錬の閃光剣によって眩んだ目が、ラフタリアの魔法によって解消される。
 合わせてフィーロが飛び出して蹴りを入れようとしたが、時すでに遅し、錬がビッチと女2を抱えて剣を振りかぶった。

「転送剣!」

 元康の時と同じように錬が消え始める。
 それはヴィッチも一緒だ。

「ヴィッチ、今回は逃げきれた様だが、地獄の果てまで追いかけてやる。精々怯えて待っていろ」
「フンッ!」

 俺の言葉に鼻音で返したヴィッチの姿は完全に消失した。
 このスキルは本当に厄介だ。
 どうにかして封じる手は無い物か。

「くそっ! また逃げられた! あのクソヴィッチ絶対にぶっころしてやる!」
「ナオフミ様、落ち着いてください」
「悔しく無いのか! アイツはラフタリアの事まで汚したんだぞ!」

 なんか、アレは今までで一番腹が立った。
 この怒り、どうしてくれようか。
 大人気ないがラフタリアに八つ当たりをしてしまった。

「……ナオフミ様、その言葉だけで私は十分ですから」
「そうか……」

 ラフタリアがそれで良いのなら、ここは我慢しておくけどさ。
 だが、覚えていろよ、ヴィッチ。
 このどこから沸いてくるのかわからない怒り、いつか貴様にぶつけてやる。

 必死に怒りを静めていると影が現れた。

「……圏外に逃げられたようでごじゃる。さすがに生殺与奪の権利を発動させる指示は受けていないでごじゃる」

 もう碌な事をしそうに無いから殺しても良いんじゃないかと思うけど、影も立場があるからなぁ。下手に殺せないか。
 つーか、もっと苦しめてから殺したいと思う俺は外道か?

「そのようだな」
「まさか元王女が剣の勇者に取り入るとは思いもしなかったでごじゃるよ」
「何処に居るのかと思ったらいきなりアレだ。遭遇したのも運が良かったとしか思えないな」
「そうでごじゃるな……とにかく、一度女王に報告するでごじゃる。所で槍の勇者殿はどうするでごじゃる?」
「……逃げるんじゃないか?」

 あんな便利な移動スキルがあるんだ。捕まえようがない。
 もしも逃亡生活の時に持っていたらと考えると悔しくて仕方が無いな。

「とてもそうは思えないでごじゃる」

 元康は肩の力が抜けたかのように俯いて溜息を吐いている。
 心ここに在らずって感じだ。

「どうした? 逃げないのか?」
「もう良いよ……みんなを信じて探したのに、こんな事ばっかり……町や村の連中も冷たいし、疲れた……」

 目が濁ってる。魔法少女だったら魔女化してそうだ。

「捕まえるのか?」
「罰が一応無いでごじゃる。波での戦いを強制させるだけでごじゃるから」
「そうなんだよなー……下手に罰せられないし、殺すのもな」

 殺すのだけならラフタリアやフィーロに任せれば、一撃必殺出来そうだけど。
 それなら捕まえる必要もない訳で。

「とりあえず元康、お前を連行する」
「……はいはいわかった。何処にでも連れてけ、殺すなら殺せよ……」

 投げやりな言い方で元康は頷いた。
 まああんな事があったらしょうがないのかもしれないが。

「どいつも助けるのが当たり前で少しでも失敗すると石を投げてくるし……信じてたアバズレもエレナも本当はあんな奴で……もうどうでもいい……」

 仲間を信じて苦境を乗り越えてきていたのに、その仲間の本心に触れて絶望ってか?
 こんな事態になったのは何か理由がある。俺は悪くないと思っていたとか考えていそう。
 とはいえ……日も沈んできた。

「超特急で城へ連行するか?」
「急務ではござらんのでイワタニ殿の自由でごじゃる」
「そうだな、おい元康」
「災害の原因はもう俺で良いよ……これで満足か?」

 もう良いよも何も、お前も原因の一人じゃないか。
 まるで他人事の様な反応だ。

「……あのワープするスキルで城には行けないのか?」
「今は登録してないから無理だ」
「チッ! 使えねえ。というかあのスキルの出る武器の材料を教えろ」

 あのスキルも俺が使えるようになったら移動に便利だ。
 行商にしても、Lv上げにしても、使用用途が高い。
 覚えない手は無いだろう。

「……龍刻の砂時計の砂だぞ?」
「一体いつの間に盗んだでごじゃる!?」

 俺も驚きだ。龍刻の砂時計の砂っておい!
 つーか、錬や樹もきっと砂時計の砂を盗んでいたんだろうな。
 なんでそんな報告が上がって無いんだよ!

「盗んでねえよ。シスターに頼んだらくれたんだ」

 影を睨む。

「そ、そういえば、三勇教が管理していた時の書類にそのような記述があったような……でごじゃる」
「先に言え!」

 考えてみれば試す素材は山ほどあるんだよな。最近じゃあんまり盾に吸わせてないけど。
 というかイグドラシル薬剤ですら、もったいなくて盾に吸わせていない。
 もう少し色々と試してみよう。

「どんなスキルなんだ?」
「登録した場所に転送できるスキル……」
「使えない条件は?」
「さあ……ゲームじゃスキル使用禁止エリア以外で使えた」

 使用不能の条件が掴みきれない。
 ゲームだと重要拠点じゃ使えないとかあるけど、この世界じゃどこまで制限があるのだろうか。
 一度行った事のある場所か。

「登録に制限は?」
「ある。三箇所までで新しく登録すると古い順から忘れて行く、ちなみに一緒に移動できる人数は六人までだ」

 ご丁寧な事で……とにかく、城に連行するにしてもこの町で一泊してからの方が良さそうだ。

「じゃあ今日はここで一泊しよう。それから城に向かう」
「わかりました」
「了解したでごじゃる。拙者は女王へ伝達をしに行くでごじゃるよ」
「お前の連絡手段ってなんだ?」
「秘密でごじゃる。人は運べないでごじゃるとだけ教えるでごじゃるー」

 影はそう告げて消えた。
 なんかイラっとくる返答だな。

 フィーロが落ち込む元康を指で突いている。
 まったく、女の正体を知ったらここまで落ち込むのか。
 いや、これまでの生活で疲れ切っていたのかもしれないな。
 知った事ではないし、苦しむコイツの顔をもっと見ていたいけど、ラフタリアがなーんか俺を睨んでいるような気もする。

「ナオフミ様? どうかしたのですか?」
「いや、別に。さっさと宿を取ろう」
「はい」

 こうして俺達は元康を連れて、宿を取るのだった。
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